ALCHERA-片翼の召喚士- 特別小咄:フェンリル

本編に忍ばせにくいフェンリルの様子をチョー短く(・ω・)

可愛く描けたかななキャラ絵、フェンリルだって立派にキャラですよ! 仔犬姿だけど神様ですし!w

存在感いつも控えめなフェンリルの、ちょっとした物語。




ALCHERA-片翼の召喚士-
特別小咄:フェンリル





 ソレル王国で瀕死の重傷をおったキュッリッキが、ベルトルド邸に運ばれて1週間が経った。

 ナルバ山の遺跡の神殿の中で、フェンリルは何もできなかった。

 何かの力によって、アルケラに強制送還されてしまったのだ。

 どういった力が働いたのか判らないが、神を強制的に排除できる、強大な力がそこにあったのは確かだった。

 キュッリッキがあれほど怯え、フェンリルも言いようのない違和感を神殿に感じていたが、その為にキュッリッキが酷い怪我をする羽目になったのだ。

 守るために人間の世に来たというのに、守ることができなかった。そのことがフェンリルを落ち込ませていた。

 毎日眠るための薬を飲まされ、今もぐっすりと眠っている。傷を治すため身体を安静に休ませる必要があるのは判る。しかし薬漬けにされるのを見ているのは辛い。

 最近気に入っている青い天鵞絨張りのクッションから飛び降りると、窓をすり抜け中庭に躍り出た。

 神とは言えど、人間の世で力を全て解放することは禁じられている。

 唯一召喚士の求めに応じて、相応の力を振るうことは許されているが、キュッリッキの傷を瞬時に治すような奇跡は決してやってはならないことだった。

 掟を破ればキュッリッキのそばに居てやれなくなる。

 それは耐え難い。しかし、早く治してやりたいと思う。

 この屋敷の人間たちは、献身的にキュッリッキを看護していたので、人間たちに任せるしかなかった。

 見守ることしかできない今の状況に辟易し、フェンリルは用もないのに外に出た。

 屋敷同様だだっ広い庭をうろうろし、やがて花が咲き乱れる一角にきた。

 綺麗に整えられた花壇に、ふと白い小さな花を見つけた。

 鈴蘭とよく似た形をしているが、なんという名の花かは知らない。

 一本持って行ってやろう。そう思いつき、フェンリルは短い前脚を伸ばして茎を折ろうとする。だが、仔犬の姿だと思うように身体が動かせず、かといってこんな場所で顕現するわけにもいかず。

 もどかしげに花をつついていると、

「コラッ! 何をしている犬っころが」

 突然怒鳴られ、フェンリルはびっくりして背後を振り返った。

 作業用のエプロンを身につけた初老の男が、顔を怒らせて歩いてきた。

「どこから紛れ込んできたんだか、花を荒らすとはケシカラン犬だ」

 我は犬ではない、と言いたかったが、喋るわけにもいかず男を睨みあげた。

「いいか犬っころ、ここの花々は雑草とは違うんだ。ワシたちが毎日丁寧に世話をして育てている花なんだぞ。そんなに足で叩いたら、すぐ死んでしまうんだ」

 よく日焼けした顔のシワを、さらに深く刻みながら、男は花に害はないかを確かめていた。

 フェンリルは男を睨みつけていたが、キュッリッキのもとへ持って行ってやりたい花を諦めきれず、そこに踏ん張るように立ちすくしていた。

「おめえ、この花欲しいのか?」

 男は動かないフェンリルを見おろしながら、白い花を指す。

 こういう場合、本物の犬のように尻尾を振ればよかったのだが、姿は仔犬をとっているが中身まで犬を真似るつもりは毛頭なく。唸れば以心伝心で判ってくれるキュッリッキと違い、相手は見知らぬ男。

 どうしようという考えから、自然と喉を鳴らしてしまうと、男は屈み直してフェンリルが折ろうとしていた花をハサミで一本切った。

「こいつはな、スノーフレークって花なんだ。可愛いだろう? 花言葉もいいのがついててな、純粋、汚れなき心、慈愛といったものがあるんだ」

 そう説明をすると、男はフェンリルの口元にスノーフレークの一輪を差し出した。

「おめえさんの飼い主にあげてえんだな。一本持っていけ、きっと喜んでくれるさ」

 フェンリルは男を見上げ、目の前の節くれだった職人気質の手をじっと見る。そしてそっと花を口にくわえた。

 フェンリルは小さく数回尻尾を振ると、男の優しい笑顔を振り返り、屋敷に戻った。



 まだ眠っているキュッリッキのベッドに飛び乗ると、枕元にスノーフレークの一輪を置いた。

 あとで人間が花瓶にいけてくれるだろう。

 フェンリルは何度も何度も顔をキュッリッキの頬に擦り付け、お気に入りのクッションに戻った。

 


特別小咄:フェンリル 終わり



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Comments 8

お千

可愛いです

フェンリル、可愛い~!
頭からお首、肩のあたりまでのころっころ感が何とも言えません。
撫で撫で、すりすり、抱っこしたいです。

子犬、子猫、小鳥、小さいものはみんな可愛いけど、
この可愛さを出すのは難しいでしょう、でもよく描けています。

2014-05-16 (Fri) 13:25 | EDIT | REPLY |   

ふぉるて

こんにちは~(*^ ^*)

