アストリッド様と「行くわよ愉快な下僕たち!」:episode27

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アストリッド様と「行くわよ愉快な下僕たち!」

旅は道連れ編:アストリッド語り_episode27

「その世界最強の格闘家が、何故こんな変人に連れられているの?」

「変人は酷いなあ~」

 あはは~って、笑いながら言うんじゃないわよ腹が立つっ!

「ンー……、ここって、俺様のいたセカイじゃない」

 突如真顔であたくしを見つめ、ヴァルトは腕を組んで唸り出しました。

「俺様イララクスの街ん中ブラブラしてたんだけどなー、気がついたら、シラネー街で倒れてて、このオッサンが拾ってくれた」

 ん~、嘘を言っているようには見えません。イララクスなる名称も初めて耳にしますし。

 あたくしには、心当たりがありますの。

 召喚系の一種で、異なる世界から、何かを招き寄せる魔術。あたくしはそのテの魔術は専門外ですが、父の門下に扱える魔術師が数名います。

 このヴィンドフロト以外にも、世界というものは無数にある。神々の世界だけではなく、異なる場所にある世界。魔術師だけは、その存在を信じているんですのよ。

 ただ、異世界召喚と言われる魔術では、場所を特定することが100%不可能なのです。異なる世界の存在は信じていても、誰ひとり見たことがありません。異世界召喚の魔術は発動すると、ランダムに次元を超えて、異なる世界から人だったりモノだったりを引き寄せてしまいます。

 このヴァルトなる者も、そうしてどこかの魔術師に招き寄せられたのではないかしら。そして、ポイッと捨てられたに違いありませんわ。

 異世界召喚魔術を扱う魔術師は、遊びでするわけではありません。――多分ね――何かの研究や、追求のために行うものだと聞いています。だから、ヴァルトを召喚した魔術師の眼鏡に、彼は適わなかったのでしょうね。

 せめて帰してやればいいのにと思いますが、さきにも説明したとおり、場所を特定することができないので、招き寄せた世界へと、こちらから帰すことは無理なの。

 それなのに、放り出すなんて、無責任さこのうえありませんけど。酷い話ですが、そういう被害にあっている人々が、このヴィンドフロトには居るんです。

 それを思うと、あたくしまで見捨てて放っておくのは、なんだか忍びないですわね。

「さて美しいレディ、吾輩たちを連れて、共に旅をしましょうよ、ね~?」

「……」

 ぬわぁにが「ね~?」っだっ!

 さっきからニコニコニコニコ……何故こうも神経逆撫でするような笑顔なんでしょう!

 あたくしは両手を腰に当ててエイステインを振り向き、顔を上げて思いっきり鋭く睨みつけました。

「このヴァルトは仕方ないようですから、あたくしが引き受けてもいいのですけど、アナタのような怪しい者はお断りです!」

「そんなあ~~~」

「あたくしは大事な旅をしているの、動機が不十分で怪しさ大爆発なアナタなんかを、連れて行けるわけがないでしょうがっ!」

 どすんっ! と石畳の地面を右足で踏みつける。

 フーフーと荒く息を吐き出し、あたくしは呼吸を整えます。

「吾輩ホントに、天才発明家なんですよ?」

 小首を傾げ、困ったように言う。

「じゃあ、その天才発明でお金を儲ければよろしいのではなくって? 何故クレープも買うお金がナイのすか?」

「いやあ……売れなくって」

 またもや語尾にハートマークでもつきそうな言い方っ! 売れないことなんて、全然気にしちゃいないってことね。

 ああ、もう、見上げていると首が痛くなっていきましたわ。

 あたくしは一旦顔をあげるのを止め、エイステインの靴を穴が開くほど凝視する。ホントに開けばいいのに。

 このテのタイプは、首を縦に振らないと、執念で付きまとってきますわ。仮にヘリュの推測通り、妖精族なら尚更です。でも、先程からの様子を見ていると、どうも妖精族とは違うと思うの。

 あたくしの怒りを煽ったり、クレープを買わせたり、ヴァルトに情を向けさせるような持っていきかた。あのヘラついた顔の皮の下に、姑息な計算をしている顔がありそうな気がするのです。

 そう、このエイステインは、全て計算づくで動いている。あたくしそう思いますの。

 どういうつもりであたくしに近づいてきて、何を目論んでいるのか。それが判らない以上、姑息に周囲をまとわりつかれても、面倒くさいだけですわね。

「気がかわりましたわ。いいでしょうエイステイン、アナタの同行を許します」

「えー、ほんとー? やった~!」

 両手を上げて大喜びするエイステインを、ヘリュが指差して怒鳴る。

「おい、いいのかアストリッド!?」

「ええ、まあ同行人が増えようと、あたくしの懐はまだまだ大丈夫ですから」

「マジか…」

「ヴァルト、アナタもあたくしたちと一緒に来なさいな」

「ぬ?」

「もと居た世界へ帰せるかどうか保証は出来ないのですけれど、その手がかりなりチャンスなりが訪れるまで、あたくしがアナタの面倒を見ますわ」

「おー! そーなのかー、サンキューな、ねーちゃん!」

 今気付きました。ヴァルトは口を開くと、”バカ野郎”になってしまうんですわ…。

旅は道連れ編:アストリッド語り_episode27 つづく

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