043 モナルダ大陸戦争 奇襲

4章はちょっと分量長くなりそう・・・。章タイトル失敗したなぁ、とかいまさら思ってみたりして(;´ρ`)


最近【太陽と月とターリア】という昔話? イタリアの、眠り姫関連で読む機会があったんだけども。

エロ王様のやってることがアルカネットとかぶって、思わず笑ってしまった(笑)

しかし昔の人の発想凄いよね。寝てる間にゴーカンしてくれた男を好きになるとか、どんだけ都合よくまとめちゃってるんだろうと|゚Д゚)))

普通なら「ナニしてくれてんじゃごるぁああああ(#゚Д゚)ノ彡┻━┻」ですよね。


アンデルセン童話の【人魚姫】も、王子の超絶バカっぷりが最強過ぎて泣けますネ。


我が家のメルヴィンが、ここまで超・絶・鈍・感野郎じゃないことを祈ります☆




ALCHERA-片翼の召喚士-
第四章 モナルダ大陸戦争 奇襲 043



 何度も何度も自分の右手に視線を向け、胸の辺りに強く沸き立つ圧迫感を必死で抑え込む。

 救いを求めるように目だけを前に向けると、ルーファスが片手を頬に添えてにこにこしながら見ていた。明らかに面白がっており、助け舟を出す気は毛頭なさそうだ。

 手袋越しに伝わってくる柔らかな熱。温かいというよりは、力強い熱に感じる。

 キュッリッキの小さな右手は、メルヴィンの大きな左手にしっかりと握られている。宿を出る時から、こうして汽車に乗っている間も、片時も離さずだ。

 何があっても、必ず守りぬく。その決意のあらわれなのか、メルヴィンはとても真顔で車内の気配に気を傾けていた。その手にしっかりとキュッリッキの手を握り締めながら。

 自分を守ろうとしてくれている。それはとてもありがたいし嬉しい。

 しかし、まだまだメルヴィンの顔をまともに見られないのに、始終手を握られているのは激しい試練だった。

 キュッリッキは顔を赤らめたまま、ずっと下を俯きっぱなしだった。洋服越しに触れ感じるメルヴィンの腕の逞しさに、ドギマギしてならない。

 だがそれと同時に、酷く申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

 ここまでメルヴィンが使命感に燃えるのも、全てはナルバ山の遺跡での事件が原因だった。

 軽はずみな行動が招いた結果なのだとキュッリッキは何度も言うが、到底納得してもらえない。メルヴィンに限らずライオン傭兵団の皆が、遺跡でのことは苦く責任を感じているのだ。

 ベルトルドとアルカネットも、あの事件に対するライオン傭兵団の油断と軽率な行動を強く批難している。

 しかしメルヴィンはあの事件の原因以上に、傷つき今にも死にそうだったキュッリッキに、何もしてやれなかったことをずっと悔いていた。

 生まれ持ったスキル〈才能〉が魔法でも医療でもないので仕方がなく、あの状況では励ますだけで精一杯だった。そしてその励ましが、キュッリッキにはしっかり届いていたのに、それでもメルヴィンは、何もできなかったと自らを責めている。

 今のキュッリッキを守ることで、その埋め合わせをしようとしているかのようだった。

 出来れば自分と同じ気持ち――恋からくる気持ちで守ってもらいたいとキュッリッキは願っていた。

 ルーファスはうまくいくと言ってくれたが、メルヴィンはどう思っているのだろう。責任感からではなく、少しは自分と同じ気持ちがあるのか。――思い切って告白すれば、自分と同じ気持ちを持ってもらえるのだろうか。でも告白などする勇気はまだ持てそうもなかった。いまだに過去のことや種族のことを、打ち明けることもできないでいるのに。

