片翼の召喚士-sequel-:町医者も兼業するであるん

  • ハワドウレ皇国元副宰相ベルトルドとの死闘から早一ヶ月、皇都イララクスは復興の只中で、ライオン傭兵団はキュッリッキの邸(やしき)に居候して過ごしていた。 ベルトルドの深い愛と優しさにより、キュッリッキは失っていた翼を取り戻す。そして今は、最愛のメルヴィンと共に静かな時を過ごしていた。

  • キュッリッキとライオン傭兵団の後日談、そして12年後の彼らの様子を綴っていく、召喚士キュッリッキのハードスペクタクル恋愛ファンタジー

  • キュッリッキ

    キュッリッキ(19)

    スキル〈才能〉:召喚・Overランク、アイオン族

    一人称:アタシ。レア中のレアとされる召喚スキル〈才能〉を持つが、真の名称はアルケラの巫女。

    多くの苦労を重ね、ベルトルドやライオン傭兵団と出会い、短期間に数多くの試練をくぐり抜け、失っていた片翼を取り戻し、最愛のメルヴィンと結ばれた。本作の主人公。

  • その他の『登場人物紹介はこちら』

後日談編:町医者も兼業するであるん

 ずんぐりした体格、自分よりも低い背、愛嬌ある可愛い顔立ち、しかしキュッリッキは手を伸ばせずにいた。

(この気配は…ムラムラしたベルトルドさんとおんなじだよね)

 キュッリッキからしてみれば、ベルトルドは24時間ムラムラしていたように思う。でもそこは、手を出したくてしょうがないところをグッと堪え、唇以外のキスやスキンシップで耐えていた。

