038 第四章 モナルダ大陸戦争 副宰相の悪巧み

急に涼しくなって、喉が痛いです。おかしい、バカだから風邪ひかないはずなのに((((;゚Д゚))))!!

今年はすでに5月6月には真夏のごとき気温だったし、8月に夏が終わってもいんじゃね、て気分です(´_ゝ`)

ただ毛布を洗って干したいから(クリーニング代節約!w)、どっかで天気が良くなって欲しいですね~。

暑くて溶けてたら忘れてましたっ!


副宰相の悪巧み続きです。前回の話の続きになるから実はある程度書けていたんですけど、一度に載せると長くなりすぎるのでブッた斬りました。

そして作中に出てくる『コッコラ王国の悲劇』は、本編のストーリーには関係ないので短く済ませましたが、何故ライオン傭兵団の連中が、御大とアルカネットに恐怖心を抱くのか、その原因になっています。あとで番外編で細かく書こうかなと思ってます。実は詳細に書くか番外編にするかで悩んだけど、本筋に絡まないので番外編に回すことにしました。

今回は、ずっと名前だけ登場していた人物が出てきます。




ALCHERA-片翼の召喚士-
第四章 モナルダ大陸戦争 副宰相の悪巧み 038



 キュッリッキはこれ以上にないほど、瞳をキラキラ輝かせていた。アルケラを視ているわけでもないのに、瞳にまといつく光彩も煌いている。

 一方、キュッリッキに好奇の目を向けられている男は、困ったようにキュッリッキをみおろしていた。

 ――なぜこのような場所に、このような令嬢がいるのだろう。

 男はわずかに首をかしげたが、

「かわいいいい!!」

 黄色い悲鳴をあげると、キュッリッキは何かが弾けたように男に飛びついた。脅威の跳躍力を発揮して、男の首のあたりに抱きつく。

「毛皮すべすべ~」

 スリスリスリスリ……キュッリッキは男に何度も何度も頬ずりする。つるつるとした毛並みが肌に気持ちがいい。

 次に男は足元から何かが軍服に爪を立てて這い登ってくる感触に気づいて視線を下へ向ける。

 白銀色の毛並みの仔犬が、器用に登ってくるのだ。

 男は飛びついてきた少女と仔犬を抱き抱えると、どうしたものかと廊下で困惑してしまった。



「で、リッキーとはぐれたのか?」

「………ええ」

 アルカネットは憮然と明後日の方を向いて呟いた。

「確かに総帥本部は無駄に広いがな、ここまでくるのに、何故リッキーとはぐれて、お前だけがここにいる?」

 トントントンッとデスクを人差し指で叩いて、ベルトルドはアルカネットを睨みつける。それに対し「ごもっとも」とは胸中で呟くアルカネットだった。

「無駄に探しまわるよりも、あなたに探してもらったほうが早いと思いまして」

「居直って他力本願か」

 デスクにふんぞり返りながら、ベルトルドは目を細めた。

 魔法部隊(ビリエル)の本部から、一度も離すことなくキュッリッキの手を引いて総帥本部までやってきたのだが、トイレに行きたいというキュッリッキを案内して外で待っていた。そこへ知り合いが声をかけてきたので、出入り口から目を逸らして挨拶を交わすこと1,2分。キュッリッキはトイレから出てこず、失礼を承知で中に入ったがキュッリッキはいなかった。

「全くしょうがないやつだな……」

 大仰に溜め息を吐き出すと、ベルトルドは意識をこらした。その時扉がノックされ、衛兵が来客を告げた。

「ブルーベル将軍がお見えになっています」

「ああ…もうそんな時間か。すぐお通ししろ」

「はっ!」

 衛兵ふたりがかりで重厚な扉を左右に開く。

「失礼しますよ」

 入ってきた将軍を見て、ベルトルドとアルカネットは目を見張って、ついで口をぽかんと開けて挨拶も忘れて固まった。

 将軍の腕には、キュッリッキとフェンリルがしっかりと抱かれていたからだ。



 ブルーベル将軍は真っ白な毛に覆われたクマのトゥーリ族である。

 身長は2メートルを有に越し、がっしりと筋肉質の体躯は圧倒的で、しかしシロクマ独特の愛らしい顔つきとつぶらな瞳がどこか温厚そうな印象を与えている。それが軍服を着ているのだから、カッコイイというより愛嬌たっぷりだった。

