夢の時間(とき)

オリジナルの小説とイラスト等を掲載。新連載【片翼の召喚士-ReWork-】開始。

ALCHERA-片翼の召喚士- 134 最終章:永遠の翼 葬儀のあとで 

 

ちょっと前から、右カラフの整理整頓をしています。著作表示のとこなど、文字色変えたけど見栄えが悪いので、キャラアイコンを入れて見やすくしてみて、カテゴリーも整理しました。

小説は専用の目次ページを作って、そこへ導線を引いているんだから、カテゴリーを複雑にしたってしょうがないよなあと。

カテゴリーの整理をする気になったのは、もうじき【 ALCHERA-片翼の召喚士- 】が終わり、新作などを追加していくうえで、また縦にびろーんと長いのもわかりづらいかなって思ったから。それに、案外TOP固定記事からのリンクに慣れてるヒトが多いらしいし。ことこうした小説掲載ブログだと。ゲームのプレイ日記になると、固定記事ってほとんどナイけど(笑)

あと2話くらいで終わるかな、て感じです。




ALCHERA-片翼の召喚士-
最終章:永遠の翼  葬儀のあとで 134



「っとに、あのオヤジどもおおおおおおおおお!」

 握り拳を作り、片足をテーブルに乗せ、椅子の上に立つザカリーが吠えた。

「なぁにが『さらばだ! 愛すべき馬鹿ども!!』だってゆー!」

「いやあ~、最後の最後まで、ベルトルド様らしくって、貫いてたよねえ~」

 テーブルに頬杖をつきながら、ルーファスが感慨深げに何度も頷く。

「しんみり、とか、感傷に浸る、て気分が、一瞬にして吹っ飛びましたね」

 簾のように長い前髪を払い除け、カーティスは呆れたように呟いた。

 ライオン傭兵団は、葬儀のあったハーメンリンナからキティラの屋敷に戻ってくると、食堂に集まって愚痴大会を催していた。

 使用人たちが軽食や飲み物などを運んできて、更に酒も追加されて気分はエキサイトだ。

「まぁ~さぁ~、おっさんらしぃい最後の締めくくりでえ、ブルーベル将軍腹を抱えて笑ってたわよぉ」

 綺麗な形の爪に真紅のマニキュアを塗りながら、マリオンがケラケラ笑いながら言う。

「あんな状況の中で笑ってられんのは、将軍くらいなもんだろう。神経が丸太並だからよっ」

 ビールをひっかけながらギャリーが言うと、食堂のあちこちから頷きが返ってきた。

 葬儀の中でキュッリッキが召喚の力を使い、呼び出した巨人には驚愕ものだった。これまで様々な奇跡を見せてくれたり、フェンリルやフローズヴィトニルなどの巨狼も目の当たりにしたし、フリングホルニではロキという名の神まで見せられた。今更何を見せられたって驚くものか、そうライオン傭兵団の皆は思っていた。

 しかしあの3体の巨人には、圧倒的な威厳を感じ、キュッリッキに声をかけることすら憚られた。壇上だけ別の世界の出来事になっているような、そんな錯覚さえ覚えるほどに。

 ところがである。

 3体の巨人が消えたあと、現れたのはベルトルドとアルカネットの幽霊。

 昨日フリングホルニで死闘を演じ、その死を見届けたばかりだというのに、もう化けて出てきているから、驚くよりも何故か腹が立っているライオン傭兵団の面々だ。しかも、死んで幽霊となっても、相変わらずの高慢で傲慢な居丈高で高飛車な上から目線の態度。それがより怒りを煽っている。

 さすがに幽霊の出現は、召喚の力によるものじゃないだろう。

「あのオヤジども、死んでちょっとは悲しい、とか思って損したぜ」

「化けて出てきちゃうほど、キューリちゃんが大好きすぎたってことだね」

 ザカリーを宥めながら、ルーファスはにっこりと笑った。

 キュッリッキを抱きしめている時のベルトルドの幸せそうな顔を思い出すと、気持ちが表れすぎて、切ないほど微笑ましい。キュッリッキにだけ見せていた特別な笑顔。本当に心の底から、愛していたんだとよく判る。それだけに、キュッリッキを傷つけ、死んでいったことが悔やまれた。

