033 第三章 求めるもの 再会

5月に猛暑、6月に入っても猛暑、でもちょっと涼しくなったら激しい梅雨、そして今日あっつい気温。


身体の調子が悪くなるじゃないか(#゚Д゚)ノ彡┻━┻


昔の交通事故でおった怪我の後遺症が、じめっぽいとジクジク痛いンデスヨネ。なので気分的にもテンション上がらないっていう。

しかーし、気分までジメっぽくちゃやってらんねーヽ(`Д´)ノ というわけで、創作頑張ります(笑)

ただちょっとイラスト描く気力が沸かないので、イラストの新作更新滞っていてスミマセン。別に芸術作品描いてるわけじゃないけど、気分的に乗らないと駄作しか描けないですから。乗ってても駄作とつっこまないでね><w


そろそろ3章クライマックスになります。話が進んでいくと、自分的にはちょっと辛い内容になっていくので、キュッリッキさんにとって今の幸せなひとときが、とっても大事に思えてなりません。

ちょっと長いですがよろしくです。




ALCHERA-片翼の召喚士-
第三章 求めるもの 再会 033


 楽しく賑やかな時間はすぐに過ぎ去っていく。

 すでに外は夕焼けでオレンジと紫色に染まり、薄暗くなった部屋には灯りがともされ、それをきっかけにしたようにカーティスが立ち上がった。

「そろそろおいとましましょうか。夕飯時ですしね」

 豪華な食事と酒が振舞われ、ドンちゃん騒いでいたライオン傭兵団員は、そうだな~などとぼやきながら、ぽつぽつ腰を上げる。

「晩ご飯も食べていったらいいのに」

 身を乗り出しながら至極残念そうにキュッリッキが言うと、

「アルカネットの野郎と鉢合わせる前にオレら帰るぜ」

「アイツの顔見て飯が食えるかー!!」

 ギャリーとヴァルトが心底嫌々そうに言う。

「また来ますよ。というより、早くよくなって戻ってきてください。みんなで待ってますから」

 にこやかに言うカーティスに、キュッリッキは大きく頷いた。

「戻ってきてください」という言葉が、キュッリッキの気持ちを強く励ました。

 何時までも弱気になっていられない、早く元気にならなきゃ。そう心の中で誓う。

「オレみんなを下まで見送ってくるよ。メルヴィンはキューリちゃんのそばにいてあげて」

「はい」

「またな、キューリ」

 皆口々にキュッリッキにさよならを言いながら、入ってきた時と同じように、ガヤガヤと賑やかに部屋を出ていった。

 その後ろ姿を見送り、メルヴィンが部屋の扉を閉める。

「一気に静かになりましたね」

 苦笑混じりに言われ、キュッリッキはクスッと笑う。

「みんな元気そうでよかった。ザカリーの怪我も大丈夫だったみたいだし」

「そうですね。あとはリッキーさんが元気になるだけですよ」

「うん」

 ――怪我の治りは順調なんだもの、いつまでも病人のように寝てばかりじゃダメだ。

 この頃は過去の辛い記憶に翻弄されて、ずいぶん気弱になってしまっていた。でも、仲間たちの顔を見て、早く元気になろうと強く思った。

 優しく見つめてくるメルヴィンの顔を見て、キュッリッキは思わず顔を俯かせる。

 喧騒が去って静まり返った室内には二人だけしかいない。急にメルヴィンの存在を強く意識してしまい、恥ずかしくなって目が合わせられなくなってしまった。

 メルヴィンがそばにいる、声が聞こえる、息遣いを感じる、それだけで何か熱いものが身体中を駆け巡っている。頬に熱を感じて、自分の顔が赤くなっていることがバレたくなくて、慌ててベッドに潜り込んだ。

