片翼の召喚士-ReWork-:episode571

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 美人コンテスト編:episode571

(この先、どうやって歌わせないようにするかが悩みどころ、ですかね…)

 彼岸のような薄い表情を浮かべ、メルヴィンはステージ上のキュッリッキを見つめていた。

 歌が好きだということは、これまで聞いたことがなかった。

 付き合いだしてまだ短いし、全てを根掘り葉掘り聞き出したこともない。ゆっくりお互いの事が判ればいい、そう思っていたから。

 美しい顔は、元気ハツラツな笑みを浮かべ、生き生きと輝いている。光の粒子が舞い散るような錯覚さえ見えるのだ。しかし、この世のものとは思えない声で歌っているのである。

 100年の恋もいっぺんに覚める、などと生易しいレベルではない。覚めるのではなく、吹っ飛ぶような豪快さなのだ。

(でも、とっても楽しそうです)

 不幸な生い立ちのキュッリッキが、歌が好きだということは、とても良いことなのだろう。楽しめる何かを持っていてくれたことは嬉しい。

 が、

「それでも、歌は封印がいいと思います…」

 メルヴィンはゲッソリと溜息を吐きだした。

 5分31秒の『恋のドキドキハリケーンラブ』を歌いきったキュッリッキは、息を弾ませながら、目の前の観客たちを見る。

 歌い終われば、割れんばかりの拍手喝采が飛んでくるとばかり思っていた。それなのに、拍手どころか歓声もない。目の前の人々が何故かひっくり返っている様を見て、不思議そうに首をかしげた。

「ふにゅ~?」

 苦しそうな呻き声が万延していて、キュッリッキは目を瞬かせる。歌に夢中で気づかない間に、何かあったのだろうか。

 気持ちよく熱唱したというのに、観客の態度に不満を感じ、愛らしい顔をしかめる。

「なんか、ツマンナイ反応かもー」

 片方の頬をぷっくりと膨らませ、近くで呆気にとられている司会者にマイクを付き出した。

「はい、返す」

「ハッ」

 マイクを返されて、司会者は意識を取り戻した。あまりの音痴に、意識が別の世界へぶっとんでいたのだ。

「な、なかなかエキサイティングな歌だったネ! キュッリッキちゃんありがとう!」

 追い出されるようにステージの奥を示され、キュッリッキは膨れっ面のままステージの奥へと姿を消した。

美人コンテスト編:episode571 つづく

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