片翼の召喚士-ReWork-:もくじ(完結)

片翼の召喚士-ReWork- ユズキのファンタジー工房

片翼の召喚士キュッリッキのハードスペクタクル恋愛ファンタジー

片翼の召喚士-ReWork-

背に2枚翼を持つアイオン族に生まれた18歳の少女キュッリッキは、生まれつき右の片方だけしか翼がない。そのことで生まれてすぐ両親に捨てられ、美醜を重んじる同族からは出来損ない、みっともないと忌み嫌われ、蔑まれながら孤独に生きていた。

アイオン族であり、片翼であることをひた隠しにして、フリーの傭兵をしているキュッリッキのもとを、ハワドウレ皇国副宰相ベルトルドと名乗る男が、自分が後ろ盾をしているライオン傭兵団にスカウトしてきた。ちょうど職にあぶれていたキュッリッキは、それを承諾する。

ライオン傭兵団は総勢15名しかいない団員数にもかかわらず、世界最強を誇り、傭兵界では知らぬ者はいないほど有名で、入団希望が後を絶たないくらいの憧れの的だ。

レア中のレアと呼ばれる召喚スキル〈才能〉を持つキュッリッキは、ライオン傭兵団のリーダー・カーティスから、入団テストを受けさせられる。

これまで他人と心の交流を避けてきたキュッリッキは、ライオン傭兵団に入ったことで、少しずつ心を開き、恋を覚え、様々な出来事を乗り越え成長していく。そして、ベルトルドの企みが、キュッリッキやライオン傭兵団に、多くの試練を与えていくことになる。

幼い恋から始まり、大きな愛で終わる。怒涛の運命に翻弄されながらも、愛と幸せを掴みとろうとするキュッリッキの成長を見守ってください。

ALCHERA-片翼の召喚士-の本編と番外編のリニューアル版です。大幅に修正加筆、追加エピソード、一部構成変更などを行い、もっと楽しく読んでいただけるように書き直していきたいと思います。※結末に変更はありません。

お時間がありましたら、旧作と読み比べてやってください。

片翼の召喚士-ReWork-関連キーワード

R18 / 性描写あり / 残酷な描写あり / シリアス / 女主人公 / 魔法 / 超能力バトル / 冒険 / 異世界 / 下ネタ / 恋愛 / 溺愛 / ラブコメ / 悲劇 / ロマンス / 年の差 / ハイファンタジー / 少女とオッサン / 召喚士 / 悲劇 / コメディ / 片翼 / ネット小説 / 異能力バトル

※性描写シーンのある話のあらすじ欄に、赤文字でR-18と付けます。18歳未満のヒトはご注意ください。

片翼の召喚士-ReWork- もくじ

ライオン傭兵団編 片翼の召喚士-ReWork-

episode01

170m2ほどもある広大な執務室の奥には、重厚で大きな木製のデスクが置かれている。

episode02

ベルトルドは枕に背をあずけてベッドの上に座り、レースのカーテン越しに透けて見える月を、じっと眺めていた。

episode03

目覚ましもなく、朝6時きっかりに、キュッリッキは目を覚ました。

episode04

キュッリッキが住んでいるこの街は、ハーツイーズという。海辺に広がる少し大きな街で、

episode05

オーブンから出てきて、すぐ運ばれたのだろう。チーズとベシャメルソースが、まだグツグツと皿の中で音をたてていて、

episode06

「さあ、行こうかキュッリッキ」ギルドの建物を出ると、男はキュッリッキに左手を差し伸べた。

episode07

ライオン傭兵団と聞いて、キュッリッキは飛び上がるほど吃驚した。

episode08

不思議そうにキョトンとするキュッリッキを見つめ、ベルトルドは軽く声をたてて笑った。

episode09

どこの停車場にも停ることがなかった乗合馬車が、ゆるりと停まった。「閣下、エルダー街に着きました」

episode10

皇都イララクスに含まれる街の一つ、エルダー街。別名・傭兵街と言われ、傭兵、裏の商売、水商売など、

episode11

トン、トン、トンッ、っと沈黙が軽やかにステップを踏むこの空気を、真っ先に破ったのはベルトルドだった。

episode12

「入団テストだとぅ~? 偉そーに」「ほっといてください。これは私のポリシーです」「何がポリシーだ、青二才のくせに」

episode13

「御大帰ったのか?」ベルトルドが消えて少しすると、荷物を抱えた3人の男が、ガヤガヤと階段を降りてきた。

episode14

キュッリッキが案内された部屋は、建物の端にあった。5坪ほどであまり広くはないが、ベッド、文机と椅子、

episode15

エルダー街から歩くこと20分ほどの距離に、行政街との異名を持つクーシネン街がある。

episode16

「ふーん…。で、アタシはどうすればいいの?」戦争の経緯や依頼国の状況など、正直どうでもいいので、

episode17

正午を迎える数分前に、アルカネットは副宰相の執務室に到着した。

episode18

サントリナ国の首都ルヤラで、レンタルの荷馬車を借りたカーティスたちは、食料を買い込むと馬車を走らせた。

episode19

「えっ!? オッサン?」思わず声に出して言ってしまい、怪訝そうな視線がチラホラ投げかけられる。

episode20

雲ひとつ泳がない晴天は、深く青く高い。空の色とは対照的に、赤土色の地面に緑はなく、

episode21

(さて、どんな戦い方をするのかな、このちっぱい娘は)どっかりと地面に座り込み、タバコをふかしているギャリーは、

episode22

一言で表せば、”ぽかーん”である。その”ぽかーん”な表情を貼り付けたザカリー、ギャリー、ルーファスを見て、

episode23

ライオン傭兵団がベルトルドに説教されている頃、キュッリッキは唇を尖らせて、つまらなさそうにつま先で地面を蹴っていた。

episode24

ヴィープリ峡谷から首都ルヤラまでは、来た時と同じように途中の村で馬を変えて、今度は休まず馬車を走らせた。

episode25

「リッキーいるのかー? リッキー」ドンドンドン。ドアの叩く音で、キュッリッキは薄らと目を覚ました。

episode26

ハワドウレ皇国副宰相ベルトルドは現在41歳で、副宰相に叙されたのは、僅か18歳だったと言われている。

episode27

キュッリッキは孤児だ。しかし、些か特殊な例の孤児である。生まれてすぐ捨てられ、あろうことか世間は両親の行いを評価し賞賛した。

episode28

《うみぶた亭》で食事を終えた二人は、市場で食材をそれぞれ買い込んだ。あまり料理はしないが、

episode29

ドアを開けると、知らない男が立っていた。男はちょっと会釈をする。(確認しないで開けちゃった…)

episode30

乗合馬車が来るのを停留所で待ちながら、メルヴィンは傍らに立つキュッリッキを、チラッと横目で見る。

episode31

「アルケラって世界には、色んな子がいっぱーい住んでるの。神様とか不思議な姿の生き物とか。昨日は敵を一気に倒す方法を考えていたら、

episode32

停留所から歩いて10分ほどのところに、酒場《豪快屋》は建っていた。

episode33

奥の誕生席に座らされたキュッリッキは、一斉に注目を浴びることになり、再び顔を赤くして俯いた。

episode34

「ごめんなー嬢ちゃん、騒いで見世物にしちまってよ」反省の色を浮かべた顔で謝るグルフに、キュッリッキは「大丈夫」と微笑んだ。

episode35

0時を過ぎた時点で、キュッリッキは眠ってしまった。昨日までの仕事の疲れと、全員と初めての顔合わせ、

episode36

「なんつーかさ、こんな可愛いくて綺麗な子が、人殺しをするの見るの辛いんだ。1人も600人も同じことだけどよ、

episode37

朝6時、キュッリッキは目を覚ました。暫く天井をぼんやり見ていたが、ここが自分の部屋だと気づいて目を眇める。

episode38

「おはようございます、ご婦人会の皆さん」「ハドリーちゃん、おはよう」

episode39

「それにしてもよう、あのババアども、マジ凄かったな」「ああ、彼女たちは戦闘スキル〈才能〉を持つ、元傭兵出身者なんです」

episode40

エーメリ少年は部屋の一角にしゃがみこみ、まめまめしく働いていた。彼はオデット姫専属の従者である。なんと、副宰相自らに任命されたのだ。

episode41

ハンコをぽちっ、ハンコをぽちぽちっ、サインをササッ、そして書類を積み上げる。そんな作業的業務をこなしていると、ベルトルドは斜め前方にある、小さなデスク前のリュリュを見た。

episode42

いつもなら、すぐにドアを開けてくれたのに、今日は神妙な顔で敬礼されただけだった。それが不思議で、シ・アティウスは軽く首をかしげてみせた。

episode43

ベルトルドがリュリュから”ねっとり”お仕置きされていた頃、キュッリッキの引越が行われていた。仕事で抜けられなかったハドリーの計らいで、

episode44

馬車がアジトの前に着くと、マリオンが出てきた。「おっかえりぃ~」陽の光の下でより明るいオレンジかかった赤毛をおろし、

episode45

仕事のため何人か不在にしていたが、カーティスやギャリーをはじめ、歓迎会の時に居た面々が顔を揃えていた。ソファに座って本を読んでいたカーティスは、

episode46

風呂は2つあって、男専用と女専用になっている。脱衣所もあるし、いきなり覗かれずに済みそうだ。浴室はとても広くて、標準的な大人が10人は座っていても余裕が有る大理石貼りの洗い場に、

episode47

「さ~てぇ、次はぁ、台所よ~ん」台所に近づくにつれ、美味しそうな匂いが漂ってきていた。「おじちゃーん、おばちゃーん、ちょぉっといいかしらあ~」

episode48

正午を回ると、続々と食堂にみんな集まりだした。「キュッリッキちゃぁ~ん、こっち一緒に座ろう~」「うん」

episode49

もとから少食で、普通の量に盛られた料理を食べるのも遅い。食べたくないのではなく、すぐ満腹感を得てしまうのだ。幸いババロアは喉越しもよく、

episode50

食事が終わると、キュッリッキは中断していた荷解きをしに自室へ、そしてほかは談話室へ移動した。そこで早速、ギャリーはカーティスから叱咤された。

episode51

「よっ」ヒョイっとギャリーが顔を出した。「…ギャリー」ベッドに腰掛けて服をたたんでいたキュッリッキは、

episode52

キュッリッキとギャリーが仲直りして、団の雰囲気も和やかになったところで、またもや問題が発生した。正確には、キュッリッキだけには大問題である。

episode53

ライオン傭兵団に引っ越してきて、一週間ほど過ぎても、キュッリッキはまだ談話室に入ることができずにいた。

episode54

「そ~~~~~~~いっ!」ヴァルトは元気に掛け声をあげると、キュッリッキを藁束の上に、ぽいっと放り落とした。

episode55

世界には三つの種からなる人間が住んでいる。その中の一つがアイオン族。背に2枚の巨大な翼を有し、天空を自在に翔け風を読み、

episode56

人間としてマトモな両親たちに育てられたヴァルトも、偏見意識は殆どない。蔑まれる女児を可哀想だとも思ったし、出会うことがあれば、力になってあげたいとも思っていた。

episode57

ヴァルトは藁束の上に立ち上がり、片手を腰にあて、もう片方の手を前方に伸ばすと、人差し指を積まれた木箱にビシリと向けた。

episode58

帰りはちゃんとお姫様抱っこで連れ帰ってもらったキュッリッキは、アジトの玄関前におろされると、一目散に自分の部屋へ駆け込んで、後ろ手にドアを閉めた。

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ナルバ山の遺跡編 片翼の召喚士-ReWork-

episode59

目の前に書類の山を築いて、黙々と書類処理に勤しんでいたベルトルドは、リュリュの言葉に顔を上げた。「罷免だとう!?」「ええ」

episode60

ハワドウレ皇国の軍隊は、大きく分けて2つある。一つは、正規部隊。第一から第十まである1個軍で、約6万人ほどが一つの正規部隊に所属している。

episode61

勝手知ったるなんとやら。案内もなくベルトルドが闊歩するここは、皇王一族の住まうグローイ宮殿に併設されている、皇王が政務を執り行うエリラリンナ宮殿だ。

episode62

(なんという、忌々しい小僧めが…)もちろん、身長差ではない。傲岸な表情も態度も改めず、不躾に見下ろしてくるその目が気に入らない。

episode63

政治に携わる人間にとって、スキャンダルは命取りである。まして、他人の妻と浮気をしているのだから、倫理観を問われかねない。

episode64

ベルトルドは素っ頓狂な声を上げた。と同時に、侮蔑も顕にキャラウェイ将軍を見据える。「陳腐すぎて恥ずかしい夢だな。恥ずかしすぎて表を歩けないような夢だぞ貴様!」「なっ、なんだと小僧!!」