「なあ、巨人やおっさんたちとキューリが話してた、飛行技術を返せってのなんだ?」

 ザカリーは思い出したように誰にともなく言うと、カーティスは頷きながら座り直す。

「フリングホルニに向かう前に、リュリュさんから今回の事件の発端を話してもらった内容は、覚えていますね?」

「ああ。リュリュさんの姉貴が飛行技術を思いついて、それで神に殺されたって」

「ええ。ベルトルド卿はその飛行技術を、人間たちの手に返してもらうために、今回のような無茶なことをしでかしました。でも、志半ばで、我々に阻まれて失敗しましたよね。しかしその意思はキューリさんに引き継がれ、キューリさんは神々に訴え、飛行技術は人間たちの手に取り戻すことができた、ということです」

 それまで愚痴や酒に意識を傾けていた皆が、カーティスに視線を向ける。

「私は魔法スキル〈才能〉を持っていますから、空を飛ぶことは自由自在です。不便を感じたことはありません。だから、魔法やサイ〈超能力〉、アイオン族以外の人間たちが、空を飛べないことを、不思議だと感じたことがないんです」

 紅茶を一口すすって、カーティスは肩で息をつく。

「1万年前の出来事、というのは、リュリュさんからの話でしか判りませんが、人間たちから飛行技術を奪って、それを不思議にも思わせないようにしていた神々の意思もよくわかりません。けど、ベルトルド卿はあらゆる犠牲を払ってでも、それを取り返そうとして皮肉にも、傷つけた少女の手により飛行技術は取り返されました」

 あれだけ溺愛していたというのに、傷つけてまで成そうとした。そして、命を賭して成就した。

 あんなことまでして取り返した飛行技術が、この先人間たちにどんな幸運や不幸を与える事になるのかカーティスには興味がない。取り返せたといっても、今日明日にすぐ結果が出てくるわけではないからだ。

 もしかすると、飛行技術はついでで、リューディアという人の願いを叶えたいだけに無茶をしたのだと、そうカーティスは解釈しようとした。あのベルトルドにそこまでさせるリューディアという存在に、カーティスは若干の興味を惹かれたが、今となっては所詮儚い人たちになっている。

 自身が死ぬことを想定して、事後処理や諸々をリュリュに託していたことが、なんとも言い難い。死ぬつもりでやっていたのかと思うと、殴りたい衝動に駆られる。

 最後まで無茶苦茶を押し付けられたが、ベルトルドがライオン傭兵団に遺してくれた金銭的なものは、計り知れない額である。それに今後リュリュが後ろ盾となり、軍や行政との渡りもつけてもらっている。仕事の依頼も変わらず困ることはなさそうだ。

 非道な態度を見せつけられた割には、細かいところまで気遣いが行き届いているから、心底憎めないのが残念だった。なんだかんだ言われながらも、ベルトルドに守られていたのだ。

 カーティスはずっと、ベルトルドが目の上のたん瘤だった。

 自分で作ったライオン傭兵団を私物のように扱い、偉そうに口を出してきて仕切るし、迷惑この上ない仕事まで遠慮の欠片もない態度で押し付けていく。断りたいのに断れないジレンマと戦う4年近くだった。

 ベルトルドと決別したくてしょうがなかった。それが、念願かなって死んで関わりを断ってくれた。それなのに心は晴れ晴れとせず、やりきれないイヤな重みがのしかかっていた。

 でも――。無事葬儀も済んだし、イララクス復興に伴ってアジトの再建も行う。明日から気持ちを切り替えていかなくてはならない。

 自分たちはこの先も、生きていくのだから。

「発端となった飛行技術云々も無事解決を見たようですし、我々はアジトの再建と仕事を再開していかなければなりません。明日から土地買収の交渉やギルドとの連絡、忙しくなりますよ」

 カーティスの笑みを受けて、皆ニヤリと口の端しを歪める。

 いつまでもしんみりムードはライオン傭兵団には似合わない。ベルトルドとアルカネットは死に、葬儀で化けて出た二人があの世へと旅立つのをきちんと見送った。今日は二人への愚痴を散々言い合って、それで彼らのことは思い出に仕舞い込む。

