029 第三章 求めるもの メルヴィンの想い

誰かきっと待っててくれていたと信じて、続き出来ました~。

何か、こう、戦闘シーンとか動き回るシーンじゃない、日常的なシーンって慣れないから余計書くのに苦労します( ̄▽ ̄;)

戦闘とか単語の羅列で誤魔化せたりできるし…ゲホッ…日常だとどうしても。

起承転結な綴りってまだまだ不勉強で、緩急つけて書くのもまだ修業中。3章終われば突っ走る内容になるので、のんびりとした3章はだいじな部分。


御大がえらいこっちゃえいらいこっちゃになります(・ω・)☆




ALCHERA-片翼の召喚士-
第三章 求めるもの メルヴィンの想い 029




 キュッリッキの寝ているベッドの傍らに座り、メルヴィンは不機嫌を露骨に貼り付けた顔で己の膝を睨みつけていた。

 規則正しい寝息をたて寝ているキュッリッキの顔には、明らかな疲労感が漂っている。このところ毎日この調子だ。

 隣の部屋で寝ているメルヴィンには、夜中に時折キュッリッキの悲鳴や泣き声、叫ぶような声が頻繁に聞こえてくる。その声に目を覚ますこともあり、ベルトルドやアルカネットに問いただすが適当にあしらわれるだけだった。