episode65

「気絶させてどうするんじゃ」「コイツが勝手に気絶しただけだ、俺のせいじゃない」玉座から溜め息混じりに文句を言われ、ベルトルドは拗ねたように皇王を振り向く。

episode66

ベルトルドが戻ってきたら決裁しやすいようにと、リュリュは書類を丁寧に仕分けていた。その様子を、デスクの隅に置かれたカゴの中からジッと見つめ、オデットは小さな欠伸をする。そんな穏やかな時間を突き破るかのように、

episode67

別名、傭兵街と呼ばれるエルダー街の昼間は、人通りが少ない。仕事のない傭兵たちは夜遅くまで酒を飲み、夕方近くまで寝ている。それに、夜の商売をする人々も住んでいるので、普通の暮らしを営む家庭が、あまり多くないこともある。

episode68

玄関ロビーに戻ると、カーティスの他に、ルーファスとメルヴィンも来ていた。「では行きましょうか。留守を頼みますね、メルヴィン」「了解です。いってらっしゃい、みなさん」

episode69

ハワドウレ皇国の皇都イララクスの中心街ハーメンリンナ。もとはこのハーメンリンナが皇都と呼ばれていた。ハーメンリンナは大きな街を5つも合わせたほどの規模をほこり、

episode70

暗いアーチ状の通路を通り、出口に差し掛かった頃、一瞬の眩しさに手をかざす。「うわあ…」 ルーファスに手を引かれたキュッリッキは、目の前に広がる光景に目を見開いた。

episode71

「何もしてないのに、ゴンドラが勝手に地面を滑ってるの。不思議…」船上で動き回っても、ピクリとも揺れないゴンドラのヘリにつかまって、キュッリッキは顔を突き出して、地面を覗き込んだ。

episode72

大規模な城壁の中の街ハーメンリンナは、中央に広大な敷地を有する宮殿と、その四方に区画を分けられていた。東は貴族達が暮らす屋敷が建ち、西は資産家たちの住まいや高級店が並び、

episode73

まるで万歳でも叫びそうな勢いで、嬉しそうにルーファスが両手をあげる。「ものすご~くゆっくりで、時間かかったね」キュッリッキがクスクスと笑顔を向けると、ルーファスはウンウンと大仰に頷いた。

episode74

うわあ…すご~い)アジトの建物なんて、家畜小屋にしか思えないほど、ベルトルドの屋敷は広大だった。宮殿の一画だと言われても、キュッリッキは疑いもしなかっただろう。

episode75

「オレは宮殿騎士やってて、カーティスは軍で魔法部隊の長官をしてたんだ。毎日退屈なあくびに耐えながらネ」「あなたはまだマシだったでしょう。宮殿行事に出動して、馬に乗ったり剣を構えたりするイベントがあって」

episode76

まさかの展開だ! とルーファスは思った。カーティスはやっぱりか、と思いつつ、アルカネットまでキュッリッキを気に入った様子なのには驚いていた。(ヤダナー、二人共ロリコンだったの~?)

episode77

応接テーブルの上に、濃紺色で描かれた花柄の白い磁器のカップが並び、うっすらと湯気を燻らせる紅茶が注がれた。紅茶の澄んだ香りが室内に広がり、そこへバターやチョコレート菓子の甘い香りが溶け合う。

episode78

キュッリッキはまじまじとベルトルドの顔を凝視したあと、足元に顔を向けた。「見えないように言ってあったんだけど…、バレちゃってたみたいだよ、フェンリル」すると、キュッリッキの足元に、突然白い仔犬が現れた。

episode79

「仔犬に戻っていいよ、フェンリル」フェンリルは目を伏せると、身体は銀色の光に包まれ、萎むように光が収縮すると、そこには仔犬に戻ったフェンリルが座っていた。

episode80

「手癖も女癖も悪いんですからあなたという人は!」「リッキーが誤解をするような言い方をするな!」「いや、事実な気が…」「がるるるるる」「ヒッ」

episode81

ベルトルドに付き添われて、キュッリッキ、カーティス、ルーファスは玄関ロビーに移動した。「そだ、ベルトルドさん、この子渡しておくね」

episode82

キュッリッキ、ベルトルド、アルカネットの3人の様子を、離れた位置から見ていたルーファスは、カーティスに小声で話しかける。「あの通行証…、見せれば即パスの特別製だよね。皇王様のサイン入りの」

episode83

帰りはゴンドラではなく、地下へ案内された。「もう少ししたら、門の近くまでの定期便が来るでしょう」「ありがとうございます、アルカネットさん」

episode84

車内は少しも揺れないし、音も静かだ。乗客たちの談笑する声くらいしか、気にならないほどに。「ねえルーさん、これなんなの?」

episode85

キュッリッキたちを見送ったあと、ベルトルドとアルカネットは書斎へ行った。ベルトルドは奥にあるチェアにドカリと座り、長い脚を組む。「今日くらい、リッキーと一緒に過ごしても問題あるまい。カーティスのやつめ」

episode86

キュッリッキは草原のような所に立っていた。――どこだろう?見上げた真っ青な空は、もこもことした白い雲を泳がせている。まるで、綿菓子のようだと思った。

episode87

そういえば、何も説明していなかったことを思い出す。「うンと、小鳥の頭を、指で3回、そっと叩いてあげると通信モードになって、こっちの赤い小鳥の聴いてることを、そのまま伝えてくれるの。ベルトルドさんの方も、言っていることを

episode88

「さて、もう夕飯ですし、食べながら話をしましょうか」カーティスもルーファスも席に着く。キュッリッキも空いている席に座ろうとしたら、隣に座れとザカリーに手招きされ、

episode89

食べることに夢中で、すっかり忘れてたとは、口に出して言う勇気はない。あんまり怒らせると、空間転移で乗り込まれてきそうだからだ。実際、過去数件前例がある。

episode90

「あまりみんなを脅さないでくださいな。あなたの怖さを知らないキューリさんですら、萎れちゃいましたよ」カーティスは肩の小鳥に、抗議するような視線を向ける。

episode91

食後は、キュッリッキ、メルヴィン、ヴァルトの3人が皿洗いに参加して、大量の洗い物も素早くすんだ。「ありがとう3人とも。助かったわ」

episode92

コンコン、とドアを叩く音がして、キュッリッキは頭を上げた。「誰かな…? どうぞー」ベッドから起き上がると同時に、ドアが開いてシビルが顔を出した。

episode93

キュッリッキは座り直し、ひたと前方に視線を向けた。「召喚はね、アルケラっていう神様たちの世界からしか、呼び出すことはできないの。呼び出せるのは、アルケラに住んでいる全ての住人たち。

episode94

「呪文か何かを呟きながら、おどろおどろしい儀式とかして呼び出すんだとばかり思ってましたけど、いやはや、場所を問わないっていうのは、いいことですねえ」カーティスは一人納得しながら頷いている。

episode95

翌日、朝食後にカーティスから、今回の仕事の件での、作戦と班分けが通達された。キュッリッキは、とてもワクワクしていた。ライオン傭兵団としての彼らとの仕事は、今回が初めてなのだ。

episode96

ハワドウレ皇国があるワイ・メア大陸の、ちょうど反対側にあるモナルダ大陸。南の海岸地方の一部を、ハワドウレ皇国から統治を任された、メリロット子爵家によって興されたのがソレル王国だ。ソレル王国はとくに、

episode97

ライオン傭兵団は出発前に、幾人かの情報屋から、ソレル王国の現状についての情報を仕入れていた。さすがになにも判らず状態で乗り込むほど、素人ではない。

episode98

「たっ、高いですね」アワワッと小鳥の羽根にしがみついて、ブルニタルは身を沈めている。「火脹れが出来ないよう、フードをしっかりかぶっておけ」「はーい」

episode99

4人が着地すると、小鳥はもとの大きさに戻って、キュッリッキの肩にとまった。「ご苦労様」キュッリッキに労われて、小鳥は嬉しそうにピピッと鳴いた。

episode100

綿毛たちが偵察に出て数分後、4人の表情に、サッと緊張が走った。「獲物を、見つけてきたな」「随分と多いなあ、中隊規模でしょうか」

episode101

まだ照りつける太陽の下、辺りには遮るものもなく、見晴らしの良い麓の広場に、ソレル王国軍は山裾に伸びながら固まっていた。そこを目指し、ガエルとメルヴィンは駆けていく。

episode102

(さすがガエルさん、相変わらず凄いなあ。オレも負けていられませんね)ガエルの勇猛ぶりを目の端に留めながら、メルヴィンは剣を繰り出した。戦闘の武器系剣術スキル〈才能〉のSSランクを持つメルヴィンも、ガエルに劣るものではなかった。

episode103

フェンリルに乗って、戦場の状況を後方から見ているキュッリッキは、ある程度二人が前進したら、そこへ闇の沼を召喚し、死体を全て飲み込ませた。闇の沼はあまりの死体の多さに愉悦し、真っ黒なタールのような身体を波打たせて大きく揺れた。

episode104

「カーティスさん、聞こえますか?」ブルニタルは血の気のひいた顔で、キュッリッキの肩に留まる小鳥に話しかける。見るに堪えないほどの無残な死体の山、

episode105

嘴を開けっぱなしの小鳥からは、ひっきりなしにヴァルトのわめき声が、辺りに響くほど炸裂していた。〈こらクソベアー! 随分オイシイ戦闘楽しんでたそーじゃないか!!〉

episode106

「うわー…、すっごーい」あまり広くない穴の中を小走りに通ってくると、大きく開かれた場所に出て、キュッリッキは思わず声を上げた。見上げる天井は、暗くなっていて見えない。

episode107

そんなに距離は進まず、直ぐに目的の場所に着いたようで、小さな窖だった。メルヴィンが足元にスッと灯りをかざすと、ひと組の男女が倒れている姿が浮き上がった。「あれっ?」

episode108

「メルヴィン、キューリさん、どこへ行っていたんですか」2人が戻ってくると、ブルニタルが不機嫌そうに迎える。そして人数が増えていることに気づいて、メガネをクイッとかけ直した。

episode109

ブルニタルが率先して神殿に足を踏み入れる。ハドリー、メルヴィン、ガエルが後に続いた。「ね……え」それまで口を挟まずおとなしくしていたキュッリッキが、

episode110

エグザイル・システムとは、物質転送装置のことを言う。半径1メートルほどの黒い石造りの円台座に、短い銀の支柱のようなものが3本立っている。台座の中心にはその惑星の地図が彫り込まれていて、

episode111

「副宰相のナマ声、オレ初めて聴いたぜ…」緊張を解くように、ハドリーがふぅっと息を吐き出して言う。「胃が痛くなるので、あまり聴いていたくないんですけどね」

episode112

「だ、だってさ、仕事あるうちが華なんだし。お金貯めまくって、中年になったら人生謳歌するって、将来設計があるんだもーん」「ったくぅ、ギルドの支部いっぱーい掛け持ちしてるでしょ。

episode113

ソレル王国軍が再び現れないか警戒は続けていたが、とくにすることもないので、ガエルとブルニタルはそれぞれ離れたところで座っていた。残りの4人は小さな輪を囲んで、談笑を楽しんでいる。

episode114

「そういえばさあ、いっぱいいたソレル王国兵をどうやっつけたの? 中隊規模だったんじゃない?」ファニーの興味の矛先が、ライオン傭兵団に向く。

episode115

太陽が西に傾きかけた頃、かろうじてそれが建物である、という程度に原型をとどめた遺跡に、しなやかな影がひらりと舞い降りた。シルエットはネコの耳と尻尾を象っていた。「おっつ、ペルラ。どうだったよ?」

episode116

〈キューリさん、キューリさん、聴こえますかー?〉ブルニタルの肩に止まっていた小鳥が、突然カーティスの声を発し、本に目を通していたブルニタルはギョッとして、まだら模様の尻尾を逆立てた。

episode117

ソレル王国首都アルイールは海岸沿いに建てられ、人口70万人ほどの賑やかで大きな街だ。しかし街の中には多くの遺跡が存在していて、その合間を縫うようにして家屋が建つので、見た目が悪い都市としても有名だった。街の景観より遺跡の保護を謳う国らしい街並みだった。

