夢の時間(とき)

オリジナルの異世界ファンタジー小説【ALCHERA-片翼の召喚士-】連載中です。

当ブログについて 

 

【 ようこそ! 】


初めまして、または、いつもありがとうございます。ユズキです。
当ブログでは、オリジナルの創作物をメインに、小説とイラスト、雑文などを掲載しています。時々マンガっぽいものとかも。
4年目に突入し、超不定期ではありますが、更新頑張りますのでよろしくお願いします。

※この記事は常にTOPに掲載されます。最新記事はこの記事の下から続きます。最新記事情報は、右サイドバーを見てください。


ALCHERA-片翼の召喚士-

ALCHERA-片翼の召喚士-
「片翼の召喚士の少女キュッリッキのハードスペクタクル恋愛ファンタジー」
総勢15名しかいない、世界最強を誇るライオン傭兵団。後ろ盾であるハワドウレ皇国副宰相ベルトルドにスカウトされ、ライオン傭兵団に入団することになった、レアと言われる召喚スキル〈才能〉を持つ少女キュッリッキ。アイオン族であるキュッリッキは、誰にも知られたくない辛いトラウマを抱えている。その為人付き合いが苦手な彼女は、今度こそはとライオン傭兵団の中に、自分の居場所を模索する。
架空の異世界を舞台に、不幸な生い立ちを持つ主人公キュッリッキが、ある事件をきっかけにして、仲間たちとの関係、初めての恋、己のトラウマと向き合っていく姿。そして、もう一人の主人公格ベルトルドの謎の思惑。それらが絡み合い、物語は進んでいく。

物語の傾向はシリアスですが、下ネタもあり、コメディもあり、恋愛もあり、バトルあり、血みどろもあります。長編ですが、難しいお話や言い回しは書けないので、気軽に楽しんでいただければと思います。
小説以外にも、設定やイラスト、ちょっとしたマンガなども公開中。

専用目次記事はコチラ⇒ALCHERA-片翼の召喚士-

《 最新話 》
・最終章:永遠の翼 ベルトルドからの贈り物(最終話)
ベルトルドとアルカネットのお別れ会から一夜明け、メルヴィンは目を覚ますと、隣に寝いていたはずのキュッリッキの姿が消えていることに気づく。探しに出た先でキュッリッキを見つけたメルヴィンは、思わぬ光景に驚きを禁じ得なかった。

 136 最終章:永遠の翼 ベルトルドからの贈り物(最終話) (2017/04/26更新)

※血みどろシーンや、性描写などの表現が含まれます。R指定はとくにしていません。少しでもそうしたシーンが不愉快に感じる方はご注意ください。

ALCHERA-片翼の召喚士- 】のマンガを描いてくださいました。ほんわか優しくて楽しい彼らを是非読みに行ってください!

明さんのブログはこちら⇒【 三日月の詩/はじめての、ファンアート 】

小説

  

眠りの果てに
貴族のお城にご奉公へあがったはずが、勉強やマナーを学ぶ日々。そして…。おとぎ話風をイメージした、15歳の少女インドラの物語。短編で完結済みです。

乗り換えまでには読み終わるかも?
練習に書いている、1話完結の読み切り短編集です。ジャンルはとくに決めてません。思いつくまま。

Counter Attack
更新停止中です。年内再開できる・・・かなあ?


イラスト

イラスト展示場所
当ブログに掲載したオリジナルのイラストを、ここで全てご覧いただけます。イラストだけご覧になりたい場合はご利用ください。

フリーイラスト
ちょっとしたアクセントなどに使って頂ければと、こちらで紹介しているイラストはご自由に使ってやってください。他の記事で載せているイラストはフリーではありませんのでご注意ください。あとたまにお題絵も。

キリ番リクエストイラスト ★現在次キリ番リク中止中★
当ブログの定めたカウンター数字を迎えたら、5名様までリクエストを賜り、描かせていただいています。こんな絵でもよろしければ、リクエスト参加してやってください。キリ番についての説明ページはこちら⇒『キリ番リクエストについて。

その他

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category: 未分類

thread: 物書きのひとりごと - janre: 小説・文学

tag: ファンタジー  オリジナル  イラスト  小説 

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Instagramを始めてみた 

 

流行りのInstagramを始めてみました。

わたしはスマホを使っていないので、Instagramはご縁がない。そう思ってこれまでスルーするよう努めてきたんだけど(笑) パソコンからでも画像がアップ出来る方法が、最近わかって、それでやってみることにしました。

まあねー、なんでもスマホ時代だから、使えって話なんだけど(笑) パソコンからでも出来るのはアリガタイコトデス。

Instagramは主に写真系のSNSだと思っていたけど、イラストなんかもアリなようで、イラストを公開するSNSはたくさんあるけど、Instagramはジャンルにとらわれずに、あらゆる方面のヒトが見るってのもあるから、それなりに興味は特大だったんだよね(・ω・)

案の定、試しに1枚アップしてみたら、いいね!してくれたの外人さんたちばっかりな気が激しくします。

昨年描いた、人魚姫っぽいキュッリッキさんのイラストなんだけど、最初よくわからなくてハッシュタグつけてないンダヨネ・・・。それでも、現在97件のいいね!を頂けていて、ブログで公開した時の反応の薄さとは一体何だったのか、って複雑なキブンに。

反応があるってスヴァラシイ( ;∀;)

2枚目に白木蓮の中のキュッリッキさんもアップしてみたら、こちらもいいね!頂いて嬉しい限り。(これ打ってる現在進行形で増え続けている)

いいね!のお礼にフォローしに行くんだけど、件数多くて追いつかないや。

海外のヒトに自分のイラストが受け入れられるか心配だったけど、大丈夫そうで一安心。結構色んな国の人たちが見てくれているようです。

category: ◆雑談

thread: 物書きのひとりごと - janre: 小説・文学

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スポンサー表示撃退・・。 

 

片翼の召喚士が完結してもう1ヶ月経ったんだ(・ω・)

そう、スポンサーが湧いてて思ったヨ!

いいじゃん1ヶ月放置しようと利用者の勝手だし>< 半年ならまだいいけど1ヶ月じゃ早いわヽ(`Д´)ノ


毎日うんざりするほど暑いデスネー・・・ここ数年梅雨すっとばす勢いで真夏状態の5月だな・・。

だんだん四季が失われていく感じがする。

次に載せたい新作などの準備はチマチマしてます。片翼の召喚士を掲載する頃、勢いで掲載スタートしたので、色々準備不足だったし、もうちょっと落ち着いて諸々載せたいと思います。

なんかもー別に慌ててやる必要もないしネ。ちゃんと準備できてから載せます。


完結して1ヶ月経っても、なろうさんところでは、読みに来てくださる方もいるようで、むしろ完結したあとの方が・・・て感じです。

見向きもされなくなったら寂しいし、あんなもんでも一生懸命書いてきたから、アクセスあると嬉しいですね。


光のお父さんの最終回を見逃して、結構ショック><! 原作のブログで切なさを埋めよう・・・。ばなでーるでもあのテの企画やってくれないかなw


category: ◆雑談

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あとがき【 ALCHERA-片翼の召喚士- 】 

 

終わりましたー・・・。3年以上かけるつもりは毛頭なかったんだけど、かかってしまったです(´_ゝ`)

初の長編連載完結小説作品、となりました。

3年分のあとがきをブログ版。 以下、めちゃ長くなる!


■ むかーし、連載小説をホムペでやっていたことはあったけど、結局宙ぶらりんで完結することもなく絶賛大放置になっています。その頃の文章は、今以上にワロエナイほど下手くそで、話の内容も練られていない、拙い塊のようなものです。

今もそう大差ないですけど。

オンゲー依存になっていた頃、ゲームプレイ日記は日々書いていたこともあり、そうした文章はちょろっと磨かれていった、かもしれない?w ですけど、その頃小説は全く書いていませんでした。

が、一旦オンゲーを止める3年くらい前に、この【 ALCHERA-片翼の召喚士- 】のネタみたいな思いつきが生まれました。そして、気が向いたら緩やかペースで頭の中で話が組みあがり始め、オンゲー止めてから、オリジナル作品ブログで公開しようと書き始めました。

まあ、創作ブランクが結構あったし、気が付けばネット界隈はSNS天国。わたしがホムペを必死に作っていた頃は、HTMLで作ったものが主流で、掲示板で交流するような賑わい方でしたけど、今はもう、年齢層も広がりングで、小説もイラストも、いっぱい公開されていますよね。

ブログで小説を発信するのもアタリマエになっていて、正直時代遅れを取り戻すのが精一杯なスタートに(笑)

イラスト以上にオリジナルの小説を公開する、というのは、ドキドキもんでした。こんなん読んでくれるヒトいる? いる!? て気分で。

この先こんなので通用するかな、どうかな、と不安を抱えてSNSに投稿したり、コミュニティのひとに感想求めたりしたけど、賛否両論に気持ちの浮き沈みもしたけれど。そのうち好きになってくれるヒトもいるはず、読んでくれる人もきっと! と思いながら、とにかくマイペースで書いてきました。

年月が経つと、マンガと同じですよね・・・当初と今との絵柄(文章)のギャップ(笑) 必死に書いているときは、これが今の最高!w みたいな錯覚で公開しちゃってるけど、時間が経つと粗がいっぱーい目立つ><

