アストリッド様と「行くわよ愉快な下僕たち!」:episode29

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アストリッド様と「行くわよ愉快な下僕たち!」

旅は道連れ編:アストリッド語り_episode29

 家族は父母と私の3人。屋敷には使用人がたくさんいますけど、話をする使用人なんて、乳母のメイニルと、侍女のセナだけですもの。

 父母とは殆ど会話をしたことがありません。

 屋敷には父母の肖像画があるので、それを日々見つめているので顔は覚えていますけど、とくに母とは顔を合わせることが両手の指で足りるほどの回数しかありません。

 あとは、魔術を教えてくれたリカルド先生と、サバイバル方面のベデリア先生。交互に教わっていたので、同時に両先生が揃うことはありませんでした。

 自慢じゃないですけど、友達はいません。――性格とは関係ありませんのよ!

 勉強はリカルド先生から教わり、学校へは行ってませんでしたし、修行が忙しすぎて、同い年の子供と遊ぶこともできませんでしたわ。そうね、遊びたいって思わないような環境で育っていたから余計に。

 社交界の方へも殆ど顔出し出来ていませんし、16歳で旅に出ることは生まれる前から決まっていたのだから、時間的余裕なんて一切ありません!

 こうして思い返してみると、あたくしの人生って寂しいのかしら、なんて思ってしまいましてよ。

 魔術師の家に生まれたのだから、普通のご家庭のようにいかないのは、しょうがないのですけれど。

 ふと、お父様とお母様のことを思い出して、胸にズキッとした痛みが走りました。

 思い出さないように努めてまいりましたけど、イヤですわね、こんなふうに一人でいると、思い出してしまう。

 寝返りを打って、ランプに背を向ける。そして、目を伏せました。

 忘れたくても、当分忘れることなんて出来ない。

 憎しみのこもった、あの冷たい眼差し。そして、臓腑を抉るほどの、容赦のない言葉を。

 酷なほど脳裏に、目に、心に、焼きついてしまっている。

 ギリッと歯を噛み合わせて、脳裏に浮かんだ嫌なことを忘れようとするけど、意識すればするほど鮮明に思い出してしまう。

「ああ、そうなのね」

 そして、唐突に思いました。

 役に立たなそうな下僕を多く侍らせておくのは、あのことを思い出したくないからなんだわ。

 騒がしくしていたら、その間は気が紛れて忘れていられるもの。

 こんなふうに、心が痛まないもの…。

 目の端を涙が滑り落ちて、あたくしは慌てて手の甲で拭いました。

 こんなところを見られたら、ヘリュに大爆笑されてしまいますわね。

 とにかく今は、塞ぎ込んでいる場合じゃなくってよ!

 明日からはペースを上げて、ヴェンター王国へ行きますわ!

 あたくしは蝋燭の灯りを消して、シーツを目深にかぶって眠りにつきました。

旅は道連れ編:アストリッド語り_episode29 つづく

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Comments 2

八少女 夕

こんばんは。

高飛車なアストリッド様の意外な姿に驚きました。
厳しい教育は、この運命では当然でしょうけれど、なんとそれだけではない寂しい事情もあったのですね。
お父様とお母様のどちらか、または両方からつらい仕打ちを受けて、さらに友達といえる存在もなかったとは。

でも、ということは、無理矢理でも旅に出ることができて、むしろよかったのかもしれませんね。
下僕といって侍らせていますけれど、きっとこれからの旅でヘリュもヴェガルドも、きっといい友達になるのではないでしょうか。あ、のっぽさんエイステインや画伯も(笑)

新しい展開が読めて、嬉しいです。次回も楽しみにしています。

2018-07-14 (Sat) 04:56 | EDIT | REPLY |   

ユズキ

Re: タイトルなし

八乙女さんこんばんわヽ(・∀・)ノ

>高飛車なアストリッド様の意外な姿に驚きました。

ヒロインたるもの、重たい何かがないと!w
けど、キュッリッキさんほど重たくしない予定でおります。
アストリッド様は精神面もかなり鍛えられてますから( ̄▽ ̄)見たまんまタフレディですw

楽しみにしていただいていたのに、1年経ってしまいました><
のんびりですがコツコツ更新していくので、よろしくお願いします(・∀・)

2018-07-15 (Sun) 03:15 | EDIT | REPLY |   

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