「どうしました?」

 いきなり横になってシーツを目深にかぶってしまったキュッリッキに驚いて、メルヴィンはベッドに腰を下ろした。

「リッキーさん?」

 覗き込むように声をかけると、消え入りそうなほど小さな声で返事があった。

「なんでも……ないの、ちょっと疲れちゃっただけ、だから…」

「……そうですか。じゃあ、もう休んだほうがいいかな」

 そう言って首をかしげながらも立ち上がる。せっかく二人きりになれたのだし、少し話でもしようと思っていただけに、メルヴィンは残念そうに息をついた。

「オレは自分の部屋に戻りますね。おやすみなさいリッキーさん」

「おやすみなさい、メルヴィン」

 ほんの少しだけシーツから顔を出し、部屋を出ていくメルヴィンの後ろ姿を見送る。

 扉が閉められると、キュッリッキは大きく息を吐き出した。

 そんなキュッリッキの様子をクッションの上から見ていたフェンリルは、なんだろうと首をかしげる。

「アタシ、このままじゃ心臓がパンクしちゃう」

 突然降って沸いたような感情に、自分でもびっくりしてしまう。

 メルヴィンと二人きりになると意識してしまい、鼓動が早くなり顔が赤くなる。どう目を合わせていいか戸惑い、一言一句全てに身体が敏感に反応した。

 そしていなくなると、急に寂しい気分に包まれると同時に、どこかホッとしてしまうのだ。

「こんなの初めてだから、きっとアタシ、病気かもしれない」

 キュッリッキの呟きに、フェンリルは違う違うと首を振る。しかしキュッリッキはフェンリルのほうを見ていない。

「明日ヴィヒトリ先生に聞いてみよ…」

 しかし翌日ヴィヒトリに問いただそうとすると、

「医者には治せない課題を堂々と突きつけてくるなこのアンポンタンめ!!」

 と、盛大に怒鳴られて絶句する羽目になる。



 ケレヴィルの本部に寄っていたアルカネットは、帰宅が遅くなってしまった。

 キュッリッキはもう寝ているだろうと残念に思っていたが、所要を済ませて部屋に入ると、あまりにも元気な声に出迎えられて驚いた。

「おかえりなさい! アルカネットさん」

「……ただいま、リッキーさん」

 はち切れんばかりの笑みをたたえて、キュッリッキはベッドの上に座り込んでいる。

 アルカネットがベッドに腰掛けると、待ち構えていたように自分からアルカネットの胸に飛び込んできた。

 まだ右半身がうまく動かないため、少々バランスを崩してはいたが、あまりにも元気な様子にアルカネットは戸惑った。

「あのね、あのね、今日ライオンのみんなが来てくれたんだよ!」

 嬉しくて嬉しくてしょうがないという思いが全身から溢れていて、一生懸命今日の出来事を語りだした。

 ライオン傭兵団が見舞いに訪れた旨、そんな報告があったなとアルカネットは思い出す。

 昨日までのキュッリッキは、可哀想なくらい精彩を欠いていたというのに、今は豹変したとしか思えないほどの元気ぶりである。

 アルカネットが合いの手を入れる隙もないほど、熱心に話していたキュッリッキだったが、ついに電池が切れたようにくたりとアルカネットの胸にもたれかかってしまった。

 それでも興奮冷めやらぬ様子だったが、体力の方が気力についていかないようだ。無理もない。

「よほど楽しかったのですね。でもそんなに興奮すると身体に障りますから。もう寝ましょうね」

「うん。ホントに今日は楽しかったの」

「良かったですね」

 アルカネットは優しく笑いかけながら、キュッリッキを抱き抱え寝かせなおす。

「あ、忘れるところでした」

「?」

「お友達二人をこちらにお招きする件、ハーメンリンナへの通行手続きが済みましたので明日にでもお呼びできるようになりましたよ」

 キュッリッキの顔に喜びが満ち溢れ広がっていく。

「ありがとうアルカネットさん。大好き!」

 すぐに飛びつきたかったが、さすがに身体はその欲求に応えられるほど回復していなかった。