文法ヘンとか誤字脱字とか、設定が書くたびに変わっている部分とか、掘り出したら修正だらけになるほどいっぱいです(;´∀`)

そういうのもひっくるめて、これから読んでやろう、という方には申し訳ないなって思う・・・w


■ わたしはイラストが描けるのもあり、文章で表現することも、イラストで補完しちゃってる部分が結構あったかなって思います。

それを悪いこととは思ってませんが、イラストを掲載できないSNSなどで投稿する場合は、不利まくりですね(笑)

イラストがなくても、読む側が想像しやすいように、描写をしっかり書く、という部分もかなりダメダメーな感じがします。そこは読者のご想像に~って、それですむ場面と、書かないと伝わらないだろ・・・という書き分けがちゃんと出来てないですね。そういうところも大きな課題です。

そこはイラストとおなじで、書き込み(描き込み)が苦手な面がモロ出ちゃってる><


■ この物語のキャラクターたちは、よくもまあ、頭の中で勝手にペラペラ喋りまくりました。普通はそうなのかもだけど、わたしにとっては初めてのことかもしれません。一番暴走してたのは御大でした(笑)

書いてて難しかったのは、キュッリッキさんです。自分で伝えたかった彼女を、50%も書いてあげられていない気がする。難しい女の子を設定しちゃったなあって。

いわゆる成長物ってやつですね・・・そのへんが明確に書き表せていないです><

なのでそれが一番の後悔。

あと、物語の進行を急いじゃって、丁寧に書いてあげられていないことが多すぎ。

このお話を連載していこうと決めたとき、進行がゆっくりでも、丁寧に書こうと決めていたはずなのにねえ・・。そのための長編だったはずです(げふん


■ 何はともあれ、3年以上かけて書き綴ったこの拙い物語も、一旦完結にさせていただきます。

とくに昨年末あたりから、このお話をリニューアルしたい、書き直したい、直したい、あっちこっち! という欲求が高まりまくりで、しかし完結していないのに書き直しとかナイわーw ということで、無事完結もしたしで、直していきたい。

ただ、誤字脱字を修正したりとかじゃダメなので、これまでいただいた感想などをもとにして、ちょいと構成を変えたり、曖昧な部分を明確にしたり、結末などは変わりませんけど、全体的にもっと読む側に判りやすく書き込んでいけるといいなあ。

なので、【 ALCHERA-片翼の召喚士- 】というタイトルでは、完結して閉めました。その代わり今度からは、【片翼の召喚士-ReWork-】のタイトルで、リニューアル(番外編含む)を連載開始したいです。

初めての長編完結作品だし、自分の中での面白さを、きちんと表現しきれていない後悔を沢山含んでいるので、もうちょっと良い形に進化させたいですネ~。

あと関連話もようやく、スタートさせられます。そして、これは年間計画モノになりそうなんだけど、ちょっとやってみたいものがあって、それでも公開できればな~って。ある程度形にできてきたら、そんときは記事にするので聞いてくださいね。


■ こんな拙いものにも、貴重なお時間を割いていつも感想を書いてくれた八少女さんと涼音さんには、心からの感謝とお礼を(^ω^)

お二人の書いてくれる感想を読んで、「ああ、こんな風に伝わったんだ」「アレ、うまく伝わってないかも」「こういう解釈もあるのかあ」などなど、色んな事に気づけました!

やっぱ、自分の頭の中だけだと、どんな風に読まれているのか判らないもんですねえ。受け取られ方も自分の思惑とは違ったり、意外な発想をして下さったり。感想をいただけることが大きな励みになったりするので、本当にありがとうございました!

SNSのほうでもらう感想では、序盤の部分だけで「傭兵団」という単語に対し、人数多くて読む気になれない、とか(´_ゝ`) そういうのをチラホラ書かれましたねえ。名前覚えられない、とか。だから姓をほぼ登場させていません。せいぜい王族の皆様くらいでしょうかね。

まあ確かに傭兵団、とかなると、団、ですから人数多いよねえ。ライオン傭兵団は15名しかいないけど、ああ、あらすじにその人数をあらかじめ書いとけばよかったんだなあ、とか思って、終盤あたりにつけ加えたりしてましたが。

この物語の登場人物数で悲鳴をあげてたら、銀英伝読めないよ!w

これが、学園モノとかスポ根とか、そういうのだったら人数がさらに多くてもおっけーw て若人は多そうだけど。単語で読む気が失せる、て反応があることもまた、初めて経験したねえ。

あと単純に嬉しかったのは、読みやすい文章、て感想かな。まあ、難しい言い回しとか、センスある文章とは無縁の脳みそゆえ、読みやすいと言ってもらえたのは単純に嬉しいかもです☆

感想を書いてもらう、というのは、結構大変なことだなあと思います。単に「面白かった」てだけなら、あえてそれを書く気にはなれないし、どう書いていいか悩んだり、感想なんか湧かないし、てこともあるよね。

ケド、感想をもらえると、今後どう表現すればいいか、部分的にわかりづらいところがあるとか、そうしたことが判るからとても助かります。


■ 最後に、更新ペースは、どうにも現状維持な感じです。コツコツとしっかり更新していければ、ついてきてくれるヒトも少なからずいてくれたはずなんですが。

オンゲー依存症になっていたときに、元からズボラで大雑把な性分に拍車がかかたっというかさらに磨かれちゃったというか(;´∀`) 更新ペースが超絶不定期なのは、性格だねアンタのw と、割り切っていただけるとありがたいです><

次なる新作は、全く別の新しい物語を先にお出しできればと思います。

今後もどうぞ、よろしくお願いします!【 ALCHERA-片翼の召喚士- 】を読んでくださって、ありがとうございました(^ω^)

category: あるけら関連雑記

thread: 物書きのひとりごと - janre: 小説・文学

tag: オリジナル  ファンタジー  小説 
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ALCHERA-片翼の召喚士- 136 最終章:永遠の翼 ベルトルドからの贈り物(最終話) 

 


ALCHERA-片翼の召喚士-
最終章:永遠の翼  ベルトルドからの贈り物(最終話) 136



 庭のプールサイドのデッキチェアに座って星空を見上げていると、サーラから声をかけられ、キュッリッキは顔を向けた。

「疲れたでしょう」

 そう言いながら、二つ並んだデッキチェアの真ん中に置かれたミニテーブルに、カットフルーツの皿と飲みもののグラスを置いて、サーラは空いている方のデッキチェアに座った。

「ありがとう」

 キウィジュースをストローで啜って、キュッリッキはニッコリと笑った。

 料理を作るのも男、片付けるのも男、それがウチの流儀! そうサーラが言い切ったので、リクハルドとメルヴィンはキッチンで片付けをしている。

 昼から大量のご馳走を前に、ベルトルドとアルカネットのお別れ会をした。

 もっぱら各両親たちから、彼らの幼い頃の話が披露(ばくろ)され、それに笑ったり、時には泣いたりと、酒の勢いも手伝って、賑やかに夜まで続いた。

 先程までの賑わいを思い出しながら、キュッリッキは少し複雑な気分だった。

 てっきり涙に暮れる、しんみりとした雰囲気に包まれ、厳かな気持ちで帰路に着くのだと思っていた。それなのにしんみりムードはほんのちょっぴりで、あとはもう賑やかに大騒ぎ。内心面食らってしまっていた。

 そのことを素直に話すと、サーラはくすくすと笑う。

「キュッリッキちゃんたちが来る前日にね、いーっぱい泣いたのよ」

 ビールを飲みながら、サーラは星空を見やる。

「多分ね、これから泣く日が増えるんじゃないかしら。今はまだ、本当の意味で実感が沸いていないんだと思う。昨日はリュリュちゃんから念話で知らされて、びっくりしてるうちに勢いで泣いちゃったの。レンミッキもそうだったし、つられ泣き、みたいな」

 寂しげに微笑み、再びビールを一口啜った。

「あの子、キュッリッキちゃんに優しかった?」

「うん、とってもとっても、優しくしてくれたの。いっぱい優しくしてくれて、いっぱい愛してくれた…。ベルトルドさんに出会う前、アタシ、愛してるって言われたことなかったの。だから、とっても嬉しかった」

 両手でグラスを握り、キュッリッキは俯いて表情を曇らせた。

「アタシ、生まれてすぐ捨てられちゃったから、お父さんとかお母さんて、どんなものか知らないの。でも、ベルトルドさんってお父さんみたいな感じで。リッキーって抱きしめてくれると、凄く心地よかった」

「ああ……本星であった、召喚スキル〈才能〉を持つ子を捨てたって事件の…」

 キュッリッキは小さく頷いた。

「あの事件は、本当に今でも腹立たしいわ。本星の連中の非道っぷりは、ヒイシに住むアイオン族の間では、非難ゴーゴーだったのよ」

 ムスッと顔をしかめたサーラに、キュッリッキはビクッと引く。

「アイオン族の美意識過剰ぶりって言うけど、あのことは、美意識なんかじゃないわ。人間として、親として、言語道断の振る舞いよ! 翼に障害がある子を守ることもせずに捨てるなんて……。とても酷いことをされたのに、こんなに良い子に育ってくれて」

