040 第四章 モナルダ大陸戦争 副宰相の悪巧み

深くもない物語ですが、ただのコメディファンタジーじゃないゾというところを(笑) そろそろ明かしていく段階に突入です。でもどうしても御大はギャグに突っ走っていく傾向があるようです。

今回キュッリッキさんの召喚シーンが出てきます。以前書いた時より丁寧に書いています。しかし、ゲームやアニメ、漫画などに出てくる召喚士の召喚シーンとは、かなり異なりますってのが判っていただけるかな~て考えながら書きました。根本的な設定から異なるので当然なんですが。召喚士、と聞いて咄嗟に思いつくのは鉄板シーンだと思うんで(笑) ウチではチガイマスヨー、と強調してみました。




ALCHERA-片翼の召喚士-
第四章 モナルダ大陸戦争 副宰相の悪巧み 040



「絶妙なタイミングで戦争が起きましたな」

「まったくだ。裏でコソコソ手を回さずとも勝手に踊ってくれている」

 窓辺に立ち外を眺めていたベルトルドは、さも愉快そうに肩を震わせ笑った。その様子を無感動に眺め、シ・アティウスは手にしている書類をパラパラとめくる。

「エレギアへ行く前に、ナルバ山に寄り道するンでしょ?」

 デスクに向かいペンを走らせるリュリュが、確認するように問う。

「わたしとベルトルド様の二人で寄っていきます。本当はリッキーさんにも同行してもらえると作業がはかどるのですが」

 アルカネットが気遣わしげにため息をつく。

「辛いことを無理に思い出させることはさせたくありません。今は……」

 鉛色の空に稲妻が走り、遅れて轟音が鳴り響く。

 雷光がベルトルドの顔を照らし、表情を曖昧にさせた。

「エレギアの遺跡エルアーラの起動装置は、ナルバ山の遺跡にあるレディトゥスシステムだというが。――よくもまあ、分散して作ったもんだ」

「古代人の考えは判りかねますが、レディトゥスシステムをエルアーラに運べば、規模の全容も明らかになるでしょうね」

「ふむ。お前の予想ではどの程度なんだ?」

「モナルダ大陸の3分の1くらいはありそうかと」

 シ・アティウスの言葉に、ベルトルドは不敵な笑みを深めた。

「メリロット王家は実によく研究していたようですね。レディトゥスシステムのことにもだいぶ気づいていたようです」

 書類に記載されている内容に目を通しながら、シ・アティウスは淡々と呟く。

「メリロット一族はもともとヤルヴィレフト家の血を受け継いでいる。――呪われた一族の血をな」

「今度の戦争に勝って、昔の栄光を取り戻したいっての?」

「いま一度、ヴィプネン族の王位に返り咲きたいのかもな」

 嘲笑するベルトルドに、リュリュは肩をすくめてみせた。

「この戦争を利用させてもらうさ。堂々と悪戯の準備ができる」

 ベルトルド、アルカネット、リュリュ、シ・アティウスの4人は、それぞれの表情を浮かべて深く頷いた。



 皇都イララクスに暮らす人々は、ソレル王国の宣戦布告に多少の不安を覚えつつも、日常生活のリズムは変わらなかった。エルダー街の傭兵たちがソワソワと落ち着かないくらいで、皇都の様子も変わらない。

 属国に下っている小国が、皇国に牙をむくのは珍しいことではない。小国同士が衝突したり、皇国の領内を荒らしたりすることは、これまで何度でも起こっている。

 ソレル王国から一方的に宣戦布告がされたが、皇国側からはまだ正式な通達は行われていない。軍部の動きが慌ただしいので、近々開戦するだろうことは想像できる。経済的には影響は出ていないので、生活に支障はなかった。

 牙をむいてきたソレル王国とその連合軍は、惑星の反対側に位置するモナルダ大陸が拠点だ。ワイ・メア大陸とは随分と距離があり、移動手段に使われるエグザイルシステムには正規部隊が詰めているから安全だ。それがより緊張感をやわらげている要素にもなっていた。

 変化といえば街のいたるところに巨大なスクリーンが設置されていくことだった。8月3日にはささやかなイベントがあり、国民はスクリーンを必ず見るよう通達されていた。それはハワドウレ皇国民だけではなく、属国である小国の民もすべてである。