 キュッリッキはブルーベル将軍の首に両腕を回してしっかりと抱きついていて、ふかふかする毛に気持ちよさそうに頬を埋めていた。

 やがて視界にベルトルドが見えて、

「あ、ベルトルドさん」

 そう素っ気なく言っただけで、ブルーベル将軍から離れようともしない。

 その薄すぎる反応で我を取り戻したベルトルドは、椅子から腰を浮かせて腕を差し出した。

「これは将軍、大変失礼しました。リッキーこっちにおいで」

 差し出されたベルトルドの手をちらりと見ると「いやっ」と、冷たくそっぽを向いてしまった。

「リッキーさん、こちらはブルーベル将軍です。失礼の無いよう降りてください」

 アルカネットも手を差し出すが、キュッリッキは頑なに拒む。

「まあまあお二方とも、ワシは一向に構いませんよ。こんなに可愛らしいお嬢さんに好かれるのは光栄の極みです」

 ブルーベル将軍はつぶらな瞳を細めて穏やかに笑った。

 トイレで用を済ませ外に出てくると、廊下の向こうへ消えていくブルーベル将軍の後ろ姿を見つけたキュッリッキは、アルカネットに何も言わず慌てて追いかけた。

 追いついてみれば、それは軍服を着た大きなシロクマ。でっかなぬいぐるみを見つけた気分になったキュッリッキは、大喜びのあまり相手が誰だろうと構わず飛びついて今に至る。

 ベルトルドとアルカネットは顔を合わせると、揃って肩を落とした。

「ご要件はなんですかな。お嬢さんも同席していて大丈夫ですか?」

「ああ……ええ、彼女にも関係のあることなので」

 ベルトルドは手振りでブルーベル将軍にソファをすすめる。

 ブルーベル将軍は小さく頷くと、デスクの前に置かれた応接ソファに座り、キュッリッキとフェンリルを膝の上に座らせた。

「随分軽いですね、お嬢さんはアイオン族かな?」

 その言葉にキュッリッキの身体がビクリと震えた。今までにこやかだった表情がスッと潜み、強ばった表情がありありと浮かぶ。

 ベルトルドとアルカネットも小さく息を詰めたが、ブルーベル将軍はその空気を感じ、相好を崩して笑った。

「あの気位の高いアイオン族が、トゥーリ族のワシになついてくるなどありえませんな。お嬢さんはいわゆる”だいえっと”なるものをしていて軽いのでしょう」

「彼女は食がとても細くて困っております」

 アルカネットが応じると、ブルーベル将軍は「それはいけませんな」と声を上げて笑った。

 不安そうに見上げてくるキュッリッキに、ブルーベル将軍は小さくウインクした。察してくれたその様子にキュッリッキは小さく微笑むと、安堵して肩の力を抜いた。

「お呼び立てした要件ですが」

 ベルトルドは椅子に座りなおすと、デスクに両肘をついてあごの下で手を組んだ。

「今回のような規模の大きな戦争は、ここ数十年暫く行われておりません。ソレル王国も連合などと称して他国と結託して気合を入れてきているので、こちらとしても、もっと大々的に歓迎をせねばと思いまして」