 ベルトルドの屋敷にきてからすでに2週間になり、キュッリッキの怪我も順調に快方に向かっていた。ベッドに半身を起こして過ごすことも出来るようになっている。

 しかし怪我とは別に、何かが彼女をこのような様子にさせている。

 原因をベルトルドたちから聞き出すことも出来ず、キュッリッキも話そうとしない。

 秘密にしなければならないほど、言えないことなのだろうか。一体何に苦しんでいるのか。

 それが判らず、メルヴィンの機嫌を損ねていた。

 仲間になって日も浅いが、少しでもなにか話してほしいと思う。愚痴でもいいし、話せばすっきりすることならいくらでも聞く。そのために自分はここにいるのだ。

 毎日それとなく言うのだが、キュッリッキは困ったように小さく笑むだけで、口を閉ざしたままだ。

「メルヴィン…」

 名を呼ばれ、メルヴィンはハッと顔を上げた。

 ベッドに顔を向けると、不安そうに見上げてくるキュッリッキの視線とぶつかった。

「起きたんですね。気分はどうですか」

「……うん、大丈夫だよ」

 おっかなびっくりといった声音に、メルヴィンが首を傾げた。

「メルヴィンなんだか怒ってる感じがするから…ちょっと怖い」

「あ……」

 メルヴィンは咄嗟に顔に手をあてると、頬を軽く叩く。

「すみません、考え事をしていたから」

 そう言って苦笑を浮かべる。

「考え事?」

「……あなたのことを考えていました」

「アタシのこと?」

 目を見張るキュッリッキから顔を背けると、メルヴィンは再び膝に視線を落とした。

「もっと、頼ってほしいなと…思ってるんです」

 穏やかな口調だが、どことなく拗ねた響きがある。

 メルヴィンが言う意味に、キュッリッキには思い当たる節があった。

 毎日のように問われていることだ。

 メルヴィンの気持ちは痛いほど感じている。彼は感情が表に出やすいタイプだった。

 それでも本当のことを話す勇気が、まだ出せないでいる。

 ベルトルドとアルカネットは、あらかじめ自分のことを知っていた。それでいて惜しみない愛情を注いでくれている。だから全てをさらけ出すことができた。

 メルヴィンは何も知らない。過去のこともアイオン族であることも、そして片方だけの翼のことも。もしこれらのことを話せば、彼はどう思うのだろう。

 ライオン傭兵団の中では、メルヴィンのことが一番好きだ。優しいし面倒見がよく、話しやすい。だから、自分のことを知ったとき、嫌われるかもしれない。

 嫌われるのは絶対嫌だった。それで話すことが怖い。

 それがかえってメルヴィンにはいらぬ心配をかけさせていることも判っていた。

 キュッリッキは左手をシーツの中から出すと、メルヴィンに伸ばした。

 自分に伸ばされた細い手に気づいて、そっと両掌で包み込む。この2週間で一回り小さくなった頼りなげな手が、ほのかに温かい。

「アタシね、昔嫌なことがいっぱいあった。ずっと思い出さないようにしていたの。でも最近夢に見ちゃったりして思い出して」

 一旦切ると、キュッリッキはメルヴィンに顔を向ける。

「あのね、もうちょっとだけ時間くれる? メルヴィンにもルーさんにも、傭兵団のみんなにもちゃんと話すから。話せる勇気が持てたら絶対に話すから」

 必死に言うその瞳を見て、メルヴィンは表情を和ませた。

「はい。勇気が出るまで待っています」

「ありがと」

 キュッリッキはホッとしたように微笑んだ。

「遺跡でみんなが助けに来てくれたとき、メルヴィンずっとアタシの手を握ってくれてたでしょ」

「ええ」

「あったかくて嬉しかったんだよ」

 出血が酷く体温が下がる中で、メルヴィンが握ってくれていた左手に感じる温もりが、とても嬉しかった。

「ここにきても、ずっとそばにいてくれてありがとう。だから、一番に話すから、信頼してるから、もうちょっと待っててね」

「そう思っていてくれて、オレのほうが嬉しいですよ。毎日催促するようなことをしてすいません」

 心の中にわだかまっていたものが、ほぐれていくような感じがしていた。

 血だまりの中で息も絶え絶えになっているキュッリッキを見たとき、魔法スキル〈才能〉も医療スキル〈才能〉も持たない自身に腹立たしかった。できることは傍にいて励ますくらいで。今も傍にいることしか出来ないでる。

 しかしそれがキュッリッキにとって少しでも慰めになっているのなら、無駄ではないのだとメルヴィンは救われた気持ちになっていた。

「少し外の空気を吸いませんか? 天気もいいし中庭のバラが綺麗ですよ」

「うん、バラ見たい」

 傷に障らないように気をつけながら、キュッリッキをそっと抱き上げる。

「本当に軽いですねえ……もっと食べないと」

「うっ……、だって…動いてないからお腹空かないんだもん」

 首をすくめるキュッリッキを見ながら、メルヴィンは苦笑した。

 華奢な身体だが、極端に軽いのだ。同じ年頃で華奢な体格をした少女でも、もう少し重いはずだ。

 メルヴィンはキュッリッキがアイオン族であることを知らない。

 アイオン族は空を翔ぶことができるせいか、肥満とは疎遠な体質の種族である。どんなに食べても太らない。そして、ヴィプネン族と比べると、見た目は似ていても、体重には大きな差があった。

 ヴァルトなど身長は2メートル近くあるが、体重は40キロ前後しかない。筋肉も増やすのに苦労をしている有様だ。キュッリッキは30キロ程度しかない。今は殆ど食べないので余計体重は減っていた。

