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片翼の召喚士-sequel-:コアラ先生、現る

  • ハワドウレ皇国元副宰相ベルトルドとの死闘から早一ヶ月、皇都イララクスは復興の只中で、ライオン傭兵団はキュッリッキの邸(やしき)に居候して過ごしていた。 ベルトルドの深い愛と優しさにより、キュッリッキは失っていた翼を取り戻す。そして今は、最愛のメルヴィンと共に静かな時を過ごしていた。

  • キュッリッキとライオン傭兵団の後日談、そして12年後の彼らの様子を綴っていく、召喚士キュッリッキのハードスペクタクル恋愛ファンタジー

  • キュッリッキ

    キュッリッキ(19)

    スキル〈才能〉:召喚・Overランク、アイオン族

    一人称:アタシ。レア中のレアとされる召喚スキル〈才能〉を持つが、真の名称はアルケラの巫女。

    多くの苦労を重ね、ベルトルドやライオン傭兵団と出会い、短期間に数多くの試練をくぐり抜け、失っていた片翼を取り戻し、最愛のメルヴィンと結ばれた。本作の主人公。

  • その他の『登場人物紹介はこちら』

後日談編:コアラ先生、現る

「それでは、行ってきますね」

「……うん」

 キュッリッキはしょんぼりと俯いて、小さく頷く。それを見やって、メルヴィンは苦笑した。

 先日の大雪騒動から皇都が落ち着いて、いよいよライオン傭兵団のノーキン組みのアルバイトが始まった。

 軍総帥に就任したブルーベル総帥から、正規部隊の軍人たちを鍛えて欲しいとのオファーがあり、暇を持て余しまくっていたノーキン組みが大喜びで食いついた。当然メルヴィンも参加だ。

 週3日、ハーメンリンナ内の特別軍事施設で行われるため、泊りがけで行く事になっている。

 今日から出向することになって、3日ほどメルヴィンと離れ離れになってしまう。

「早く、帰ってきてね」

 蚊の鳴くくらいの小さな声で、キュッリッキは俯いたまま呟く。たった3日とはいえ、キュッリッキにしてみたら、3年もの長い時間に思える。寂しくてしかたがない。

 なんと言葉をかけようかとメルヴィンは思案したが、ふとあることを思い出した。

「そうだリッキー、以前通信できる小鳥を召喚していましたよね。あの小鳥をまた呼んでくれませんか?」

「え、あ、うん」

「離れている間は、小鳥を通じてリッキーの声が聞けます」

 顔が見えない間は、せめて声だけでも。そうメルヴィンは思いついた。

 安堵させるようにっこり笑むメルヴィンの顔を見て、キュッリッキは泣きそうな顔で無理に微笑もうとした。しかしうまくいかずに、涙がポロポロ頬を零れおちていった。

「泣かないで、リッキー。こういうことにも、慣れていきましょうね」

「はいなの…」

 2人の様子を車内から見つめ、皆やれやれと肩をすくめた。

 仕事でメルヴィンが留守にするたびにあれでは、この先どうなるのかと心配になる。

 アジトが完成すれば、傭兵の仕事はすぐに再開される。現在営業停止中の傭兵ギルド・エルダー街支部以外の支部から、仕事の依頼は殺到している。ライオン傭兵団も現在停止中だから依頼は断っているが、彼らに仕事を頼みたい人々は多いのだ。