「ほほう?」

 ベルトルドの無邪気な笑顔を見て、ブルーベル将軍は興味津々といった視線を投げかけた。

「盛大に式典を開きたいと思います」

 これには3人の無言の反応が返された。

 にこにこと笑うベルトルドの顔を見て、キュッリッキは可愛らしく顎に指をあてる。

「式典ってなあに?」

「楽しいお祭りのことさ」

 にっこりとベルトルドに言われ、キュッリッキは昔別の国でみた賑やかなお祭りの光景を思い出していた。

 小さな村での感謝祭だったが、ご馳走や酒が振舞われ、音楽にダンスに村じゅうが盛り上がって楽しそうだった。

 それをここでやるのかなと想像し、キュッリッキの表情に楽しげな色が浮かんだ。

「そして将軍、今回俺は戦場で大暴れしようと思っています」

 ブルーベル将軍は小さな目をめいっぱい見開いた。

「誰に喧嘩を売ったのか、しっかり判らせるためにも、俺直々に暴れるのが一番効果的ですからね。そしてこのアルカネットにも同じように暴れてもらいます」

 これにアルカネットは無言で肩をすくめてみせた。

「軍は全て将軍に丸投げしますので、面倒をよろしくお願いします」

「閣下が直々に暴れるなど、3年ぶりになりますか。コッコラ王国の悲劇もまだ記憶に新しいというのに」

「あの時は、コッコラ王国に俺の部下たちが雇われていまして。可愛い子は金棒で育てるものです」

 ククッとベルトルドは愉快そうに笑った。アルカネットもにこにこしている。

 この場で一人話題についていけないキュッリッキが不思議そうにしていると、

「あとでライオンの連中に聞いてみるといい」

 ベルトルドから優しく言われ、キュッリッキはこくりと頷いた。

「して、こちらのお嬢さんは、何をするのかな?」

 膝の上でおとなしく座るキュッリッキに、ブルーベル将軍は首をかしげてみせた。それにはベルトルドは更に楽しそうに笑みを深める。

「彼女には、式典で大活躍していただきますよ」



「本部にキューリきてたのか? なんだよ、教えてくれりゃいいのに」

 ザカリーはソファにひっくり返りながら文句を垂れる。

「ばーか、迷子になってきただけだ。アルカネットのところへすぐに連れて行った」

 ギャリーはビールをグラスへは注がず、瓶のまま飲み干した。

 夜になり軍部に出ていたライオン傭兵団の皆が帰ってくると、サロンに集まって酒盛りしながら、今日のキュッリッキの迷子について盛り上がっていた。

「なんの用事で呼び出されたんです?」

 カーティスに問われると、キュッリッキはしばし考え込み、小さく首を横に振った。

「内緒だから教えちゃダメって、ベルトルドさんに言われてるの」

 これには「なんだとー」とサロンのあちこちから不満の声が上がる。

「キューリさんに口止めするとか、怪しさ大爆発ですね」

 シビルがほたほたと歩きながらソファに飛び乗った。

「キューリちゃんしゃべっちゃいなよぉ~。アタシらもナイショにしとくからぁ」

 マリオンは背後からキュッリッキを抱きしめる。そして両掌を胸に被せ、イヤらしく揉み始めた。

「だってダメなんだもん。あっ、やだもぉ、胸揉まないでってばっ」

「ヤイコラ! 羨ましいことしてんじゃねーよ痴女!」

「アタシとキューリちゃんの仲だも~ん。スキンシップスキンシップぅ」

 ザカリーがマリオンに食ってかかるが、マリオンはおかまいなしにキュッリッキの胸を揉む手を止めない。

「やだったら……あんっ」

 キュッリッキの発した艶声に、ザカリーとメルヴィンがドキリと顔を赤らめた。それをチラリと見やってカーティスが小さくため息をつく。

「マリオン、そのくらいにしておかないと、椅子から立ち上がれなさそうなひとが若干名いますよ」

「へ~い」

 カーティスに軽くたしなめられて、マリオンは揉む手を止めて、再びキュッリッキを抱きしめた。

 ザカリーはなんとも言えない表情で明後日のほうを向き、メルヴィンは顔を赤らめたまま俯いて息を吐き出した。

「あ、そうだ。ねね、コッコラ王国の悲劇ってなあに?」

 ふと思い出したキュッリッキの問いに、一同はしーんと静まり返った。

「??」

 急に黙りこくったみんなの様子に、キュッリッキは目を瞬かせた。

「キューリちゃん……それ、どこで聞いたのぉ~?」

 マリオンに耳元で囁くように言われて、キュッリッキはくすぐったさに目を閉じる。

「ブルーベル将軍が話してて、詳しくはみんなに聞けって、ベルトルドさんが」

「コラ! キューリてめー、古傷に塩をすりこむような無慈悲なコトをきーてんじゃねーぞ!!」

 カーペットの上でゴロゴロしていたヴァルトが、憤然と立ち上がって怒鳴りつけた。

 ベルトルドやアルカネットが絡むと、異常に反応するヴァルトなだけに、キュッリッキの好奇心はますます掻き立てられた。

「……話してくれたら、今日呼び出されたこと、喋っちゃってもいいかも~」

 キュッリッキが強気に出ると、みんな「うっ」という表情を浮かべた。

「――3年前、我々は今はもうないコッコラ王国から、破格の報酬で雇われたことがあります」

 たっぷりと間を置いたあと、カーティスがそう切り出し、みんな悪夢にうなされたように渋面を浮かべた。



 ハワドウレ皇国の拠点であるワイ・メア大陸には、属国である小国が5つ領土を構えていた。

 その中の一つ、北に位置するコッコラ王国は、鉱脈が豊かでハワドウレ皇国の経済面を大きく支えていた。そのコッコラ王国が突如反旗を翻し、豊かな財力を活かして多くの兵力を結集し、大規模な戦争を仕掛けてきたのだ。