 皆が気持ちの向きをそう変えていたとき、ルーファスはふと気がつく。

「そいえば、さっきからキューリちゃんとメルヴィンが見えないけど、部屋にいるのかな?」

「いや、あいつらはゼイルストラ・カウプンキに行ったらしい。2,3日留守にするってよ」

 ギャリーが答えて、ルーファスは眉をひそめた。

「自由都市になんで?」

「ゼイルストラはベルトルド卿たちの故郷なんですよ。リュリュさんに連れられて行ったようです」

 お墓はそこにたてるそうです、とカーティスが言った。

「そっかあ…」

 ぽつりと呟き、ルーファスはため息をつく。

「自由都市はエグザイル・システムがなかったよね。昨日の今日で、キューリちゃん体調大丈夫かな」

「リュリュさんとメルヴィンがついてますし、疲れるでしょうが、大丈夫でしょう」

「うん、そうだね」



 ウエケラ大陸から大型客船が1日に1回、ゼイルストラ・カウプンキに向けて出航している。

 約半日の航海になるため、夕方に出航だった。これに間に合わせるために葬儀が済むと、リュリュは説明もそこそこに、あらかじめリトヴァに用意させていた荷物を持って、キュッリッキとメルヴィンを拉致るようにして、間に合うように出発した。

 正規の移動手段だと到底間に合わないので、キュッリッキに移動できる召喚を頼んでの強行軍だ。

 ほとんどギリギリに船に飛び乗った3人は、客室にそれぞれ案内されると、ベッドに沈んでしまった。

「目が回るう…」

 仰向けにベッドに寝転がっていたキュッリッキは、同じベッドに腰掛けるメルヴィンを見上げた。

「ホントですね…。強行軍にも程があります」

 キュッリッキの頬を優しく撫でて、メルヴィンは苦笑を漏らす。葬儀直後だというのに、感傷に浸るまもなく、リュリュに尻を叩かれる勢いで飛んできたのだった。

「とにかく疲れたでしょう。もうゆっくり休んでください」

 にっこりと言うメルヴィンに、キュッリッキはちょっと眉を眇める。

「寝る前に何か食べたいかも。お腹すいちゃった…」

 キュッリッキが空腹を訴えることは珍しい。ということは、余程お腹がすいているのだろう。メルヴィンは立ち上がると、入口のそばに掛けられていた案内状を見る。

「夕食は20時からだそうです。あと1時間は我慢してください」

「うにゅー」

 ころんっと向きを変えて、キュッリッキは口を尖らせた。

「いっぱい食べるんだから…」

 まだ見ぬ夕食に、キュッリッキは食欲を燃やした。その様子を見て、メルヴィンは苦笑する。

 キュッリッキの”いっぱい食べる”は、通常の大人の平均的摂取量より、実は少ない事を知っている。痩せの大食いとは、キュッリッキには無縁な言葉なのだ。

「リッキー、あの…」

「うん?」

「その……」

 道中メルヴィンはずっと気になっていたことがある。

 葬儀の時の、飛行技術が戻るとかどうの、ということ。

 なんとなく、そのことだと察して、キュッリッキは頷いた。

「1万年前の出来事で人間たちから取り上げちゃった飛行技術を、今後誰かが発明できたとき、見守ってくれるって約束してくれたの。今はまだ誰も閃いていないし、発明も出来ていないけどね」

「そうなんですか…」

 キュッリッキは両腕を伸ばして大の字になると、低い天井を見上げる。

「9千年の時を費やして、丁寧に人間たちの中から、生活の中から、飛行技術に関する全てを消し去ったの。遺伝情報から記憶から何から何まで。でもね、それから千年の時をかけて、人間たち自身は気づくの。空を飛びたい、どうやったら空を飛べるのか、身体一つでじゃなくて、乗り物や道具を使って空を飛ぶにはどうしたらいいか。ほんの小さな想いや願いは、やがてリューディアの中で芽生えたの。千年で初めて」

「……」

 人間たちにとっては、途方もない年月。それだけの時を経て、ようやく自力でたどり着いたというのに、神は無残にも摘み取ってしまった。

「リューディアのことがあったから、ベルトルドさんは奮闘したの。だから、それがなかったら、人間たちの手に飛行技術が戻るなんて、一生なかったかもしれない。あるいは、リューディアやベルトルドさんたちのような悲劇が、別の誰かに起こったかも…」