 サーラは手を伸ばし、キュッリッキの頭を優しく撫でた。その手のぬくもりが温かくて、キュッリッキは甘えるように目を閉じた。

「アタシが変われたの、ベルトルドさんのおかげなの。ベルトルドさんが愛をくれたから、だからアタシ、メルヴィンに恋ができたの。人を好きになることができた」

「女好きのあの子にしては、上出来ね」

 自慢げにそう言って、サーラとキュッリッキは小さく笑った。

 サーラはベルトルドとキュッリッキが出会ってからの、日々の出来事を聞きたがり、キュッリッキは記憶をたどりながら丁寧に話した。時折サーラは茶化したり笑ったり、怒り出したりと、二人は沢山話を楽しんだ。

「私の知らないベルトルドを沢山聞けて、今日はいい気分。ありがとう、キュッリッキちゃん」

 キュッリッキは照れくさそうに、にっこりと笑った。

「キュッリッキちゃん、その胸の傷痕、自分でやったのね?」

 突如真顔になったサーラに言われ、キュッリッキは咄嗟に服で隠そうとした。

「あの子がキュッリッキちゃんにしたことは、一生許さなくていいのよ。むしろ、一生かけて責めて欲しいわ。ただ……、そこまでしなくちゃならない、そうまで追い込まれていたのかと思うと、哀れでならない。母親としてあの子の心を救ってやれなかったことは、私の一生の後悔よ。本当に、ごめんなさい」

 キュッリッキは小さく頷き、俯いた。

「31年……。あれからもう31年もの月日が経って、やっと解放されたんだわ…」

 リューディアへの想いからも、アルカネットの束縛からも。死ぬことで自由になれた一生は、なんと切なく虚しいのだろう。それでも、ベルトルドなりに生き抜いたのだと、サーラは強く頷いた。

「葬儀の時ね、ベルトルドさんとアルカネットさんの幽霊が出てきたの。でね、二人共笑顔で旅立っていったよ」

「そう……」

 サーラは悲しげな笑みを、キュッリッキに向けた。

「私もその場にいたら、きっと鉄拳を顔のど真ん中に見舞っていたでしょうね」

「えっ」

 霊体に攻撃をあてるなど、と思いつつ、サーラの拳ならきっと当たるかもしれない。そう思ってキュッリッキはガクブルしながら生唾を飲み込んだ。

 悲しさ半分、色々プラス怒り半分、というのが、今のサーラの心境だろうとキュッリッキは思った。

「ふぅ~、今日は星空も大盤振る舞いね。ほら見て、星の大河もあるでしょう」

 二人はデッキチェアに深々と寝そべり、空を彩る星星を見つめた。

 濃紺の夜空に煌く星たちは、皇都から見るよりもずっと明るく綺麗で、大きさも輝きも全然違っていた。光が雨のように降ってきそうで、それを想像すると自然と笑みがこぼれた。

「レディたち、お風呂が沸いたよー。一緒に入ってきたらどうかな」

 家の方からリクハルドが叫んでいた。

「そうね、一緒に入りましょうか。ウチのお風呂結構広いのよ」

「はいっ」



 キュッリッキとメルヴィンは、とても広いゲストルームに案内された。

 大きな窓が海に面していて、開け放たれた窓からは、潮騒が絶えず聞こえていた。

 ベビードールの寝巻きに着替えたキュッリッキは、蚊帳をめくりあげてベッドに飛び込む。洗いたての枕カバーやシーツからは、おひさまの匂いがした。

「気持ちがいいの~」

 うつぶせになってはしゃぐキュッリッキを見て、メルヴィンも微笑んだ。

「ベルトルドさんは、ここで生まれ育ったんだね。青い海で遊んで、明るい星空を見上げて。リクハルドさんの美味しいご飯を食べて、サーラさんに怒られて」

「そうですね」

 キュッリッキの横に寝そべり、メルヴィンは天井を見上げた。

「サーラさんと話してるとね、ベルトルドさんと話してるみたいな気分になっちゃった。ベルトルドさんって、サーラさん似なんだね」

「リクハルドさんにもよく似てましたよ……とくにこう、女性関連の話題になると、物凄く親子だなあ……と」

 二人は顔を見合わせ、そして吹き出した。

「ベルトルドさんは、両方に似てるんだね」

「紛れもなく親子ですね、ホント」

 ひとしきり笑うと、二人はなんとなく黙り込んだ。

 小さな灯りがなくても、星と月明かりでこんなにも室内は明るい。穏やかな波の音も、聞いていると癒される気分になった。

「アタシね、本当はここへくるの、ちょっとイヤだったの…」

 メルヴィンに腕枕をしてもらいながら、キュッリッキはメルヴィンにぴったりと寄り添った。

「ベルトルドさんやアルカネットさんのことを思い出して、涙が止まんなくなっちゃうって思ったから。いろんなこと思い出して、頭グチャグチャしちゃうって……でもね、来てよかった」

「リッキー…」

「サーラさんにいっぱい話をして、聞いてもらったからかな。ちょっとだけ心が軽くなった気持ちがするの」

「”母親”というものに、安心感を持ったんでしょう、多分ですが」

「……うん、そうだね。きっと、そうだと思う」

 ベルトルドやアルカネットとは違い、もっとキュッリッキの気持ちに寄り添ったアドバイスや回答をしてくれた。女同士というのもあるし、サーラは母親という立場に身を置くから、母親としての視点から言ってくれたこともあるだろう。

「そっかあ…あれが、お母さん、ていうものなんだね」

 父親も母親も、キュッリッキはどんなものか知らない。自分を捨てる存在だとしか認識していないからだ。

 いつか、自分も母親という存在になる日がくるのだろうか。もしそうなったとき、自分は母親として、やっていけるのだろうか。

 今は自信が持てそうもなかった。

「さあ、寝ましょう」

「うん。おやすみメルヴィン」

「おやすみなさい」

 メルヴィンはキュッリッキをしっかり抱きしめ、頭にキスをして目を閉じた。



 ――さあリッキー、目を覚ましてごらん。



 寝返りをうったところで、メルヴィンは目を覚ました。

 暫く薄ぼんやりとした目で天井を見上げていたが、隣に寝ているはずのキュッリッキがいないことにようやく気づいた。

「リッキー?」

 身体を起こして、蚊帳越しに室内を見回す。

 窓から白い光が柔らかく射し込んでいて、室内を薄く照らしているが、キュッリッキはいなかった。

 メルヴィンはベッドから降りると、ズボンを履いてシャツを羽織って前も留めず、部屋を飛び出した。

 階下へ降りてリビングを見てもいない。お風呂好きなのを思い出して、風呂場へ行くがそこにもいない。

 散歩に出かけたのかと思って外に出る。

 夜が明けてきて、外は穏やかに明るさに満ちようとしていた。

 適当にあちこちを歩き回り、ビーチにたどり着いたとき、ようやくキュッリッキを見つけた。そして声をかけようとして、メルヴィンは動きを止めた。

 キュッリッキは海の方を向いていて、じっと佇んでいる。細い足首が、波の中に沈んでいた。

 こちらに背を向けているが、その後ろ姿にメルヴィンは心底驚いた。

 大きく開かれた、純白の翼。陽の光に照らされて、不可思議な輝きを放つ虹色の光彩。

 右に開いた大きな翼。そして、左に開かれた、小さな翼。

 やがて、何かの気配を感じたのか、キュッリッキはゆっくりと振り向いた。

「メルヴィン…」

 キュッリッキは戸惑うような笑みを、メルヴィンに向けた。

「あ、あのね…、急に背中がムズムズして痒くなってきて、目が覚めちゃったの。それでね、どんどんムズムズするから、外に出てきてね、それで、それで…」

「リッキー」

 メルヴィンはキュッリッキに駆け寄ると、ギュッと抱きしめた。

「あのね、翼がね、あのね、あのね」

「生えてます。白くて、小さくて可愛らしい翼が」

「うん…」

 感極まって、メルヴィンは全身が震えた。

 キュッリッキはまだどことなく呆けたように、自分の身に起こったことを理解できずにいるようだった。

 以前見たときは、羽をむしり取られ残骸のような形をしていた左側の翼。しかし目に映る左側の翼は、小さくて子供が生やすような大きさだが、紛れもなく美しい白い翼なのだ。

「どうやら、無事生えたようね」

 ハッとして二人は声の方を向く。笑顔のリュリュが立っていた。

「無事生えたって、どういうことですか?」

「小娘の、その左に生えた翼のことヨ」

 キュッリッキは不安そうにリュリュを見つめた。

「以前、ナルバ山の遺跡で大怪我をしたでしょ」

「うん」

「怪我も治ってきて、一度ハーメンリンナの病院に、検査入院をしたことがあったわね。その時に、ヴィヒトリがちょちょいと治しちゃったの」

「……治し…た?」

「そうよん。治してくれたのよ」

「誰にも、治せないんじゃないの…?」

 怪訝そうに言うキュッリッキに、リュリュは微笑みながら首を横に振る。

「ちゃんと治してもらってるじゃない」

「だ…だって…」

 それなら、自分はどうして捨てられたのだろうか?