「それがちょうど3年前です。あの頃はまだ、いくつかの傭兵ギルドから依頼を受けているような状態で、今ほど我々も有名ではありませんでした。大々的に傭兵を募っていたコッコラ王国からもたらされた報酬額は、なんと5年は遊んで暮らせそうな額でしたから、断る理由がありません」

 ため息とともにカーティスは懐かしそうに目を閉じた。

「ライオン傭兵団(うち)の後ろ盾がハワドウレ皇国の副宰相であっても、我々には関係ありません。食べていかなくてはいけませんから。――これも仕事だからと意気揚々とコッコラ王国側に与したわけです」

「しかしその判断が甘かった……」

 ギャリーが脂汗を浮かべて呟く。

「そう……あの頃のわたしたちは、ベルトルド卿の恐ろしさをなめてかかってましたねえ」

 コッコラ王国の傭兵として戦争に参加したライオン傭兵団は、持ち前の圧倒的なパワーでハワドウレ皇国の兵士たちを蹴散らしていた。中にはもと同僚たちも含まれていたが、すでに辞めた身、遠慮の欠片もなかった。

 この戦いで、ライオン傭兵団の強さが世界中に轟き、現在の地位を築いて確固たるものになった。

 当初兵力差では圧倒的にコッコラ王国不利と目されていたが、ライオン傭兵団の大活躍により戦況は一転し、ハワドウレ皇国軍のほうが圧される結果に塗り変わっていった。これに気をよくしたコッコラ王は、ハワドウレ皇国を挑発し、より状況を悪化させていった。

 そしてついに、ハワドウレ皇国は切り札を投入。

 というより、切り札の方が勝手に乗り込んできたのだ。

 ハワドウレ皇国副宰相ベルトルドと、軍を辞めベルトルド邸の執事をしているアルカネットの二人だった。

「ベルトルド卿のサイ〈超能力〉の実力は、噂ばかりで我々もよく判っていませんでした。アルカネットさんについては、並ぶものが居ないほどの魔法スキル〈才能〉の持ち主であることは知っていました。しかし、二人が本気で力を振るうところなど、見たことがなかったんです」

 ベルトルドは軍を全て引かせ、アルカネットと二人だけで戦場のど真ん中に降り立った。

 その様子を遠巻きに見ていたコッコラ王国軍と雇われ傭兵たちは訝しんだが、

「かかってこい」

 キザったらしく片手で挑発してくるベルトルドの態度に全員カチンときて、二人に向けて容赦のない集中砲火が浴びせられた。

 しかし、砲弾も矢も魔力も全てが二人に着弾する数メートル手前で空間に消失し、何事もなかったように二人は無傷。驚きどよめくコッコラ王国側は、それでも二人に集中砲火を浴びせ続けたが全く効果なし。

 その様子に好奇心を掻き立てられたライオン傭兵団が出撃すると、ベルトルドとアルカネットは「待ってました!」と言わんばかりに反撃に転じた。

 ベルトルドもアルカネットもその場を動かず、ライオン傭兵団の攻撃も全て着弾前に空間に吸収され届かず、ガエルとヴァルトの拳も見えない壁に弾き飛ばされた。完璧な防御をベルトルドが、そしてアルカネットの無詠唱魔法が炸裂し、辺りをイラアルータ・トニトルスの雷光が無数に踊り狂った。

 為すすべもなく逃げ腰になるライオン傭兵団を嘲笑うかのように、サイ〈超能力〉による念力で地面に無数の亀裂が走り、岩や小石などが宙を舞って襲いかかった。更に最上位攻撃風魔法トゥムルトゥス・リーフが勢いに拍車をかけ、トドメの氷結封印(ケーラ・ベークシス)で完全に動きを封じられた。