 映像が中継出来ない場所では音声中継も設置され、とにかく世界は8月3日を固唾を飲んで待ち構えていた。



 キュッリッキはアルカネットに手を引かれて総帥本部の中を歩いていた。この間のように勝手に姿をくらませないように、片時も手を離さず状態である。

「あら、アルカネット」

 書類の束を小脇に抱え、リュリュが歩いてくる。

「ナニヨ、このがきんちょと犬っころ?」

 手を引かれたキュッリッキと、その足元に佇むフェンリルを見て、リュリュは垂れ目を眇めた。

「召喚士のキュッリッキさんと、その相棒のフェンリルですよ」

 アルカネットに紹介されて、キュッリッキは小さく会釈する。フェンリルは興味なさそうに鼻を鳴らした。

「ああ、ベルトルドのアレをナマコと言った小娘ね。アタシはベルトルドの秘書をしているリュリュっていうの、ヨロシクネ」

 キュッリッキはリュリュをまじまじと見上げ、心の中で興味深げに呟いた。

(本物のオカマだあ…)

 ハンサムな顔立ち、とは言い難いが、極端に垂れた目が印象である。濃くはないが化粧もしていて、軍服を着ているが、どこかなよっとした立ち姿をしていた。

「ベルトルドなら控え室でお着替えしてるわ。テレビ映えするよう派手に飾り立てようとしたらゴネて拗ねてイヤがるから、下官が苦労してる」

「そういうのは嫌いなかたですからね」

 アルカネットは苦笑する。

「今日の主役はこの小娘だし、ベルトルドはパセリだしね」

「おやおやみなさん、お集まりで」

 大きな身体をゆするように歩いてきたブルーベル将軍が、温厚な笑みを浮かべて挨拶した。これにアルカネットとリュリュが敬礼する。

「こんにちはお嬢さん。今日も可愛くおめかししてもらっていますね」

 にっこりと笑うブルーベル将軍に、キュッリッキは無邪気に笑いかけた。そして将軍の背後に控えるように立つ人物を見て、キュッリッキの瞳がキラリと光った。

「パンダあああ!!」

 大きな声を張り上げると、アルカネットの手を振りほどいてキュッリッキは飛びついた。

「うわああああっ! なんだっオマエは!!」

 いきなり飛びつかれた男は盛大にひっくり返った。

 短い手足をバタバタと動かし転がる姿は愛嬌たっぷりで、それを見やってアルカネットとリュリュは妙に微笑ましい気持ちに浸ってしまった。

 白と黒の模様がとても愛らしいパンダのトゥーリ族だ。

「どうしよう可愛すぎる可愛すぎるの~~」

 キュッリッキは憚ることなくパンダ男に頬ずりする。キュッリッキは軽すぎるほど軽いのだが、パンダ男はいきなりのことに動転して、ひっくり返ったまま起き上がることができない。