「あーたの両親が、医者にも見せなかったってことネ。もし見せていれば、もっともっと早い段階で、治っていたかもしれないっていうのに」

 ますます複雑な表情を浮かべ、キュッリッキは足元に視線を落とした。

「ベルがね、言ったのよ。”リッキーが本当に幸せになるためには、どうしても片方の翼を治してやらないといけない。リッキーの不幸の原因を取り除いてやらないと、あの子には一生、本当の意味での幸せは訪れないんだ”ってね」

「ベルトルドさんが…」

「ナルバ山での怪我の治療をさせる一方で、左側の翼の原因をヴィヒトリに調べさせて、それで検査入院の時に、傷痕の治療をしながら背中もちょろっといじったのよ」

 リュリュはくねっと腰を曲げて、そばの木の幹にもたれかかる。

「いつ結果が反映されるか、ヴィヒトリも判らないって言ってたわ。1年先か2年先か。でもどっこい、案外早かったわね」

 くすくすっとリュリュは笑った。

「ベルはいつもあーたのことを考えてたわ。その翼は、ベルからの贈り物よ。おめでとう小娘、良かったわね。もう片翼じゃない、両翼になったのよ」

「おめでとう、リッキー」

 大きく見開いた目から、大粒の涙が沢山沢山、波の上に落ちた。信じられない、といった顔で、メルヴィンを縋るように見上げる。

「アタシ、空を飛べるようになるの?」

 憧れた、あの、高くて青い青い空。風を受け、鳥のように羽ばたきたいあの大空へ。

「ええ」

「本当に?」

「はい」

 メルヴィンは嬉しそうに返事をした。

 涙目でメルヴィンを見上げながら、キュッリッキの脳裏には、幼い頃の日々が蘇っていた。

 片方の翼がないことで、同族から心無い仕打ちを受け続け、虐められてきた。

 守ってくれる大人もいない、蔑みと冷たい目が常に向けられていた。鏡に映る自分を見つめ、いつか右側と同じような翼が生えてくると信じていた。でもそれもいつか諦めとなり、翼のことを隠して孤独に生きてきたのだ。

 翼は嫌な思いしかもたらさない。全ての不幸の象徴だった。

 そんなみっともないと言われ続けた片翼の自分を受け入れて、愛してくれた最初の人はベルトルドだった。

 いつも度を超すほどの愛情で、優しく包み込んでくれた。

 今はメルヴィンと結ばれて、身も心も幸せだ。不幸な事なんて、もう何一つないと思っていた。――その筈だったのに。

 片翼であることは、心の奥底でずっと錘となって、常に苛まれていた。これまでの不幸な生い立ちの、最大の原因だからだ。メルヴィンと幸せになったとは言え、まだこんなに大きくて忘れることもできない傷として、心に巣食っているのだから。

 ベルトルドには、そのことまでもお見通しだったのだ。

「ベルトルドさん…」

 キュッリッキはメルヴィンのシャツをぎゅっと握り締め、もっと涙をあふれさせる。

「ベルトルドさん、ベルトルドさん」

 ありがとう、ありがとう、ありがとう。心の中で何度も何度も、繰り返しありがとうを言った。感謝と恋しさと、会えない寂しさで、心の奥底から奔流のように溢れ出して止まらない。

 異性としての愛情はもてなかったが、今でもこんなに大好きでたまらないと痛感する。

 あとはもうメルヴィンの胸に顔をうずめて、ひたすら泣きじゃくった。

「リッキー…」

 メルヴィンはキュッリッキを強く抱きしめ、頭をそっと撫でてやった。

 まだまだベルトルドにはかなわない、そうメルヴィンは思って自嘲する。

 キュッリッキと出会ってからは、ベルトルドと同じだ。恋をして、愛を深める期間はメルヴィンのほうが若干遅い。しかし、今は愛する深さと重みは負けないつもりだった。

 心の奥深くでキュッリッキを苦しめる元凶に、気づいてやれなかったことを、悔しく思うし自分が情けない。たとえサイ〈超能力〉があったとしても、果たして自分は気づいてあげられたのだろうか。

 まだまだ自分は人間として、男として、キュッリッキの恋人として、未熟なのだと改めて思い知らされた。

 最後の最後まで、ベルトルドに完敗したような気分にさせられてしまう。でも、これまでのキュッリッキを救ったのはベルトルドでも、これからのキュッリッキを愛し、守り続けていくのは自分だけなのだ。

 自分のやり方で、自分にしかできない愛し方で、この先ずっとキュッリッキを守り続ける。そう決意を新たにし、メルヴィンは誓うように天を仰いだ。

 リュリュは二人に優しく微笑み、そして空を見上げる。

「よくやったわ、ベル。あーたの想い、ちゃんと花開いたわよ。これであーたの罪が許されるわけじゃないけど、好感度は戻してあげてもよくってよ」 


最終章:永遠の翼 ベルトルドからの贈り物(最終話) 終わり



135 最終章:永遠の翼 シャシカラ島の家族

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category: ◆ALCHERA-片翼の召喚士-

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ALCHERA-片翼の召喚士- 135 最終章:永遠の翼 シャシカラ島の家族 

 

御大たちのご両親が登場です。そして、次回で最終回。の予定。

今月中に書き上げられるかな・・・頑張って書こう!




ALCHERA-片翼の召喚士-
最終章:永遠の翼  シャシカラ島の家族 135



 明るい陽の光に起こされて、メルヴィンはゆっくりと目を覚ました。プライベートバルコニーのほうから、室内いっぱいに陽光が射し込んでいる。寝る前にカーテンを閉め忘れたようだ。

 腕の中を見ると、キュッリッキはまだ眠っていた。とても穏やかな寝顔だ。

 無防備で愛らしい寝顔を見つめ、起こさないようにじっとする。

 リュリュが手配してくれたこの部屋は、この船で最上級のスイートルームだった。とても船の中とは思えないほど、贅を凝らした内装である。一介の傭兵風情が泊まれるような部屋ではないが、キュッリッキと一緒になるということは、こうした上流環境もセットでついてくるということになるのだ。

 一昨日見せられた書類の中身を思い出し、メルヴィンは軽いめまいを感じてため息をついた。

「う…ん…」

 身じろぎして瞼を震わせると、キュッリッキは目を覚ました。

「すみません、起こしちゃいましたね」

 申し訳なさそうに言うメルヴィンの顔を見上げ、キュッリッキは小さく微笑む。

「……んーん、もうそろそろ6時じゃないかな」

 サイドテーブルに置かれた時計を見て、メルヴィンは苦笑する。

 黄金でできた針は、まさに6時を指そうとしていたからだ。

「リッキーの体内時計は、ほんと正確ですね」

「えへへ、習慣だもん」

 キュッリッキはくすっと笑い、そして自分からメルヴィンにキスをした。

「もうちょっと、こうしていたいなあ~」

「かまいませんよ」

 嬉しそうに微笑むと、キュッリッキを抱き寄せ、額に口付ける。

 二人はしばらく抱き合いながら横たわっていたが、突然ドアをノックする音がして顔を見合わせた。

「オレが出てきます」

 メルヴィンは身体を起こすと、裸の上にバスローブを羽織ってドアを開けた。

「オハヨウ、よく眠れたかしらん?」

「おはようございます。とてもよく眠れました」

 すでに身支度を整えているリュリュだった。

 その姿をじっと見つめ、メルヴィンは目を瞬かせる。

「ん?」

「あ、いえ…その…」

「なぁによぅ?」

「……私服も男物を着るんですね…」

 リュリュは表情を動かさず、メルヴィンの頭をチョップした。

「オカマが男物着ちゃ悪い?」

「い、いえ、そんなことは」

 淡い若草色のコットンの半袖シャツに、白いスラックス姿である。ごく普通の、夏場の男性の服装だ。

 いつも化粧はバッチリしているが、女性の服装をしている姿は一度も見たことがなかった。

「外見で性別を主張することはヤメたの。ベルたちとハワドウレ皇国の学校へ進学する頃にね。どんなに外見を変えようと、身体は男だもの。でも、アタシは女よ。自分でそのことがちゃんと判っていればいいわ。メイクは欠かせないけどネ」