episode118

ヴァルトは巨大な翼を、瞬時に前方で交差させて防御する。無数の砲弾は翼に触れるか触れないかの、スレスレの宙でピタリと止まった。「返す」

episode119

マリオンたちの位置からは見えない箇所にいる兵士たちも、次々と倒れた。「風がいい具合に吹いてて、音が乗るねえ」マリオンはのんびりとした表情で微笑んだ。「ふぅ……」

episode120

飛んでいってしまったヴァルトの消えた空を見上げ、カーティスとルーファスは呆けた顔のまま肩を落とした。「これじゃ、オレたちも敵の只中に突っ込まないと、援護できなくね?」

episode121

短剣の露を払いながら、ギャリーは詰問官の身体を蹴飛ばす。そして立ち上がったシ・アティウスに顔を向けた。「ベルトルド……様の命令で救出にきた。オレはライオン傭兵団のギャリーだ」

episode122

キュッリッキは首都アルイールのある方角を、身じろぎせずジッと見ていた。すでに闇色に塗り変わろうとする空は、わずかに朱色と紫色の雲を残し、白い星がその存在を照らし出している。

episode123

ヴァルトは肩ごしに振り向くと、噛み付きそうな形相のギャリーの、その奥を見て目を輝かせた。「俺様のペルラ!!!」

episode124

「カーティスあれ」背中合わせに立っていたマーゴットが、すっかり濃紺色に染まった空を指差す。カーティスは顔を上げると、夜空を有り得ないほどの巨大な鳥が飛んでいく様が見えた。

episode125

雷光は轟音と共にうねりだし、地面を激しくえぐり取りながら、鞭のようにしなやかに兵士たちに踊りかかる。幾重にも稲妻を発し、触れたものは感電して死に至った。雷光に飲み込まれたものは強烈な熱で全身を焼かれて消し炭になる。

episode126

「ギャリー組みとカーティス組み、無事鳥に乗って空に出たよ」身じろぎせず、キュッリッキがホッとしたように言った。「それはよかった」メルヴィンは胸をなでおろす。

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混迷の遺跡編 片翼の召喚士-ReWork-

episode127

遺跡の前で待機していたハドリーとファニーは、依頼主のケレヴィルの研究者達を見て慌てて立ち上がる。「良かった、無事だったんですね」

episode128

ライオン傭兵団は全員が顔を揃えると、遺跡の前で大きな輪を作って、各部隊の武勇伝を披露し合っていた。しかしいざ戦闘の話になると、バトル3馬鹿はキュッリッキのチート支援の話題に集中した。

episode129

「なんだか急に、賑やかになったわね…」ファニーは傍らのハドリーにそっと囁く。無言で相槌を打つと、ハドリーは遺跡の中を見渡した。突如ソレル王国兵に捕らえられ連行されてしまった、

episode130

「召喚士というのは君かね?」「ふにゅ?」突然話しかけられふくれっ面のまま顔を向けると、衣服が血まみれの無表情な男がキュッリッキを見おろしていた。顔や頭の血は拭われていたが、

episode131

キュッリッキの背後から、ザカリーがニヤニヤ顔で話に割って入ってきた。シ・アティウスは小さく首をかしげたが、キュッリッキは殆ど条件反射のように肩を怒らせると、噛み付くような顔でザカリーに振り向いた。

episode132

神殿の中、と言われて、キュッリッキの表情が咄嗟に強張る。その様子を怪訝そうに見て、ザカリーは首をかしげると、なにか思い当たったように頷いて頬を掻いた。「あーなんか、神殿が怖いとか言ってるんだっけか」

episode133

キュッリッキは生まれて初めてだと思うくらいの悲鳴を、喉から絞り出した。突如目の前に、巨大な怪物が現れたからだ。柱の影から現れたそれは、あまりにも異様な姿をしていた。

episode134

花崗岩で作られた神殿には、どこにも窓がない。もっとも山中を掘った空洞の中に建てられているのだから、明かりなど射すはずもなかった。調査に入ったみんなの話では、だだっ広い長方形のような、

episode135

こんなに広かっただろうか?と思える程の、複雑に入り組む神殿の中を走りながら、ザカリーの頭の中は後悔の文字でいっぱいになっていた。ほんの少しからかって、キュッリッキとひと時の会話――

episode136

叩きつけられるような重みと衝撃が走り抜けたあと、焼けるような痛みに刺し貫かれ、キュッリッキは大きく目を見開いた。悲鳴をあげた気がしたが、

episode137

ルーファスはハーマンにガエルのサポートにつくよう指示をすると、すぐさまカーティスに念話を送る。(それは…)映像付きの念話を送られ、

episode138

「うわあああああ!! なんじゃあこりゃあああ」開口一番、ヴァルトは仰け反りながら怪物を見上げ叫んだ。怖いというより、素手で触るのも嫌なほどの醜悪な姿に、さすがに一歩退く。

episode139

「おめーらダッセー!」2人の無様を指差し、ヴァルトは腹を抱えてゲラゲラ大笑いした。「笑ってねーで、助けやがれ!」振り回されながらも、ギャリーはドスの効いた声を出して怒鳴りつけた。

episode140

瀕死のキュッリッキのほうは、ランドン、シビル、カーティスの回復魔法で、かろうじて命をつないでいる状況だった。一刻も早く医者の手に委ねる為に、この場から動かせるくらいには、しておかなければならなかった。

episode141

神殿の外で待機していたファニーとハドリーは、神殿の方からガヤガヤと足音がして、俯かせていた顔を上げた。横たえたままの状態で浮かんだキュッリッキを先頭に、

episode142

「さてマリオン、よろしくお願いしますよ…」簾のように垂れ下がる前髪の奥の顔が、露骨に嫌そうに歪む。ただでさえキュッリッキの状態が油断を許さないというこの状況に加え、

episode143

「アルカネット! アルカネット!!」裸にバスローブを着込んだだけのベルトルドは、荒々しくドアを開けて部屋を出ると、廊下で大声をあげてアルカネットを呼んだ。

episode144

髪は生乾きのまま、アルカネットは軍服に身を包み、急いで屋敷を飛び出した。地上のゴンドラも地下の馬車も使わず、魔法で身体を浮かせて宙を飛んだ。この男にしては、珍しいほどの慌てぶりである。

episode145

「此度の招集の目的を、教えていただけますかな?」やんわりとした口調で、ブルーベル将軍が切り出す。「将軍はアルケラ研究機関ケレヴィルのことは、ご存知かな?」「はい。神の世界アルケラに関する、学術的研究やら探求、

episode146

街灯も道路もない真っ暗な場所を、魔法で作り出された灯りを頼りに、ブルニタルの完璧なナビゲーションで、皆迷わずイソラの町まで到着した。「さすがブルニタル」ゲッソリとギャリーが褒めると、

episode147

「病院のおばちゃんが開けてくれたから、キューリ運べ、ルー!」近所迷惑も甚だしい大声が、通りを挟んだ向こうからいきなり聞こえてきて、ルーファスは額を押さえた。

episode148

マリオンの念話の誘導で、町に散らばっていた脳筋組みも、病院に合流した。静かな町の小さな病院内には、幸い誰も入院患者はおらず、いきなりやってきた大勢で賑わっても大丈夫だった。

episode149

ザカリーは眠ることができず処置室の前まで来ると、遠慮がちに中を覗いた。キュッリッキの容態が気になってしょうがないのだ。「キューリは大丈夫だよ」

episode150

長いオペが終わり、肩をコキコキ鳴らしながら、ヴィヒトリはオペ室を出た。「ぬっ」出たところで、軍服に身を包んだ男に、物凄い形相で睨まれドン引きする。「お久しぶりですね、ヴィヒトリ先生」「あ、アルカネットさん、か…」

episode151

アルカネットと医師2人がソレル王国のエグザイル・システムに到着すると、いきなり銃口が多数突きつけられた。エグザイル・システムの周りは、2個小隊ほどのソレル王国兵たちに取り囲まれている。

episode152

ヴィヒトリはチラリと隣のドグラスを見る。日焼けした褐色の肌が、色落ちしたように明らかに蒼白になっていた。弱者に対しては尊大だが、強者に対しては卑屈になる。そんなドグラスだが、さすがに不慣れな戦場の空気は、精神的に厳しそうだ。

episode153

晴天に恵まれた湿度の高い朝、天地に鳴り響くほどの獣の咆哮が、静かな町全体を飲み込んだ。何事かと町民は起き出し家屋の外に出ると、そこにありえないものを見て仰天した。イソラの町の外は、だだっ広い草原と、

episode154

フェンリルの目線を辿り、そこにライオン傭兵団の姿を確認すると、あの町がイソラだということが判り、アルカネットは小さく頷いた。「迷わず着けて良かった」

episode155

愛しい少女の目を背けたくなるほどの酷い(むごい)傷を見て、アルカネットは沈痛な面持ちで顎を引いた。右の肩から胸のあたりまでの肉が、ごっそり抉りとられ骨が見えている。膨らみこそ小さいその乳房も、上半分が無残に削り取られていた。

episode156

10時間以上にも及ぶ大手術になった。空はすでに夕闇に染まり、することもなく待ち続けていた一同は、マルヤーナから手術成功の報を受けて、張り詰めていた緊張を解いて安堵した。「よかったあ~~」

episode157

アルカネットは片手でキュッリッキの頭部をそっと抱え込み、もう片方の手で頭を撫でてやる。「怖い…助けて…」泣きじゃくるキュッリッキを優しくなだめながら、

episode158

薬が効いてきて、キュッリッキは重くなった瞼をゆっくり閉じた。それまでずっとアルカネットにすがって、喉を嗄らすまでザカリーの嘆願をやめようとはしなかったのだ。

episode159

カーティスとシビルは同時に防御魔法の呪文を低く唱える。ザカリーの周りに巡らせるためだ。「逃げろザカリー!!」「イアサール・ブロンテ」ギャリーの叫びをかき消すように、その場に突風のようなものが吹き込み、

episode160

「ぷはー…、めっちゃ怖かった…」ハドリーは長い息を吐き出しながら、その場にヘナヘナと座り込んだ。「あたしも、一生分の勇気を奮い起こした気がするわ」同じようにファニーも座り込んで、ハドリーにもたれかかる。「お2人共、ありがとうございます」

episode161

ルヴィンとウリヤスを病室から文字通り追い出すと、アルカネットはベッドの傍らに立ち、落ち着いて眠るキュッリッキを見おろした。ついさっきまで、ザカリーを殺そうとしていた冷徹な表情は消え去り、

episode162

「ボクこんなに働いたの、初めてだよ…」ランドンはトントンッと肩を叩きながら、首を左右に動かした。その度に関節がポキポキと鳴る。

episode163

アルカネットから召集され、ザカリーを欠いたライオン傭兵団の全員が、キュッリッキの病室に集められた。この時初めてキュッリッキの無事な姿を見た面々もいる。包帯を巻かれた痛々しい姿に、皆沈痛な表情を浮かべていた。

episode164

ああそういえば、といった無言のツッコミが、室内にモヤモヤと沸いた。その沈黙を破るように、アルカネットがいきなり「ブフッ」と吹き出す。「なんで、なんて聞いたら、あのかたひっくり返ってしまいますよ。

episode165

尊大さが滲みでる大声が、ソレルの町内に轟渡った。しかしその程度で動じるソレル町民ではない。この数日、小さな病院を中心に起こるハプニングのせいで、すっかり慣れっこになっている。ソレルの町民たちは、新たな珍客の登場にも、もはや動じないでいた。

episode166

「よし、俺が飲ませてやろう、貸せ」ベルトルドが手を出すと、アルカネットはコップを両手で握ったままそっぽを向く。「私が飲ませますから、そこどいてくださいな」「俺が飲ませるって」

episode167

怒っているベルトルドを気にもせず、どこまでも取り澄ましているシ・アティウスは淡々と答える。そしてアルカネットの言葉も、容赦と遠慮が全くない。「こんな傲慢でエロいおっさんでも、

episode168

すっかり静まり返った真夜中、キュッリッキはフッと目が覚めた。薬と睡眠の効果で、今は少し気分が落ち着いている。苦しくなかった。月明かりだけの薄暗い部屋で目だけを動かすと、

episode169

朝だから熱が下がっているんだろうとドグラスは言ったが、動かすなら今のうちしかない。そうヴィヒトリが判断し、帰還することに決定した。ライオン傭兵団、ハドリーとファニー、