「うわあ、綺麗」

 ベルトルド邸の中庭の一部にあるバラ園には、真っ白なバラがひたすら咲き誇っていた。その白バラに囲まれ、特別に作らせたと言われる淡い青紫色のバラも美しく咲いていた。

「アタシ青い色が大好きなんだけど、ベルトルドさんとアルカネットさんも、青色大好きなんだって」

「この青紫色のバラも、それで作らせたそうですよ」

「なんか、お屋敷の中とかこのバラとか、あの二人徹底してるね」

 クスッと笑うキュッリッキに、メルヴィンもつられて笑い返す。バラ園の中には、白と青紫だけで、赤やピンクや黄色いバラはなかった。

「一本だけもらっても大丈夫かな?」

「リッキーさんが欲しいなら、全然構わないと思いますよ」

「えへへ、じゃあ一本だけ」

 キュッリッキは半分咲きかけた花を選び、ポキッと少し長めに茎を折った。

「部屋に戻ったら一輪挿しの花瓶を借りてきますね」

「うん」

 暫く庭を散策して屋敷のほうへ戻ってくると、何やら使用人たちが慌ただしく走り回って騒然となっていた。

「なにかあったのか?」

 二人が首をかしげていると、バルコニーにいたルーファスが、二人に向けて手を振って走り寄ってきた。

「どうしたんです?」

「あの傲岸不遜な御仁がぶっ倒れて入院したって! その連絡があって屋敷中大騒ぎだよ」

「――あの人でも倒れることがあるんですねえ」

 メルヴィンがしみじみ呟くと、腕の中のキュッリッキの身体が小刻みに震えだした。

「ベルトルドさんが入院って……」

 それ以上は喉が詰まったように言葉が続かない。顔をこわばらせて俯いた。

「詳しいことは判んないけど、これからセヴェリさんが病院へ行くって言うから、オレちょっと一緒に様子見に行ってくるよ」

「判りました。こちらは大丈夫ですから」

「おう、じゃあちょっと行ってくる。あんまり心配するんじゃないよ、キューリちゃん」

 ルーファスは明るく笑ってみせて、屋敷の中に駆け込んでいった。

「部屋に戻りましょうか」

「うん…」

 キュッリッキは小さく頷くと、手に握った淡い青紫のバラの花を、ぎゅっと胸に抱き寄せた。



 薬品の臭いと計器を抜かせばどこかの屋敷の寝室と見まごうばかりの豪奢な一室で、これも贅を尽くした造りのベッドに身を沈めたベルトルドが、眉をしかめて足元のルーファスにきつい視線を向けていた。

「リッキーに喋ってしまったのかお前は」

「はあ……すいません」

 病室に入って5分も経たないうちに、いきなり説教を食らったルーファスは、首をすくめたまま頭をさげた。

「心配事を増やしやがって」

「その心配事の原因になっているのはアナタですよ」

 傍らの椅子に座して脚を組んでいるアルカネットを見上げ、バツが悪そうにベルトルドは顔をしかめた。

 ベルトルドは正規軍の演習を視察中に、突然目眩を起こして昏倒してしまった。このところ顔色が悪いことが多かったが、とくに不調を訴えていなかったので周りも安心していたら、いきなり倒れてしまったのだ。

 秘書や側近などが大騒ぎし、当然軍部も行政も、あらゆる部署が騒然となって半ばパニック状態にまで発展した。

 国の長は皇王、行政の長は宰相。しかし事実上国政を司り動かしているのは副宰相であるベルトルドだ。更に軍部の長である全軍総帥の地位も兼任している。皇王が倒れるよりも大事(おおごと)だった。

「それでその、大丈夫なんですか?」

 控えめにルーファスが問うと、アルカネットが頷いた。

「過労だそうです。寝不足に加えて仕事が過密状態でしたから。1週間絶対安静とのことなので、このまま入院させます」

「俺はもう大丈夫だ!」

「退院しても更に1週間は屋敷でおとなしくさせます」

「ひと眠りしたから気分爽快だぞ!!」

「黙っていなさい全く。倒れて騒動を起こした張本人が偉そうに言っても、説得力なんて微塵もありません」

「……」

 アルカネットに窘められ、不満をふくれっ面に貼り付かせてベルトルドは黙り込んだ。

 親に叱られる子供のようだと、ルーファスはしみじみ思った。昔からこの二人のやりとりは見ていて飽きない。

 泣く子も黙らせる――泣き止むのを待てないから威圧で泣き止ませる――副宰相と恐れられるベルトルドのこんな態度は、滅多に拝めるものじゃないのだ。

 笑いが吹き出しそうになるのを必死で堪えていると、アルカネットが立ち上がった。

「私はルーファスと屋敷に戻ります。アナタの世話はセヴェリに任せますから」

「承りました」

 無言で控えていたセヴェリが、恭しく一礼した。

「俺も帰る」

「ダメだと、言ったはずですよ。少しここでおとなしく養生しなさい」

「リッキーが一人ぼっちになるだろう」

「私が一緒に居るんですから、一人にはなりません」

 アルカネットの表情(かお)を見て、ベルトルドはハッとなる。

 二人きりにさせてなるものか!