 なるほど、とメルヴィンは生真面目な顔で頷いた。

「性転換しようかとだいぶ悩んだンだけど……て、ンもう、話が脱線しちゃったじゃない。7時には朝食が食べられるから、支度していらっしゃい」

「判りました」

「それとあーた」

「はい?」

「昨夜は小娘に手を出さないようにって言ったでしょ」

 バスローブからはだけて見える鍛えられた逞しい胸に視線を固定させ、リュリュは叱るように言う。

「ちっ、違いますって! 暑いので裸で寝ていただけです。やってません!」

 顔を赤らめて慌てるメルヴィンに、リュリュはくすくすと笑う。

「あーたのアレ、ベルのモノに匹敵するほど立派だから、あんまり毎日やると、小娘壊れちゃうからホドホドにネ」

「リュリュさんっ!」

「ハイハイ。早く着替えていらっしゃいね」

 からかうような笑い声を立てて、リュリュはダイニングのほうへ歩いて行った。

 渋面でリュリュを見送って部屋に戻ると、ベッドの上に座って、キュッリッキが首をかしげていた。

「何を話していたの?」

 たっぷり間を置いて、メルヴィンはガックリ肩を落とした。

「……ええと……朝食は7時からだそうです」

「ふにゅ?」

「あと30分くらいですね、着替えましょうか」

「うん…」

 思いっきり疲れた表情で言うメルヴィンを、キュッリッキはひたすら不思議そうに見つめていた。



 着替えてダイニングへ行くと、ブッフェで好きなものをトレイにのせ、バルコニーの席に3人は座った。朝でも陽射しが強いので、白い布の張られた大きな傘がさされていた。

「小娘にこれ渡しておくわ」

 そう言ってリュリュは日傘を渡した。

「すでにもう陽射しの強さで判ると思うけど、火傷しちゃうから日傘さしてなさいね。あと、UVケアの日焼け止めも、ちゃんと塗っておくのよ」

「うん、ありがとう」

 真夏のような気温になっていて、ノースリーブのワンピースの上に、薄手のカーティガンを羽織って陽除けをしていた。

「あーたは平気そうね」

 メルヴィンの方を見て、リュリュは鼻を鳴らす。

「オレは大丈夫です」

 帰る頃には真っ黒に日焼けしていそうだと、メルヴィンは苦笑した。

「ゼイルストラは1年中こんな暑さよ」

「よく生きてられますね…」

 手でパタパタ顔を扇ぎながら、メルヴィンがげっそりと言うと、リュリュはくすくすと笑った。

「住めば都よ。ほら、アーナンド島が見えてきたわ」

 リュリュが進行方向を指すと、煌く光をまぶした青い海の向こうに、大きな島が見えていた。

「あれがアーナンド島。ゼイルストラ・カウプンキの中心島よ」



 豪華客船が港に接岸すると、続々と沢山の人々が下船していった。

 メルヴィンに手を引かれながら桟橋を降りきったとき、素っ頓狂な声がかけられて、キュッリッキは目を瞬いた。

「リューディアちゃん!?」

 ドスドスと駆け寄ってきた女性は、キュッリッキの双肩を掴むと、グイッと顔を突き出してマジマジとキュッリッキを見つめた。

「ンもー、早とちりしないでよ、サーラおばちゃん」

「リュリュちゃん!」

 女性はキュッリッキから離れると、すかさずリュリュに抱きついた。

「久しぶりねサーラおばちゃん」

「ホントだわ、何年ぶりかしら。すっかりいい大人になっちゃって」

「おばちゃんは相変わらず、若くて美人ね」

「おほほ、ありがとう」

 面食らって目を瞬いているキュッリッキとメルヴィンを向いて、リュリュが女性の両肩に手を置く。

「あーたたちに紹介するわね。こちらはサーラ、ベルトルドのお母さんよ」

「は、初めまして。メルヴィンと申します」

 メルヴィンは鯱張って頭を下げる。やけに若いなと、内心つぶやきながら。

「キュッリッキです」

 以前ベルトルドの記憶で見せられたサーラの姿と、ほとんど変わっていない。

 アイオン族は成人すると、外見の老化がとても遅くなる。ヴィプネン族と比べると、20歳前後の開きが出てくるのだ。

 快活そうな美人で、ベルトルドと同じ髪の色をしていて、オシャレに短くカットしている。こんな強い陽射しの強い国で暮らしているだろうに、肌は日焼けもしておらず綺麗に白い。

 半袖のラフなシャツにデニムの短パンを履いている姿は、ほっそりとしているが躍動的で、じっとしていることを由としない雰囲気をまとっていた。

 こうして改めて見ると、ベルトルドは母サーラに似ているような気がすると、キュッリッキは思った。

「いきなりごめんなさいね。初めまして、サーラです。遠くからようこそ」

 明るい声とにっこり笑う顔は無邪気で、ますますベルトルドとよく似ていた。

「リュリュちゃんたちがくるって連絡もらってたから、迎えに来たのよ。みんな島で待っているわ。行きましょう」

 笑顔のサーラに促されて、3人は頷いた。



 サーラの操縦するクルーザーに乗って、4人はシャシカラ島を目指した。

 真っ青な空と紺碧色の海。船がたてる波しぶきは、太陽の光に反射して白銀色に煌き、今が秋だという雰囲気は微塵も感じない。何もかも色が濃くて明るさに満ち溢れている。

 大きさが様々な小島の間を縫うように、クルーザーは突き進んでいた。

「懐かしい風だわあ」

 風で帽子が飛ばされないように両手で押さえ、リュリュは気持ちよさそうに息を吸った。

「10年くらい前かしら? 一度戻ってきたっきり、ベルトルドもアルカネットちゃんもリュリュちゃんも、全然里帰りしてこないんだから」

「皇国の要職に就いてるから、色々忙しくって」

 リュリュは短く言うにとどめた。実際目の回るような忙しい日々で、仕事に忙殺されていたのもある。ベルトルドたちの計画の妨害工作もまた、忙しかったのだ。

「それにしても、キュッリッキちゃんは本当にリューディアちゃんにそっくりね。クスタヴィもカーリナも、びっくりしちゃうわよ」

「そうねん…。――元気にしてるかしら、あの二人」

「ええ、見た目は随分老け込んだけど、元気に働いているわよ」

 二人の会話を黙って聞きながら、キュッリッキは以前ベルトルドに見せられた過去の記憶の中で、リューディアが死んだあとのリュリュ親子の、悲しい場面を思い出していた。

 リュリュの口調やサーラの表情から察するに、あれ以来あまり良好な関係には戻れていないようだ。

 親に酷い言葉と態度で拒絶される悲しみを、リュリュも味わっていたのだと思うと、キュッリッキは自分のことのように胸を痛めた。

 捨てられたわけではないから、リュリュには生まれ故郷がある。しかしこうして不本意な帰郷を果たすことになり、リュリュもまた沢山の複雑な想いを背負っているのだと、キュッリッキはそのことを、ようやく思いやれるようになっていた。

 他愛ないお喋りをしながら、クルーザーはシャシカラ島へたどり着いた。

「やあ、おかえりサーラ」

 島の小さな港で、背の高いハンサムな男が笑顔で手を振っていた。

「ただいまリクハルド」

 サーラも笑顔で手を振り返し、器用にクルーザーを接岸させる。

「みんな家に集まってるよ。――おかえりリュー君、遠いところ疲れただろう」

 手を差し出しながら、リクハルドがリュリュを出迎えた。

「お久しぶりね、リクハルドおじさん。改めて来ると、ホント遠いわ、ここ」

 苦笑しながら手を握り返し、リュリュは後ろを振り向く。

「お客様を二人連れてきたわ。おじさんの美味しい昼食が楽しみね」

 次にメルヴィンが名乗りながら降りて、最後にキュッリッキが降りる。

「えっ!? リューディアちゃん???」

 青灰色の瞳がこぼれ落ちそうなほど目を見開き、リクハルドはキュッリッキの顔を食い入るように見つめた。

「違うわよ、ンもう。夫婦揃っておんなじ反応で笑っちゃうわね」

「えっと……キュッリッキです」

 どんな表情をとればいいか困りながら、キュッリッキは肩をすくめ名乗った。

「小娘、あと4人分同じリアクションが待ってるから、覚悟なさい」

「……」



 リクハルドに案内されて、彼の家へと向かう。

 ログハウスのような、大きくて素敵な家が出迎えてくれた。

「さあ、遠慮しないでくつろいでくれ」

 ドアを開けてスタスタ入っていくリクハルドに続いて、3人は家へと入る。

 家の外観は見たままの丸太を積んだようなものだったが、内装は真っ白な漆喰を壁に塗り固め、天井などはログの雰囲気を生かした作りになっている。濃い緑の観葉植物が所々に置かれて、目に優しく明るく綺麗だ。

 広々としたリビングに通された3人は、新たな4人の人物に迎えられた。

「リューディア!?」

 いの一番に素っ頓狂な声を上げたのは、白い毛が混じった頭髪の男だった。そして、それに呼応するかのように、次々に「リューディア」と声があがる。

「チガウわよ、パパ」

 ずいっと身を乗り出し、片手を腰に当てたリュリュがぴしゃりと言い放つ。

「小娘も困ってるでしょ。この子はキュッリッキっていうの。そしてこっちはメルヴィンよ」

 紹介されて、二人は軽く会釈した。

「そ……そうか…」

 驚きの表情を浮かべたまま、男は自らに言い聞かせるように何度か頷いた。

「紹介するわね。こっちがアタシのパパでクスタヴィ、ママのカーリナ。こっちはアルカネットのパパのイスモ、ママのレンミッキよ」

 イスモとレンミッキは、ベルトルドの記憶で見た姿とあまり変わっていない。二人もまたアイオン族だ。

 一方リュリュの両親は、すっかり年老いている。しかし、記憶で見た若い頃の面影は健在だった。

 紹介された4人は動揺はそのままに、それぞれ短く挨拶をして座った。

「さあ、3人とも座りなさい」

 リクハルドがすすめてくれたソファに、3人は並んで座った。

 丸いガラスのテーブルを挟んで、7人は向かい合って黙り込んだ。相変わらず両親たちはキュッリッキをマジマジと見つめ、その視線に落ち着かない気分で、キュッリッキは内心ため息の連続だ。