「今すぐには無理でも、そのうち慣れていくよ。ラブラブもそう何年も続かないさ」

 タルコットは苦笑気味に言ったが、内心では一生ラブラブなのでは、と思ったりしていた。

 なにせ、強大な障壁を乗り越えて結ばれた2人なのだ。

「まあな。いずれあっけらかんと見送りもしなくなるって展開になるだろ」

 ザカリーは皮肉げに言ってみたが、内心はタルコットと同じである。

「やいメルヴィン、早く車に乗れよー! 時間に遅れっぞ」

 焦れたヴァルトが大声でメルヴィンを呼ぶ。

「別にコンジョーの別れじゃないんだぞ、ったく」

「しょうがねーだろ、離れ離れは寂しいもんだ」

 ギャリーに宥められて、フンッとヴァルトはそっぽを向く。そんな様子を見て、ガエルは小さく頷いて目を閉じた。

 キュッリッキは門の外まで出て車を見送り、侍女のアリサに促されて屋敷に戻った。

 しょんぼり肩を落として部屋に戻ると、暖炉の前の長椅子に寝転がる。メルヴィンがいないので、何もする気が起きなかった。

「元気を出してくださいませ。3日なんてあっという間でございますよ」

 アリサは紅茶を淹れて、長椅子そばの小さなテーブルにカップを置いた。そして小皿に盛ったチョコレート菓子も添える。

「失礼いたします」

 ノックがしてメイドが扉を開けた。

「お嬢様、至急スモーキングルームへお越しくださるよう、カーティス様がお呼びになっております」

「カーティスが?」

「はい」

 アリサと顔を見合わせて、キュッリッキは小さく首をかしげた。

「なんだろう」

「とにかくスモーキングルームへ、お嬢様」

「うん」

 スモーキングルームの扉を開けて、キュッリッキはその場に立ち止まる。

「おお、美しく、中々に可愛いであるん」

 キュッリッキは不可解そうな表情(かお)になり、目を何度もしばたいた。

「アイオン族であるとか。美の質が高く、拙(せつ)の好みであるん」

「……」

「ほらねー。先輩、キュッリッキちゃんビックリしちゃってるじゃないかー」

 聴き慣れた声のほうへ顔を向ける。

「驚かしてごめんよ。コレ、コアラのトゥーリ族なんだ」

「ヴィヒトリ先生…」

 ようやくポツリと呟き、再び目線を下の方へ移動させる。

「コレとは失礼であるん! 拙はウコンマーンアホという名であるん! ちなみに”アホ”と略したら意識を保ったまま生皮をゆっくり剥がして神経を一つ一つ切断してやるであるん!!」

 コアラの頭を持つ小男は、プンプン怒った様子でそう名乗った。

「えっと、見かけは色々アレなんですが、とうとう我がライオン傭兵団に、専属の医者が入ることになったんですよ!」

 握り拳を掲げながら、カーティスは興奮気味に天を仰ぐ。ついに悲願達成だ。

「なんでも医療の複合スキル〈才能〉を持つSSSランクとか。医療界の権威なんだそうです」

「ほむ…」

「医療大学時代のボクの先輩でね、惑星タピオからヒイシに引っ越してくることになってて、ついでにこっちで仕事探してるって言うからさ、ここが医者欲しがってる話をしたら、やってもいいよって」

「拙(せつ)は不肖の後輩と違ってなまけモノであるん。今更真面目に大病院勤めや学会など、面倒の極みであるん。この傭兵団は怪我人も病人もロクに出ないというであるん。なら、腰を落ち着けるのにはいい場所であるん」

 ウコンマーンアホはのんびりとした仕草でパイプを咥えた。

 タバコの臭いはせず、爽やかな香りがした。

「これはユーカリの葉を乾燥させて砕いた、コアラのトゥーリ族が嗜むユーカリタバコであるん」

「…」

 頭はコアラ。そう、コアラをデカクして人間の胴体をくっつけた、まさにトゥーリ族である。

 トゥーリ族とは、30種からなる動物の外見と、人間の身体を持つ亜人種だ。

 惑星タピオを治め、30の種族の国と、国々を束ねる29人の評議委員と一人の王をいただいている。王は30種の中から10年ごとに選ばれ、選ばれなかった種族の代表が評議委員となる。

 キュッリッキは見た目の可愛いトゥーリ族は大好きだ。

 シビルはタヌキ、ハーマンはキツネ、ガエルはクマ、3人とも大好きでしょうがない。もっともガエルの場合外見は厳ついが、キュッリッキビジョンではぬいぐるみのように見えている。

 ウコンマーンアホはコアラであり、外見は可愛い。しかし、なぜかキュッリッキの食いつきは悪かった。

 いつもと様子が違うので、シビルとハーマンは不思議そうにキュッリッキを見ていた。

 当のキュッリッキは、

(なんだろう…ベルトルドさんと似たような感じがするの…)

 思いっきり警戒していた。

-つづく-


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あとがき

ネタが思いつかないので、今回もスモーキングルームなしです。

3月のアルファポリス漫画大賞へ向けて、今日からマンガ制作に集中するため、小説の更新が今以上に減るかもです。

せっかくもらった評価シートが無駄にならないように描けるとイイナ☆


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2 Comments

八少女 夕  

なんと!

こんばんは。

おお、ヴィルをもてなしてくださったコアラ先生の本編登場ですね!
リッキーさんが、喜んで飛びつくかと思いきや、なんと珍しく警戒してしまう(?)何かをお持ちだったとは。
御大に似た感じというのは、一体どういうことなんでしょう。SSSランクのすごさでしょうか、それとも、ス●ベのベクトルで?

いずれにしてもメルヴィンと離れる寂しさが少しでも紛れたらいいですね。

コアラ先生の参加で、新しい局面を迎えたお話の続き、楽しみにしています。
あ、でも、漫画の方も、頑張ってくださいね! 応援しています。

2020/02/19 (Wed) 04:15 | EDIT | REPLY |   

ユズキ  

Re: なんと!

八少女さんこんにちわヽ(・∀・)ノ

ついに本編に登場であるん

>それとも、ス●ベのベクトルで?

おっしゃるとおり、潜在的なエロさに警戒心が全力で働いてます(笑)
キュッリッキさんも色々オトナになってきているから、そういうところには正常な反応ができるようにw
スキル〈才能〉のランクは判りにくいので、実はコアラ先生がどれほどすごい人なのかは、きっと誰もわからない☆

これでメインメンバー揃ったので、結婚式と新婚旅行行って、12年後のお話に入れそうです(≧∇≦)

漫画頑張ります!

2020/02/19 (Wed) 12:14 | EDIT | REPLY |   

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