「――俺も一緒に帰る!!」

 今にも跳ね起きそうなベルトルドを、セヴェリが片手で胸を押さえつけた。

「こらセヴェリっ! 主に手を出すとはいい度胸だなおい!!」

「病院ではおとなしくなさってください旦那様。お身体にも障りますよ」

 初老の男とは思えぬほどの力で、ベルトルドを押さえ込んでいる。セヴェリはサイ〈超能力〉スキル〈才能〉の持ち主でもあった。

 ジタバタしていたベルトルドは、やがて呼吸が苦しくなり暴れるのを止めた。

「……頼む……胸が苦しいから…押すな」

「これは失礼致しました」

 どこまでも恭しいが、ベッドから抜け出そうとするベルトルドをしっかり押さえ込んで放さなかった。

 その様子に満足し、アルカネットが零れるような笑みを浮かべた。

「それではお大事に。明日お見舞いにきますよ。いきましょうかルーファス」

「はい」

 二人が部屋を出て行くと、ベルトルドは口をへの字に曲げて、露骨に鼻息を吐き出した。

 抵抗することを諦めたベルトルドから手をはなすと、セヴェリは持ってきた彼の身の回りのものをドレッサーやチェストに仕舞い始めた。

 その様子を退屈そうに眺めながら、ベルトルドはキュッリッキのことを考えていた。



 ベルトルドとアルカネットはキュッリッキの心を開かせ受け入れたことで、二人に対して彼女は隠し事をしなくてもよくなった。しかし、それで全てが丸く解決したわけではない。

 それまでずっと忘れようと努めてきた、辛い過去や悲しい想いを押し込めていた蓋が開いてしまったことで、キュッリッキは頻繁に夢に見て思い出すことになってしまった。

 更にナルバ山の出来事も加わって辛い記憶がエスカレートし、とくに夜中の状況は一層酷くなっている。

 過去を夢に見るようになり、夜中に突然目を覚まし、悲鳴をあげたり、泣き喚いたりすることが多くなった。

 その度にベルトルドとアルカネットは起こされるが、酷い時は悲しみや怒りの感情などが溢れ出し、二人を罵ったり怪我の治っていない身体を無理に暴れさせたりする。自分の身体を傷つけようとすることもあった。

 必死になだめ落ち着かせようとする二人に、当たり散らしたことに罪悪を感じて一晩中謝りながら泣きじゃくることもある。

 こんな調子が2週間ばかり続いた。

 それでも少しずつだが、キュッリッキの様子にも変化が見られてきていた。幼い頃からずっと溜め込んでいたものを吐き出し続けることで、徐々に軽くなっていくのだろう。そしてなにより、ベルトルドとアルカネットは辛抱強かった。

 最初の1週間はそれほどでもなかったが、日増しに疲労感が顔に出るようになって周りを不安がらせた。とくにベルトルドは連日激務が続き、休日でも屋敷で仕事が山積し休む暇もない。唯一身体を休められる夜がこの調子である。

 それでついに疲労のピークに達し、病院に担ぎ込まれるという大騒動を引き起こしてしまったのだった。

 ベルトルド自身は、キュッリッキのそんな様子に少しも不満は持っていない。むしろ、もっともっと吐き出させて心を軽くしてやりたかった。これまでがあまりにも辛すぎたのだ。