 延々会話の糸口が見つからないまま、静かなリビングには波の音と、時折小鳥のさえずる声が聞こえてくるだけだった。

「喉が渇いただろう。俺特製のスペシャルハーブアイスティーをどうぞ」

 大きなグラスに琥珀色のアイスティーがなみなみと注がれ、氷がカランっと音を立てて涼しげだ。

 リクハルドは3人の前にそれぞれ置くと、一人用のソファに座る。

「お待たせー……って、なあにこの辛気臭い雰囲気は」

 サーラはリビングの雰囲気にちょっとひきつつ、リクハルドの座るソファの肘掛に腰を下ろした。

「まあ、アタシたちが来たのは、辛気臭い用事でなんだケド…ね」

 リュリュは軽く肩をすくめ、そして足元に置いてあったカバンの中から、二つの小さな柩のような箱を取り出し、テーブルに並べた。

「察しは付いていると思うケド、こっちはベルトルド、こっちはアルカネットの遺灰が入っているわ」

 サーラ、リクハルド、イスモ、レンミッキの4人は、形容しがたい表情で、我が子の遺灰の収められた箱を見つめていた。

 ベルトルドとアルカネットが死んだ旨は、あらかじめサーラとレンミッキに伝えてある。詳細は報せていないが、葬儀の都合で連絡する必要があったのだ。

「そう…。こんなになっちゃったのね…」

 サーラはベルトルドの柩を手に取ると、そっと頬ずりした。

「俺たちより早く逝くんだろうな、とは、もうだいぶ前から漠然と思っていたんだよ。片方の翼を引きちぎって、リューディアちゃんの墓前に供えたって姿を見たときに」

 リクハルドは悲しげに顔を歪め、我が子の柩に片手を乗せる。

「死ぬなら好きな女の上で励んで死ねよ、って言い含めておいたんだけどなあ。違うんだろ?」

「ええ、残念ながらチガウわ…」

 悲しみの表情と言動が一致しないリクハルドを見て、メルヴィンは内心、

(親子だ……)

 と、ため息をついた。

「アルカネットは、どの人格で死んだのかしら…?」

 目に涙をいっぱい浮かべたレンミッキが言うと、リュリュはキュッリッキを見た。

「えと、優しいアルカネットさんだよ」

 アルカネットが多重人格であったことは、キュッリッキはまだ聞かされていない。しかし人格、という言い方で、薄々察しが付いていた。

「そう……」

 涙をこぼしながら、レンミッキは我が子の柩を胸に押し抱き、イスモは妻の肩を抱き寄せ泣いていた。

「強大な魔法スキル〈才能〉を持ち、訳のわからない人格が色々出てきて、怖かったんだ…。自分の子だというのに。だから家を出て遠い学校へ進学すると聞いたときは、正直ホッとしてしまった。――手元に置いて育てた時間のほうが短いのに、やっぱり悲しいな」

 後から後から、涙がこぼれて服を濡らしていく。

 イスモの本音は、リュリュやサーラ達にも理解出来た。たとえ我が子だとしても、深い部分まで理解しあうのは難しい。ずっと離れて暮らしていたからなおさらだ。こんな灰の姿で帰郷されてしまい、イスモもレンミッキも、沢山の無念と後悔を噛み締めていた。

 リュリュはゆっくりと、これまでの経緯を語りだした。

 ベルトルドとアルカネットの両親には、聞く義務がある。そして、包み隠さず報告する義務もまた、リュリュにはあった。

 一連の事件の始まりは、このシャシカラ島から起こったのだから。



 リュリュから話を聞き終えた6人の親たちは、様々な表情をたたえて黙り込んでしまった。

「オレたちのリューディアの死が、二人をそこまで追い込んでしまったなんて…」

 真っ先に口を開いたクスタヴィは、沈んだ表情で、手にしていた古ぼけた写真をそっと撫でる。

「気にすることはないのよクスタヴィ。ベルトルドもアルカネットちゃんも、もう立派な大人よ。自分たちで選んだことで死んだのなら、本望でしょう」

 どこか拗ねるような顔をしながら、サーラはきっぱりと言い切った。

「それに、なんの関係もなかったキュッリッキちゃんを巻き込んで、辛い目に遭わせてしまったことを、あの子の親として心からお詫びするわ。本当にごめんなさいね」

 サーラに頭を下げられ、キュッリッキは小さく首を横に振った。

「大丈夫なの。ベルトルドさんもアルカネットさんも、謝ってくれたし。今はメルヴィンが一緒にいてくれるから、もう大丈夫」

 キュッリッキはメルヴィンの手をきゅっと握ると、サーラに柔らかく微笑んだ。そんなキュッリッキの顔を見て、サーラは救われたように微笑み返し、何度も頷いた。

「あの子がここにいたら、ジャンピング・ニーパットからムーンサルトプレス、とどめにパイルドライバーね」

「あらあらサーラちゃん、逆エビ固めも使っておかなきゃ…」

 握り拳で物騒なことを言うサーラに、レンミッキが暗い笑みを浮かべて参戦する。

「ベルトルドとアルカネットが生きてここに帰ってきたら、100パーセント実行されるところだよ」

 小声でリクハルドが言い、イスモも同意するように深く頷いた。

「深い血のつながりを感じるかも…」

 薄笑いを浮かべ、キュッリッキは呟いた。ロキの血は、この二人の母親が継いでいるのだから。

「ところでリュリュ、今日は泊まっていけるんだろう?」

 遠慮がちにクスタヴィが割って入ると、リュリュは壁にかけられた時計に目を向ける。

「そうねえ……今から急げば船に間に合うから、泊まっていく必要はないかしら」

「そんな」

 カーリナが悲しそうに声を上げると、

「もう! 泊まっていきなさい3人とも!」

 ずずいっと身を乗り出し、サーラが奮然と言う。

「リュリュちゃんは自分の家へ、キュッリッキちゃんとメルヴィン君は、ウチに泊まってちょうだいね」

「皇都復興やら他にも業務があ…」

「いい加減もう、許してあげなさい!」

 両手を腰に当てて、サーラは深々とため息をついた。

「あれからもう31年も経ったのよ。二人はずうっと反省しているし、それに私たちも老いたわ。外見はどうあれ、寿命はヴィプネン族もアイオン族も、同じなのよ」

 クスタヴィとカーリナは、縋るようにリュリュを見つめた。

「ベルトルドもアルカネットちゃんも死んでしまった。この島の子供で生きているのはリュリュちゃん、あなただけになってしまったわ」

「サーラおばちゃん…」

「全部でなくていいの、ちょっとずつ話をして、今度帰ってくるときに笑顔でただいまって言えるように、今日から話し合っていきなさい」

 リュリュはちらりと両親を見て、小さく嘆息した。そしてサーラを見上げ、苦笑し頷く。

「そうね、そうするわ」

 サーラはにっこりと笑った。

「でも、明日には帰らせて。アタシほんとに仕事が山積みなのよ、ベルとアルのせいで」

「そのことはもう、ごめんなさいね。この箱、生ゴミ捨て場に埋めてきていいわよ」

 我が子の遺灰の詰まった箱を取り上げ、リュリュに差し出す。

「……さすがにお墓に埋めてあげて、サーラおばちゃん…」

「あら、そう? 残念ねえ」

(やっぱり親子だ……)

 メルヴィンは背中で汗をかきながら、内心げっそり呟いた。

「さあさあみんな、こっちへおいで。ベルトルドとアルカネットのお別れ会をしよう」

 キッチンからリクハルドが大声で呼んだ。

「昨日から沢山料理を仕込んであるんだ。沢山食べて、沢山飲んで、懐かしい話でもしようか」

「そうね、そうしましょ」

 サーラはキュッリッキとメルヴィンの手を取ると、ニッコリと笑った。

「さあ、いらっしゃい」


最終章:永遠の翼 シャシカラ島の家族 つづく



134 最終章:永遠の翼 葬儀のあとで

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category: ◆ALCHERA-片翼の召喚士-

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ALCHERA-片翼の召喚士- 134 最終章:永遠の翼 葬儀のあとで 

 

ちょっと前から、右カラフの整理整頓をしています。著作表示のとこなど、文字色変えたけど見栄えが悪いので、キャラアイコンを入れて見やすくしてみて、カテゴリーも整理しました。

小説は専用の目次ページを作って、そこへ導線を引いているんだから、カテゴリーを複雑にしたってしょうがないよなあと。

カテゴリーの整理をする気になったのは、もうじき【 ALCHERA-片翼の召喚士- 】が終わり、新作などを追加していくうえで、また縦にびろーんと長いのもわかりづらいかなって思ったから。それに、案外TOP固定記事からのリンクに慣れてるヒトが多いらしいし。ことこうした小説掲載ブログだと。ゲームのプレイ日記になると、固定記事ってほとんどナイけど(笑)

あと2話くらいで終わるかな、て感じです。




ALCHERA-片翼の召喚士-
最終章:永遠の翼  葬儀のあとで 134



「っとに、あのオヤジどもおおおおおおおおお!」

 握り拳を作り、片足をテーブルに乗せ、椅子の上に立つザカリーが吠えた。

「なぁにが『さらばだ! 愛すべき馬鹿ども!!』だってゆー!」

「いやあ~、最後の最後まで、ベルトルド様らしくって、貫いてたよねえ~」

 テーブルに頬杖をつきながら、ルーファスが感慨深げに何度も頷く。

「しんみり、とか、感傷に浸る、て気分が、一瞬にして吹っ飛びましたね」

 簾のように長い前髪を払い除け、カーティスは呆れたように呟いた。

 ライオン傭兵団は、葬儀のあったハーメンリンナからキティラの屋敷に戻ってくると、食堂に集まって愚痴大会を催していた。

 使用人たちが軽食や飲み物などを運んできて、更に酒も追加されて気分はエキサイトだ。

「まぁ~さぁ~、おっさんらしぃい最後の締めくくりでえ、ブルーベル将軍腹を抱えて笑ってたわよぉ」

 綺麗な形の爪に真紅のマニキュアを塗りながら、マリオンがケラケラ笑いながら言う。

「あんな状況の中で笑ってられんのは、将軍くらいなもんだろう。神経が丸太並だからよっ」

 ビールをひっかけながらギャリーが言うと、食堂のあちこちから頷きが返ってきた。

 葬儀の中でキュッリッキが召喚の力を使い、呼び出した巨人には驚愕ものだった。これまで様々な奇跡を見せてくれたり、フェンリルやフローズヴィトニルなどの巨狼も目の当たりにしたし、フリングホルニではロキという名の神まで見せられた。今更何を見せられたって驚くものか、そうライオン傭兵団の皆は思っていた。