 ふと車窓に目を向けると、窓ガラスの向こうには青い空とひたすら濃い緑の森が続いていた。

 リュリュからの指示で、ブリリオート王国の首都バロータから、ボルクンド王国との国境付近にある街オーバリーに行く汽車に乗るように言われていた。

 その汽車は皇国の特殊部隊ダエヴァが接収しており、汽車にはダエヴァの部隊員と3人しか乗っていない。

 ダエヴァはベルトルド直轄の特殊部隊で、あらゆるスキル〈才能〉や技術を持つ軍人たちで構成されていた。かつてマリオンも所属していたことがある。一部のダエヴァの軍人たちがベルトルドに呼ばれ、急遽リュリュの指示で汽車を接収することになったようだった。

「オーバリーについたら、徒歩でエレギアを目指すの?」

「いえ、オーバリーから国境を越える専用汽車が出ているので、それに乗り換えていきます」

 キュッリッキの問いにメルヴィンが答える。

「ボルクンド王国に入ったら、別の汽車に乗り換えて、待ち合わせのフェルトまでいきますから、あまり歩かなくても大丈夫ですよ」

「じゃあ、ヘンな遺跡見つけたら、間違って入ることなくていいね」

「そうですね」

 にっこりと笑むメルヴィンに、キュッリッキはぎこちなく笑顔を返す。恥ずかしくて自然な笑顔を向けられない。

「ボルクンドの汽車はウチで差し押さえてんのかね?」

 それまで黙って二人のやり取りを見ていたルーファスが、わずかに顔をしかめて斜め前方を見る。

「ご安心を。お嬢様に危害が及ばぬよう、我々ダエヴァの者共がご利用になる全ての汽車に配属されております」

 如何にも女性が騒ぎ出しそうなハンサムな顔をした青年が、柔らかな笑顔を浮かべて頭を下げた。階級は少佐のようだ。

「そっか。じゃあオレたちはのんびりできるな」

「わたくしどもも全力を尽くしますが、くれぐれもお嬢様に何事もなく、ベルトルド様のもとへお送りくださいますよう、お願い申し上げます」

 言い方は丁寧だが、手を抜くなと臭わせ、少佐は深く微笑んだ。

 ルーファスのこめかみがぴくりと反応したが、口に出さずに小さく頷いた。

 実際ダエヴァが護衛についているとなると、ルーファスやメルヴィンが気を緩めてもなにも問題はなかった。特殊な訓練を徹底的に叩き込まれている彼らを倒せる戦力を、逆臣軍が揃えているとは考えにくい。腕に自信のあるライオン傭兵団も、ダエヴァ相手に喧嘩は売りたいとは誰も思っていないくらいだ。それでも何が起こるか判らないのが敵地なので気は抜けなかった。

 3人のいる車両には5人のダエヴァの軍人が詰めていた。どれもとってつけたように美形ぞろい。人選をしたリュリュの趣味が露骨に伺えて、ルーファスは内心うんざりしてしまった。これではホストクラブである。