 心底飽くほど幸せにしてやりたい。嫌になるほど愛してやりたい。しかし志とは裏腹に、自分の身体が悲鳴を上げてしまった。

 普段は思わないことだが、ほんの少し思う。体力の衰えは年齢のせいじゃなかろうか。

「いやいや、歳のせいじゃないぞ!」

 首を振って弱気を打ち消す。ベルトルドの独り言にセヴェリが顔を向けたが、なんでもないとの主の言葉に頭を下げる。

 サイドテーブルに置かれた薬のトレイを見て、げっそりと溜息をついた。

「リッキーと1週間も会えないとか、薬を飲むより辛いぞ」



 せっかく元気が出たと思った矢先に、ベルトルドの入院騒ぎでキュッリッキの食欲は完全に失せてしまったようだった。

 食事に付き添っていたメルヴィンは、無理に食事をすすめようとはせず様子を見守っていた。そこへノックがして、アルカネットとルーファスが姿を現した。

 メルヴィンが立ち上がり、椅子をアルカネットに譲る。

「ただいまリッキーさん。具合はいかがですか?」

 アルカネットの優しい問いに、キュッリッキは今にも泣き出しそうな顔を向けた。

「ベルトルドさん入院したって、病気なの? 怪我をしたの? アタシ心配で」

「仕事のしすぎでただの過労です。でも邪魔なので入院させました。大丈夫ですよ、本人は元気ですから」

 柔らかく微笑むアルカネットの顔を見て、キュッリッキは僅かに肩の力を抜いた。一部の単語に本音が垣間見え、メルヴィンとルーファスは口の端を引きつらせた。

 そんなキュッリッキの様子にアルカネットは椅子を立ち上がり、ベッドに座り直した。そしてキュッリッキをそっと抱き寄せる。

「本当に大丈夫ですから、安心してください」

 優しくそっと頭を撫でてやる。キュッリッキは頷いて、アルカネットに身をあずけた。

 アルカネットは微動だにしないメルヴィンとルーファスを振り返る。

「こちらはもういいですよ。おさがりなさい」

「はい。では失礼します。リッキーさん、おやすみなさい」

「また明日ね、キューリちゃん」

「おやすみ、メルヴィン、ルーさん」

 キュッリッキのぎこちない笑みに見送られながら、二人は部屋をあとにした。



 夕食をとるために食堂へ向かうあいだ、二人は無言だった。とくに会話もなく食堂へ着き、ルーファスが大仰な溜息とともに、だらしなく椅子に座って天井を仰いだ。

「アルカネットさんと二人だけってゆーのは、胃に悪いなあ~~。疲れた」

 その様子にメルヴィンは苦笑で返す。

「そんなに長時間一緒だったわけじゃないけどさ、ジワジワ神経を蝕んでいくような緊張があってよ……」

「判らなくもありません」

 アルカネットはあまり本音を表情にも態度にも出さない。常時にこやかな笑顔と穏やかな口調で包み隠している。それでいて、どこか相手にプレッシャーを感じさせるところは、尋問・拷問部隊の長官をしていた頃から健在だ。

 ベルトルドとキュッリッキに対しては、そうした仮面は存在していないようだが、長い付き合いであるライオン傭兵団のメンバーに対しては、ずっと仮面をかぶり続けている。

「ところで、ベルトルド様の具合は本当に大丈夫なんです?」

 給仕が皿を置いて下がると、メルヴィンは切り出した。

「うん、大丈夫だ。本当にただの過労なんだってさ。ひと眠りしてもう元気だと、ベッドの上でふんぞり返っていたから」

 ルーファスはワイングラスを傾けながら、その様子をジェスチャーを交えて再現してみる。食堂の端々からしのび笑う声が二人の耳に届いた。控えている給仕たち使用人も、気になっていたようだった。

「このところ顔色悪かったろ。寝不足だったらしい。そこに加えて過重労働だったから、身体が先にノックダウンしたようだ」

「普段若ぶっていますが、あれでもう歳ですしね…」

「中年だもんなあ~」

 見かけは充分30代前半で通るのだが、実年齢は40を過ぎている。それをベルトルドに言うと猛烈に怒られるが。

 これを機に仕事の量を減らしてくれればと、帰る道中アルカネットが話していた。

「せっかくキューリちゃんが元気になってきたのに、ベルトルド様が寝込んで洒落にならないし、オレらも健康には気をつけたいね」

「そうですね」

 キュッリッキに笑顔が戻ったところに、ベルトルドの入院騒ぎで、また曇ってしまった。

 ベルトルドやアルカネット、そしてルーファスのように相手の心をほぐしたり、楽しませるジョークやユーモアのセンスがメルヴィンにはなかった。そんなに社交的ではないのだ。

