片翼の召喚士-ReWork-:episode682

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 奪われしもの編 彼女が遺した空への想い:episode682

「たとえベルがアルに譲ったとしても、わたしがアルの想いを受け入れるって保証はないのよ?」

「うん。そこはアルカネット自身の問題だから、俺にはどうもできない」

 ベルトルドが諦めたとしても、リューディアがアルカネットを選ぶとは限らない。そのことくらいは、判っているつもりだ。

 それでもベルトルドの気持ちは揺るがなかった。

 リューディアはデッキチェアから立ち上がると、ベルトルドに背を向けた。

「わたし、フラれちゃった、ってことだよね」

 淡々とした口調で呟く。

「13歳にして10歳の男の子にフラれるなんてネ。初失恋なのに、なんかイヤんなっちゃう」

「………ごめん」

「もうご飯の時間だから、帰るね。また明日」

 肩ごしに振り向いて、リューディアは小さく微笑んだ。

 軽やかな足取りで駆けていくリューディアの後ろ姿を見送って、ベルトルドは立ち上がった。

「これでいいんだ……」

 心臓のあたりが、チクリと痛む気がした。小さな手で、痛む胸をそっと押さえる。

 リューディアには酷いことをしたんだと、ベルトルドには判っていた。大切な想いを、譲るとかなんとか、物じゃないのだ。でも、どうしても、ベルトルドは自分の決意を曲げることができない。

 あの日、アルカネットが与えてくれたものは、今のベルトルドには恋にも勝るのだ。

 空を見上げ、銀色に煌く星星を見つめる。

 いつの日か、俺はキミに恋をしていると、はっきり伝えることが出来る相手が、見つかるだろうか。

 こんなふうに、胸が痛んだりせずに、すむのだろうか。

 恋に出来なかったこの小さな想いを、ベルトルドは胸の痛みと共に、心の奥底に静かに仕舞いこんだ。

 夏休みに入り、ベルトルド、アルカネット、リュリュの3人は宿題漬けとなった。

 毎日午前中は、ビーチに集まって3人で宿題をする。計画的に進めていかないと、絶対に終わらないからだ。

「これじゃ、勉強している場所が、学校か家かの違いしかない」

 問題集を開き、ベルトルドが3人の気持ちを駄弁した。

 2ヶ月もの長期に渡る休暇のため、宿題の量がハンパではない。

「ねえリュリュ、毎日リューディアはどこへ行ってるの?」

 寂しそうにアルカネットがたずねると、リュリュは問題集から顔も上げずに答える。

「学校で特別講習を受けてるわ。おねえちゃん来月になったら、冬のお休みまでハワドウレ皇国の学校に、特別編入で行っちゃうの」

「え、2年後じゃないの?」

 びっくりしたアルカネットが、リュリュの肩を掴む。

「おねえちゃん、すっごく優秀だとかで、飛び級? とかいうので早期に入るんですって」

「そんなあ……」

 表情を曇らせると、アルカネットは唇を尖らせて俯いてしまった。

「アタシだってイヤよ。おねえちゃんとこんなに早く、離れ離れになっちゃうなんて」

 リュリュも負けずに唇を尖らせる。

 そんな2人の様子を見て、ベルトルドは苦笑を浮かべた。

 ベルトルドもそれは、初耳である。

 リューディアをフってから、かれこれ半月が経っている。あれから彼女なりに立ち直り、そしてどこか変わってしまった。

 自分で決めたことだけど、やはりツライと思うときがある。こんなふうに、直接本人から言ってもらえなかった時だ。

 いつだって、なんでも隠さず教えてくれていたのに。最近は話すらあまりしていない。

 一生懸命自分の心に言い聞かせる。

(これで、いいんだ)

奪われしもの編 彼女が遺した空への想い:episode682 -つづく-

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