 しかしあの3体の巨人には、圧倒的な威厳を感じ、キュッリッキに声をかけることすら憚られた。壇上だけ別の世界の出来事になっているような、そんな錯覚さえ覚えるほどに。

 ところがである。

 3体の巨人が消えたあと、現れたのはベルトルドとアルカネットの幽霊。

 昨日フリングホルニで死闘を演じ、その死を見届けたばかりだというのに、もう化けて出てきているから、驚くよりも何故か腹が立っているライオン傭兵団の面々だ。しかも、死んで幽霊となっても、相変わらずの高慢で傲慢な居丈高で高飛車な上から目線の態度。それがより怒りを煽っている。

 さすがに幽霊の出現は、召喚の力によるものじゃないだろう。

「あのオヤジども、死んでちょっとは悲しい、とか思って損したぜ」

「化けて出てきちゃうほど、キューリちゃんが大好きすぎたってことだね」

 ザカリーを宥めながら、ルーファスはにっこりと笑った。

 キュッリッキを抱きしめている時のベルトルドの幸せそうな顔を思い出すと、気持ちが表れすぎて、切ないほど微笑ましい。キュッリッキにだけ見せていた特別な笑顔。本当に心の底から、愛していたんだとよく判る。それだけに、キュッリッキを傷つけ、死んでいったことが悔やまれた。

「なあ、巨人やおっさんたちとキューリが話してた、飛行技術を返せってのなんだ?」

 ザカリーは思い出したように誰にともなく言うと、カーティスは頷きながら座り直す。

「フリングホルニに向かう前に、リュリュさんから今回の事件の発端を話してもらった内容は、覚えていますね?」

「ああ。リュリュさんの姉貴が飛行技術を思いついて、それで神に殺されたって」

「ええ。ベルトルド卿はその飛行技術を、人間たちの手に返してもらうために、今回のような無茶なことをしでかしました。でも、志半ばで、我々に阻まれて失敗しましたよね。しかしその意思はキューリさんに引き継がれ、キューリさんは神々に訴え、飛行技術は人間たちの手に取り戻すことができた、ということです」

 それまで愚痴や酒に意識を傾けていた皆が、カーティスに視線を向ける。

「私は魔法スキル〈才能〉を持っていますから、空を飛ぶことは自由自在です。不便を感じたことはありません。だから、魔法やサイ〈超能力〉、アイオン族以外の人間たちが、空を飛べないことを、不思議だと感じたことがないんです」

 紅茶を一口すすって、カーティスは肩で息をつく。

「1万年前の出来事、というのは、リュリュさんからの話でしか判りませんが、人間たちから飛行技術を奪って、それを不思議にも思わせないようにしていた神々の意思もよくわかりません。けど、ベルトルド卿はあらゆる犠牲を払ってでも、それを取り返そうとして皮肉にも、傷つけた少女の手により飛行技術は取り返されました」

 あれだけ溺愛していたというのに、傷つけてまで成そうとした。そして、命を賭して成就した。

 あんなことまでして取り返した飛行技術が、この先人間たちにどんな幸運や不幸を与える事になるのかカーティスには興味がない。取り返せたといっても、今日明日にすぐ結果が出てくるわけではないからだ。

 もしかすると、飛行技術はついでで、リューディアという人の願いを叶えたいだけに無茶をしたのだと、そうカーティスは解釈しようとした。あのベルトルドにそこまでさせるリューディアという存在に、カーティスは若干の興味を惹かれたが、今となっては所詮儚い人たちになっている。

 自身が死ぬことを想定して、事後処理や諸々をリュリュに託していたことが、なんとも言い難い。死ぬつもりでやっていたのかと思うと、殴りたい衝動に駆られる。

 最後まで無茶苦茶を押し付けられたが、ベルトルドがライオン傭兵団に遺してくれた金銭的なものは、計り知れない額である。それに今後リュリュが後ろ盾となり、軍や行政との渡りもつけてもらっている。仕事の依頼も変わらず困ることはなさそうだ。

 非道な態度を見せつけられた割には、細かいところまで気遣いが行き届いているから、心底憎めないのが残念だった。なんだかんだ言われながらも、ベルトルドに守られていたのだ。

 カーティスはずっと、ベルトルドが目の上のたん瘤だった。

 自分で作ったライオン傭兵団を私物のように扱い、偉そうに口を出してきて仕切るし、迷惑この上ない仕事まで遠慮の欠片もない態度で押し付けていく。断りたいのに断れないジレンマと戦う4年近くだった。

 ベルトルドと決別したくてしょうがなかった。それが、念願かなって死んで関わりを断ってくれた。それなのに心は晴れ晴れとせず、やりきれないイヤな重みがのしかかっていた。

 でも――。無事葬儀も済んだし、イララクス復興に伴ってアジトの再建も行う。明日から気持ちを切り替えていかなくてはならない。

 自分たちはこの先も、生きていくのだから。

「発端となった飛行技術云々も無事解決を見たようですし、我々はアジトの再建と仕事を再開していかなければなりません。明日から土地買収の交渉やギルドとの連絡、忙しくなりますよ」

 カーティスの笑みを受けて、皆ニヤリと口の端しを歪める。

 いつまでもしんみりムードはライオン傭兵団には似合わない。ベルトルドとアルカネットは死に、葬儀で化けて出た二人があの世へと旅立つのをきちんと見送った。今日は二人への愚痴を散々言い合って、それで彼らのことは思い出に仕舞い込む。

 皆が気持ちの向きをそう変えていたとき、ルーファスはふと気がつく。

「そいえば、さっきからキューリちゃんとメルヴィンが見えないけど、部屋にいるのかな?」

「いや、あいつらはゼイルストラ・カウプンキに行ったらしい。2,3日留守にするってよ」

 ギャリーが答えて、ルーファスは眉をひそめた。

「自由都市になんで?」

「ゼイルストラはベルトルド卿たちの故郷なんですよ。リュリュさんに連れられて行ったようです」

 お墓はそこにたてるそうです、とカーティスが言った。

「そっかあ…」

 ぽつりと呟き、ルーファスはため息をつく。

「自由都市はエグザイル・システムがなかったよね。昨日の今日で、キューリちゃん体調大丈夫かな」

「リュリュさんとメルヴィンがついてますし、疲れるでしょうが、大丈夫でしょう」

「うん、そうだね」



 ウエケラ大陸から大型客船が1日に1回、ゼイルストラ・カウプンキに向けて出航している。

 約半日の航海になるため、夕方に出航だった。これに間に合わせるために葬儀が済むと、リュリュは説明もそこそこに、あらかじめリトヴァに用意させていた荷物を持って、キュッリッキとメルヴィンを拉致るようにして、間に合うように出発した。

 正規の移動手段だと到底間に合わないので、キュッリッキに移動できる召喚を頼んでの強行軍だ。

 ほとんどギリギリに船に飛び乗った3人は、客室にそれぞれ案内されると、ベッドに沈んでしまった。

「目が回るう…」

 仰向けにベッドに寝転がっていたキュッリッキは、同じベッドに腰掛けるメルヴィンを見上げた。

「ホントですね…。強行軍にも程があります」

 キュッリッキの頬を優しく撫でて、メルヴィンは苦笑を漏らす。葬儀直後だというのに、感傷に浸るまもなく、リュリュに尻を叩かれる勢いで飛んできたのだった。

「とにかく疲れたでしょう。もうゆっくり休んでください」

 にっこりと言うメルヴィンに、キュッリッキはちょっと眉を眇める。

「寝る前に何か食べたいかも。お腹すいちゃった…」

 キュッリッキが空腹を訴えることは珍しい。ということは、余程お腹がすいているのだろう。メルヴィンは立ち上がると、入口のそばに掛けられていた案内状を見る。

「夕食は20時からだそうです。あと1時間は我慢してください」

「うにゅー」

 ころんっと向きを変えて、キュッリッキは口を尖らせた。

「いっぱい食べるんだから…」

 まだ見ぬ夕食に、キュッリッキは食欲を燃やした。その様子を見て、メルヴィンは苦笑する。

 キュッリッキの”いっぱい食べる”は、通常の大人の平均的摂取量より、実は少ない事を知っている。痩せの大食いとは、キュッリッキには無縁な言葉なのだ。

「リッキー、あの…」

「うん?」

「その……」

 道中メルヴィンはずっと気になっていたことがある。

 葬儀の時の、飛行技術が戻るとかどうの、ということ。

 なんとなく、そのことだと察して、キュッリッキは頷いた。

「1万年前の出来事で人間たちから取り上げちゃった飛行技術を、今後誰かが発明できたとき、見守ってくれるって約束してくれたの。今はまだ誰も閃いていないし、発明も出来ていないけどね」