 それでも、信頼していると言ってくれたキュッリッキのために、なにかしてあげたいと思う。

 明日にはどんな話をしてあげよう。彼女に笑顔は戻るだろうか。そんなことをつらつらと考えながら、手にしていたグラスの中のワインを飲みほした。



第三章 求めるもの メルヴィンの想い 続く



028 求めるもの 記憶の残滓

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Comments 4

ふぉるて

こんにちは~(*^ ^*)
マッタリお待ちしておりました!(>ω<)e-267 わーい

さすがの御大も体力的にノックダウンだったのですね~(><;)
アルカネットさんの「邪魔なので入院させました」がいい味だしてます…(笑)

どうにかしてあげたいけど、うまく振る舞えないメルヴィンの気持ち、
なんだかよく分かります~(;ω;) 負けるな~がんばれ!

日常のシーンはゆったりしていることが多いので
なかなか筆が進みにくいですよね(><)”

次回もマッタリ楽しみにしておりまする♪(^ω^)
ではでは…☆

2014-05-07 (Wed) 12:55 | EDIT | REPLY |   

ユズキ

Re: タイトルなし

ふぉるてさんこんにちわ~(*´∀`*)

待っていてくださってありがとうございます><!w

御大も一応人間だったようです(笑)

>アルカネットさんの「邪魔なので入院させました」がいい味だしてます…(笑)

90%は本当に邪魔に思っている、10%は身体を休ませてやりたい、て感じの本音ですね(笑)
御大に倒れられると色々滞るのも事実ですし、キュッリッキさんが心配しちゃうので、ゆっくり休め! ですね(^ω^)

メルヴィンはもっとこう、歯がゆくてしょうがないと思うんです。でも、そう軽々しく打ち明けられる内容でもないので、キュッリッキさんとしては心の準備に時間がかかりそうです。

>なかなか筆が進みにくいですよね(><)”

ホント、色んな表現を取り入れたいとは思うけど、あんまりにもそれやりすぎると鬱陶しくなるし、省きすぎると判らなくなるし、さじ加減が難しいです/(-_-)\

次回はもうちょっと早く出せたらな~と思います。
ありがとうございます~(*´∀`*)

2014-05-07 (Wed) 15:40 | EDIT | REPLY |   

八少女 夕

あらら

御大も化け物じゃなかったのですね。
そりゃ、昼の激務に夜の寝不足じゃ倒れますよね。お大事に〜。
アルカネットさんは、もう手伝ってあげていないのか。
でも、こちらも昼寝しているようには見えないから、けっこう疲労しているんじゃないかしら。

メルヴィンも悩んでいるのですね。何もできないのって、確かにもどかしいでしょうね。

そして、30キロかあ、いいなあ(遠い目)

2014-05-09 (Fri) 00:49 | EDIT | REPLY |   

ユズキ

Re: あらら

八少女さんおはようございます(*´∀`*)

ええ、御大も一応人間でした(笑)
三十路越えると徹夜も寝不足もかなりくるし・・・で(*^^*)

アルカネットさんはちゃっかり自分の執務室で寝てます(笑) ぬかりはないのですw
戦争がナイととくに忙しくない部署なのです♪ だからカーティスは辞めたんです・・・。

メルヴィンは真面目で頭がやや硬いので、ひとりぐるぐるしちゃいがちです。今後重要なキャラの一人になるので見ててやってください(*´∀`*)

>そして、30キロかあ、いいなあ(遠い目)

書いててわたしも思います・・・30キロイイなと(笑)
理想です(/ω\*)

いつもありがとうございます(*´∀`*)

2014-05-09 (Fri) 04:09 | EDIT | REPLY |   

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