アストリッド様と「行くわよ愉快な下僕たち!」:episode03

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アストリッド様と「行くわよ愉快な下僕たち!」

旅は道連れ編:ヴェガルド語り_episode03

 涙目に叫んだけど、女は涼しい顔でアーポを見下ろしていた。

「あたくしは自分の貞操を守っただけよ。それともあんた、あたくしがこのケダモノに、言葉にも出せないほどイヤラシイことされてたら良かったわけ?」

「い、いや…それはマズイと思うけど…」

「ふんっ! 全く、未熟なフラフトストラね」

「…フラフトストラ?」

「魔獣使いのことよ」

 大仰なため息をつきながら、女はヤレヤレといった口調で言った。

 魔獣? 魔獣ってなんだろう。ていうか、えっと、アーポは動物じゃないの?

「って、あんた無自覚なの?」

 女は不思議そうに瞬いて、ボクをしげしげと見つめてきた。そして、また辺りを見回して、長々とため息をついている。

「まあ、この森に入ったとき、やったら魔獣の気配が多いなあって思っていたのよ。そんな所にあんたみたいなコドモが一人で居るってのが、とっても不思議だったのだけど。無自覚なフラフトストラだったのねえ」

 高圧的な雰囲気が消えて、好奇心な雰囲気が漂いだした女に、ボクは咄嗟に経緯を話した。フラフトストラ、ってのが気になって。

 そういえば、両親を亡くしてからのこれまでのことを、他人に話したのは、この女が初めてかもしれない。人間には滅多に出会わなかったのもあるけど。昔はこの森の動物…魔獣たちには、いっぱい話したんだけどね。誰かに話さないと、落ち着かなかったから。

「そうだったの……可哀想だったわね。幼いあんたが生き延びられたのも、フラフトストラの能力があったからかも。でないと、あっという間に魔獣たちに食べられちゃってただろうから」

 え、そうなの?

 ボクが不思議そうにしていると、女は軽くため息をついた。

「あんたが動物だと思い込んでいるモノは、全部魔獣。魔獣っていうのはね、神々の力の欠片が動物に憑依して、変化したモノなの。――おもに害をなす魔獣は闇の神々の力、こちらが何もしなければ害をなさないモノは光の神々の力。そこで転がってるバイコーンは、闇の神々の力の欠片が憑依した、なにかの動物の成れの果てでしょうね」

 ボクと女は、倒れているアーポを見つめる。

 村で飼っていた成獣した馬によく似た外見をしていて、頭部に2本の捻れた角が生えている。青みを帯びた鬣と尻尾が、とても長い。今は黒焦げに縮んじゃって、炭化しちゃってるけど。

 女が落としたと思しき雷に撃たれたアーポは、もう死んじゃっていた。

 いつもその背にボクを乗せて、森の中をたくさん走ってくれていたっていうのに。可哀想なアーポ。

「本来魔獣は人間には懐いたりしないものなんだけど、フラフトストラの能力を持つ者には、絶対服従って言われてるわ」

 女はジロリとボクを見ると、人差し指でボクのオデコを突っついてきた。ボクは目を閉じて首をすくめる。ツンツン痛いよ、もう!

「フラフトストラも魔術師の一種よ。こんな、誰も村を作らないようなところに住んでいたってことは、村人たちはフラフトストラの力を持つ魔術師たちだったんでしょうね」

「ボクの村の人たちが……魔術師」

「今となっては、想像するしかないけどね」

 魔術師ってものが、どんなものかボクは知らない。でも、この女の言うことが本当なら、村人もボクの両親も、変わった力を持っていたのかな。

 ピンとこないし、なんだか、複雑な気分。

「はぁ、思わぬ道草食ったけど、バイコーンの角は高く売れるから、儲けたわ」

 そう言って女はよいしょっと言って立ち上がると、いきなりアーポの角の付け根をブーツで力いっぱい踏みつけた。

「何するんだ!?」

「戦利品よ。この角はお金になるの」

 さも当然、って顔でぬけぬけと。

「冒涜だ!」

「何が冒涜よ、これ魔獣なんだからイイのよ」

 角を叩き折って、女は角を拾い上げてニヤリと笑った。

 あの凄惨な笑顔に、猛烈にイヤな予感が…。

「さっきから、金になりそうな魔獣の気配がわんさか漂ってるのよ。旅の資金集めに、ちょっと狩りをしていこうかしら」

 ポキポキと手の関節を鳴らしている。

「や、ヤメテヨ! ボクの大切な友達なんだからっ!!」

「お黙り!!」

「ひいいいっ」

 逆らえない気迫で怒鳴られて、ボクはびびって尻餅をついた。

 静かな森の終焉…、穏やかな日々よ、友達よ、ああ……サヨウナラ。

「魔獣とは言え所詮ケダモノの本性! 燻り出せ! 凶火よ暴れろファレッグ!」

 女は右手の甲をかざすと、甲が一瞬キラッと光って、突如森が燃えだした。

旅は道連れ編:ヴェガルド語りepisode03 つづく

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