episode170

各々夫妻への挨拶が済むと、最後にヴィヒトリが病院から出てきた。包帯でぐるぐる巻かれて、動けないザカリーの診察をしてきたようだった。頑丈な板が用意されそこに布団がのべられると、

episode171

キュッリッキを乗せた担架は、ベルトルドのサイ《超能力》で操作され、振動も揺れもなく静かに浮いて進む。担架の傍らで操作するベルトルドに、ケレヴィルの研究者たちが何事かを報告している。

episode172

それは、何度か乗ったことのある汽車のようだ、とファニーは思った。「ヒあああああっ!」悲鳴に尾ひれが付きそうな勢いで、しかし身体はグラリとも揺れない。

episode173

「魔法もサイ《超能力》も、奥が深いのね。あたし単純な戦闘スキル〈才能〉だから、別次元の話だわ」ため息混じりにファニーが言う。そういったスキル〈才能〉を持つ相手と、仕事を組んだこともない。

episode174

ゆるやかな潮風にマントをなびかせ、腕にはキュッリッキを抱いたまま、ベルトルドは船首に立って海を眺めていた。「青く綺麗な海だぞ、リッキー。このあたりはタハティ海域と言って、星屑を散りばめたようにキラキラとしているんだ。今度、ゆっくり見に来ような…」

episode175

艦内はもう、大騒ぎである。あらゆる事態に備えて訓練されている軍人とはいえ、これはマニュアルに載っていない突然の事態だった。サイ《超能力》使いによる仕業というのは、

episode176

いつもの不敵な表情のベルトルドの後ろから、今にも倒れてしまいそうな面々を見て、出迎えたラーシュ=オロフ長官は頭上にクエスチョンマークを点滅させた。「お疲れ様です、閣下」

episode177

エグザイル・システムの台座の前で、ベルトルドは後ろを振り向く。「ルー、メルヴィン、俺と一緒に飛べ。リッキーと貴様らは、俺の屋敷で当分寝泊りだ」「えっ」ルーファスとメルヴィンは顔を見合わせる。

episode178

皇都イララクスのクーシネン街にあるエグザイル・システムに到着すると、エグザイル・システムの建物の中は、全て正規部隊の軍人だらけになっていた。「お帰りなさいませ、閣下」

episode179

ベルトルドの姿が見えると、部屋の前で待機していた使用人たちが、恭しくドアを開いた。キュッリッキを抱きかかえたベルトルドを先頭に、ルーファスとメルヴィン、ヴィヒトリとドグラスが後ろに続く。そして、

episode180

「さすがにサイ《超能力》を使いすぎたな。それも繊細な使い方で、だ」ブランデーを一口含み、そしてコロンっベッドに倒れこむ。「物を壊す方が、よほどラクな使い方だ。加減にも気を使わなくてすむしな」

episode181

「話が脱線しまくっていますよ、ベルトルド様…。もう酔われましたか」キュッリッキに手を出す気満々のベルトルドを冷ややかに見つめ、更に底冷えするような声でメルヴィンが口を挟む。

episode182

執事代理となったセヴェリに案内された部屋は、キュッリッキの部屋のすぐ隣の2部屋だった。「お夕食の準備が整いましたら、お呼び致します。時間は19時くらいになります」「うん、ありがとうセヴェリさん」

episode183

キュッリッキは目を覚ました。目に飛び込んできた暗闇に、何度か目を瞬かせる。(どこかな…ここ…)暗闇に目も慣れてきて、ぼんやりと視線の先を見つめた。見上げているそれがベッドの天蓋だと気づくのには、

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記憶の残滓編 片翼の召喚士-ReWork-

episode184

到底人の足で登れるほど易くない断崖絶壁の奇岩の上に、みすぼらしい修道院が建てられている。石を積み上げて作られたその修道院の周囲には、

episode185

食堂から追い立てられるように出てきた少女は、食堂よりもさらに薄暗い部屋に入ると、後ろ手に扉を閉めた。明かりとり用に小さく四角くくり抜いた、

episode186

夕食を知らせる鐘が鳴り、少女は部屋を出た。出される食事は、最低限飢えを凌げる程度しかない。育ち盛りの孤児たちにとっては、物足りないくらいだ。動いていなくてもお腹はすいてしまう。

episode187

3種族共に崇める神は2柱で、太陽の女神ソールと、月の男神マーニである。地域によっては性別が異なることもあるが、太陽と月を神格化して崇めることに変わりはない。太陽の女神ソールを崇めるこの修道院では、

episode188

ある日裏庭の岩の上に座り、少女はぼんやりと空を眺めていると、修道女に声をかけられた。「キュッリッキ」しかし少女は反応しない。

episode189

後に残されたキュッリッキは、ホッと胸をなでおろした。しかしその晩すぐに院長室に呼び出され、厳しい叱責と体罰を受けた。「もしお前のせいでご寄付をいただけなかったら、

episode190

「リッキー、リッキー」「は…っ」荒い息を吐き出して、キュッリッキは我に返った。過去の思い出に浸りすぎて、夢現の境が判らないくらい入り込んでいた。

episode191

召喚スキル〈才能〉を持つ者が、フリーで傭兵をしていると聞きつけてきたのはアルカネットだった。ベルトルドもアルカネットも、宮中で召喚スキル〈才能〉を持つ者たちを何度も見ているので、

episode192

幼い頃、密かに淡い初恋のようなものをいだいたことがある。それは実ることなく終わったが、ベルトルドは41歳になって改めて恋をした。今度はきっちりと、恋をしたと自覚できる。

episode193

忌々しさを滲ませて、アルカネットは冷え冷えとした声で言う。「急いで帰ってきてみれば、案の定、不埒な真似をしようとして…。リッキーさんは重症の怪我人なのですよ。可哀想に、

episode194

「今から行けば、半分くらいは片付きそうです。問答している時間が無駄です。あなたの部屋に行きますよ」「宰相府の仕事はリュリュに頼んである。別に、普通に出仕すればいいだろう? 俺もまだ寝足りない」

episode195

「飛べない病気がきたー」庭に駆け出してきたキュッリッキを、一人の子供が指をさして罵った。それに気づいた他の子供たちも、一緒になって罵り始める。

episode196

ハッと目を開け、キュッリッキは荒い息を何度も何度も吐いた。目からは涙がとめどなく流れ落ち、胸が苦しくてたまらない。そうしているうちに、今は夢ではなく現実なのだと、ようやく認識できていた。

episode197

ふと、隣を見てキュッリッキは表情を曇らせた。隣に寝ていたベルトルドが、もう居ない。今は朝7時を過ぎたところだった。出仕のために準備をしているか、朝食をとっているのだろう。

episode198

「あんなに優しくしてくれたベルトルドさんでも、きっと、怒っちゃったよね」 誰でもあんな言葉を叩きつけられ、態度をとられれば、怒って当然。自分だって怒る。「ハーツイーズのおばちゃんたち以外で、

episode199

「昔話よりも、早く取り掛かりなさい。現実を受け止め今すぐ始めないと、同じ量の書類があと3時間後には、ここに運ばれてきますよ?」「ンぐ……」

episode200

そろそろ8時になろうかという頃、ノックがして、ゾロゾロと女性たちが入ってきた。「お目覚めでございますか? おはようございます、お嬢様」「おはようございます」

episode201

部屋に簡素なベッドが運び込まれ、キュッリッキはそのベッドの上に寝かせられた。運んだのはリトヴァだが、サイ《超能力》を使って丁寧に運んでくれた。リトヴァもベルトルドと同じように、スキル〈才能〉はサイ《超能力》のようだ。

episode202

まだ20代前半くらいの、年若い男だ。胸元くらいまである金の髪は、キュッリッキの金髪よりやや濃い色をしている。青い瞳を埋め込んだ切れ長の目、そこに少し太めの黒縁のメガネをかけていた。

episode203

ラフな普段着姿のルーファスとメルヴィンが、笑顔で部屋に入ってきた。「意識が戻って良かったです、本当に」安堵を浮かべた顔で、メルヴィンはホッと胸をなで下ろす。それに「うんうん」と頷いて、ルーファスはニッコリと笑った。

episode204

さきほどヴィヒトリが投与した薬が効いてきたのか、緩やかな眠気に誘われるまま、キュッリッキは目を閉じた。そして何も考えられなくなり、吸い込まれるように意識は眠りの底へと沈んでいった。

episode205

疲労感を全身からオーラのように滲ませ、デスクの前でぼーっとしているベルトルドの前に、アルカネットとシ・アティウスが揃って顔を出したのは、すっかり暗くなった頃だった。

episode206

キュッリッキの過去を調べ上げたのはアルカネットだったが、知り得ている情報と照らし合わせても、映像で見せられるとより辛い。胸が締め付けられるほど苦しくなり、アルカネットは荒く息を吐き出した。

episode207

ベッドに身を横たえながら、キュッリッキはぐるぐると悩んでいた。もうじきベルトルドたちが帰ってくる。そして、ここを追い出され、ライオン傭兵団も出て行かなくてはならないのだ。

episode208

「ただいまリッキー、俺がいなくて寂しかっただろう?」意気揚々と弾んだ声を出し、不敵な笑みを浮かべながら、ベルトルドがベッドに腰を下ろす。「アナタがいなくても、寂しくなんかありませんよ。ね、リッキーさん」

episode209

「昨夜も昔のこと、思い出しちゃってて…。それで――」「うん、判ってる」「……え?」一瞬なんのことだろうと、キュッリッキは目を瞬かせた。

episode210

切り裂かれるような痛みに感覚が麻痺してきて、キュッリッキは食いしばるように閉じていた目を開いた。「ベルトルドさんも、アルカネットさんも、アタシを好きだって言った。でもそれは、アタシが召喚スキル〈才能〉を持っているからなんだ…」

episode211

「リッキーが俺のことが大好きで大好きでたまらないっ! というのは物凄くよく判る。ウン、ウン。俺はずば抜けて超絶イイ男だからな。でもそれは、俺が地位も名誉もあり、若くてハンサムで格好良くて大金持ちだからという理由で、好きになったわけじゃあない」

episode212

愛されたい。子供の頃からずっと願ってきた、ただ一つの思い。片翼の出来損ないの自分を、好きになってくれる人が欲しかった。容姿やスキル〈才能〉を好きになってくる人はいた。しかし、

episode213

一言”愛”といっても、色々な形がある。ベルトルドもアルカネットも、キュッリッキを慈しみ、守る大いなる父性愛もあったが、それ以上に男と女の恋愛面も強く滲ませた愛だった。

episode214

「お前ばっかり狡い!! 俺もリッキーとちゅーしたい!! リッキーの承諾はもらってるんだからいいじゃないか」「やはり念話で迫ったんですね。イヤラシイったらないですよ、このおっさんは」

episode215

ベルトルドとアルカネットが部屋を出ていくと、室内は驚く程静かになった。キュッリッキは軽くしゃくりあげた。そして、目が熱を帯びて腫れぼったくなっていることに気づく。

episode216

泣きつかれていたのもあり、ウトウトしていると、賑やかな言い合いをしながら、ベルトルドとアルカネットが寝間着に着替えて戻ってきた。2人は張り合うようにしてベッドまでくると、

episode217

翌朝目が覚めると、ベルトルドとアルカネットは部屋にいなかった。時計を見ると、7時を少し過ぎている。6時には目を覚ますキュッリッキにしてみたら、ちょっと寝坊だった。何度か目を瞬かせていると、頭もスッキリしてきて、昨夜のことを色々と思い出していた。

episode218

メイド総出の身支度と、ヴィヒトリ医師の手当と診察が終わると、朝食の膳を持ってメルヴィンが部屋に入ってきた。「おはようございます、リッキーさん」「おはよう、メルヴィン」

episode219

律儀と真面目が取り柄のメルヴィンは、一つのことが気になりだすと、解決するまでトコトン気になってしまう。何故あんなに目を腫らすくらい泣いていたのか、その理由が気になってしょうがない。

episode220

「リッキー、リッキー!」「リッキーさん!」声がして、更に身体が揺さぶられ、キュッリッキはハッと目を開いた。部屋の中はまだ暗く、明かりが横から感じられて目を向ける。

episode221

キュッリッキは膝を抱えて、平らな地面に座っていた。周りは暗くて、でも自分の姿はハッキリと浮かんでいる。これは意識の中だ、とキュッリッキには判っている。時々、スコンッと陥る時があるのだ。

