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アストリッド様と「行くわよ愉快な下僕たち!」:episode26

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アストリッド様と「行くわよ愉快な下僕たち!」

旅は道連れ編:アストリッド語り_episode26

 こんな怪しい男に恵んでやるなんて、虫酸が走るというもの。けど、長引かせていると、もっと人だかりが大きくなりそうで…。こんな小さな観光地の村で、出鱈目に長身な男が立ってるだけで、好奇の視線を釘付けよっ!

 はぁ…、スヴェンセン伯爵家の後継ともあろうあたくしが、何故こんな施しを。忌々しい…、心底忌々しいですわ!

「すみません、上から下までのメニューのクレープを、一つずつ下さるかしら」

 好みを聞くのも癪ですので、全部買って差し上げます!

「毎度ありがとうございます!」

 大して年も変わらないだろう店員の少年が、喜々として大急ぎでクレープを包み始めました。その作業を見つめながら、いっそ、具材に毒でも仕込んでやろうかしらって思いますわよ。それに、あらあら…、ヴェガルドとヘリュが、目を輝かせてこちらを見てる。ええ、ええ、あたくし心の広い主人(あるじ)ですもの、ちゃんとあなたたちの分も買ってあげます。今にもヨダレが滝のように流れ落ちそうな顔で、あたくしのほうを見ないでくださいな。

「お待たせしました」

 大きな蓋のない箱に、綺麗に並べられたクレープを受け取り、代金を支払って振り向くと、真後ろにエイステインとヴェガルドとヘリュが、両手を握り締めて立っていました。

 意地汚い…。

「先に、そこの寝ている者に、匂いを嗅がせてからですわよ」

 噴水に背を預けて、ぐーすか寝ている者の前にしゃがむ。

 少し年上なのかしら? ひょろりと長い手足に、筋肉はついているけど、でも割と細身ですわね。それになにより、この少年、怖いくらいに美形。ちょっと長めの金髪に、完璧な輪郭を描く顔。目を閉じているけれど、開くと魅了されそうな雰囲気を漂わせていて、肌も艶々と綺麗で白い。

 あたくしは重たいクレープの箱を、この美少年の前に突き出しました。すると、

「食いモンの匂ーーーーーーーーいっ!」

「きゃっ」

 ガバッと顔を上げて、いきなり叫び出しましたわ。びっくりして尻餅ついてしまいましたわよ。そして、あたくしから箱をひったくると、箱に顔を突っ込んでクレープを貪り食い始めました。

「あっ! オレのクレープ!」

「ボクも食べたいのにい~~~~」

 ヘリュは顔を真っ赤にして怒り出し、ヴェガルドはしくしく泣き出して、ヨナスにしがみつきました。

「いやはや、凄い食べっぷりだねえ」

 修行時代に見た、森で死肉に群がるハイエナを思い出してしまいましたわ。クレープを巻いている紙は、器用に避けて食べていますけど。

 興味本位で見入っていた野次馬たちも、飽きたのか散り始めてくれました。

 口の周りにクリームやジャムをいっぱいつけて、美少年は美味しそうにもぐもぐ食べてます。まるで小さな子供みたいね。なんだか苦笑いが漏れそうですわ。

 あたくしは立ち上がると、ヴェガルドとヘリュに小銭をあげて、好きなクレープを買ってくるよう言いました。

「サンキュ!」

「わーい、ありがとう」

 二人は大喜びで、クレープ屋の露天へと走って行きました。ヨナスが二人に付き添い飛んでいく。素直でよろしいこと。

 ちょっと目を離したすきに、もう食べ終えた美少年は、口の周りを腕で豪快に拭って、ゲップしました。

「生き返ったー! サンキューねーちゃん」

 無邪気、とでも言うのかしら。屈託のない笑顔で、満足そうにあたくしを青い瞳で見上げてくる。美顔にはドキッとこないけど、子供のような無邪気さに、キュンッときますわね。

「ところでアナタ、名前はなんとおっしゃるの?」

「俺様か? 俺様はヴァルト・スオサーリ。セカイサイキョーの格闘家だぜ!」

 握り拳を作って、ビシッと前に突き出す。とても様になっているのですけど、何故かしら、ひどく”バカ”に見えてしまうのは。

旅は道連れ編:アストリッド語り_episode26 つづく

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