 嬉しさでいっぱいのキュッリッキに優しくほほ笑みかけながら、アルカネットは内心後悔していた。

 ――せめて教えるのは明日にするべきでしたね…。

 睡眠薬のお茶を飲むのを嫌がり、目を輝かせながら明日のことに思いを馳せている。

 気持ちが高揚しているのか、にこにこと笑みが絶えない。これでは当分眠りそうもなく、自分の方が先に寝入ってしまいそうだった。



 翌朝になってもキュッリッキのテンションはおさまっていなかった。きちんと寝たのか不安になるほど、寝る前と変わらぬ元気な様子である。

 アルカネットは一旦自室に戻り、身支度を整え朝食を済ませてからキュッリッキの部屋に戻った。

「ルーファスに言っておいたので、お友達を迎えにいってもらいますね」

「ありがとう」

 光の粒子が零れるような笑顔だとアルカネットは思った。

 大怪我を負って以来沈みがちな表情ばかりだったので、出会った頃のはつらつとした愛らしさを思い出して、自然と口元がほころんだ。

 アルカネットはベッドに腰を下ろし、キュッリッキを抱き寄せる。

「焦らなくていいのですよ。無理をせず、ゆっくりと身体を癒してください」

 抱きしめられながらキュッリッキは小さく頷いた。

 自分を心配してくれているのは嬉しい。しかし早く元気になって仲間たちと一緒にいたかった。その思いが弱気を吹き飛ばしている。

 出仕する時刻が迫り、名残惜しそうにキュッリッキを解放すると、立ち上がろうとして軍服の袖を引っ張られた。

「どうしましたか?」

「いってらっしゃい、アルカネットさん」

 頬にそっと触れた柔らかな唇の感触に、アルカネットは目を瞬かせた。

「いつもされてばかりだから、今日はアタシのほうからしてみたの」

 いたずらっぽく笑うキュッリッキを見て、アルカネットは相当の理性を総動員して、押し倒したい衝動を必死に堪えた。愛おしさが瞬時に身体を包み込み、我を忘れてしまいそうだった。

 キュッリッキからしてみれば、ただの挨拶程度のキスだった。しかしアルカネットのほうは、最愛の少女からのキスである。

 朝から実に衝撃的で幸せなサプライズだった。

 アルカネットはこれ以上ないほど優しく微笑むと、

「いってきますね」

 キュッリッキの唇にキスを返して部屋を後にした。

「また、口にされちゃった……」

 去りゆくアルカネットの後ろ姿を見つめながら、ぽかんと呟いて、ショックのあまりひっくり返った。



 ハドリーとファニーがベルトルドの屋敷についたのは正午過ぎだった。

 傭兵ギルドで仕事の話をしていたら、突然ルーファスがギルドに顔を出し、二人に事情を説明してハーメンリンナに連れてきてくれたのだ。

 キュッリッキが初めてハーメンリンナを訪れた時と同じように、簡単なボディチェックをされただけですぐに城壁の中に入れた。ベルトルドとアルカネットの計らいで、面倒な手続きは済まされていた。

 ゴンドラでの遊覧を経て屋敷に着くと、多くの使用人たちに出迎えられ、二人はタジタジとなった。

「お嬢様は四阿のほうにお出でです」

「わかった、ありがとー」

 リトヴァからキュッリッキの居場所を告げられたルーファスは、二人を伴って四阿の方へ向かう。

 ハドリーとファニーはきょろきょろと物珍しそうに屋敷を見回す。ハーメンリンナの街並みも見事だったが、ベルトルドの屋敷もそれは見事だと感嘆を禁じえない。

 整えられた芝生の庭を突っ切り、南側にある池のほとりに四阿はあった。

 池の水は澄んでいて、睡蓮が美しい白い花を咲かせている。周りの景色を水面に映しながら、時折そよ風が水面をそっと撫でて小さな波紋を作っていた。

「ハドリー、ファニー!」

 四阿のほうから、元気な声が二人を呼ぶ。

「リッキー!」

 ファニーは手を振り、池の中央にかけられた石橋を小走りに渡ってく。キュッリッキは籐で編まれた大きな椅子に座って、嬉しそうに笑みを浮かべていた。傍らにはメルヴィンが笑顔で寄り添っている。