episode222

フェンリルが町の中に消えて暫くすると、とても美味しそうな匂いが、キュッリッキの鼻先を掠めていった。これは、パンの焼ける匂いだ。キュッリッキはフラフラと立ち上がると、

episode223

「これから暫くは、どんどん過去の記憶を夢に見るぞ」「そんな、どうにかできないんですか?」「どうにもしない」天蓋を見つめながら、ベルトルドは素っ気なく言い切った。その、あまりにも淡白な言いように、アルカネットが鼻白む。

episode224

「おはようございます、リッキーさん」「おはよう、メルヴィン」ベッドの傍らにある椅子に座るメルヴィンに、キュッリッキは小さな笑みを向ける。その笑みを受けて、メルヴィンは僅かに表情を曇らせた。

episode225

「おっはよー、キューリちゃん」静まり返ったその場に、ルーファスの明るい声が割り込んできて、当人がにこやかな笑顔で登場した。「おはようルーさん」

episode226

だからといって、勝手に覗き見していい理由にはならない。そんなことはベルトルド自身百も承知の上だ。それでも、キュッリッキの心を救うため、止めるつもりはない。「リッキーを傭兵にするように仕向けたのは、そこのフェンリルだ」

episode227

ナルバ山の遺跡で瀕死の重傷を負ったキュッリッキが、ベルトルド邸に運ばれて1週間が経っていた。最初はどうなるかと、使用人たちを含めメルヴィンやルーファスを心配させたが、

episode228

まだ着替えも済んでいないが、ベルトルドはキュッリッキの左側に寝転がり、肘枕をしてキュッリッキのほうに身体を向けた。「アルカネットの奴はまだ帰ってこれないから、リッキーを独り占め出来るゾ」

episode229

キュッリッキの頬を優しく撫でながら、ベルトルドは「あっ」と小さく声を上げた。「そういえばリッキー、何か、やりたいことはないのかな?」「やりたい、こと?」目をぱちくりさせて、ベルトルドを見つめる。「うん。趣味として、習い事でもスポーツでも。やってみたいものはあるかな?」

episode230

ベッドの傍らに急遽設えられたテーブルに、ベルトルドとアルカネットの夕食が並べられた。給仕をするために、使用人が数名傍に控える。お腹がすいていたベルトルドはおとなしく食事を始めたが、

episode231

会議室を追い出されるように連絡を取りに行ったカッレ長官は、笑顔で戻ってきた。「是非にとも、お会いしたいそうです。21時までなら、閣下のご都合のよろしい時間に合わせられるそうです」

episode232

「リッキーは…――キュッリッキの愛称です、近い将来、俺の花嫁になる女性です!」グッと握り拳を作って、ベルトルドはドヤ顔で断言した。その後ろで、首を左右に振ってリュリュが否定する。

episode233

「ンもー、ベルトルド様もアルカネットさんも、寝てるキューリちゃん起こさないでくださいよー、ったく」腕を組んで溜息混じりに言うルーファスを、ベルトルドとアルカネットは赤面で睨みつける。

episode234

自分の為だけに、勉強を教えてくれる教師が会いに来る。それを思うと、キュッリッキは殆ど眠れず朝を迎えた。楽しみで楽しみで仕方がない気持ちが、

episode235

グンヒルドと2人きりになって、何をどう切り出し話せばいいか、キュッリッキは困り果てて途方に暮れた。人見知りで、自分から話しかけるのは苦手である。それに、家庭教師になってくれるかもしれない人だ。おかしなことを言って、

episode236

「7歳から3年間、そんなことを続けて、ようやくギルドに正式に認められて傭兵になったの。でも、いくら傭兵になったからっていっても、小さい子供でしょ。任せてもらえるお仕事なんて、良くて護衛、悪ければ掃除やお使いなんてこともあったのよ。だから、報酬は微々たるもので…」

episode237

「アタシ、本当に色んなことが知りたいの。難しい字も読めるようになりたいし、本も沢山読んでみたい。知らないこといっぱい知りたい」キュッリッキは目をキラキラさせた。

episode238

真顔になったベルトルドは作業の手を休め、意識を凝らした。(リッキー、どうしたのかな?)自分の屋敷にいるキュッリッキに念話を飛ばす。(あ、ベルトルドさん! お仕事で忙しいのにごめんねっ)

episode239

基礎学校とは、社会で生きていく上で、必須になる知識を無料で教えてくれる学校である。運営は国が行っており、国の至るところに開校されていて、年齢も種族も問わず、教わることができた。

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初恋の予感編 片翼の召喚士-ReWork-

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番外編・1 片翼の召喚士-ReWork-

■ 写真・1

■ 写真・2

■ 写真・3

■ フェンリル

■ ベルトルドの桃色天国・1

■ ベルトルドの桃色天国・2

■ ベルトルドの桃色天国・3

■ クリスマス準備・1

■ クリスマス準備・2

■ クリスマス準備・3

■ クリスマス準備・4

■ クリスマス準備・5

■ クリスマス準備・6

■ メルヴィンの女・1

■ メルヴィンの女・2

■ メルヴィンの女・3

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それぞれの悪巧み編 片翼の召喚士-ReWork-

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モナルダ大陸戦争開戦へ編 片翼の召喚士-ReWork-

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エルアーラ遺跡編 片翼の召喚士-ReWork-

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勇気と決断編 片翼の召喚士-ReWork-

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■ episode510

■ episode511

■ episode512

■ episode513

■ episode514

■ episode515

■ episode516

■ episode517

■ episode518

■ episode519

■ episode520

■ episode521

■ episode522

■ episode523

■ episode524

■ episode525

■ episode526

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番外編・2 片翼の召喚士-ReWork-

■ コッコラ王国の悲劇・1

■ コッコラ王国の悲劇・2

■ コッコラ王国の悲劇・3

■ コッコラ王国の悲劇・4

■ コッコラ王国の悲劇・5

■ コッコラ王国の悲劇・6

■ コッコラ王国の悲劇・7

■ コッコラ王国の悲劇・8

■ コッコラ王国の悲劇・9

■ コッコラ王国の悲劇・10

■ コッコラ王国の悲劇・11

■ コッコラ王国の悲劇・12

■ コッコラ王国の悲劇・13

■ コッコラ王国の悲劇・14

■ コッコラ王国の悲劇・15

■ コッコラ王国の悲劇・16

■ コッコラ王国の悲劇・17

■ コッコラ王国の悲劇・18

■ コッコラ王国の悲劇・19

■ コッコラ王国の悲劇・20

■ コッコラ王国の悲劇・21

■ コッコラ王国の悲劇・22

■ コッコラ王国の悲劇・23

■ コッコラ王国の悲劇・24

■ コッコラ王国の悲劇・25

■ コッコラ王国の悲劇・26

■ コッコラ王国の悲劇・27

■ コッコラ王国の悲劇・28

■ コッコラ王国の悲劇・29

■ コッコラ王国の悲劇・30

■ コッコラ王国の悲劇・31

■ コッコラ王国の悲劇・32

■ コッコラ王国の悲劇・33

■ コッコラ王国の悲劇・34

■ コッコラ王国の悲劇・35

■ コッコラ王国の悲劇・36

■ コッコラ王国の悲劇・37

■ コッコラ王国の悲劇・38

■ コッコラ王国の悲劇・39

■ コッコラ王国の悲劇・40

■ コッコラ王国の悲劇・41

■ コッコラ王国の悲劇・42

■ コッコラ王国の悲劇・43

■ コッコラ王国の悲劇・44

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アン=マリー女学院からの依頼編 片翼の召喚士-ReWork-

■ episode527

■ episode528

■ episode529

■ episode530

■ episode531

■ episode532

■ episode533

■ episode534

■ episode535

■ episode536

■ episode537

■ episode538

■ episode539

■ episode540

■ episode541

■ episode542

■ episode543

■ episode544

■ episode545

■ episode546

■ episode547

■ episode548

■ episode549

■ episode550

■ episode551

■ episode552

■ episode553

■ episode554

■ episode555

■ episode556

■ episode557

■ episode558

■ episode559

■ episode560

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美人コンテスト編 片翼の召喚士-ReWork-

episode561

「こんちゃ~っす、誰かいるか~い?」...

episode562

「美人コンテスト?」「うんむ!」...

episode563

夕方になってアジトに帰ってきたキュッリッキは、...

episode564

「美人コンテスト?」この男にしては珍しく、...

episode565

空は真っ青な快晴で、残暑とは言えまだまだ暑い。...

episode566

「そろそろマーゴットのテントに行ってあげなよ。ベルトルド様達来る...

episode567

開始ギリギリまでいたファニーとハドリーは、そろそろ...

episode568

キリッとした口調でベルトルドが断言すると、その直後、...

episode569

(メルヴィンにやっと見てもらえる。頑張っちゃうんだから)...

episode570

「ふむ……、まるで超音波のような声質ですね。普段小鳥の...

episode571

(この先、どうやって歌わせないようにするかが悩み...

episode572

「とてつもない音痴を披露しちゃってさ、キューリちゃん...

episode573

生演奏が再び会場を盛り上げ、タキシード姿の司会者が結...

episode574

ざわ、ざわっと、会場がざわつく。...

episode575

「ドコでやるんっすか? 今日はイララクス中の...

episode576

「うおっ」目の前の光景に、ハドリーはギョッと目...

episode577

両手で掴んだグラスの中身には、琥珀色の液体が揺蕩っ...

episode578

「いつもよりファニー怖いよう」メルヴィンの腕にしがみつい...

episode579

美人コンテストから4日後、コケマキ・カウプンキに向...

episode580

「やっぱ、エグザイル・システムで飛べないっての...

episode581

グランバリ公国首都シェルテーレから、御一行様は汽車で...

episode582

「メルヴィンと同じ部屋じゃなくて、ツマンナイかもー」...

episode583

翌朝8時頃になると、皆ぞろぞろと船の食堂に集まった。...

episode584

大陸鉄道よりも若干緩慢な速度で走る汽車は、車窓に...

episode585

「ようこそケウルーレへ」橋を守る役人の一人が、...

episode586

40分かかってようやく橋を渡りきった御一行様は、口々...

episode587

昼食の用意が出来ているというので、説明の...

episode588

初めての変わった昼食を食べ終わると、各自荷物...

episode589

「ぶえっくしょーい!」盛大にクシャミをしたベルトルドは、ス...

episode590

湯殿の大騒ぎを尻目に、シ・アティウスはさっさとあ...

episode591

「骨一本で封じられる神の力というのも、なんだかと...

episode592

夕食は豪華な会席料理で、米で作ったという酒もみんな気に...

episode593

鳳凰の間に着き、フウッと深呼吸を一つする。そしてドアノブを...

episode594

(どっ、どうしよう……、メルヴィンと2人っきり!…なの)...

episode595

「この酒は、なかなかイケるなあ」「フルーティーな香りと...

episode596

(なんだか、いつもよりも、ずっと気持ちがいいキスかも…)...

episode597

「やはり、リッキーさんはメルヴィンと一緒だったのですね」...

episode598

浴衣を着せられ、ランドンに付き添われたメルヴィンは、ベ...

episode599

1時間泣くに泣いて、ようやくキュッリッキは泣き止んだ。そのあ...

episode600

「ああ…、リッキーの中は、あったかいな」「そんなに動い...

episode601

「あーあ、もう明日には帰らないといけないのかあ」...

episode602

(おやじ衆――ベルトルド、アルカネット、リュリュ、シ・アティウスは...

episode603

「やるなあ~、リッキー」「ええ、ビックリですね」...

episode604

キュッリッキ対タルコットは、勝者キュッリッキ。ルーファス対シ...

episode605

「オッサンとメルヴィンの試合、ハジマッタナ」2人の試合以外にも、...

episode606

「あっ」ハッとして、メルヴィンは後ろに飛んでいったボ...