子犬ふぇんりる可愛いです~(>ω<)v
そうか~…神とは言えど、掟があって思う様には動けないのですね~。
力が強ければ強いほど「『世界』のルール」に縛られてしまう側面もあるかもですね(><;) 破ればメチャクチャになっちゃいますし…

キュッリッキちゃんを想うふぇんりると、
庭師のおっちゃん(?)の心意気がいい感じです☆
きっとその後に誰かが綺麗に飾ってくれたんですね(*^ ^*)


ではでは…☆

2014-05-16 (Fri) 15:01 | EDIT | REPLY |   

ユズキ

Re: 可愛いです

お千さんおはようございます(*´∀`*)

仔犬はもう殺人的に可愛いですよね~♪(中身は犬じゃないけど!w)
あの丸いラインの頭が何とも言えず、なでなでしたいですホント(´∀`)

お褒めいただけてとても嬉しいです(^ω^)

人物絵よりも小動物絵は難しいです><!!

2014-05-17 (Sat) 05:45 | EDIT | REPLY |   

ユズキ

Re: タイトルなし

ふぉるてさんおはようござます(*´∀`*)

>そうか~…神とは言えど、掟があって思う様には動けないのですね~。

後々理由などが本編で出てきますが、掟があって思うように力をふるえないのですよ~。
もどかしいもどかしい! と歯がゆい思いを味わっているフェンリルです(ノ∀`)
ネタバレしちゃうのであまり詳しく書いてないんですが、なんとなく伝わっていればラッキー! だったので(笑)

この件をきっかけに、毎日フェンリルは庭師のおっちゃんから一輪の花をもらって、キュッリッキさんのところへ持っていくのですよ~。
庭師のおっちゃんから執事代理のセヴェリさんに話がいって、そこからアルカネットさんが聴いて、フェンリルに花を渡すように指示が出ています(^ω^)

「旦那様(ベルトルド)の大事になさっている、大怪我をおったお嬢様(キュッリッキ)のペット(フェンリル)」と(笑) 使用人たちは説明されているので(ペットじゃないけどw)

メルヴィンが責任を持って毎日一輪挿しの花瓶にいけてますw

向こうの世界のフェンリルも取りにいきたいな・・・いずれww

2014-05-17 (Sat) 05:57 | EDIT | REPLY |   

八少女 夕

ら、らぶり〜

けなげで可愛いですねぇ。

神であれば、人間のやっている治療なんてまどろっこしいでしょうけれど、二度と側にいられなくなるとあれば治してやるわけにもいかず、なんですね。

一番いいなと思ったのは「尻尾なんか振ってやるもんか」と一度は思ったけれど、花をくれたので、とりあえず振ってみせてあげた所。

フェンリルの想い、きっとリッキーさんにも伝わっていますね。

かわいいなあ。前回のリッキーさんの壁紙、いただこうと思っていますが、このフェンリルの壁紙もほしいなあ……。

2014-05-17 (Sat) 06:52 | EDIT | REPLY |   

ユズキ

Re: ら、らぶり〜

八少女さんこんにちわ~(*´∀`*)

色々と制約がついてまわっているので、思い通りにいかないのです~。

>一番いいなと思ったのは「尻尾なんか振ってやるもんか」と一度は思ったけれど、花をくれたので、とりあえず振ってみせてあげた所。

ありがとうございます(´∀`)
彼なりの最大限の敬意のあらわれです。人間世界で生きていく神様もタイヘンなのです(笑) 見た目が頼りない仔犬だし。

こっそり楽しむぶんにはこっそりお持ち帰って壁紙にしちゃってください(´∀`)

2014-05-17 (Sat) 17:54 | EDIT | REPLY |   

リョウコ

今掲載されているものを、返し読みして
今、番外編を読みました
フェンリルの想いが、とってもいいです
その気になれば、傷を治せるのに
傍にいる為に力を使わない
キュッリッキちゃんにとっても
フェンリルがいなくなってしまうのは、とても辛い事ですよね
お互い、かけがえのない存在なんですね

コメントを見て
ますます
ベルトルド様が好きになりました
例え、父親みたいだと思われていても
別に好きな人がいるとわかっていても
キュッリッキちゃんを大切にしてる
素敵な大人ですね(*´∇`*)

2014-08-02 (Sat) 17:21 | EDIT | REPLY |   

ユズキ

Re: タイトルなし

リョウコさんこんばんわ~(*´∀`*)

>フェンリルがいなくなってしまうのは、とても辛い事ですよね

物心つく頃にはすでに傍らにいましたからね~。
育ての親でもありますしw
キュッリッキさんもフェンリルがいなくなるとは全然考えてないほど身近な存在です(^ω^)

>ベルトルド様が好きになりました

我が道をゆくタイプなんですけど、基本は面倒見がいいアニキ系おっさんですから、好きになってもらえて嬉しいです(*´∀`*)

拙い文章で申し訳ないですが、何度も読んでくださってありがとうございますヽ(*´∀`)ノ

2014-08-02 (Sat) 21:45 | EDIT | REPLY |   

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