「おなかすいちゃったかも……」

 ふとキュッリッキが呟いた。

 朝はろくに食事が喉を通らず、無理をしても紅茶を飲み干すのが精一杯だった。少し状況に慣れてきたのか、お腹の虫が小さく鳴き出していた。

 すると、先ほどルーファスに応対していた少佐が、柔らかな笑みを浮かべてワゴンをひいてきた。

「お嬢様、お飲み物と軽食などいかがでしょうか」

 そう言って差し出してきたプレートには、一口サイズのサンドウィッチと温かな紅茶が乗っていた。

「わーい、ありがとう」

 一旦メルヴィンの手から解放されると、両手でプレートを受け取る。

「甘いお菓子などもございますので、遠慮なくお申し付けください」

「うん」

 ご機嫌で笑顔を返すと、少佐もにこりと微笑み返した。

「お二方もご一緒に休憩なさいませんか」

「いんや、オレは遠慮しておくよ」

「俺もいいです、ありがとうございます」

「左様ですか」

 少佐はしつこくすすめることもなく、二人の固辞を受け取って、静かに側に控えた。

「美味しい」

 満足そうに微笑むキュッリッキに反応し、フェンリルと共に車窓の窓枠にぶら下がるようにしていたフローズヴィトニルが、軽く尻尾を振っておねだりしだした。

「食べる?」

 キュッリッキがサンドウィッチのひと切れを差し出すと、フローズヴィトニルはぱくりと口にいれもそもそと噛んで飲み込んだ。それで何度かアイスブルーの瞳を瞬かせると、車窓から離れてメルヴィンの膝に飛び乗り、キュッリッキのほうへ顔を突き出した。

「気に入ったんだね。もっと食べていいよ」

 キュッリッキが食べられる分だけを皿に盛り付けていたので、少量だったサンドウィッチはフローズヴィトニルが全て平らげてしまった。

 それを面白そうに見ていた少佐が、新しい皿をキュッリッキに差し出した。

「こちらのお菓子もお召し上がりください」

 見た目にも可愛らしい、色とりどりのフルーツを飾り付けたプチケーキがいくつも並んでいた。

「可愛くて美味しそう! ありがとう」

「フローズヴィトニル様がお気に召されたのなら、おかわりをご用意致しましょうか?」

「だいじょうぶ。今度はこっちのお菓子に興味がわたみたいだから」

 くすりとキュッリッキが笑うと、フェンリルが「やれやれ」といった表情で鼻を鳴らした。

「フェンリルはいつもなにも食べないんだけど、フローズヴィトニルはこっちの世界へ来たの初めてだから、なんでも興味津々なんだよね」

 キュッリッキの掌の上のオレンジタルトを、ぱくりと一口で食べてしまうと、それも気に入ったようで何度も催促するように顔を突き出した。

 キュッリッキとフローズヴィトニルの様子を見て、ルーファスとメルヴィンは苦笑した。式典で世界中に驚異を与えた巨狼の姿とは、とても重ならない。ものをねだる小さな黒い仔犬、そのままだ。

 やがて満腹になり満足したのか、フローズヴィトニルはそのままメルヴィンの膝の上で丸くなって寝てしまった。

 フェンリルも車窓から離れると、キュッリッキの膝の上にのり、身体を丸めて目を閉じた。

 白銀色の柔らかな毛並みを優しく撫でながら、キュッリッキもうとうとと瞼が落ちかかっていた。その様子に気づいたルーファスが身を乗り出す。

「少し寝るといいよ、キューリちゃん」

「うん……」

「オーバリーに着いたら起こしてあげるから」

「……そうする。なんか眠くなっちゃった」

 キュッリッキはそのままメルヴィンにもたれかかるようにして眠ってしまった。

 屈めていた上体を起こすと、ルーファスは眉を寄せて少佐を見上げた。

「薬を入れたな?」

 ルーファスの言葉にメルヴィンがハッとなる。

 少佐は口元を僅かにほころばせて頷いた。

「アルカネット様からのご指示です。合流するまで絶対に、お嬢様に戦闘をさせずにお連れせよと」

 ルーファスとメルヴィンの表情に緊張が走った。それを見て少佐は頷く。

「あと10分で敵と接触します。お二方はお嬢様のお側を絶対に離れないでください。我々への援護は一切不要、お嬢様の安全が第一です」

「判った」

「了解です」

 ルーファスとメルヴィンの返事に満足し、少佐は小さく微笑んだあと、表情から一切の感情を消し去った。



 快適とも言えた汽車の旅は、お約束のごときタイミングで現れた逆臣軍の手で妨げられた。

 サイ〈超能力〉使いと魔法使いを中心とした編成で組まれた部隊のようで、20人ほどの人影が窓から確認できた。そしてためらいもなく魔法による攻撃が汽車に向かって放たれていた。しかしその攻撃は全て、ダエヴァの能力者たちに完璧に防御されている。車両にはなんの被害もなかった。