 アルカネットという最大最強の抑止力が、全力で働いていたのも大きい。

 もっとも、そのアルカネットもベルトルドと同様に、ムラムラ塗れではあったが。

 あの事件以前は、それは父性愛が強烈すぎたから、とキュッリッキは思っていた。今は父性愛というより男性としての性欲なのだ、というのは理解している。

 目の前のコアラは、その雄の性欲がムラムラ漂っているのだ。見た目の愛嬌で目立ちにくくなっているが。

「握手するであるん」

 固まったキュッリッキに頓着せず、ウコンマーンアホは短い腕を伸ばして手を差し出した。だがキュッリッキは表情を強ばらせて動かない。

「どうしたであるん?」

「う、ううん、なんでもないの。よろしくね」

 コチカチとした動きで、恐る恐るウコンマーンアホの小さな手を握った。

 キュッリッキとようやく握手ができたウコンマーンアホは、嬉しそうにスキップしながらソファに戻る。

「キュッリッキちゃんも座りなよ」

 ヴィヒトリに促され、キュッリッキも空いてるところに座った。

「ついにライオン傭兵団に、お医者さんが入るんだね」

「ええ、団を立ち上げた当初から、医療スキル〈才能〉持ちを探していたんですが、ようやくですよ」

 かつてないほどカーティスの顔は晴れ晴れと輝いていた。

 傭兵たちは常に危険な仕事をしている。そのため医者がいれば少しでも早く手当ができ、命も助かる可能性が上がる。

 ナルバ山でキュッリッキが大怪我したとき、それを激しく痛感したのだ。

「じゃあ、ヴィヒトリ先生はもう来なくなっちゃうの?」

「そうだね。にーちゃんが重症でも負わない限りは、来る必要ってないから。でもキュッリッキちゃんの診察はボクがするから安心するんだ」

「うにゅ」

「まあ先輩がいるから、ボクが病院を動けない時は、代わりに診てもらうことができるって点は、ホント助かるよね~。ハーメンリンナからエルダー街まで結構遠いから」

「傭兵辞めたから、もう大怪我する心配ってナイんだよ」

「でもさ、キュッリッキちゃんの場合は、なんか安心できないんだよネ」

「えー、なんで?」

「自分から危険に入り込まなくても、危険の方から突っ込んでくる事象に恵まれてますからねえ」

「それにか弱いし体調も崩しやすいから、ホント心配なんだぞ」

 ヴィヒトリとカーティスにため息混じりに言われて、キュッリッキは憮然と片頬を膨らませた。

 もうベルトルドとアルカネットがいなくても、召喚スキル〈才能〉を持つキュッリッキを、世界は虎視眈々と狙っているのだ。厳重すぎるほどの警備もそのためだ。

「彼女はかなり細すぎるから、胃腸を整え、多く食事を摂るようにするであるん」

 ウコンマーンアホはつぶらな黒い瞳でキュッリッキを見据え、ユーカリタバコをふかした。

「あまり多く食べられないであるん?」

「う、ん」

「なら、一度の食事量を減らし、食べる回数を増やすであるん」

「え、あれ以上減らしちゃうの!」

 びっくりしてシビルが口を挟む。

 普段キュッリッキの食べている量は、平均の半分にも満たない。

「一度でアレコレ詰め込もうとするから、満腹して胃が受け付けないであるん。それなら、時間を置きながら少しずつ食べさせ、慣らしていけばいいであるん」

「そ、そういうことですか」

 ホッと息をついてシビルは肩の力を抜く。

「そういえば、アルカネットさんからもそのこと相談されてたんだっけ。色々あったからすっかり忘れちゃってたや」

「アルカネットさんが?」

「うん。キュッリッキちゃんすぐお腹いっぱいになっちゃうでしょ。ご馳走を前にしてもちょっとしか食べられないの、可哀想だなって、ベルトルド様と言ってたんだよ」

「そうなんだあ」

「メルヴィンのあかちゃん産むって決めたんだから、いつあかちゃんできてもいいように、身体もちゃんと整えていかないとね」

「うん、そうだね」

 キュッリッキは頬を赤らめ頷いた。

 仕事があるからとヴィヒトリが帰ったあと、カーティスとウコンマーンアホは具体的な話に入っていた。

「大病院勤めは激しく面倒であるが、日々何もしないとボケちゃうであるん。そこで小さな町医者を兼業でやろうかと思っているであるん」

「エルダー街は別名傭兵街と言って、傭兵たちはもちろん、裏商売や水商売やら、日陰者が多く住むところなので、町医者は大歓迎でしょうねえ」

「儲かりそうであるん」

「つけ届けが多そうではありますよね…」

 シビルはうっすらと笑った。

「そういう不届き者は、臓器を摘出して売るから大丈夫であるん」

「……」

 室内が凍る。

「アジトの敷地内に拙の病院も建て、金髪グラマス美女と、黒髪清楚美女のナースを2人所望するであるん」

「賛成、賛成!」

 ルーファスが飛びついた。

「ナース2人の人件費は、先生が支払うんですよね」

 ニコッとカーティスが言うと、

「安月給で済む医学生でいいであるん」

 あっさり降伏した。

「ええっ、美女ナースを所望がいいよ~う」

「じゃあ~あ、アタシぃがナースしてあげようか~?」

 うっふんと言ってマリオンが唇をすぼめる。

「拙の好みじゃないであるん」

「オレの好みじゃないであるん」

「え~~~ん、コアラなんて嫌いであるん~~」

「ヤレヤレであるん」

 あるん口調が伝染りながら、カーティスは図面を広げた。

「うーん、病院って言ったらちょっと大袈裟ですが、小さい診療所程度なら、この辺に建てられそうかなあ」

「そういや、前よりすんごい敷地広くなってるよねえ」

「ええ。ベルトルド卿が豪快に近所を吹っ飛ばして、持ち主もみんな昇天しちゃいましたから、責任とって買い占めました」

 あはは、とカーティスとルーファスは揃って乾いた笑いを上げた。

「診療所の追加建設を業者に伝えて、アジト完成と日を同じくしてもらいましょうか」

「インフラ整備終わってんでしょ?」

「エルダー街は終わってます。あとはアジト建設に全力を入れてもらいます」

「この辺は傭兵相手のアパートだよね。完成はアジトよりはもうちょいかかりそうかあ」

「そうですね。手を抜かれても困りますから。まあ来年辺りを目指してもらえればいいかと」

「ゴーストタウンになるのもイヤだし、他の住処もちゃんと建ってくれるとイイネ」

「そう思います」

-つづく-


ユズキのファンタジー工房

あとがき

ネタが思いつかないので、今回もry

不慣れな漫画制作頑張ってます。毎日描き描きしています。なのでちょっと息抜きに更新です。

うまい人たちの作品を手本にするために、色々読みたいのは山々なんだけど、コンテスト期間に読むと、自信をなくして凹むので( ̄▽ ̄;) あえて堪えて人様の作品を目に入れないようにしています。

自分でもこんなふうに描けたらなあ、ストーリー組めたらなあ、って、自信喪失しまくれるんですよね(T▽T) しかも年々レベルアップしてってる気がするんですよ人様の作品。イイなあ。

今回アストちゃんを描き直してますが、実は短編の新作も考えてたのがあって、どうしようか悩んだけど、それは秋のコンテストに出そうとギリギリまで悩みました。

そのうち片翼の召喚士もマンガで描けたらいいなあ。


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