「そうですね…」

「飛行技術が返ってきて、その後どう人間たちが使っていくか。ユリディスの時のような悲劇になるか、別の悲劇に繋がるのか、それは判んない。でも悪いことばっかり考えちゃってたら、なんにも出来なくなっちゃうもん。だからティワズ様は、見守ろうって言ってくれたの」

「使う人間次第ですね」

「うん。それにね、どうせアタシたちが生きてる間に、危険になるほど空が飛べるようには、さすがにならないと思う」

 悪戯っ子の笑みを浮かべて、キュッリッキは伸びをする。

「でも、機械工学スキル〈才能〉持ちの人たちが、昔の遺産を発掘したり調べたりしているんですよね。基礎が見いだせたら、開発運用発展は早そうですけどね」

「う…にゃー」

 メルヴィンの指摘に、キュッリッキは神妙に眉をひそめた。

「まあ、ティワズ様が折れてくれたのには、ある理由があるの」

「理由?」

「ベルトルドさんたちが掘り出したフリングホルニ、まさに1万年前、神の領域を侵そうとした元凶であるあの船を、壊し忘れちゃってたこと」

「……ああ…」

「モナルダ大陸が半壊しちゃうほど深く深く眠っていたから、気付かなかったのか、忘れちゃったのか。だからアタシが指摘してツッコミ入れる前に折れてくれたんだよ」

 にこりと笑ったキュッリッキの笑顔を見たら、神々は大いに凹むだろう小悪魔な笑みだった。

「神を脅迫するなんて、巫女っていうのはすごいんですね…」

「アイオン族はロキ様が創った種族だしね~」

 フリングホルニやハーメンリンナで見た金髪の美丈夫を思い出す。確かにどこか人懐っこい笑顔と、意地の悪そうな笑みを同居させる表情をする神だった。

「ベルトルドさんとアルカネットさん、安心して旅立ってくれて良かったの。ニヴルヘイムにいるリューディアも、きっと喜んでくれると思う……」

 いくらお気に入りの巫女の頼みとは言え、重大な神々の決定を覆すのは容易ではないはずだ。それがああも簡単に了承を得られたのは、トールの失態によりリューディアという尊い犠牲を払ったこと、キュッリッキの身に降りかかった悲惨な出来事、ベルトルドとアルカネットの抱えた大きな悲しみと憎しみ。それによって歪ませてしまった世界。

 神々の思惑が招いた結果が、マイナスに傾きすぎたのだ。それもあって、ティワズの決断を促したとも言える。

 キュッリッキ自身、交渉は長引くと覚悟はしていたのだ。しかし蓋を開けてみたらあっさり願いは叶った。

 ベルトルドたちの心と想いを救い、送り出せて本当に良かった。

 見つめていた天井が急にメルヴィンの顔になって、キュッリッキは目を見開いた。

「そういえば、フェンリルとフローズヴィトニルはどうしたんですか? 彼らを見かけないんですが」

「アタシたちに遠慮して、アタシの影に潜んでいるんだって」

「え」

「それくらいの気、ちゃんと使うんだぞって言ってたよ」

「な、なるほど」

 今にして思えば、キュッリッキを初めて抱いた昨日の夜、あの2匹の神は同じ部屋にいたようなと気づいて、メルヴィンは赤面した。

 絶頂を迎えてキュッリッキが意識を失うまで、熱く激しく睦みあったのだ。素面では到底口に出せない言葉も、たくさん言った気がする。

 メルヴィンは再びベッドに腰を下ろすと、困ったように頭を抱えた。

「どうしたの? メルヴィン」

「い…いえ…」

 キュッリッキは身体を起こすと、メルヴィンの背中に抱きついて、横から顔を覗き込んだ。

「フェンリルたちに会いたいなら呼ぼうか?」

「……そのままずっと、危険が起こるまで影に潜んでいてください」

 そう言って、メルヴィンは長い長い溜息を吐きだした。



 夕食の時間が近づいて、リュリュが迎えに来てくれた。

 荷物の中には、船で着るドレスも入っている。それを着ろとリュリュに言われて、キュッリッキはどうにかドレスを自力で着た。一人で着られるデザインを、リトヴァが選んでくれていたのだ。