「どれどれ」

 ブルーベル将軍は好々爺の笑みを浮かべ、キュッリッキをそっとパンダ男から引き剥がす。

「ハギはシャイなのでね」

 将軍にウインクされて、キュッリッキは目をぱちくりと瞬かせた。

 パンダ男はリュリュに助け起こされ、愛嬌たっぷりの顔をむすっと歪めた。

「この者はワシの副官で、ハギといいます」

 キュッリッキを抱き上げたままのブルーベル将軍に紹介され、ハギは背筋を伸ばして敬礼した。その敬礼する姿も愛嬌たっぷりだ。

 ブルーベル将軍はキュッリッキをアルカネットの前にそっと降ろす。

「今日の式典、楽しみにしておりますよ」

 そう言って、ブルーベル将軍はハギを伴いその場を後にした。

 去りゆくブルーベル将軍とハギの尻に生えている小さな丸いしっぽに、キュッリッキはずっと釘付けになっていた。

「今からベルトルドのところへ?」

「ええ、彼女を連れて来いと言われていますので」

「アタシも一緒に行くわ。――全く、いい加減な演説内容書いてくるから、全部書き直したわよ」

 アルカネットに再び手を引かれ、キュッリッキはリュリュらと共に歩き出した。

「一体何て書いていたんです? だいたいの想像はつくんですが」

「『お前ら首洗って待っとけ 以上』よ。呆れちゃう」

 微笑みの表面に乾いた砂塵が吹き抜けていくような、アルカネットの恐ろしげな空気を感じて、リュリュとキュッリッキがギョッと慄いた。

「陛下の代理として壇に立つということが、どうやら判っていないようですねあのひとは」

「でもぶっちゃけ、陛下もそう大差ないわよ…」

「………」

「そういうのって、似た者同士って言うんだよね」

 朗らかにキュッリッキに指摘され、アルカネットとリュリュは疲れたように息を吐き出した。



 控え室に到着した3人は、機嫌の良いベルトルドの声に出迎えられた。

「ゴテゴテに飾り立てようとしてくるから、飾り自体を粉砕してやった」

 壁の表面を覆う巨大な鏡の前に立ち、ベルトルドはにっこりと振り返った。そのベルトルドの足元には、粉々に砕かれた金属片が大量に散らかっていた。

「ちょっとあーた、勲章やら何やらまで全部壊しちゃったわけー?」

「無駄に重い勲章やらモールやらつけようとするからだ。俺はクリスマスツリーじゃないぞ」

「いっそ目立つように電色でも巻きつけてあげましょうか?」

 くすっと笑うリュリュをキッと睨み、ベルトルドは「もういい」と軍服のホコリを払おうとする下官を下がらせた。

「よく似合っているな、リッキー」

 ベルトルドはアルカネットの横でおとなしく立っているキュッリッキを抱き上げた。

「本当は色々可愛いドレスを用意しておいたんだが。ドレスを着たまま出撃するわけにもいかんしな」

「でもアタシ、これ気に入ってるよ」

 嬉しそうにキュッリッキが笑うと、ベルトルドも自然と表情が優しく和んだ。

 これまでキュッリッキは、旅の途中で知り合ったサーカス一座の娘からプレゼントされた踊り子風な衣装を着ていた。自ら武器を持って戦うわけでも、魔法やサイ〈超能力〉を操るわけでもないので、何を着て戦場にいてもよかった。キュッリッキはその踊り子風の衣装を、戦闘着と定めてずっと愛用していた。しかし2か月前ナルバ山で怪物に襲われたとき、衣装は切り裂かれ、血糊でベトベトになってもはや着られる状態じゃなくなり失ってしまった。

 そこでキュッリッキは戦闘着になる服をずっと探していたが、そのことを知ったベルトルドとアルカネットが、キュッリッキの好みや希望を聞き出し、特注で作らせたのが今日着ている服だ。

 戦闘服も新しくしたことだし、髪型もオトナっぽいものに、とファニーに言われていたが。美容院で4時間も美容師と相談を重ねた挙句、以前とあまり変わらない感じになってしまった。

「無理に変えても、似合わないわよ」

 と言われ、キュッリッキもそうかもしれないと思った。

「ベルトルド、これ開演までに暗記しなさい」

 差し出された書類を見て、ベルトルドは目を丸くした。

「なんだ、これ?」

「演説の草稿よ」

「………俺が覚えられるわけ無いだろう?」

「居直んないでっ。ちゃんと覚えて、前を向いて下を向かず、噛まずスラスラ読み上げなさい。カメラ目線とリップサービスもしとくのよ」

「む・り・だっ!」

「あと15分もあるからイケルわよ」

「無理っ――!!」

 地団駄でも踏みそうな癇癪を起こしてベルトルドは喚いた。それを冷ややかに見やり、リュリュは書類をグイッと突き出す。

「お・ぼ・え・な・さい」

 なおも無言で拒むベルトルドの軍服の裾をキュッリッキが引っ張る。

「ベルトルドさん、あと10分しかないよ?」

 ベルトルドはガックリと肩を落とし敗北した。



 式典会場はハーメンリンナの宮殿前広場に設けられた。

 1万人の人々が収容できるスペースには、軍服をまとった人々が整然と並び、一部に着飾った紳士淑女が混じっている。この式典に色を添えるためだけに並ばされた貴族や富豪たちだ。

 特設された壇上の右側には皇王と皇妃、王太子や王女など皇王一家や一族が座っている。左側には宰相とブルーベル将軍、10人の大将、特殊部隊の長官などが並んで立っていた。キュッリッキもアルカネットの傍らに立っている。

 壇上の背景には巨大なスクリーンが建てられ、そこに壇上に立つ人物が映し出され、それと同じ映像が、各地に設置されたスクリーンにも流される。

 広場にいるのはほぼ第七正規部隊の軍人たちで、式典が終われば皇都の守りにつく。他の部隊の軍人たちは、すでにモナルダ大陸に向け移動を開始している。移動先でこの中継を見ることになるだろう。