 スキル〈才能〉というものは、望んでも、願っても、狙っても、思い通りには持って生まれてこない。誰もが等しく一つだけ授かって生まれてくるスキル〈才能〉の種類はランダムであり、そのスキル〈才能〉が人生をほぼ決定づけてしまう。

 特殊スキル〈才能〉のカテゴリーに分けられる魔法、サイ〈超能力〉、機械工学、召喚、この4つの中の魔法とサイ〈超能力〉を授かってきた者に関しては、その道が主に軍隊か傭兵かの二択になることが多い。

 たいていはハワドウレ皇国軍に入る者が多く、その出身国が属国であっても皇国を目指す者は後を絶たない。しかし、中には生国の軍に入る者もいれば、傭兵に身を投じる者もいる。その中にはとても優秀で強い力を持っている者もいるので、皇国軍人ではないからといって、侮ることは出来なかった。

「ボルクンドの軍服を着ていますが、動きが大雑把すぎますね。おそらく急遽流されてきた傭兵たちでしょう」

 ひどく淡々とした口調で少佐は呟いた。

「今回表立って名前の上がっていない国々からも、陰ながら戦力の提供や資金が流れているとの噂です。そうでなければこうも命知らずな行動を取らないでしょうから」

 ルーファスは座席を立ち上がって窓の外に視線を向けながら頷いた。まるで規律の取れていない行動や攻撃の仕方は、傭兵たちの動きそのものだったからだ。

 そもそもこの汽車に攻撃を仕掛けてきた彼らの目的は、召喚士であるキュッリッキの拉致の筈である。それなのに、彼女の乗る汽車にこの無遠慮極まる乱暴な攻撃の仕掛け方は、目的がまるで判っていない。これではキュッリッキの生死は問わないと言わんばかりだ。

 汽車の動きを止めるためには、ケーラ・ベークシスやトイコス・トゥルバを駆使して阻害するものだろう。なのにさっきから汽車へ向かって飛ばしてくるのはエルプティオ・ヘリオスばかりだ。明らかに破壊目的の攻撃。ここにアルカネットがいれば、使う魔法が違うと叱り飛ばされかねなかった。

 攻撃魔法をとくに扱う魔法使いたちには、得意とする属性魔法がある。一応全ての属性を扱うことは出来るが、相性が存在するらしく、もっとも相性の良い属性魔法を伸ばす魔法使いが多かった。全ての属性を高レベルで自在に使いこなすのは、皇国軍のアルカネットくらいである。

 そのアルカネットの実力をよく知るルーファスから見ると、逆臣軍側の魔法使いたちの攻撃は如何にも幼稚に見えた。だがあたれば洒落では済まされない。

 サイ〈超能力〉使いたちは汽車に張り巡らされた防御を突破しようとしているようだったが、まるでびくともしない。サイ〈超能力〉による防御は、その者自身の精神力の強靭さが全てだ。防御を張り維持するためには、それだけの耐久力が求められる。攻撃されてもびくともしない、どんな力にも圧されない、サイ〈超能力〉使いは精神がタフでないと到底つとまらないものだった。

 力のせめぎあいを目にすることの出来るルーファスは、ダエヴァのサイ〈超能力〉使いたちの能力の高さに感嘆していた。

 ルーファス自身もけして能力は引けを取らず高レベルである。本気でぶつかり合えば、負ける気は全くない。しかしいくら高レベルでも、いざ戦場で精神を強く保てなければ、低レベルのサイ〈超能力〉使いにだって負けてしまう。