 四阿に入ると、ファニーはメルヴィンに小さく会釈して、キュッリッキの横に立った。

「あんたもう、心配したんだからね!」

「ごめんファニー」

 ファニーは怪我のことを気にして抱きつくのは思いとどまったが、代わりにキュッリッキの鼻をつまんでグイッと引っ張った。

「い、たぃ…」

「まったくもー!」

「怪我の方は大丈夫なのか? もう起きてて問題ないのか?」

 二人の様子に微苦笑を浮かべたハドリーが遅れて四阿に入ってくると、鼻をつままれたキュッリッキの顔を見て吹き出した。

「はふぉひーふぉひふぁいふひ」

 ハドリーおひさしぶり、と言っているらしかったが言葉になっていない。

 ようやく鼻つまみの刑から解放されると、キュッリッキの鼻は真っ赤になっていた。

「また後で迎えにくるね。みなさんごゆっくり」

 笑いを噛み殺しながらメルヴィンは四阿を出て、ルーファスと連れたって屋敷に戻っていった。

 3人は去っていくふたりの後ろ姿を見送りながら、なんとなく黙り込んだ。

 とても気持ちのいい風が、そっと四阿を吹き抜けていく。喧騒とはまるで無縁の静かな空間だ。

「二人共きてくれてありがと」

 最初に口を開いたキュッリッキは、にこりと二人に微笑んだ。

 ハドリーはキュッリッキの右肩に目をとめた。今でも鮮烈に思い出す、あまりにも深い無残な傷。血まみれで息をしているのが不思議なくらいだった。

「包帯は外れてるようだが大丈夫なのか?」

「うん。怪我自体はもうだいぶ良いの。すごく腕の良いお医者さんなんだって、ヴィヒトリ先生」

 ハドリーもイソラの町で何度か見かけた金髪の若い医師。屋敷に来るまでの道中ルーファスから色々と聞かされてきたが、こうして元気な姿を見ると心から安心する。

 遺跡で見た彼女はもうダメだ、助からないとまで思ったくらいの重症だったのだ。

「なんか痩せたんじゃない? 前よりもっと細くなっちゃって」

 ファニーは腕を組んで、ちょっと睨むようにして指摘する。

「どうせ食事をするのを嫌がってたんでしょ。あんたすぐ調子崩すと食事抜こうとするんだから」

「うっ…」

 図星だったらしい。キュッリッキのバツの悪そうな表情を見て、ハドリーは嘆息した。

「チヤホヤ甘やかされてわがまま言ってちゃダメよ。治るもんも治らなくなったら、一番困るのあんたなんだからねっ!」

「ごめんなさーい…」

 キュッリッキは首をすくめ、上目遣いに斜め前に座るファニーを見た。

 ファニーが本気で怒っているときは、本気で心配してくれていることを知っている。だから逆らう気も起きないし、心底悪いと思う。

「説教はそのくらいにしとけよ。せっかく見舞いにきたんだ」

 やんわりとハドリーが割って入る。女たちの会話に割り込むのは苦手だが、こうしてファニーに説教されているときは、助け舟を出さないとキュッリッキがあとで大泣きするので、その役目は自分だとハドリーは思っていた。