 ライオン傭兵団員のなかでは、この式典に出席しているのはルーファスとメルヴィンの二人だけだった。二人は引き続きキュッリッキの護衛を任されている。

「式典が終わったら、リッキーの身はとても危険にさらされることになる。全力で守れ」

 前日ベルトルドからとくにそう念押しされていた。

 ルーファスとメルヴィンの二人は、キュッリッキのすぐ背後に立って辺りに注意を払っていた。この二人に関しては、何よりも最優先がキュッリッキの安全と命じられている。

 やがて時間になり、ベルトルドが会場に姿を現した。

 抜けるような青空と射抜くような夏の日差しのもと、光を弾いてより煌く真っ白な軍服と、肩から背中に流れる真っ白なマントをなびかせ、ベルトルドは颯爽と壇上に立つ。白の軍服はベルトルドにのみ着用を許されている色である。

 泣く子も黙らせる副宰相と、その名を轟かすベルトルドの姿を、スクリーンを通して初めて目の当たりにした国民の多くは、その若い風貌に驚いたことだろう。更に皇王から全軍総帥の地位を下賜され兼任しているのである。

 惑星ヒイシの中で、最も巨大な政治権力と軍事力を掌中におさめている人物だ。

 壇上に立ったベルトルドは、居並ぶ人々をゆっくりと睥睨し口を開いた。

 短い挨拶から入り、この戦争を始めるきっかけとなった経緯が説明される。会議の席で捏造した召喚士への傷害などには脚色もされ、国民の怒りを誘うような内容になっていた。そして中継を見ていた国民たちは、思惑通りに次々と怒りを沸き上がらせた。

 この世界の人々は、生まれて3歳になると、国にあるスキル〈才能〉判定機関にて、どんなスキル〈才能〉を備えているかを調べてもらう。そこで召喚スキル〈才能〉が判明すれば、ただちに生国が家族ごと召喚スキル〈才能〉を持つ子供を保護し、一生王侯貴族のような生活が保証され大切に扱われるのだ。それはヴィプネン族だけではなく、アイオン族とトゥーリ族でも同じように行われた。

 召喚スキル〈才能〉は特殊スキル〈才能〉の中に括られるが、他のスキル〈才能〉とは少し異なる。

 太古の昔異次元の彼方に消え去った、アルケラという伝説の世界をその目で視ることができ、その世界に住むものをこちら側の世界へ招く力を有している。

 召喚スキル〈才能〉を持つものを、とくに召喚士と呼称する。

 アルケラという神の世界があることを、証明できる唯一の存在。

 神に最も近しい者として、召喚士は別格として人々に認識されているのだった。そこをベルトルドは利用するため捏造に踏み切った。

「害された召喚士は幸いにして命を取り留め、今日この場に、その姿をお披露目する」

 ベルトルドは背後を振り返り、キュッリッキに手を差し伸べる。アルカネットからもそっと背中を押され、導かれるままキュッリッキは壇上にのぼった。

 手を引かれベルトルドの前に立つと、キュッリッキは緊張のあまり身を固くする。あらゆる人々から注視された。

「召喚スキル〈才能〉を有する召喚士が、どのような力を持つのか、知らぬ者のほうが多いだろう。その貴重な力の一端を、ここでお見せしよう」

 世界中の興味の目がキュッリッキに浴びせられた。それを肌で感じ、キュッリッキは不安と緊張で小さく怯えた。

 以前総帥本部に呼ばれたとき、式典で見世物になることは、あらかじめベルトルドから説明されている。キュッリッキがその召喚の力を見せること、それが世界の人々にどのような衝撃を与えることになるのかも、説明はされていた。

 別にコソコソ隠しているわけではないが、こんな場所で召喚をするのは初めてのことで、自らの震えに飲み込まれそうだった。

(リッキー、俺がそばにいる。安心しろ)

 念話でベルトルドから優しく励まされ、キュッリッキはつとめて小さく微笑んだ。

 カメラがキュッリッキを映し出す。その神秘なる力の全てを撮ろうと何台ものカメラが向けられる。

 キュッリッキは目を閉じると、小さく深呼吸した。心を落ち着かせ、周りの雑音を遮断する。そしてゆっくりと目を開いた。

 黄緑色の瞳にまといつく虹色の光彩が小さく光を放ち、それが強く光り輝き出す。

 瞳にまといつく虹色の光彩は、召喚スキル〈才能〉を持つ者の最大の特徴だ。

 キュッリッキの瞳は目の前の広場の光景など見ていない。ここには存在しない、しかし召喚士だけが覗き視ることが許される、神々と幻想世界の住人たちが暮らすアルケラをしっかりと捉え視ていた。