 それでもガエルやヴァルトなどは抵抗を試みて封印を破ろうともがいたが、トコトコと歩いてきたベルトルドの容赦のない一蹴りでサクッと沈められた。

 時間にすればほんの10分程度だっただろう。

「出し惜しみするんじゃないぞお前たち! もう終わりなのか?」

 不敵な笑みを浮かべてベルトルドが叫ぶと、コッコラ王国軍は恐れおののき蜘蛛の子を散らす勢いで敵前逃亡を始めた。

「張り合いのない連中だな…。それにしてもお前たち、もうちょっと頑張れば面白かったものを。あっさりと沈みおって情けない」

 無様に地面に転がるライオン傭兵団を睥睨すると、ベルトルドはうつ伏せに倒れるザカリーの背中を踏みつけ、軽やかな足取りでコッコラ王国軍を追って領内に入っていった。

 そのたった半日で、コッコラ王国軍は壊滅状態に追い込まれ全滅。雇われた傭兵たちも殆どが倒され、数日後、地図からコッコラ王国の名が消え失せた。

「部下だから大目に見てくれるだろう、などとチラッとでも思ったのがそもそもの間違いでした。あの方々の容赦のない攻撃といったら筆舌に尽くしがたい横暴さでした」

「手加減とか容赦するとか、あいつらの辞書には絶対載ってねえ……」

 ザカリーは頭を振って吐き捨てた。気を失っていたので背中を踏まれたことは、仲間たちからあとで聞かされた。

「ベルトルドさんとアルカネットさんの二人でやっちゃったんだ~……すごーい」

 キュッリッキはわくわくした表情で、その時の様子を想像してみた。

 腕自慢の彼らがコテンパンにやられたのである。

 みんな思うところが色々あるのだろう。どんよりと暗雲を垂れこめたような雰囲気をまとわせて、力なく俯いてしまっていた。

「俺が帰ったぞ!」

 そこへ屋敷の主が元気に帰宅を告げる声が聞こえてきて、みんなビクリと身体をひきつらせた。

「ここにいたかリッキー」

「おかえりなさ~い」

 サロンに姿を見せたベルトルドに、キュッリッキは飛びついた。

 最近こうして抱きつかないと、ベルトルドがいつまでも拗ねる。というよりイジケる。

 飛びついてきたキュッリッキを嬉しそうに抱きしめ、たっぷりと抱擁を堪能したあと、

「なんだお前たち、全力で落ち込んで」

 やっと気づいたと言わんばかりに室内を見渡す。青ざめた表情をした幾人かと視線が交わったが、一方的にそらされベルトルドは面白そうに目を見開く。

「ちょうど、コッコラ王国のお話しを聞いてたの」

「ほほう」

 ベルトルドはニヤリと口の端をあげると、キュッリッキを抱き上げた。いきなりのことでキュッリッキは慌ててベルトルドの首に両腕を回してしがみつく。

「こいつらはな、今でこそ最強などとお立て上げられて調子にのってるが、あの頃はもう、それはそれは無様を絵に描いたような腰抜けっぷりだったぞ」

 にっこりと嫌味たっぷりに言うベルトルドに、ライオン傭兵団はますます暗雲を濃くしていった。そのうち雨でも降ってきそうだ。

「ただいま戻りました」

 廊下からアルカネットの声が聞こえ、出迎えたセヴェリやリトヴァの声がする。

 アルカネットの声にも、一同ビクリと身体を反応させた。

(よっぽど激しいトラウマになっているのね……)

 みんなの様子に、キュッリッキは多少同情する気持ちが芽生えてきた。

 彼らはとても強いと思う。だが、その彼ら以上に圧倒するほど強いベルトルドとアルカネットの戦いぶりを、キュッリッキは見てみたいと思っていた。

「おや、みなさんこちらにいらしたんですか。ただいまリッキーさん」

「おかえりなさい」

「懐かしい話で盛り上がっていたようだぞ」

「懐かしい?」

「コッコラ王国のお話し」

 にやにやと笑うベルトルドと、苦笑を浮かべたキュッリッキの顔を見て、アルカネットは「ああ」と頷いた。

「彼らの無様な顛末ですね」

 天使のような微笑みでさらりとトドメの一言を突き刺され、天下のライオン傭兵団は力なく床に沈んでいった。



第四章 モナルダ大陸戦争 副宰相の悪巧み 続く



037 モナルダ大陸戦争 副宰相の悪巧み

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Comments 6

リョウコ

ベルトルド様達、どれだけ凄いトラウマ植えつけたのですか∑ヾ( ̄0 ̄;ノ

ブルーベル将軍
私も、もふもふしてみたいです( *´艸`)

