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片翼の召喚士-ReWork-:episode491

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片翼の召喚士-ReWork-

 勇気と決断編:episode491

「まあ、なんて可愛らしいお嬢様でしょう」

「ベルトルド様にあんなにだいじにされて」

 ヒソヒソと貴婦人たちの囁きが耳に流れ込んでくる。好奇心の声、賞賛の声、嫉妬の声などがキュッリッキに向けられていた。

 しっかり顔を上げて歩くよう、控え室でアルカネットから教えられていたので、恥ずかしさでうつむきそうになる顔を上げることで必死だった。

 やたらと長い、いつ玉座に着くのだろうと思う距離を歩き、ようやくベルトルドが足を止めたので、キュッリッキはホッと小さく息をついた。

「立ったままで失礼、ご機嫌麗しそうでなにより陛下」

「心にもない気持ちが、言葉なき声に滲み出しておるわい」

「滅相もございませんとも」

 光り輝くような笑顔を、壇上の皇王に向け、更ににっこりとベルトルドが笑んだ。

「張り倒してやりたいほど可愛いやつだ全く。アルカネットも大変そうだの」

「お察しいただき、痛み入ります」

 アルカネットも負けないほど輝く笑みで、優雅に一礼した。その姿に、参列している貴婦人たちから、恍惚としたため息があちこちから漏れる。

「ブルーベルたちも、此度はご苦労であった。今宵はゆっくり楽しんでいくが良い」

「勿体無きお言葉、ありがとうございます」

 ブルーベル将軍たちは、敬礼したのち、深々と頭を下げた。

「して、その娘が、召喚スキル〈才能〉を持つ召喚士じゃな」

 次に自分に言葉が向けられ、キュッリッキはぴくっと肩を震わせて、ベルトルドの腕をぎゅっと握った。

 恐る恐る皇王を見上げると、白髪の多く混じったグレーの髪と、グレーの口髭を蓄えた、温厚そうな老紳士だ。華美すぎない濃紺の上衣に白いスラックスをはいて、背筋は真っ直ぐで体格も痩せすぎず肥えすぎずだ。ベルトルドが散々「ジジイ」と連呼していたので、てっきりヨボヨボのお爺さんを想像していた。

「初めましてお嬢さん。ワシはタイト・ヴァリヤミ・ワイズキュールと申す」

 小さな子供に語りかけるように自己紹介をする皇王に、キュッリッキはどこか安堵して、にっこり微笑んだ。

「キュッリッキです」

 そしてはにかんだように、もう一度にっこり笑った。

「ふふふ、可愛い娘だのう」

「俺のリッキーに色目を使うなジジイ!」

 憮然とした顔で睨まれて、皇王は「くわばらくわばら…」と肩をすくめた。

「あまり長い挨拶もなんだが、今日はそなたたちに客がおる」

「客?」

 ベルトルドがオウム返しに呟くと、皇王は小さく頷いて、壇上の傍らに控えていた宰相マルックに手で合図した。

 マルックは深々と一礼すると、後ろに控える下官に「お通しせよ」と命じた。

 下官は素早くその場を離れると、皇王が出入りのために使う扉までかけていき、扉のそばに控える近衛兵に命じる。近衛兵は皇王に向けて敬礼すると、恭しく扉を開いた。

 参列する紳士淑女の見守る中、扉の向こうから現れた人物を見て、ホールがざわめいた。

 先頭に立って歩いてくるのは、冷たい輝きのある水色の髪を、豪奢な黄金の髪飾りで大きく結い上げ、雪のように白い肌をした美女。そして後ろには、金髪の容姿の美しい男女が続いてきた。

「え…」

 キュッリッキは愕然と目を見開いた。

 先頭の女と、後ろに続く男女に見覚えがある。

 思い出すのも忌まわしい、幼い日々を過ごした修道院で。そして、自ら会いに出かけたあの町で。

 小さな震えが伝わってきて、ベルトルドはハッとなる。アルカネットに目配せすると、アルカネットは小さく頷いた。

勇気と決断編:episode491 つづく

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