 アルケラにいる者たちと、次々に目が合う。

 華奢な手が前に差し出され、掌を上に向け、誘うように開かれた。

「おいで」

 小さく呟くと、突如広場の上空の空間が蜃気楼のようにたわみ、円形に波紋を描くように歪んだ。同時にどこからともなく吹き込んだ突風が広場を駆け抜ける。

 止まない強烈な風に巻かれ、広場にいる人々は大騒ぎになった。

 瞬きもせず、キュッリッキはじっとその空間にひたと視線を向けている。

 空間はどんどん歪み、辺りに振動を鳴り響かせた。

「こい、ヨルムガンド、リンドヴルム、フローズヴィトニル、スレイプニル!!」

 キュッリッキが叫ぶと、歪んだ空間から何かが次々と飛び出し、広場を覆ってあたりは一瞬にして闇に包まれた。

 巨大な何かは広場どころかハーメンリンナの上空を全てふさいでしまっているのだ。

 陽光は遮られ、闇の中に落とし込まれた人々は、恐怖のあまり息を飲んで黙りこくった。悲鳴をあげることすら忘れてしまったように、天を仰いで何かを探ろうとする。

「――大きすぎてこれではカメラにおさまりきれんな」

 ベルトルドも天を仰いで口の端を釣り上げ笑う。

「リッキー、もうちょっと小さくなるように言ってくれ。カメラに映るくらいにはしないと、これでは暗くて何も見えないからな」

「はーい」

 キュッリッキは天を仰いで叫ぶ。

「みんな、もうちょっと小さくなって。真っ暗になっちゃってなにも見えないの~」

 その声に応じ、 ヨルムガンド、リンドヴルム、フローズヴィトニル、スレイプニルは淡い光を放ちながら、徐々にその身を縮ませていった。

 ハーメンリンナに陽光が戻り、目が慣れた人々は上空にいるその姿を仰ぎ見て、次々と悲鳴をあげた。貴婦人の中には失神するものもあった。

 滑りけを帯び陽光に照らされ鈍い光を放つ鱗を持った巨大な黒い蛇ヨルムガンド、爬虫類の外見に蝙蝠のような巨大な2枚の翼を生やす龍リンドヴルム、漆黒の毛に覆われ冷たい氷土を思わせるアイスブルーの瞳を持つ巨狼フローズヴィトニル、引き締まった灰色の体躯に8本の脚を持つ巨馬スレイプニル。

 かつて人類が見たこともない、それは伝説の中で語られる生き物。

 それが突如ハーメンリンナに顕現した。

 カメラはしっかりとその4匹の幻獣を映し出し、世界中にこの映像が流れた。

「伝説の神の世界アルケラ、そこに存在する住人たちの一部である。そしてこの住人たちをこの世界に呼び寄せることができる、それが召喚士の力だ」

 騒然となる広場に、ベルトルドの静かな声が降り注いで人々は壇上に注目する。

「神の力の一端を操る尊い存在なのだ、召喚士は。その神に愛されし召喚士を害し、世界に災厄をもたらそうとする逆臣軍を許すわけにはいかない」

 フローズヴィトニルが空から舞い降り宙にとどまったまま、その鼻先をキュッリッキにつき出してくる。

 キュッリッキは無邪気に微笑み、その巨大な鼻先を優しく撫でてやった。

 その画(え)はベルトルドの演説を確固たるものにする。

「皇国と召喚士に仇なす逆臣軍を討つ! 全軍出撃せよ!!」

 ハーメンリンナに鬨の声が轟いた。



第四章 モナルダ大陸戦争 副宰相の悪巧み 続く



039 モナルダ大陸戦争 副宰相の悪巧み

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Comments 4

八少女 夕

お、

続きが早くでてくるようになったんですね。
前回の感想書く前にこっちを読んじゃいました。

今回は前回のギャグが嘘のように……。
(あ、でも、ちょっとコメディもあるけれど)

今回はリッキーさんの本領発揮でしたね。
私はファンタジーにもゲームにも縁がなかったので、召喚士の事はこの小説でしか知らないのですが、「普通と違うのをはっきりさせるため」に詳細に書いてくださった描写、予備知識のない私にはとてもありがたかったです。

御大とアルカネットさんで、またあの奇妙な所に行くのですね。
そもそもあれがなんだったのか、今ひとつまだわかっていないので、読んでいて何となく不安です。でも、あの時の怪我、ソレル王国のせいにしちゃったんだ。

でも、10分しかなかったのにちゃんとセリフを憶えたんですね。御大。
やっぱりやる時はやるんだ。かっこいい。

シロクマ&パンダ・ペアもキュートですが、個人的にはリュリュさんに注目中。なかなか面白いお方。そのうちにイラストでもお逢いできますかね。

明日から旅行ですが、Wifiのある所に行けたら、続きが出ていないかチェックしますね!