「そうなんですか…」

 キュッリッキは両腕を伸ばして大の字になると、低い天井を見上げる。

「9千年の時を費やして、丁寧に人間たちの中から、生活の中から、飛行技術に関する全てを消し去ったの。遺伝情報から記憶から何から何まで。でもね、それから千年の時をかけて、人間たち自身は気づくの。空を飛びたい、どうやったら空を飛べるのか、身体一つでじゃなくて、乗り物や道具を使って空を飛ぶにはどうしたらいいか。ほんの小さな想いや願いは、やがてリューディアの中で芽生えたの。千年で初めて」

「……」

 人間たちにとっては、途方もない年月。それだけの時を経て、ようやく自力でたどり着いたというのに、神は無残にも摘み取ってしまった。

「リューディアのことがあったから、ベルトルドさんは奮闘したの。だから、それがなかったら、人間たちの手に飛行技術が戻るなんて、一生なかったかもしれない。あるいは、リューディアやベルトルドさんたちのような悲劇が、別の誰かに起こったかも…」

「そうですね…」

「飛行技術が返ってきて、その後どう人間たちが使っていくか。ユリディスの時のような悲劇になるか、別の悲劇に繋がるのか、それは判んない。でも悪いことばっかり考えちゃってたら、なんにも出来なくなっちゃうもん。だからティワズ様は、見守ろうって言ってくれたの」

「使う人間次第ですね」

「うん。それにね、どうせアタシたちが生きてる間に、危険になるほど空が飛べるようには、さすがにならないと思う」

 悪戯っ子の笑みを浮かべて、キュッリッキは伸びをする。

「でも、機械工学スキル〈才能〉持ちの人たちが、昔の遺産を発掘したり調べたりしているんですよね。基礎が見いだせたら、開発運用発展は早そうですけどね」

「う…にゃー」

 メルヴィンの指摘に、キュッリッキは神妙に眉をひそめた。

「まあ、ティワズ様が折れてくれたのには、ある理由があるの」

「理由?」

「ベルトルドさんたちが掘り出したフリングホルニ、まさに1万年前、神の領域を侵そうとした元凶であるあの船を、壊し忘れちゃってたこと」

「……ああ…」

「モナルダ大陸が半壊しちゃうほど深く深く眠っていたから、気付かなかったのか、忘れちゃったのか。だからアタシが指摘してツッコミ入れる前に折れてくれたんだよ」

 にこりと笑ったキュッリッキの笑顔を見たら、神々は大いに凹むだろう小悪魔な笑みだった。

「神を脅迫するなんて、巫女っていうのはすごいんですね…」

「アイオン族はロキ様が創った種族だしね~」

 フリングホルニやハーメンリンナで見た金髪の美丈夫を思い出す。確かにどこか人懐っこい笑顔と、意地の悪そうな笑みを同居させる表情をする神だった。

「ベルトルドさんとアルカネットさん、安心して旅立ってくれて良かったの。ニヴルヘイムにいるリューディアも、きっと喜んでくれると思う……」

 いくらお気に入りの巫女の頼みとは言え、重大な神々の決定を覆すのは容易ではないはずだ。それがああも簡単に了承を得られたのは、トールの失態によりリューディアという尊い犠牲を払ったこと、キュッリッキの身に降りかかった悲惨な出来事、ベルトルドとアルカネットの抱えた大きな悲しみと憎しみ。それによって歪ませてしまった世界。

 神々の思惑が招いた結果が、マイナスに傾きすぎたのだ。それもあって、ティワズの決断を促したとも言える。

 キュッリッキ自身、交渉は長引くと覚悟はしていたのだ。しかし蓋を開けてみたらあっさり願いは叶った。

 ベルトルドたちの心と想いを救い、送り出せて本当に良かった。

 見つめていた天井が急にメルヴィンの顔になって、キュッリッキは目を見開いた。

「そういえば、フェンリルとフローズヴィトニルはどうしたんですか? 彼らを見かけないんですが」

「アタシたちに遠慮して、アタシの影に潜んでいるんだって」

「え」

「それくらいの気、ちゃんと使うんだぞって言ってたよ」

「な、なるほど」

 今にして思えば、キュッリッキを初めて抱いた昨日の夜、あの2匹の神は同じ部屋にいたようなと気づいて、メルヴィンは赤面した。

 絶頂を迎えてキュッリッキが意識を失うまで、熱く激しく睦みあったのだ。素面では到底口に出せない言葉も、たくさん言った気がする。

 メルヴィンは再びベッドに腰を下ろすと、困ったように頭を抱えた。

「どうしたの? メルヴィン」

「い…いえ…」

 キュッリッキは身体を起こすと、メルヴィンの背中に抱きついて、横から顔を覗き込んだ。

「フェンリルたちに会いたいなら呼ぼうか?」

「……そのままずっと、危険が起こるまで影に潜んでいてください」

 そう言って、メルヴィンは長い長い溜息を吐きだした。



 夕食の時間が近づいて、リュリュが迎えに来てくれた。

 荷物の中には、船で着るドレスも入っている。それを着ろとリュリュに言われて、キュッリッキはどうにかドレスを自力で着た。一人で着られるデザインを、リトヴァが選んでくれていたのだ。

 薄手のシルクで作られた、ノースリーブのシンプルなドレスだ。丈は膝上までしかなく、肩から裾に向けて、青の濃淡が綺麗なグラデーションになっている。胸元には、本物のダイアの粒が、銀砂のように散りばめられ、キュッリッキの白い肌と金色の髪がより映えて美しかった。

 リュリュとメルヴィンは、シンプルな半袖の白いシャツとスラックス姿で、3人はダイニングの特別席へ通された。

 豪華なフルコースが振舞われ、3人はとにかく無言で手を動かし続けた。

 忙しすぎて、食事もまともに食べていなかったのである。酒はそっちのけで、デザートまで全て平らげると、湯気の立つ紅茶を美味しそうに飲みながら、ようやくリュリュは言葉を発した。

「食欲なんてナイ、なんて思っていたけど、案外空腹だったのね。ひさしぶりにまともに食べた気がするわ」

「アタシも。一生懸命食べちゃった」

「そうですね。普段の倍くらい、食べきりましたねリッキー」

「えへへ」

「そんくらい普段からちゃんと食べなサイ。あーた細りすぎて貧血連発しちゃうわよ」

「ううん……あんまりお腹空かないから」

「目指せ子豚体型! て思いながら、高カロリーの甘いものでも毎日毎日食べてなさい」

「ぇー」

「それはちょっと……」

「どーせ、アイオン族は太らないんだから」

 肥満体型のアイオン族など、少なくとも惑星ヒイシでは見たことがない。

「ねえリュリュさん、ゼイルストラ・カウプンキってどんなとこ?」

 少し冷めてきたアップルティーを飲みながら、キュッリッキはサラリと話題を変える。

「そうねえ、惑星ヒイシで一番の海洋リゾート地ってとこかしら。この惑星に5つある自由都市の中で、一番外に開かれた自由都市ね」

 都市としての機能が全て集う大きなアーナンド島を中心に、住人たちの暮らす無数の小さな島々が集まる群島。別名ミーナ群島と呼ばれるそこを総称して、ゼイルストラ・カウプンキという。

「アタシ仕事でラッテ・カウプンキなら行ったことがあるよ。大陸の中にあったから、普通にちょっと大きい都市だったけど」

「そうね。海のど真ん中にあるのはゼイルストラくらいなものよ。リゾート地だから、年がら年中賑わってるし、アーナンドに着いたら、そこから小型クルーズで1時間移動になるわ」

「ベルトルドさんの記憶で見たよ、シャシカラ島」

「ええ。アタシたちの生まれた、懐かしいあの島へね」

 ベルトルド、アルカネット、リュリュたちの両親3家族だけが暮らす島。

「アーナンド島の敷地はとても高いし、観光客で溢れかえってるから、アタシたちの家族はシャシカラ島を買って、生涯シャシカラ島で暮らすって決めたの。だから、ベルとアルのお墓は、シャシカラ島へ建てるのよ」

「リューディアのお墓もあるんだよね」

「ええ。ひさしぶりにお墓参り出来るわ、お姉ちゃん」

 リュリュは様々な感情をいり混ぜて、表情に浮かべていた。

 幼馴染で親友だった二人の遺灰を持って帰郷するのは、さぞ複雑な思いがあるだろう。両手で紅茶のカップをはさみ、もうからになった中身をジッと見つめ、時折苦笑いのようなものも口元に浮かんでいた。

「さて、アタシはバーで一杯引っ掛けて寝るから、あーたたちはもうお風呂に入って、ゆっくりおやすみなさいナ」

「うん、そうする」

「それとメルヴィン」

「はい?」

「小娘結構疲れてるから、今夜は手出しせず寝かせてあげなさいネ」

 ムフッとウインクされて、メルヴィンは耳まで顔を真っ赤にさせた。

「そ、そのくらいの分別はついてますっ!」

 声が裏返りながら言い返すと、キョトンとするキュッリッキの手を掴み、メルヴィンは憤然とダイニングを出て行った。

「案外、小娘からかうよりメルヴィン弄ったほうが楽しいかもねん」

 去りゆく二人の後ろ姿を見送りながら、リュリュは優しく微笑んだ。


最終章:永遠の翼 葬儀のあとで つづく



133 最終章:永遠の翼 貴方に手向ける黄金の炎:後編

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