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片翼の召喚士-sequel-:新しいライオン傭兵団の出発です

  • ハワドウレ皇国元副宰相ベルトルドとの死闘から早一ヶ月、皇都イララクスは復興の只中で、ライオン傭兵団はキュッリッキの邸(やしき)に居候して過ごしていた。 ベルトルドの深い愛と優しさにより、キュッリッキは失っていた翼を取り戻す。そして今は、最愛のメルヴィンと共に静かな時を過ごしていた。

  • キュッリッキとライオン傭兵団の後日談、そして12年後の彼らの様子を綴っていく、召喚士キュッリッキのハードスペクタクル恋愛ファンタジー

  • キュッリッキ

    キュッリッキ(19)

    スキル〈才能〉:召喚・Overランク、アイオン族

    一人称:アタシ。レア中のレアとされる召喚スキル〈才能〉を持つが、真の名称はアルケラの巫女。

    多くの苦労を重ね、ベルトルドやライオン傭兵団と出会い、短期間に数多くの試練をくぐり抜け、失っていた片翼を取り戻し、最愛のメルヴィンと結ばれた。本作の主人公。

  • その他の『登場人物紹介はこちら』

後日談編:新しいライオン傭兵団の出発です

 本格的な夏に突入した皇都イララクスは、暑い陽射しにも負けず、木材やレンガを積んだ馬車が忙しなく走り、トンカンと金槌の音を随所で鳴り響かせていた。

 インフラ整備が終わった街から再建が急ピッチで進み、他国の建築職人も招かれ、街が蘇り始めていた。

 ライオン傭兵団とリュリュの繋がりから、復興が一番に終わったのはエルダー街である。

 別名『傭兵街』、傭兵ギルド、傭兵のアジトやアパート、裏金融や裏稼業、水商売などの日陰者が多く住む街として有名だ。

 エルダー街のほぼ中央に、ライオン傭兵団のアジトが建った。

 昨年、今は亡き元皇国副宰相ベルトルドによって吹っ飛ばされた土地を、ライオン傭兵団のリーダー・カーティスが全て買い占め、広大な地にアジトを建てたのだ。

 ライオン傭兵団は13名からなる傭兵集団で、昨年召喚士キュッリッキが退団して元の14名になったあと、更にマーゴットも退団して13名となった。

 しかし復興前から傭兵ギルドと取引をして、新団員と傭兵見習いを多く入れることになっている。それでも敷地の広さはかなりだ。

「今日からアジト住まいに戻るんですね。おめでとうございます、カーティスさん」

「ありがとうメルヴィン。随分とヴィーンゴールヴ邸にはご厄介になりました」

「いえ、みんなこちらに越してしまうから、正直寂しくなります」

「賑やかでしたからねえ。まあ、今日からキューリさんと静かに暮らしてください」

「はは、そうします」

 アジトの敷地には多くの荷車が入り、次々と家具やら箱やらが運び込まれていく。

「新団員向けの家具などは後日ですか?」

「ええ。結構な数を注文したので、来週納品してもらう予定です。さすがに今週は廊下も荷物で溢れかえりますしね」

「リッキーがヴィーンゴールヴ邸の使用人を、10名ほどこちらに寄越してくれました。団員部屋以外のところの片付けを担当してくれてます」

「それはとても助かりますよ。ありがとうございます」

「いえ」

「キューリさんは屋敷の方ですか?」

「はい。今日の授業が終わったらこちらに来るそうです。グンヒルド先生が授業を休ませてくれないからって、拗ねてました」

「あはははは。アジトのメルヴィンの部屋に、キューリさんも泊まれるようにしてあるから、早く見に来たいんでしょう」

 以前はシングルベッドだったが、新しく全ての部屋のベッドはダブルベッドだ。

「オレの部屋も用意してくれて、ありがとうございます」

「キティラから通うといっても、自分の部屋で休憩したい時もあるだろうし、場合によっては泊まりもあるでしょう。必要ですよ、全員の部屋は」

 いずれメンバーも結婚して、別に住まいを構える者も出てくるだろう。それでも、アジトには彼らの部屋は必要なのだ。

「カーティスさん、メルヴィンさん」

 そこへ、2人の中年夫婦が歩いてきた。

「ああ、おかえりなさい、キリ夫妻」

「お久しぶりです、キリさんたち」

「ただ今戻りました」

 キリ夫人はにこやかな笑顔で、そっと頭を下げた。感情が乏しいキリ氏も、ニコッと笑んで頭を下げる。

「一年近くもお休みをいただいてしまって、夫婦2人、とてもゆっくりできました」

 アジトが崩壊したあと、カーティスはボーナス金を渡してキリ夫妻を皇都から脱出させ、旅に出していたのだ。アジトが再建できるまではと。

「また美味しい食事をお願いします」

「お任せ下さい」

 朝からずっと引越しやら片付けに追われていたライオン傭兵団は、夕方にはひと段落ついて、久々にキリ夫妻の作る夕食を囲むことができた。

 キュッリッキも合流し、引越し祝いにと大量の酒が贈られ、美味しい食事を肴に酒盛りで大賑わいになった。

 以前のアジトの食堂よりも、倍に広くなった食堂の一角では、ヴィーンゴールヴ邸の使用人たちも料理や酒を振舞われて、キュッリッキから労いの言葉をかけられていた。

「みんな今日はありがとうね。いきなりだったのに、お手伝い助かったの」

 前主人だったベルトルドも気さくで風変わりだったが、新しい主のキュッリッキは更に風変わりで庶民的である。使用人相手だからと偉ぶらず、素直で優しいので、ヴィーンゴールヴ邸の使用人たちはキュッリッキが大好きだ。