 薄手のシルクで作られた、ノースリーブのシンプルなドレスだ。丈は膝上までしかなく、肩から裾に向けて、青の濃淡が綺麗なグラデーションになっている。胸元には、本物のダイアの粒が、銀砂のように散りばめられ、キュッリッキの白い肌と金色の髪がより映えて美しかった。

 リュリュとメルヴィンは、シンプルな半袖の白いシャツとスラックス姿で、3人はダイニングの特別席へ通された。

 豪華なフルコースが振舞われ、3人はとにかく無言で手を動かし続けた。

 忙しすぎて、食事もまともに食べていなかったのである。酒はそっちのけで、デザートまで全て平らげると、湯気の立つ紅茶を美味しそうに飲みながら、ようやくリュリュは言葉を発した。

「食欲なんてナイ、なんて思っていたけど、案外空腹だったのね。ひさしぶりにまともに食べた気がするわ」

「アタシも。一生懸命食べちゃった」

「そうですね。普段の倍くらい、食べきりましたねリッキー」

「えへへ」

「そんくらい普段からちゃんと食べなサイ。あーた細りすぎて貧血連発しちゃうわよ」

「ううん……あんまりお腹空かないから」

「目指せ子豚体型! て思いながら、高カロリーの甘いものでも毎日毎日食べてなさい」

「ぇー」

「それはちょっと……」

「どーせ、アイオン族は太らないんだから」

 肥満体型のアイオン族など、少なくとも惑星ヒイシでは見たことがない。

「ねえリュリュさん、ゼイルストラ・カウプンキってどんなとこ?」

 少し冷めてきたアップルティーを飲みながら、キュッリッキはサラリと話題を変える。

「そうねえ、惑星ヒイシで一番の海洋リゾート地ってとこかしら。この惑星に5つある自由都市の中で、一番外に開かれた自由都市ね」

 都市としての機能が全て集う大きなアーナンド島を中心に、住人たちの暮らす無数の小さな島々が集まる群島。別名ミーナ群島と呼ばれるそこを総称して、ゼイルストラ・カウプンキという。

「アタシ仕事でラッテ・カウプンキなら行ったことがあるよ。大陸の中にあったから、普通にちょっと大きい都市だったけど」

「そうね。海のど真ん中にあるのはゼイルストラくらいなものよ。リゾート地だから、年がら年中賑わってるし、アーナンドに着いたら、そこから小型クルーズで1時間移動になるわ」

「ベルトルドさんの記憶で見たよ、シャシカラ島」

「ええ。アタシたちの生まれた、懐かしいあの島へね」

 ベルトルド、アルカネット、リュリュたちの両親3家族だけが暮らす島。

「アーナンド島の敷地はとても高いし、観光客で溢れかえってるから、アタシたちの家族はシャシカラ島を買って、生涯シャシカラ島で暮らすって決めたの。だから、ベルとアルのお墓は、シャシカラ島へ建てるのよ」

「リューディアのお墓もあるんだよね」

「ええ。ひさしぶりにお墓参り出来るわ、お姉ちゃん」

 リュリュは様々な感情をいり混ぜて、表情に浮かべていた。

 幼馴染で親友だった二人の遺灰を持って帰郷するのは、さぞ複雑な思いがあるだろう。両手で紅茶のカップをはさみ、もうからになった中身をジッと見つめ、時折苦笑いのようなものも口元に浮かんでいた。

「さて、アタシはバーで一杯引っ掛けて寝るから、あーたたちはもうお風呂に入って、ゆっくりおやすみなさいナ」

「うん、そうする」

「それとメルヴィン」

「はい?」

「小娘結構疲れてるから、今夜は手出しせず寝かせてあげなさいネ」

 ムフッとウインクされて、メルヴィンは耳まで顔を真っ赤にさせた。

「そ、そのくらいの分別はついてますっ!」

 声が裏返りながら言い返すと、キョトンとするキュッリッキの手を掴み、メルヴィンは憤然とダイニングを出て行った。

「案外、小娘からかうよりメルヴィン弄ったほうが楽しいかもねん」

 去りゆく二人の後ろ姿を見送りながら、リュリュは優しく微笑んだ。


最終章:永遠の翼 葬儀のあとで つづく



133 最終章:永遠の翼 貴方に手向ける黄金の炎:後編

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コメント

 

今日は^^

後編は直ぐに気付いてなろうの方で何とか読んで来ました。
何か最近ネット環境最悪で、開いたら40分ぐらいフリーズとか文字打てなかったりで更新も大変で、昨日の夜から急に回復したと言う……。何だったんだろう?