「まあいいわ。無事だったから」

 ファニーは深々と息を吐くと、小さく首をかしげてキュッリッキを見た。

「あんたちょっと変わった?」

「え?」

「?」

「なんていうかさあ……色気みたいなもんが、やっとにじみ出てきた感じ。ほんのちょっとだけど」

 カップに伸ばした手が止まり、ハドリーはファニーをまじまじと見る。

「これまでお子様丸出しで、年の割に色気もなかったし、これでも心配してたんだよ~」

「色気……ねえ」

 ファニーとハドリーに見つめられ、キュッリッキは困惑を浮かべてそわそわした。

「ずばり、あんた本気で好きなひとができたんでしょ!!」

 ファニーがビシッと指をつきつけると、キュッリッキは途端に顔を真っ赤にした。

「図星なのかリッキー?」

 ハドリーに畳み掛けられ、ますます顔を赤くする。そのうち蒸気でも吹き出すんじゃないかと思うくらい真っ赤になっていた。

「白状しちゃいなさいよ! 誰なのよ?」

「えー……」

 キュッリッキは真っ赤になった顔を俯かせると、唇を尖らせブツブツと独り言ちた。

「はっきり言いなさい!」

 焦れたファニーがテーブルをバシッと叩くと、キュッリッキはシャキッと背筋を伸ばして、小さな声で白状した。

「メルヴィン……」

 言うやいなや、ひざ掛けを掴んで顔を覆い隠す。

 たっぷり間を置いたあと、ファニーとハドリーは何度も大きく頷いた。

「絵に描いたようにリッキーの好みにぴったりだな」

「誠実そうで優しくて、けど堅物ってのに惹かれやすいのよねあんた」

 キュッリッキの男の好みを熟知している二人は、そうかそうかとしみじみ頷きあっていた。

 これまでも、似たような男性に興味を惹かれていることはあった。気まぐれのようなノリであり、こんなふうに顔を赤くしてまで惚れるということはなかった。たいてい仲良くなった程度で終わっている。

「あんまり口きいたことないけど、いいやつだな、と俺は思う」

「そうね、副宰相閣下やアルカネットってひとにご執心よりはいいかな」

「ベルトルドさんとアルカネットさんに?」

 ひざ掛けから顔を出すと、意外なことを言われたという表情でファニーを見た。

「あんたは知らないだろうけど、市井じゃ凄い噂になってるのよ。泣く子も黙らせる副宰相が私邸にかこった女にお熱だーって」

「その女ってのは、リッキーのことだな。さすがに素性はわからんから、みんな好き好きに適当な想像をしているが」

 庶民の情報網侮りがたし。一体どこからそんな情報が漏れるのかとキュッリッキは目が点になった。呆れ半分ため息をつくと、二人にこれまでの経緯を説明した。

 ファニーとハドリーの二人には、ある程度自分の過去のことは話してある。ベルトルドやアルカネットにさらけ出したように全てではなかったが、アイオン族であることと、片翼のことは話している。

「ベルトルドさんとアルカネットさんは、アタシにとっては父親みたいなかんじ、なのかな…。父親がどんなものか知らないけど、優しく守ってくれる大きな存在」

 ベルトルドとアルカネットといると、心が落ち着いて安心できる。二人が向けてくる愛情表現がちょっと過激な気はするが、メルヴィンに感じるようなドキドキ感は湧いてこなかった。

「でも副宰相とアルカネット氏は本気なんだな」

「そうなのかなあ…」

 たぶん本気なんだろうとハドリーは思う。説明された範囲でしか想像は出来ないが、年の離れた少女にそこまでご執心なのだ。

 イソラの町までキュッリッキを迎えにきたベルトルドとアルカネットの姿を思い出し、間違いないと確信した。

 召喚スキル〈才能〉を持っているからキュッリッキを迎えに来たんじゃない、愛する者だから迎えに来たのだと。アルカネットの見せた過激な行動を思い起こすとゾッとするほどに。

「いい? 不可抗力のキスの大盤振る舞いはしょうがないとしても。初めてのだけは、本当に好きな相手のために、大事に取っておきなさいよ」

「うん…」

 キュッリッキは再び顔を赤くして頷いた。メルヴィンの顔を思い出して恥ずかしくなる。

「それといい機会だから、髪型も変えちゃいなさいよ~」

「髪型を?」

「うん。だってー、あんた前髪いっつも短くしすぎるし、お子様丸出しなんだもん。相手は年上なんだから、もうちょっと大人っぽくしなさい」

 キュッリッキはだいぶ伸びた前髪をつまんで引っ張る。多少くせっ毛なので、短くすると必要以上に短く縮んでしまうのだ。

「髪型ちょっと考えてみる」

 そんな二人の様子に、ハドリーは肩をすくめて苦笑した。

 見舞いに来て元気な姿を確認できて安心したが、まさか本気で恋をしているのには驚いた。

 だがそれだけ心を許せる仲間たちに出会えたのだと、それは心底喜ばしかった。

 キュッリッキの恋愛話がひと段落すると、ソレル王国の一件では、ファニーとハドリーは正規の報酬プラス、ベルトルドから特別報酬がたっぷり支払われて懐具合がぐんと温かいことや、傭兵ギルド間ではキナ臭い仕事が大量に舞い込んできてフリーの傭兵たちを喜ばせていることなどを報告し合った。