「あとね、これ今日のアルバイト代ね」

 青い天鵞絨の小さな袋には、金貨30枚が詰まっている。袋を一個ずつ手渡されて、使用人たちは仰天した。

「セヴェリさんにはナイショね」

 片目を閉じて悪戯っ子な表情をするキュッリッキに、使用人たちは感涙の嵐だった。

「屋敷の飯も美味かったけど、やっぱオレたちにはキリ夫妻の料理が舌に合うな」

 豚バラ肉を香辛料で焼いたものを、野菜にくるんで口へ放り込みながら、ギャリーはご機嫌に言った。

「ありがとう。新しい台所だから、久しぶりにはりきっちゃったわ。前の台所よりも広くて使いやすいし、窓も大きくて明るくて。それに足元に保温材を使ってくれたらしくて、冬場は嬉しいわ」

 キリ夫人はビールを飲みながら、うふふと笑う。

「そして私たちの部屋も前より広くて嬉しいわ。またはりきってお料理頑張らなきゃ」

「そいや2、3人くらい台所担当を新しく雇うってカーティス言ってたよな」

 モゴモゴ口を動かしながらザカリーが言うと、

「ああ、それについては後で説明します。キリ夫妻には面接もしてもらわないと」

 カーティスが思い出したように頷いた。

「団員が増えるのかしら?」

「ドバっと増やすらしいぜ」

「あらまあ。もっと台所担当がいないと、お料理間に合わないわね」

「俺様も手伝うぜ!」

「ありがとうヴァルトちゃん」

「買い物用の馬車も買ってくれよカーティス」

「もう借りに行くより、買ったほうが便利だ」

「そうですね。団員も増えるから、移動用の馬車とか荷馬車もいくつか揃えておく必要がありますか…、あとで追加リスト作っておかないと」

「みんなの希望や要望も今のうちに出してもらって、早いうちに揃えていくようにしましょう」

 真面目くさって言うメルヴィンに、

「ええ、そうですね。でも、来月はあなたたちの結婚式ですから、そっちが最優先ですよ」

 ニヤリとカーティスに言われて、メルヴィンは照れ臭そうに肩をすくめた。

「アジトが吹っ飛ばされて1年、やっと落ち着きましたねえ」

 大騒ぎをちょっと離れて見やり、カーティスはしみじみと呟いた。

 アジトや皇都一部を吹っ飛ばしたベルトルドからは、キュッリッキが受け取った財産ほどではないが、大金を譲られていたので、その金で土地を買い占めアジトを建てた。家具やら必要なものも全て買い揃え、それでもまだ沢山余っている。

 インフラ整備をしたかった国としては、ベルトルドの蛮行は結果的には、となったが、あれから1年近く、ようやくライオン傭兵団の日常は戻ったのだ。

 昨年キュッリッキが退団し、結婚を機にマーゴットも辞めた。そして、近々ブルニタルも辞めることになっている。

 ネコのトゥーリ族であるブルニタルは、結婚のことを考え辞めることにした。

 戦闘の担当ではないから、とくに団内で目立つことはないが、作戦を立てたり情報収集や分析など、縁の下の力持ち的存在だった。

 キュッリッキとメルヴィンの結婚式が終わったら、本格的に傭兵の仕事、新メンバーの採用、傭兵見習いの指導などを始める予定だ。

「キューリさんが来てから、怒涛の一年でしたが、一生をかけても体験できることではない出来事を、これでもかと経験できました。ベルトルド卿もアルカネットさんもいなくなり、無茶な仕事もあまりこない…筈です。――リュリュさんがまだいますが、タブン」

 カーティスは談笑にわく仲間たちに向けて、ワイングラスを高く持ち上げる。

「新しいライオン傭兵団の出発です」

 そう言って、ワインを飲み干した。

-つづく-


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あとがき

後日談編が終わったら、12年後のお話だけど、その12年の間にはライオン傭兵団のみんなにも、ちょっとしたお話があるんですが、それを挟むと中々進まないので、番外編として書こうかな、と思います。

あと、本編の方ではR18な性描写シーンが結構あるので年齢制限設けましたが、続編では特に書く必要性が全くない、せいぜいキスシーンちょい程度。

なのでR18枠で連載続けるのが結構苦痛で、元々そういうTL目的な物語では全くないため、12年後のお話はまた別枠でSNSなどにも載せようかなあと。

ムーンライトノベルズ枠だと、周囲の作品の中では浮きまくりでかなりツライ・・・。アルファポリスやエブリスタだと普通にR18枠だけれど。

存在自体がR18な御大もいないし(・ω・)

そんなに大挙として読みに来てもらえてるわけじゃないし、この先気持ちよく自分が書き続けるためにも、片翼の召喚士-sequel-自体を制限なし枠にお引越ししようかなと思う。

後日談編は現状のまま、12年後編から改めてっていうふうにやっていきます。

TLのイチャラブとは世界観がチガウ・・・。


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