episode607

「そういえば、こんな風にみんなで旅行に来たのは初めてですね」

episode608

「なあにいいいいいい!」ダンッと台に両手を叩きつけ、

episode609

桔梗の間に場所を移した4人は、部屋へ入ると鍵をかけ、そして。

episode610

しんみりムードをヴァルトの「ハラヘッター」でぶち壊され、

episode611

「リッキー…」優しく労わるように声をかけると、

episode612

ユリハルシラで過ごす最後の夜、振舞われたご馳走は

episode613

追い出されたリュリュとシ・アティウスは、

episode614

「生きていたなんて……、アイツ、生きてた…」アルッティは宿を飛び出し、

episode615

サイ《超能力》というスキル〈才能〉があることを、アルッティは思い出していた。

episode616

朝顔の間にベルトルドとアルカネットが現れると、ピタッと雑談が

episode617

「さて、食事が終わったら、11時までは自由行動、11時には

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召喚士編 片翼の召喚士-ReWork-

episode618

ガタガタガタと忙しなく、デスクが何度も床を打ち鳴らす。それに混じり、

episode619

温泉旅行から帰ってすぐ宰相府へ出仕したベルトルドは、デスクに落ち着く

episode620

殺伐とした声で言うアルカネットに噛み付きそうな顔で睨むと、ベルトルドは

episode621

「ふんふんふ~ん」鼻歌を奏でながら、キュッリッキはご機嫌で服を選んでいた。

episode622

いきなりのことに、キュッリッキは目を丸くする。「今から一緒に、来ていただきたい場所があるのです」

episode623

「ねえ、これから何処へ行くの?」ようやく行き先に興味をおぼえたキュッリッキがアルカネットを見ると、

episode624

「まあ、アルカネット様よ」「アルカネット様がいらしたわ」急にキャッキャとかしましい少女たちの

episode625

一人用の椅子に座らされ、キュッリッキは肩をすくめて目を左右に動かした。

episode626

ビシッとアンティアに人差し指を突きつける。しかし2匹ともその場に座ったまま、

episode627

「そこまで!」パンパンッと両手を打ち鳴らし、突然ベルトルドが部屋に入ってきた。

episode628

――何故こんなことに!?同じ思いを抱いた少女たちが15名。

episode629

後ろに居た他の軍人もやってきて、倒れたアンティアの髪をグイッと乱暴に掴んで、

episode630

「仕方ありませんね」苦笑気味に頷きながら、アルカネットは掌に巨大な水の球を作り出した。

episode631

ベルトルドは組んでいた腕を解いて、両手を広げた。

episode632

(泣かせた? …もしかして、メルヴィン様のことなの??)

episode633

留学先で両親の訃報を知り、悲しむ間もなく命を狙われ、学院で雇った傭兵たちに守られて無事首都に帰り着いた。

episode634

――いやああああああああっ!!けたたましい悲鳴が神殿の中から外に流れ出て、

episode635

じっと神殿の様子を伺っていたシ・アティウスは、神殿の様子に変化が生じたことを感じ取った。

episode636

廃村寸前の漁村で、ユリディスは生まれた。父母は近海で魚をとり、近隣の市場に出荷していた。しかし、近海でとれる魚は

episode367

「ユリディスの記憶か……」ベルトルドは急に苦いものがこみ上げてきて、小さく苦笑を浮かべた。貧しいなりをしたユリディスの姿が、

episode638

「アルケラを守らなくては」静かな薄暗い水の中で、ユリディスは必死に考えた。幸いレディトゥス・システムはフリングホルニとは別の場所で作られ、

episode639

ベルトルドは素直に頷いた。そして、わざとらしく肩をすくめてみせる。「計画は順調に進み、ヒューゴもユリディスも、結局俺を止められなかったな」

episode640

この世界にはスキル〈才能〉というものが存在する。それは、一つの突出した能力で、必ず一人一つ、授かって生まれてくる。

episode641

「フェンリルは巫女を守るために使わされた、ということですか」「うん。歴代の巫女の傍らには、必ずフェンリルが付き添っている」

episode642

皇都イララクスは晴天、秋風も穏やかで気持ちのいい朝。「おはよ~」キュッリッキが食堂に顔を出すと、

episode643

「ファニー」ハーメンリンナの城砦前に佇んでいたファニーに、キュッリッキはブンブン手を振った。「やほー、温泉旅行ぶり」

episode644

思わずファニーはズッコケそうになり、頭を抱えた。「アタシの口から言わせるな……」ため息をこぼし、そしてキュッリッキの首を絞める。

episode645

「ねえメルヴィン、アタシとエッチしたい?」その瞬間、談話室のあちこちから大きな音がたった。そしてメルヴィンは、口にしていたビールを、

episode646

「リッキー、今日は泊まっていけるんだろう?」金糸のようなキュッリッキの柔らかな髪を指でいじりながら、ベルトルドはテレビに見入っている

episode647

やや呆れ気味にキュッリッキが言うと、「1秒でもリッキーのそばにいたいんだ!」「そうです。たかが仕事ごときに邪魔されませんよ!」

episode648

目を覚まして身を起こすと、アルカネットは小さく息をつく。時計を見ると、まだ朝の4時を少しばかり回った頃だ。

episode649

部屋の入り口に、アルカネットが立っていた。「アルカネットさん」キュッリッキはアルカネットに気づいて、

episode650

(さっきから誰のことを言ってるの? 写真の女の子……?)次の瞬間、キュッリッキは叩きつけられるようにベッドに押し倒され、

episode651

ドコをどう走ったのか覚えていなかった。ただ、無我夢中でアジトへ向かって走る。一度も足を止めなかった。

episode652

ハーメンリンナの南区と北区は、かつてないほど騒然となっていた。南区には軍関係施設があり、北区は行政関係の施設がある。

episode653

メルヴィンに気づいたカーティスが声をかけると、どこか憤懣やるかたない様子でメルヴィンは首を横に振った。「なに怒ってるんだ? 

episode654

「調子はどぉ~お~? キューリちゃ~ん」ノックとともに部屋へ入ってきたのがマリオンと判り、

episode655

ハーメンリンナに乗り込んだメルヴィン、ギャリー、タルコットは、目の前の事実に狼狽えていた。「……なんにもないな」

episode656

ターヴェッティ学院の卒業日のことだ。ターヴェッティ学院とは、ハワドウレ皇国の国政を担う、エリート人材を育成する専門機関である。

episode657

ベッドに半身を起こして座りながら、キュッリッキはフェンリルやフローズヴィトニルの身体をそっと撫でていた。2匹はキュッリッキの膝の上で丸くなって目を閉じている。

episode658

今判ることは、キュッリッキは深く傷ついている、ということだ。立ち直れるよう、そばで支えになってやらなければならないのだ。

episode659

「あー、なんとか大丈夫そうだねえ」「うんうん。愛の力よねぇ~」ルーファスとマリオンは、しみじみと頷きあった。

episode660

やんちゃな少年のような笑顔になるベルトルドに、キュッリッキは迷うような表情を向けた。ベルトルドのところへ行けば、

episode661

真っ白なドレスに身を包み、裾を踏まないか気をつけながら、ゆっくりと歩いてきた。「大人っぽいデザインだね。似合うかなあ」

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奪われしもの編 彼女が残した空への想い 片翼の召喚士-ReWork-

episode662

《お前はキュッリッキを、どうするつもりなのだ》頭内に低く浸透する男の声に、ベルトルドは面白そうに目を見開いた。

episode663

むずむずっとしたこそばゆさに、ザカリーは目を開いた。「む? なんだなんだ、停電か!?」

episode664

背中の痛みは大して気にはならなかったが、意識を失っている間にキュッリッキを連れ去られてしまったことは、不覚としか言い様がない。

episode665

「さあリッキー、目を開けてごらん」耳元で囁くように言われて、キュッリッキはゆっくりと目を開いた。「うわっ」

episode666

キュッリッキはアルケラへ意識を飛ばすことが出来る。しかし、月を通って意識が飛んでいくようなイメージは一度もない。召喚スキル〈才能〉持ちの者の、

episode667

「ベル~、アル~、リュリュ~、お昼ご飯の時間だよー」聴き慣れた声が自分たちを呼んでいることに気づいて、>

episode668

3種族の惑星には、それぞれ自由都市というものが、いくつも存在している。種族統一国家を嫌う人々が集まり、小さな町を興し、

episode669

「それは私も同じ意見だねえ。私は建築スキル〈才能〉だが、アルカネットは魔法スキル〈才能〉ときたもんだ。オマケにアルカネットもOverランクの判定をもらってきたばかりですよ」

episode670

「おーい、リュー、ビーチ行こうぜ」ベルトルドが建物の2階へ向けて、大声を張り上げる。アーナンド島の学校から帰ってきて、

episode671

その瞬間、気にもならなかった波の音が、騒音のように耳に流れ込んでくる。緩やかな風に揺れる椰子の葉音すら大音量に聞こえてしょうがない。

episode672

あまりにも正直な慌てふためきぶりに、指摘したリューディアのほうが困ってしまっていた。「学校で好きな女の子でも出来たの~?」

episode673

刃物で斬ったように、綺麗に真っ二つに割れたリンゴを見て、中年の男性教師は満足そうに微笑んだ。「コントロールが格段に上達しているね。さすが、優秀な子だ」

episode674

ドタドタとしたやかましい足音が、徐々に遠ざかる。一気に静まり返った食堂には、ベルトルド、アルカネット、リュリュの3人だけが残った。

episode675

アルカネットの父イスモと母レンミッキが学校に呼ばれ、ベルトルドが証拠として自らのサイ《超能力》で見たアルカネットの記憶を提出した。

episode676

島へ着いてからイスモとレンミッキは、ベルトルドとリュリュの家を回って、遅く帰ってきた事情の説明と謝罪をした。

episode677

「ホントにもう、あんたはマセガキなんだから! 10歳児のくせに、大人でも滅多にできないことをするんじゃないのっ」

episode678

ゼイルストラ・カウプンキの住人たちの殆どは、アーナンド島の周辺にある小島に住居を構えている。ゼイルストラ・カウプンキの首都でもあるアーナンド島に住居を構えると、

episode679

ヨトゥン号はゆっくりとシャシカラ島を目指してへ進む。ミーナ群島の海流は穏やかなので、クルーザーはあまり揺れず、心地よい風と海鳥たちのさえずりを楽しめた。

episode680

シャシカラ島の小さな港にクルーザーが停泊すると、家につづく階段で、アルカネットが出迎えてくれた。「みんなおかえり」

episode681

ちらりとベルトルドに目を向けられて、リューディアはこくりと頷いた。ベルトルドは散々躊躇ったあと、小さな声で話し始めた。

episode682

「たとえベルがアルに譲ったとしても、わたしがアルの想いを受け入れるって保証はないのよ?」「うん。そこはアルカネット自身の問題だから、俺にはどうもできない」

episode683

「よーし、今日のノルマ終わったわ」リュリュが嬉しそうに声を張り上げる。「ボクも終わったよ。ベルトルドは?」「ああ、俺も終わってる」

episode684

「えっ…」突如、目を焼くほどの眩しい発光が、3人の目を襲った。そして、鼓膜が敗れるほどの轟音が鳴り響き、何かが爆発したような音が激しく起こる。

episode685

リューディアの遺体は大人たちによって、リューディアの家の地下室に安置された。アルカネットは精神の均衡を崩して、危険と診断したサーラが、

episode686

ベルトルドは真っ直ぐリューディアの家に向かった。すでに陽は落ちて辺は真っ暗だが、躓いたり転んだりせず、地下室につづく戸口の前に立った。

episode687

すでに死んでしまっているリューディアの口から聞き出すことは不可能だ。しかしベルトルドにはサイ《超能力》がある。

episode688

誰も言葉を発さず、リュリュの話に聞き入っていた。しかしみんなの表情は、苦く辛さに満ちている。「透視も使えないくせに、どういうわけか勘がイイのよ、

episode689

白い頬を、涙が流れていった。(あの雷は……トールさまの雷(ミョルニル)だわ…)

episode690

キュッリッキを抱きしめたまま、ベルトルドは囁くように言った。その腕の中で、キュッリッキがベルトルドの顔を見ようと、僅かに頭を上げる。

episode691

片翼で生まれてきたばかりに、家族にも同族にも国にも捨てられた存在。だから、ライオン傭兵団にくるまで、そんな法律があることなど知らなかった。

episode692

長い時間(とき)を経て再会できたかのような喜びに、ベルトルドの心は快哉を叫びだしたい気持ちに満ち溢れていた。

episode693

ドレスをギュッと握り締めながらも、キュッリッキの手は小さく震えていた。 ベルトルドとアルカネットの背に広がったものは、紛れもなくアイオン族の翼だったからだ。

episode694

「そうだ。しかし不思議なことに、空を飛ぶ技術のみ、記録も何も残されておらず、技術で空を飛ぶ、という発想を、この千年の間誰も思いつかなかった」

episode695

1万年前、この世界には、国と呼べるものは3つしかなかった。トゥーリ族が治める惑星タピオに、種族統一国家ロフレス王国。

episode696

「リッキーはヒューゴを知っているのかい?」「うん。エルアーラ遺跡で会ったユーレイなの。その時に、ヤルヴィレフト王家の野望は潰えてないって、血の波動を感じるからって言ってた」

