片翼の召喚士-ReWork-:episode557

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 アン=マリー女学院からの依頼編:episode557

 イリニア王女が離れると、キュッリッキはベルトルドの腕から逃れてメルヴィンの胸に飛び込んだ。それからずっと、メルヴィンの身体に抱きつき、胸に顔を伏せている。

 キュッリッキの身体を抱きしめながら、メルヴィンは困ったようにキュッリッキを見つめていた。ウンともスンとも言わず、じっと顔を伏せたままだ。子供がおもちゃを取り上げられまいとして、頑なにぎゅっと抱きしめているように。

 2人の様子を見て、メルヴィンの鈍感さに呆れていたルーファスは、可哀想なキュッリッキのために援護射撃をした。

(メールヴィン、キューリちゃんはね、不安でヤキモチ妬いてるンダヨ)

 念話で話しかけられ、メルヴィンはルーファスのほうを見る。

(ヤキモチ?)

(ウン。メルヴィンにその気はなくても、あんなふうにイリニア王女がベタベタくっついていたら、不安になっちゃうんだよ)

(……オレは別に)

(そんなつもりはないってオレも判ってるよ。キューリちゃんも、仕事なんだからってのは理解してるさ。ケドね、こういうのは理屈じゃないから。オンナノコはそういうイキモノだから。うんと甘えさせてあげなヨっ)

 ルーファスにウィンクされて、メルヴィンは苦笑した。

 確かにそういう生き物なのだろう、女の子というものは。

「ヤキモチ妬いてくれたんですか?」

 キュッリッキは黙って頷いた。

「ありがとうございます」

 やはり、黙って頷いた。

「許してくれますか?」

 キュッリッキは顔を上げて、目を閉じたまま「んっ」と唇を突き出した。どうやら、キスをしたら許してくれるらしい。

 拗ねて怒った愛らしい顔を見つめ、メルヴィンは吹き出して笑いたいのを必死で堪えて、キスで応えた。

 メルヴィンとキュッリッキを離れたところで見ていたイリニア王女は、ズキッとする胸を押さえて悲しげに顔を伏せた。

 数日一緒に旅をしてきて、常に気遣いをみせ優しかったメルヴィン。しかし、あんな風に愛おしげに、優しく見つめてはくれなかった。自分に向けられていたのは、職務上の義務のようなものだったのだろう。そう思うと、よけいに心が苦しく、寂しかった。

(ねぇ、イリニア王女をハーメンリンナに連れ帰る?)

 リュリュが念話でベルトルドとアルカネットに話しかける。

(召喚スキル〈才能〉を持っていることが判りましたし、即位したあとでは国外へ出すのは難しくなりそうです。今がいいでしょうね)

(そうだな。もっともらしい理由をこじつけて、一緒に連れて行こう。アルカネット、お前に任せる)

(承知致しました)

(とっとと終わらせて俺は帰るぞ。今夜は忙しいんだ!)

(おや、今夜何か、お約束でも?)

 ぴくっと眉を動かし、アルカネットがジロリとベルトルドを睨む。ハッとして、ベルトルドは肩をビクッと震わせた。あの目、おそらく気づいている。

(お、お前には関係ないだろう。俺のプライベートだから)

 ベルトルドはこめかみをピクピクさせて、額にうっすら汗を浮かべた。

アン=マリー女学院からの依頼編:episode557 つづく

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