片翼の召喚士-ReWork-:episode398

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 エルアーラ遺跡編:episode398

 空の色は青みを深め、陽射しにも熱を帯び始めた朝。軍服ではなくいつもの仕事着に着替えたライオン傭兵団は、宿の外に出た途端、物凄くレアな光景が寝ぼけ眼に飛び込んできた。

「……!?」

 皆は揃って、ゴシゴシと目を擦る。そして前方を、目を凝らして再度見る。

 腕を組み、ツーンとそっぽを向いているキュッリッキの足元に、ベルトルドとアルカネットが土下座して、なにやら頼み込んでいるのである。

 その異様な光景は、ライオン傭兵団のみならず、遠巻きに事態を見守っているダエヴァたちの心を不安に陥れていた。なにせ、ベルトルドとアルカネットが、少女にひれ伏しているのだ。

「一体、何事ですかぃ?」

 恐る恐るギャリーが問うと、目を腫れぼったくさせたキュッリッキが「ムッ」と睨みつけてきた。顔が美しいだけに、その鬼迫に恐れ仰け反る。

「リッキーに遺跡までの乗り物を、召喚してもらおうとお願いしているんだ…」

 顔を伏せたまま、ベルトルドが弱々しく言った。なんだか肩のあたりに、雨雲が垂れこめているような錯覚を覚えてしまう。

 いつもなら、ベルトルドやアルカネットの頼みを、二つ返事で快く引き受けているのに、今日に限ってこの態度。

(まあ、無理もねぇやなあ……)

 頭をガシガシ掻きながら、ギャリーはゲッソリと薄笑いを浮かべた。

 昨夜のサンルームでの出来事は、この場にいる全員に筒抜けだった。その後のキュッリッキの大泣きと大暴れも宿中に木霊していて、ご機嫌ナナメなキュッリッキの態度もよく判っている。

 一晩中大声で泣き喚き、やがて疲れてキュッリッキが眠ったのが明け方頃。また怒り出さないかと不安で、ベルトルドとアルカネットは寝ることができなかった。

 時間通りに集まってはいたが、キュッリッキは目を腫れぼったくしており、寝てもおさまらない怒りに包まれた表情で大むくれである。

 このままだと、一向に事態が進まないと判断したカーティスは、

「でしたら、ベルトルド卿のサイ《超能力》を使って、転移で全員運んでいただくとかはどうでしょうか?」

 との案に、ベルトルドはゆるゆると顔を上げて振り向く。

 ――む、無理だ……!

 振り向いた肩ごしのベルトルドの顔を見た一同は、カーティスの案は答えを聞く前に却下だと悟った。

 目の下には薄らと隈が浮き上がり、疲労困憊を隠そうともしないほど満面を覆っている。そして同じように振り向いたアルカネットも同様で、額に赤い痣も出来ていた。何かが直撃した痕だと察しはつく。

 サイ《超能力》は精神力を源とする。空間転移も念力も、今の状態で使わせるのは酷すぎた。たとえ行使しても、座標がずれてドコへ飛ばされるか見当もつかないので怖い。

 この状況を打破する、何かいい案はないものか。カーティスが腕を組んで考え始めたとき。

「リッキーさん」

エルアーラ遺跡編:episode398 つづく

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