2014-08-27 (Wed) 21:12 | EDIT | REPLY |   

ユズキ

Re: タイトルなし

リョウコさんおはようございます(^ω^)

筆舌に尽くしがたい遠慮の欠片もないほどの・・・半殺し状態ですねーw
反抗とか抵抗とか一切考えられないくらい、コテンパンにのされてました(笑)

ブルーベル将軍は手触りが最高の毛皮の持ち主ですw

2014-08-28 (Thu) 06:00 | EDIT | REPLY |   

ふぉるて

こんにちは~(*^ ^*)
急に涼しくなって、調子が狂いますね~><

ブルーベル将軍、シロクマさんだったのですね! Σ >ω<
あのつぶらな瞳で軍服…確かに か…可愛いかも…

コッコラ王国の悲劇…ふむふむ~…そんなエピソードがあったのですね~。
傭兵として食べて行くためとはいえ…みなさん、大変でしたね ><;
(あのお二人の無慈悲な攻撃……ブルブルブル(汗) )
思い出しだながら少しずつ沈んでいくライオン傭兵団の方々に同情してしまいました~。

敵のど真ん中に立って「かかってこい」
唇の片端を上げながら仁王立ちして チョイチョイ、って手を動かしてる様子が…勝手に脳裏に浮かびました(笑)

ではでは~☆

2014-08-28 (Thu) 14:15 | EDIT | REPLY |   

ユズキ

Re: タイトルなし

ふぉるてさんこんばんわ~(^ω^)

涼しいのは嬉しいけど体調崩したー><w
喉痛い咳は出るで、バカだけど風邪ひきました(笑)

ブルーベル将軍をシロクマにする設定は当初からあったので(笑) やっと出せて満足ですww

コッコラ王国の悲劇は詳細に書かないと、ちょっと伝わりにくい部分もあるけど、まあいいや・・・で(笑)
番外編でそのうちw

半殺しのメにあってるので、その恐怖心たるや、てかんじですw

>唇の片端を上げながら仁王立ちして

うん、まさにそれです(笑)
ほんとは「かかってきな」にしたかったけど、キャラが崩壊するので「かかってこい」に留めておきました(´_ゝ`)

2014-08-29 (Fri) 01:30 | EDIT | REPLY |   

八少女 夕

あらあら

優しい白クマ将軍でよかったですね。
御大たちも敬語になるような偉い軍人さんに初対面でいきなり抱きついた上、「かわいい〜」って、けっこう大胆。
そして、フェンリルもぬいぐるみ系に我慢できないんですね(笑)
なんかほのぼのな絵柄です。

そして、単に敵が倒されるのを目の当たりにして怖れているのかと思ったら、ライオン傭兵団、自分たちが二人にコテンパンにされてしまっていたとは。それは、怯えるだろうなあ。

そして、「祭典」というのはリッキーさんの思っているような、楽しいお祭りって事にはならないわけなのですね。

さて、次回がどうなるのか、楽しみに待つ事にします。筆が進まれていらっしゃるようなので、すぐかな?

2014-08-29 (Fri) 03:43 | EDIT | REPLY |   

ユズキ

Re: あらあら

八少女さんこんにちわ~(^ω^)

これまで自由に生きてきたキュッリッキさんですから、将軍だろうとなんだろうと、可愛いものを前にしたら飛びつかずにはいられないのです(笑)
なんだかんだいって、フェンリルはしっかり人間社会に染まっているようですw

>単に敵が倒されるのを目の当たりにして怖れているのかと思ったら

真の恐怖心は実体験ですよね(笑)
番外編の方でもうちょっと丁寧にそのあたり書こうと思います(*´∀`*)

アルファポリスさんのほうにエントリーしたしで、もうちょいいくつか早めにアップしたいと思います><; せめて出陣するところまでは書かないと・・・(;・∀・)

2014-08-29 (Fri) 16:21 | EDIT | REPLY |   

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