 3人とも話したいことは山ほどあるが、空が陰り出した頃、メルヴィンとルーファスが迎えにやってきた。



「もう無理しちゃダメだからね」

「身体に気をつけてな」

 ゴンドラに乗り込んだ二人に、キュッリッキは寂しそうに笑いかけた。今生の別れというわけじゃないが、また暫く会えなくなるだろう。

 自分たちは傭兵だ。危険と隣り合わせの中で戦っている。だからいつ命を落とすか判らないのだ。それを思うと、こうして会って話ができる時間がとても貴重に感じられた。

「また会おうね」

 メルヴィンに抱えられながら、キュッリッキはぎこちなく手を振る。

「んじゃ、オレちょっと二人を門まで送ってくるよ」

「お願いします」

 ファニーとハドリー、そしてルーファスを乗せたゴンドラが、静かに滑り出しベルトルド邸の前を離れていった。

 ゆっくりと遠のいていくゴンドラを、キュッリッキは暫く見つめていた。

「元気になって、また会いに行けばいいですよ」

「うん。そうする」

 穏やかな笑みを浮かべるメルヴィンの顔を見上げながら、キュッリッキは小さく頷いた。



第三章 求めるもの 再会 続く



032 求めるもの 謝罪

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Comments 4

ふぉるて

こんにちは~(*^ ^*)

おお…キュッリッキちゃん、恋の病ですね……(><)”
ヴィヒトリ先生の台詞がいい味出してます~
(確かに医者にも治せない! ><;)

事故の後遺症があるのですね…暑さと低気圧は辛いですね…(><;;)
どうぞお大事にしてください~ m(;_ _)m”

ではでは…☆

2014-06-14 (Sat) 18:08 | EDIT | REPLY |   

ユズキ

Re: タイトルなし

ふぉるてさんこんばんわ~(*´∀`*)

もうじき19歳の彼女にも、ようやく初めての青い春が到来です(笑)
知らないことだらけで、専門家(病気だと思っているから)に聞いたら、怒られて目が点状態に(・ω・)
ヴァルトさんの弟ですしねw 地金が出るとおなじ調子になるのは血縁です☆

本来死んでておかしくない状態から生還しているので(笑) 一生付き合っていかなきゃいけない後遺症がいくつかあるので、鬱陶しいですけどね~。なんで気候に影響されるのか、人体の神秘です☆

しかし夏本番前に猛暑状態なのはもう、ホント勘弁してほしいですね~~~!

2014-06-15 (Sun) 02:27 | EDIT | REPLY |   

八少女 夕

こんにちは

ナイーヴなのも魅力の一つなのだろうけれど……
わかっていないながらも、アルカネット氏を振り回していますね。
真実がわかった時のメルヴィンの身がちょっと心配……。
アルカネットさん、大人しく二人の幸せを祈ったりしなさそうだし。

フェンリル、もっとはっきりいってあげて!
あ、フェンリルのお話、ほぼ完成しました。発表は来週の日曜日を予定しています。リッキーさんも、ほんの一瞬だけお借りしています。

2014-06-15 (Sun) 23:12 | EDIT | REPLY |   

ユズキ

Re: こんにちは

八少女さんこんばんわ~(*´∀`*)

>わかっていないながらも、アルカネット氏を振り回していますね。

邪気は全くないんですけども、自分のとる行動が、相手にどんなリアクションを起こすのか、気持ちにさせるのかを考える部分は欠如しちゃってますね~。
この時は、幸せの押し付けですね(笑)

フェンリルのお話ものすご~~~~~~~~っく楽しみにしています(*´∀`*)!
もううちのキャラどれでもお好きなの使っちゃってください!

大好きな4人とフェンリルのお話、待ち遠しすぎます~~。
自分の小説のキャラをコラボしていただくの、初めてのことなので、とっても嬉しいです!
ご無理を言ったかいがありました><!
ありがとうございますヽ(*´∀`)ノ

2014-06-16 (Mon) 01:59 | EDIT | REPLY |   

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