episode697

我知らず右肩に手が触れる。謎の怪物に襲われたときのことが脳裏に蘇り、ギュッと目を瞑った。

episode698

(に…逃げなきゃ…)ベルトルドとアルカネットを交互に見ながら、キュッリッキは立ち上がろうとした。しかし身体はすくみ、腰が浮かない。

episode699

キュッリッキをソファにそっと横たえ、ベルトルドは上着を脱ぎ始めた。「おねがい、アタシに触らないで……おねがい…」R-18

episode700

(こんなの…ヤダ)ベルトルドをこれほど怖く思ったのは初めてである。R-18

episode701

「やっ!」突然、柔らかな感触が秘部に押し付けられ、たまらず声が漏れる。R-18

episode702

ベルトルドは苦しげに言うと、荒く息を吐きながら唇を再び貪り、そして身体を起こした。すでに股間のモノは硬く膨張しきって、キュッリッキを求めている。R-18

episode703

何度も何度も身体の中で、硬いものが暴れ狂っている。突かれ掻き回される動きに、身体が裂けてしまいそうで、痛くて苦しくて涙が止まらない。R-18

episode704

離れたところで二人を眺めていたアルカネットは、キュッリッキの処女が失われたことに、満足したように頷く。神の乙女は汚された。

episode705

ライオン傭兵団はダエヴァの用意した幌付きの大きな荷馬車に、リュリュとともに乗り込んだ。そして、火災で地獄絵図のようになった皇都イララクスの街街を突っ切り、

episode706

「ホントにねえ…。まあそんな前例のおかげで、躊躇いなんてものはなかったのね」「きっと、巫女にも恋愛の自由を与えていたのでしょう、

episode707

「リュリュ様、そろそろ到着します」馬車を操っていたパウリが、にこやかに告げる。

episode708

リュリュに連れてこられたのは、アルケラ研究機関ケレヴィルの本部だった。ライオン傭兵団の誰もが、ここへは来たことがない。

episode709

レディトゥス・システムの横に立っていたシ・アティウスは、ベルトルドに一礼した。「終わりましたか」

episode710

それまでずっと黙っていたアルカネットが、端整な顔に優美な笑みを浮かべた。「アルケラの巫女を不浄の鍵に出来ましたが、穢は多いほうがいいでしょう。

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フリングホルニ編 片翼の召喚士-ReWork-

episode711

季節は秋に移り変わり、夜風もどことなく冷気を帯び始め、空気の澄んだ夜空を見上げながら、ヴィヒトリは大あくびした。

episode712

1万年前に造られたという、超巨大船が地中に埋まっており、それを復活させることで、この大陸は半壊するだろ。そう、告げられた時にはさすがに計画を思いとどまらせようと思ったのだ。

episode713

それは、深夜のことだった。大陸には光がなく、地上は不気味な暗闇が支配している。

episode714

やがて激しい揺れはおさまりはじめ、潜水艦の艦橋ではあらゆる怒号が飛び交っていた。あの凄まじい揺れのせいで、船体のあちこちに被害を受け、船内には負傷者が続出した。

episode715

そこは、ひたすらだだっ広い部屋だった。白い天井と床、そして、エグザイル・システムしかない。「ここかー、フリングホルニとやらは。つか、前にも来たか…」

episode716

だらりと両手を下げていたアルカネットは、深呼吸をするようにして反ると、背に漆黒の翼を生やした。片方だけ大きく広がったその翼を見て、カーティスたちはギョッと目を見張る。

episode717

アルカネットを倒し、ベルトルドの股間に魔弾をブチ込むことを、今回最大の目標としていた。(きゅーりを汚した、あのでっけぇブツを、オレが魔弾でぶっ潰す!)

episode718

(あれだけ万能に近い形で防がれては、かえって俺たちの持ち味が活かせない。互を気遣いながらでは、攻撃を当てられずストレスを溜めるだけになる)

episode719

アルカネットは右腕を大きく振りかぶると、ガエル目掛けて振り下ろす。光の鞭がその身をくねらせながら、スピードをつけてガエルに襲いかかった。

episode720

トゥーリ族は外見だけ見ても年齢が判りづらい。老人と呼ばれる領域まで来ると、外側を覆い尽くす毛に白いものが混じって、それで判断するしかない。

episode721

右手を振り下ろすと、ガエルたちの頭上から無数の雷の柱が降り注いだ。雷系の最上級攻撃魔法であるイラアルータ・トニトルスは、

episode722

ハーマンは声高に吠え、得意としている火炎系攻撃魔法を放つべく、魔力媒体にしている本を開く。「火花と火炎を撒き散らし

episode723

目の前で拮抗する竜巻のぶつかり合いを見て、アルカネットは面倒そうに眉をひそめた。いつになく張り切るハーマンの繰り出す魔法は、

episode724

「私とハーマンの竜巻を凍らせるとは、やるようになりましたねカーティス」表情をそのままに、アルカネットは目を眇めた。

episode725

人はたくさんの仮面(ペルソナ)をかぶっている。目には見えないその仮面を取り替えながら、他者から自分を守り、他者を欺き、広い世界の中を生きていく。

episode726

そんな時、弱々しいまでに、頼りなげなベルトルドの声が、頭の中に小さく響いてきた。いつもの自信に満ち溢れる声ではない。

episode727

リューディアの死から、数ヵ月後のことだった。アルカネットもイーヴォも、お互いどちらが主人格か理解出来ないほど、

episode728

表に出た”アルカネット”は、憎むべきキュッリッキをレイプしようとする。しかし仮面(ペルソナ)が最後の抵抗をし、それは ”アルカネット”を錯乱させ、

episode729

え!? と皆ギョッと目を見開いた。スキル〈才能〉とは、生まれつき一つだけしか授かってこないものである。

episode730

レディトゥス・システムの透明なケースを切なげに見ていたベルトルドは、複数の足音に身体ごと振り向けた。「ほう、アルカネットをまいてきたのか。やるじゃないか」

episode731

フローズヴィトニルの身体をすり抜け、ベルトルドは片手をメルヴィンに向けてかざす。メルヴィンは爪竜刀の切っ先を、ベルトルドの眉間に定めて突き出した。

episode732

突き出された爪竜刀の刃を、ベルトルドの剣が迷いなく受け止める。そして衝撃波が二人を中心に、円のように周りに広がって、煙を勢いよく払った。

episode733

激昂するメルヴィンに、ベルトルドは大きく目を見開く。「貴様のような青二才に何が判る!!」カッとなったベルトルドが念動波を炸裂させ、メルヴィンを後方へ吹っ飛ばした。

episode734

雷霆(ケラウノス)の攻撃は、見た目も派手だが破壊力がとてつもなく強大である。以前まだここには、レディトゥス・システムが運び込まれていなかったので、雷霆(ケラウノス)を使われても、さほど問題はなかった。

episode735

リューディアの命を摘み取った神の居るアルケラへ至るために、無情にもキュッリッキが欠かせない条件だと判ってしまった。

episode736

やれやれという空気が漂う中、メルヴィンだけは爪竜刀を構えたまま、攻撃の隙を伺っていた。襲いかかってくる多くの剣に阻まれ、なかなか前に踏み出せずにいる。

episode737

突然ベルトルドが消えて解放されたメルヴィンは、床に突っ伏して倒れ込むと、激しく咳き込んだ。「メルヴィン!」ランドンが慌てて駆け寄り、メルヴィンの喉に手をかざす。

episode738

「メルヴィン…」世界で一番大切で愛おしい男(ひと)の名を呟くと、心と下腹部にズキリとした鈍い痛みを感じた。悲しくて苦しい気持ちが、深いところから沸き起こり、

episode739

ぼうっとする目を前に向けると、いつの間にか見知らぬ少女が、寂しげな表情で微笑んでいた。「私はユリディス。こうして直接会うのは、初めてね」

episode740

まだ自分よりも幼い容姿のユリディスに抱きしめられ、キュッリッキの心は少しずつ落ち着きを取り戻していた。何故だかとても、心休まるのだ。見た目より、お姉さんなのかなと感じるほどに。

episode741

大きなベッドに座り込むようにして、幼いユリディスは臥せっているヴェルナの看病をしていた。ベッドサイドの椅子に座ると、まだ身体の小さなユリディスでは手が届かない。

episode742

「ヴェルナ様は全てを予見しておられました。神王国ソレルの崩壊も、私が王家に捕らえられることも、何もかも」

episode743

スキル〈才能〉は遺伝しないものだと聞いているが、1万年前はそうではないのだろうか。「もちろんよ。中には魔法とサイ《超能力》を一緒に備えた人間も多くいるわ」

episode744

あの二人になら、なんでも話せる。自分がアルケラの巫女で、ベルトルドにされた酷いことを、死にたいほど苦しい思いを、全部話せる。そして、ファニーとハドリーに慰めて欲しかった。

episode745

「フった直後で、ユリディスの前で嬉しそうに言うな」憮然とキュッリッキは呟いた。「やっぱりそう思うでしょ! あの時も今も、私もそう思うもの!」

episode746

剥き出しの地面の広大な広場を、隙間もないほどの人々が埋め尽くしていた。老若男女の人々は、誰も彼も美しい容姿をしており、翼はしまっていたが、アイオン族だと判る。

episode747

映像の中のユリディスとアピストリたちは、とてつもなく長い廊下を突き進み、やがて部屋に通された。真っ暗だった室内は、突然眩いばかりの照明が灯され、室内の全容を明らかにする。

episode748

キュッリッキは暫く泣きじゃくっていた。そんなキュッリッキを慰めるように抱きしめているユリディスの表情には、苦いものが広がっている。ヒューゴの表情にもまた、苦いものしか浮かんでいなかった。

episode749

「アタシが…」「貴女が助ければ、フェンリルが暴走することはないわ。巫女の命令は、フェンリルにとって絶対だもの」

episode750

「メルヴィンが……」助けに来てくれた。助けに来てくれたというのに、心は後ろめたさでいっぱいだ。

episode751

「ねぇ~え~、なんとかぁ、ならないわけぇ~?」「なんとかなるなら、とっくにしていますよ」立体パネルを忙しく操作しながら、シ・アティウスは感情のこもらぬ声でマリオンに答えた。

episode752

「タルコットさん、引っ張ってください!」「うん、ヴァルト引っ張れ!」「まーーかせろおおおおおおっ!!」

episode753

手にしている立体パネルを操作しながら、シ・アティウスは誰にも気づかれないほどの、小さな笑みを口元に浮かべた。

episode754

サイ《超能力》を持っているわけではないので、他人の思考や物の記憶を、自在に透視する芸当は持ち合わせてはいない。しかし、アルケラの住人たちの力を介せば、キュッリッキには同等の事が可能だ。

episode755

フェンリルは巫女の許しなくしては、神の力を自在に振るうことも、人間を害することもできない。唯一、巫女の身の危険を回避するために、自ら動くことは許されている。

episode756

血まみれで、仰向けに床に転がるガエルを見おろし、アルカネットは小さく鼻を鳴らした。正面に視線を向けると、床に這いつくばるように息の荒いカーティスやギャリーたちがいる。

episode757

ギャリーは正規部隊にいた頃、捕虜を捉えると、引渡しのために尋問・拷問部隊の本部へ行くことがよくあった。捕虜がただの三下の場合は、部隊の隊員が担当に当たる。

episode758

(おや…)何やら口にしているようなと、彼らの様子を見ていたアルカネットは、半死状態のライオン傭兵団が、急に蘇ったのを感じて目を見開く。(ドーピングでもしたのでしょうか。まあ、いいでしょう)

episode759

「自分にイラアルータ・トニトルスをぶちかますとは、さすがに思わなかったぜ」身体を起こしながら、ギャリーは薄く笑った。「オレたちの力は屁の河童でも、自分の力じゃ大ダメージもらってんじゃね?」

episode760

使い慣れない空間転移を乱用しすぎて、アルカネットはガエルたちが考える以上に、激しく気力と体力を消耗していた。戦闘での消耗もあったが、31年も存在し続けた仮面(ペルソナ)人格を駆逐する為に、

episode761

拳を中心に、辺りに細い稲妻が無数に踊りだす。「サラマ・フルウス!」アルカネットの目がカッと見開かれた瞬間、拳を取り巻いていた稲妻が、ライオン傭兵団目掛けて襲いかかった。