しかし前回はお葬式なのに爆笑場面満載で、まさかこんなに早く幽霊で出て来るとは誰も思よね。私も思ってなかったけど、それだけ心残りがあったって事よね。

トール神からもやり過ぎたと認めて謝ってくれたし、飛行技術の事も理解してくれたから、これで御大たち心置きなく成仏できるだろうなと思ついつつ、死んでなおリッキーを取り合ってる辺り、あんたら本当に成仏できるのか?って感じもどことなくありますが、まあメルヴィンの事は信頼してくれているようなので大丈夫かな?
でも、御大とかは特にいづれ何処かでこっそり守護霊とかになって、リッキー達家族を見守ってそうな気もするんだが、如何だろう?

そして今回は、まだまだ忙しそうですね。
そうですよね。死んじゃったんだからお墓たてなきゃならないし報告もきちんとしないといけないですよね。
きっとリューディアの隣に建てるのでしょうが、親の思いを考えると辛いものがあります。

しかしこれでみんなやっと踏ん切りはついたようだし、リッキーもお腹がすいたと言う感覚が戻ってきて良かった。
本当に悲しすぎる時や落ち込んでいる時って、お腹って減らないから、リュリュたんも含めてそこまで元気になったって事ですものね。
良かった、良かった。

そして、そっかぁ~フェンリルとフローちゃんがリッキーの側を離れる訳も無く、影にずっと潜んでいるとは言え、メルヴィンそれは分かっちゃうとやりにくいよなぁ、今後(笑
でも、これはもう慣れるしかないから、頑張れメルヴィン♪
これからもラブラブしちゃえ。
とりあえず今夜はダメだけどね~(笑

後2話か。。。
さみしくなるけど、続き楽しみにしてます^^/
(笑

涼音 #PaK5/ZHM | URL | 2017/04/18 17:00 | edit

Re: タイトルなし

涼音さんおはようございますヽ(・∀・)ノ

>開いたら40分ぐらいフリーズとか文字打てなかったりで更新も大変で

なんでしょうね~? 回線の不具合なのかパソコン本体が原因なのか。自動更新のファイルが溜まりすぎているとか設定が邪魔をしてるとかもないのかな・・。
意味不明のエラーで作業を妨げられるのは、イラッとしますよね>< 治ってよかったですw

>しかし前回はお葬式なのに爆笑場面満載で

ホント、最後までシリアスの続かない御仁ですね(笑)
せっかく幽霊になって出てきてまで、やってることは生きてる頃と変わらず・・。
キュッリッキさんに沢山のことを伝えたかったのに、ああいう状態で死にましたし、心残りはあったと思います。ロキはああ見えて自分の直系の子孫が可愛いんですよね。ちゃっかり御大とアルカネットに力を貸して、未練を断ち切らせてくれてました。とは言っても、御大だけは未練たーーっぷりですけどw
成仏に関しては大丈夫です。ロキが与えてくれた時間はホントに短かったので。一応は成仏します一応・・・w

>御大とかは特にいづれ何処かでこっそり守護霊とかになって

最強の守護霊ですよね(笑) フェンリルが守るより強そうですが、守護霊になったのをいいことに、風呂とか堂々と覗いてそうです御大(´_ゝ`)
でも、御大が守護霊になったら、メルヴィン気が休まらなさそうw

>親の思いを考えると辛いものがあります。

次回御大のご両親たちが登場しますが、中々に剛毅な一面を見せてくれますw

>メルヴィンそれは分かっちゃうとやりにくいよなぁ、今後(笑

メルヴィン真面目ですからね~w
そのうち「夜は部屋の外に出ててくれませんか(つд⊂)」て言ってそうです(笑)

>さみしくなるけど、続き楽しみにしてます^^/

ありがとうございます(^ω^)
今月中に終わるといいな、て感じで下書き進めてますw

ユズキ #mQop/nM. | URL | 2017/04/19 08:15 | edit

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