2014-09-01 (Mon) 03:54 | EDIT | REPLY |   

ユズキ

Re: お、

八少女さんこんにちわ~(^ω^)

>続きが早くでてくるようになったんですね。

い・・いえ、脳内ストック使い果たしました(;・∀・)
キリがいいところで出撃くらいはさせないと>< と焦ってなんとかw
でもなるたけ間をあけないように気をつけまする!

まあ、日本人が「これが召喚士が召喚するシーン」と思い込んでいるものの大半は、ゲームやアニメの受け売りですからね~。知識人ぶったひとが知ったかぶりしてるものも、日本語訳の書籍に書いてあるナンチャラ方法だから(笑) 本当の、なんてものは誰も知らないと思いますが。
一応、ゲームやアニメのようなものとは全然違いますってかんじですw 何故そうしたのかは今後お話に出てきまっす。

>またあの奇妙な所に行くのですね

はい。物語のキーのひとつになる重要な場所です(^ω^)
キュッリッキさんの怪我も罪状に追加されて、身に覚えがなさすぎるソレル王国も「なんで!?」状態ですが(笑) 先に言っちゃったモン勝ちです☆

>やっぱりやる時はやるんだ。かっこいい

ええ・・・・・・・リュリュたんがテレパシーで原稿内容を送っていたのは秘密なのです(^x^)くすっ

リュリュたんは御大が頭が上がらないキャラの一人ですw 理由も後々出てきますが、リュリュたんは相手がだれであろうと態度は平等です(笑)

ご旅行いいですね~(´∀`)楽しんできてくださいね!
続き出せてると・・・いいな(;・∀・)

2014-09-01 (Mon) 16:16 | EDIT | REPLY |   

ふぉるて

こんばんは~(*^ ^*)

おおお~!! キュッリッキちゃんカッコイイ!! >ω<
でもドデカ過ぎてカメラに収まらかったかぁ~(笑)
「ALCHERA」の世界では、召喚士の技量で一度に呼び出せる個体数とかって、差があったりするんでしょうか? (・ω・)>” ふと
(↑なんとなく、純粋に凄いや~! と思ったのですが…)

10分でスピーチ覚えるなんて、御大もさすが! …と思ったんですが
テレパシーでリュリュさんから原稿が届いてたんですね(笑) >ω<

そして…パンダ姿なハギさんが気になってます…(笑)

これからどんな展開が待っているのか、楽しみです♪
ではでは~…☆

2014-09-01 (Mon) 19:14 | EDIT | REPLY |   

ユズキ

Re: タイトルなし

ふぉるてさんこんばんわ~(^ω^)

>召喚士の技量で一度に呼び出せる個体数とかって

ふぉふぉふぉ、このあたりは今後お話に出てくるのでお待ちくださいw 4章の戦争終わってからになりまっす。

>テレパシーでリュリュさんから原稿が届いてたんですね(笑)

開演30秒前、
「もうダメだ、覚えられないし噛む!」
「ったくしょーがないわねえ、テレパシー繋いでおきなさい、アタシが原稿読んであげるから」
「よし、それでいこうw」
キリッ☆

て感じですね\(^o^)/
もともと威張る態度は素でイケルひとなので、ステージにのぼってバッチコィってかんじで乗り切っていました(笑) さすが御大かっこよす、です(きらん)

ハギたんは、フロムAのパン田一郎クンのような姿を想像してみましょう。
あれが軍服着ているから萌度200%です(^ω^) ちなみに焼けてません(笑)

今後は舞台設定がちょっとだけ派手になっていくので、ナンダカナーってかんじだけど・・・そこは「だってファンタジーだもん(;・∀・)」で切り抜けようかなって思ってます☆

2014-09-02 (Tue) 01:12 | EDIT | REPLY |   

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