アストリッド様と「行くわよ愉快な下僕たち!」:episode24

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アストリッド様と「行くわよ愉快な下僕たち!」

旅は道連れ編:アストリッド語り_episode24

 ガバッと腕で首を掴まれて、ヘリュはあたくしの耳元で声を顰めて話し始めた。ちょっと痛いわよ…。

「見た感じ魔術とはちょっと違うかもしれん、魔力の波動を感じないんだ。それに、発明がどんなものか判らんが、ありゃかなり怪しいぞ」

「言われなくても怪しすぎますわよ…」

「列車と同じ速度で移動しながら、ああやってマイペースに会話してくるだろ。表情もずっとニコニコさせてるし、気味が悪い」

 ええ、本当に。

 何かを感じているのかしら、ヴェガルドは渋面を作りながら、黙って窓の外の男を見ていますわ。

「これはオレの想像なんだが、あの男、妖精族じゃねえかな?」

「妖精族…」

 妖精族とは、神々の力の破片に寄生された人間の魂が、化身した存在ですの。これの厄介なところは、死んだ魂ではなく、生きた魂に寄生してしまうこと。人それぞれですけど、寄生された人間は、変わった力を得たり、外見が大きく変化するそうです。滅多にあることではないのですが、稀にそんな不幸にめぐり合う人間がいます。

 40歳と言いながら、まだ20代後半のような若い顔立ち、魔術ではなく発明であんな人間離れした動きをしている。そして妖精族になった人たちの共通することは、自分のしていることを自覚できないということ。

 極端な例を出すと、子供を嬲り殺している間中、笑顔で世間話が出来てしまう、というような感じかしら。自分が人殺しをしているという自覚がないので、服についた毛玉を取り除くような感覚で殺っている。そこに善悪の判断など存在せず、気の向くまま手をあげるといった調子ですの。

 改めてあの男を見ると、たしかに妖精族と言われると納得できますわ。奇妙だし薄気味悪い。

 街中で出会っていれば、タダの変人で済みますけど、ここはトロッコ列車の外の出来事。あまり長時間かかわっているのは、かえって危険な気がしてきましたわ。

「エイステインとやら、あたくしたちは大切な旅の途中です。もう御用もお済みのようですし、どこへなりとも消え去ってくれると嬉しいのですが」

「ええ~~~、せっかくお近づきになれたんだから、吾輩も旅についていきたい~」

「だが断る!!!」

 ダンッ!! と、思わずあたくし、車両の壁に片足を叩きつけてしまいましたわ。ヘリュとヴェガルドがビビってます。けど、そんなことは今は気にすべきことじゃありません。

 こんな訳の判らん男を同行させる、このあたくしだと思って!? 舐めてもらっちゃ困るってもの。

「レディだけの旅は危険だよ~? だから、吾輩がついていってあげるから、ね?」

 ぺっ! なにが「ね?」よっ!! まだ16歳だと思って甘く見ているわね!!

 あたくしが誰なのかということを、この無礼者には思い知らせてやる必要があるようね。そう、必須!!

「我が怒りの槍を振り落とせ、ベフォール!!」

 右手を天に向けて掲げ、あたくしは木星(ベフォール)の力を召喚。

 ズッドオオンッ!! 青く晴れた空から、エイステイン目掛けて10本の雷の柱が振り落ちてきた。紫電の光が車両内に満ちる。これを喰らって死ねばいいのよ! そ、それなのに…

「えっ!?」

 雷はエイステインを外さず貫き落ちたわよ!? なのになんでこの男、無傷でヘラヘラ笑っているのーー!!!?

旅は道連れ編:アストリッド語り_episode24 つづく

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