片翼の召喚士-ReWork-:episode560

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 アン=マリー女学院からの依頼編:episode560

「さて、我々も帰りましょうか。王女は無事到着できましたし、事件の詳細報告と報酬交渉はタルコットさんにお任せで」

 メルヴィンがそう言うと、皆頷いた。

「ギルド経由での依頼だったけど、ウチのぶんは割増で搾り取ってくるから。楽しみにしておいて」

 戦闘で発散できなかった鬱憤は、これから報酬交渉を行うニコデムス宰相に向けられていた。びた一文値切るつもりはない。

「早く行こ、メルヴィン」

 嬉しそうにメルヴィンの手を引っ張ってキュッリッキが言うと、メルヴィンはちょっと待ってと踏みとどまった。

「あちらに挨拶をしてから」

「ぶー」

「イリニア殿下、ニコデムス宰相」

 キュッリッキの手は引いたまま2人の前に立つと、メルヴィンは礼儀正しく一礼した。

「王女殿下はお引渡ししました、任務完了です。当傭兵団への報酬交渉は、こちらのタルコットがしますので、よろしくお願いします」

「承知致した。殿下のお命と安全を守っていただき、国を代表して御礼申し上げる。報酬は納得いく額をお支払いさせていただこう」

「ありがとうございます。では、我々は引き上げますので、また何かありましたらご依頼下さい」

 もう一度メルヴィンは頭を下げると、イリニア王女には笑顔を見せてきびすを返した。

「メルヴィン様!!」

「はい?」

 イリニア王女に呼び止められて、メルヴィンは首を振り向けた。

「あの、わたくしこれからハワドウレ皇国に参りますの。あちらでお会い出来るでしょうか」

「いえ……」

 メルヴィンは小さく首を横に振る。

「オレは一介の傭兵に過ぎない身分です。おそらく殿下はハーメンリンナに通され、そこでご滞在になると思います。ここでお別れです」

「メルヴィンにちょっかいだそうとしてもダメなんだからね!」

 メルヴィンとイリニア王女の間に割って入ると、キュッリッキはこれでもかとイリニア王女を睨みつけた。

「リッキー」

 苦笑しながら小さく嗜めると、メルヴィンはキュッリッキの手をつなぎなおして、イリニア王女に一礼した。

「メルヴィン様……」

 もう振り返らず歩いていくメルヴィンの背中を見つめ、イリニア王女は涙をこぼした。

「殿下……」

 ニコデムス宰相は、イリニア王女があの傭兵に恋をしていたのだと気づいて複雑な気持ちになった。下賤のものと想い合う仲になるのは由々しきことだが、失恋したのだと見て判る。それは喜ばしいと思う反面、王女の気持ちを思うと可哀想でもあった。

「王女のお支度を1時間ほどで済ませてください。我々も出発します」

 アルカネットに急かされ、ニコデムス宰相は慌ててイリニア王女を促した。

アン=マリー女学院からの依頼編:episode560 おわり

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