episode762

焦りを含んだ声が、ひきつれたように掠れる。「ベルトルド……ベルトルド!!」「なんだ!?」 突然アルカネットがしぼり出すように叫びだし、

episode763

ベルトルドはアルカネットの傍まで来ると、ペタリと座り込んだ。そして、おっかなびっくりといった仕草で、アルカネットに手を伸ばす。白い手袋に覆われた指先が、

episode764

「いやぁ~、ラクチン~、ラクチンっ」ふかふかな黒い毛並みに座り、マリオンは鼻歌を歌いながら上機嫌に笑う。それにつられるように、タルコットも深々と頷いた。

episode765

フェンリルの背に乗りながら、メルヴィンは呆気にとられて、目の前の状況を見つめていた。しかしキュッリッキは、床に倒れているアルカネットに気づいて顔を蒼白にすると、フェンリルから飛び降りて、転げるように駆け出した。

episode766

あれほど酷い目にあわされたのに、裏切られたのにもかかわらず、キュッリッキはベルトルドを憎むことができなかった。それは、酷いことをされた以上に、深く深く愛されていたからだ。

episode767

空間転移を応用して、剣を召喚してきているわけではなく、魔力で生み出されていた無数の剣。サイ《超能力》で新たな物質を生み出すことはできないが、魔力ではそれが可能だ。

episode768

リューディアとの恋敵として、アルカネットが自分を疎ましく思っていることは知っていた。時折あからさまな憎悪を向けてくることがあったし、隠そうともしていない。

episode769

入団希望者があとをたたず、一人当千の強者ぞろいとして、傭兵世界ではトップレベルのライオン傭兵団。しかしそれは、人間相手に通用していたこと。さすがにドラゴンという、ファンタジーレベルの化け物は専門外だ。

episode770

――アルケラの巫女を殺しなさい。何度も何度も、繰り返し頭の中に木霊するその声に突き動かされるように、ドラゴンはゆっくりとした動作で前に脚を踏み込んだ。

episode771

キュッリッキは心の底から怒っていた。メルヴィンが自分のために命懸けで戦ってくれるのは、恋人だから、だと思っている。それは仕方がないが、

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最終章 永遠の翼 片翼の召喚士-ReWork-

episode772

フリングホルニの規模からすると、エグザイル・システムのあるこの部屋は、小部屋と称してもいい程度だ。巨大なドームほどもある室内の、

episode773

深々と嘆息し、キュッリッキは2匹の頭に手を乗せる。「制限を解くことになるとは、さすがに思わなかったけど…。――召喚士キュッリッキの名において、フェンリルとフローズヴィトニルにかせられしグリーマヴェンドを、

episode774

「どっからどう見ても、普通の鷹だなあ…」タルコットは鷹をしげしげと見つめながら、首をかしげる。キュッリッキから託されたヴェズルフェルニルを腕に留まらせながら、メルヴィンは苦笑を浮かべた。

episode775

「ちょっ、何するのフローズヴィトニル!!」キュッリッキが悲鳴を上げるのと同時に、ドラゴンは大咆哮をあげて、フローズヴィトニルを叩き落とそうと身体を激しくもがいた。

episode776

ドオオオンッと室内に大きく轟く音と、獣の悲鳴。「なにすんだよー!?」いきなり体当たりを食らったフローズヴィトニルは、勢いよく背中から床に落ちた。

episode777

離れた位置で、喧嘩する狼たちとキュッリッキを交互に見ていたメルヴィンは、グッと顎を引くと、隣にいたタルコットにヴェズルフェルニルを押し付けた。「すいません、この鷲お願いします!」

episode778

「おっさん、ホントにスケールがデカすぎるっつーか…」「もはやスケールとかいう問題じゃなくね??」ルーファスの呟きに、ザカリーがツッコむ。「短い人生でしたねえ…。せっかく傭兵界でのし上がってきた

episode779

「遠い遠い昔、一つだったお前たちを二つの分けたのは、フェンリルには巫女の守護という大切な役割が与えられていたからだ。悪い部分のフローズヴィトニルを残したままでは、

episode780

やれやれ、といったようにキュッリッキと2匹の息子たちを見ていたロキは、その向こうに動きを止めているドラゴンに視線を向ける。ロキの力でドラゴンは動きを封じられていた。

episode781

フェンリルとフローズヴィトニルを床に置くと、キュッリッキはベルトルドの傍らまでゆっくりと歩いた。メルヴィンやライオン傭兵団のみなも、慌てて駆けつける。

episode782

人間は空を飛べない。身体に翼はなく、空を飛ぶようには出来ていないからだ。例外として、背に翼のあるアイオン族、そしてサイ《超能力》や魔法スキル〈才能〉を持つ者たちは、空を飛べる。

episode783

「メルヴィン」間髪入れず即答され、ベルトルドの顔に激しい落胆が広がる。後ろで黙って成り行きを見守っていたライオン傭兵団の皆も、

episode784

ガン泣きされるかと思いきや、どこか呆けたような顔で、キュッリッキはメルヴィンに抱きしめられ泣いていない。まだ死を受け入れられていないのだろう。むしろ、メ

episode785

太陽が西に沈みかけている頃、焼け野原と化したイララクスの街中で指揮を執っていたリュリュは、パウリ少佐から念話で連絡を受けると、馬車に飛び乗ってハーメンリンナにとって戻り、ケレヴィル本部へ駆け込んだ。

episode786

ほんの数十分ほど前に、宇宙というところにいたライオン傭兵団は、ケレヴィル本部内にあるエグザイル・システムに無事たどり着いた。

episode787

地下に降りていくと、上等な馬車が数台ズラッと並んで停まっていた。「ベルたちを止めてくれたあーたたちを、もう荷馬車に押し込めたりしなくてよ。乗んなさい」

episode788

皆が食事を終えた頃、ヴィヒトリが大急ぎで駆けつけてくれた。急患が立て込んで、中々病院を抜け出せなかったらしい。ハーメンリンナの大病院の医師たちも、イララクスに緊急出動で、てんてこ舞い状態だという。

episode789

キュッリッキはバスルームに隣接したドレッシングルームでドレスと下着を脱ぎ捨てると、温かい湯気の立つバスルームに飛び込んだ。キュッリッキがいつでも使えるように、すでに湯がはられている。

episode790

メルヴィンとキュッリッキのためにソファを明け渡したフェンリルとフローズヴィトニルは、足元で不安そうにキュッリッキを見上げていた。真っ白なバスタオルに包まれ、キュッリッキはメルヴィンの膝の上に抱きかかえられて泣いていた。顔を伏せて、小さな声で。

episode791

キュッリッキを横たえて膝立ちになると、メルヴィンはバスローブを脱いだ。バスローブの下には何もつけていない。鍛えられた逞しいメルヴィンの裸身を見て、キュッリッキは顔を赤らめる。普段肌の露出する服を着ていないので、

R-18

episode792

不本意な初体験を済ませて、まだそんなに時間が経っていない。愛する人とのセックスは、これが本当の初体験なのだ。メルヴィンは身体を起こして、キュッリッキの背に腕を回すと、優しく抱きしめてキスをした。

R-18

episode793

僅かに瞼を震わせ目を開けると、腕が見えて、それをたどって上に目を向けるとメルヴィンの横顔が見えた。そのままジッと見ていると、メルヴィンはぐっすりとよく眠っている。

episode794

襟と袖口に白いレースをあしらった、濃紺のベルベット生地のワンピースを選んで、濃紺色のリボンを髪に結んでもらう。こうして身支度が整うと、追い出されるようにして食堂へ向かわされた。

episode795

「え…」腫れぼったくなった目でリュリュの顔を見つめ、キュッリッキは小さく首をかしげる。「あーたは二人にとって大切な家族だったのよ。――男と女の関係に持っていく、とか言い張っていたけど、どっからどう見ても親娘だったわ」

episode796

蒼天の元、喪服に身を包んだライオン傭兵団は、迎えに来た馬車にそれぞれ乗り込み、ハーメンリンナに連れて行かれた。葬儀のために急遽セッティングされた大広場は、かつてモナルダ大陸戦争において、ベルトルドが盛大に式典を開いた場所でもある。

episode797

「やれやれ、我らをこんな場所に呼び出すとは、相変わらずキュッリッキは突拍子もない子だね」なんだか嬉しそうな表情で、ロキが笑った。「ごめんなさい」

episode798

リューディアの純粋な願い、ベルトルドの悲願。「……1万年前の悲劇が、再びこの世に訪れるやもしれぬぞ?」低く優しさの溢れる声が、キュッリッキにそっと降り注ぐ。

episode799

8月に見たこともない巨大な化け物を見せつけられた。そして今度は巨人である。召喚士の呼び出す様々なものに、人々は驚嘆させられっぱなしだ。巨人とキュッリッキのやりとりは、大広場の人間たちには意味不明であった。

episode800

「っとに、あのオヤジどもおおおおおおおおお!」握り拳を作り、片足をテーブルに乗せ、椅子の上に立つザカリーが吠えた。「なぁにが『さらばだ! 愛すべき馬鹿ども!!』だってゆー!」

episode801

「発端となった飛行技術云々も無事解決を見たようですし、我々はアジトの再建と仕事を再開していかなければなりません。明日から土地買収の交渉やギルドとの連絡、忙しくなりますよ」

episode802

見つめていた天井が急にメルヴィンの顔になって、キュッリッキは目を見開いた。「そういえば、フェンリルとフローズヴィトニルはどうしたんですか? 彼らを見かけないんですが」

episode803

明るい陽の光に起こされて、メルヴィンはゆっくりと目を覚ました。プライベートバルコニーのほうから、室内いっぱいに陽光が射し込んでいる。寝る前にカーテンを閉め忘れたようだ。

episode804

着替えてダイニングへ行くと、ブッフェで好きなものをトレイにのせ、バルコニーの席に3人は座った。朝でも陽射しが強いので、白い布の張られた大きな傘がさされていた。「小娘にこれ渡しておくわ」

episode805

「やあ、おかえりサーラ」島の小さな港で、背の高いハンサムな男が笑顔で手を振っていた。「ただいまリクハルド」サーラも笑顔で手を振り返し、器用にクルーザーを接岸させる。

episode806

リュリュから話を聞き終えた6人の親たちは、様々な表情をたたえて黙り込んでしまった。「オレたちのリューディアの死が、二人をそこまで追い込んでしまったなんて…」

episode807

庭のプールサイドのデッキチェアに座って星空を見上げていると、サーラから声をかけられ、キュッリッキは顔を向けた。「疲れたでしょう」

episode808

「31年……。あれからもう31年もの月日が経って、やっと解放されたんだわ…」リューディアへの想いからも、アルカネットの束縛からも。死ぬことで自由になれた一生は、なんと切なく虚しいのだろう。それでも、ベルトルドなりに生き抜いたのだと、サーラは強く頷いた。

episode809 最終話

寝返りをうったところで、メルヴィンは目を覚ました。暫く薄ぼんやりとした目で天井を見上げていたが、隣に寝ているはずのキュッリッキがいないことにようやく気づいた。

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キャラクター紹介 片翼の召喚士-ReWork-

メインキャラ達は全身図の挿画付きで紹介します。ネタバレも含まれるので、-ReWork-から読み始めた人は注意してください。気にならない人はどうぞご覧下さいね。

※ブラウザはGoogleChrome最新版を超超推奨します。

□ キュッリッキ

□ ベルトルド

□ アルカネット

□ メルヴィン

□ カーティス

□ ギャリー

□ ザカリー

□ ルーファス

□ リュリュ

□ ガエル

□ マリオン

□ ヴァルト

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用語説明・雑談など 片翼の召喚士-ReWork-

■ 用語説明 片翼の召喚士-ReWork-

■ 雑談:片翼の召喚士-ReWork-・1

■ 連載を開始して、早1ヶ月

■ 雑談:片翼の召喚士-ReWork-・2

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NEWS

なんと片翼の召喚士-ReWork-を特集に取り上げていただけました(・∀・) ランキング圏外だったのによくぞ見つけてくださいました>< 感謝感謝です! あんまりにも嬉しいので、記念に掲載☆

SNSサイトへの投稿

当ブログだけでは日の目を見ることがなくなってしまうため、小説投稿SNSサイトへも投稿しています。携帯端末などの都合で、ブログ表示だと厳しい方は、SNSサイトのほうでも読んでいただけると幸いです。

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