 このダエヴァの上に立つベルトルドの計り知れない精神力のタフさは、人間離れしすぎているとしかルーファスには思えなかった。

「汽車はオーバリーに入れるかね?」

 少佐をちらりと見ると、少佐は表情を動かすことなく静かに頷いた。

「この先の線路が破壊されているようですが、問題なく汽車は駅に到着しますよ」

「もしかして、この汽車に配属されてる連中、ほとんどサイ〈超能力〉使い?」

「ええ。他のスキル〈才能〉の者もいますが、この車両にいる者たちは全てサイ〈超能力〉使いです」

 少佐の淡々とした答えに、ルーファスはゲッソリと息を吐き出した。この車両だけでも5人ものサイ〈超能力〉使いがいる。その彼らを相手に幼稚な攻撃力では突破するなど不可能だ。それを思うと妙に逆臣軍に同情心が湧いてならない。

 ルーファスのそんな様子を見た少佐が、フッと表情を和ませた。

「この程度出来なければ、ダエヴァはつとまらないのです」



 よほど強い薬を盛られたのか、キュッリッキとフローズヴィトニルの眠りは深かった。汽車自体はびくともせず穏やかなものだったが、防御壁に弾かれたエルプティオ・ヘリオスの火の玉の着弾音やらが騒々しく、火炎による閃光も賑やかだった。

 メルヴィンは膝の上で寝るフローズヴィトニルをキュッリッキの膝に移し、キュッリッキを自らの膝の上に抱き上げた。フェンリルは目を覚ましているようで、キュッリッキの膝の上でじっとしている。

「薬の効果時間は、長いんですか?」

 少佐を見上げながら問うと、少佐は「ええ」と短く返事をした。

「お嬢様は回復されてまだ間もありません。いくら傭兵をしていたとはいっても、体力の回復はまだまだでしょう。それをアルカネット様は心配なさっていました。あなた方の合流地点であるフェルトに到着する前に、ベルトルド様とアルカネット様がお迎えに参じるそうです。その時までお嬢様は眠ったままです」

「あの二人が迎えにくるのは、初めて聞きました」

 メルヴィンが怪訝そうに首をかしげる。

「わたくしも詳しいことは知らされておりませんが、ご予定が変わったとか」

「そうですか……」

 そのことについてはそれ以上興味はなかった。

 メルヴィンが一番心配なのは、大怪我以来キュッリッキに事あるごとに飲ませている睡眠薬に関してだった。

 身体に害のあるものを、あの二人がキュッリッキに服用させることは絶対にないだろう。それでもこうして何かある度に薬で眠らせ、知らないうちに全てが片付いているというのは納得できなかった。

 遺跡での事件からこれまで臥せっていた時間が長かったので、以前のように元気に動けるようにするためにリハビリを頑張っていた。そしてみんなと一緒に仕事だと、うんと張り切っていたのだ。今回の短い旅もどこか挙動不審な面は見られたが、頑張ろうとしていたのに、薬で眠らされ全てが終わったあとで目覚めさせられてはガッカリするだろうに。

 どうにもベルトルドとアルカネットのやっていることは、キュッリッキを過保護にしすぎて彼女の気持ちを尊重していないように、メルヴィンには思われてならなかった。

 走り続ける汽車の外では、賑やかな魔法攻撃がひっきりなしに続いていたが、防御を突破できるような一撃は向かってこなかった。

「少佐、そろそろ線路が」

 少佐のそばにいた中尉が、敬礼と共に報告をする。それに小さく頷いて少佐は3人に告げた。

「これから爆破された線路の上を走らせます。多少強い衝撃が突き上げてくると思いますので、お嬢様をしっかりと抱いていて差し上げてください」

 メルヴィンは無言で頷くと、キュッリッキを抱き上げる手に若干力をこめて椅子に踏ん張るようにして身構えた。

 ルーファスはその二人になるべく衝撃が及ばないように防御を張り巡らせる。サイ〈超能力〉使い以外には目にすることのできない薄い膜のようなものが、丸く二人を包み込んだ。

 それを確認すると、少佐は姿勢よくその場から身体を浮かせると、するりと車両の天井をすり抜けて車外に出た。

 少佐は汽車の周囲に同じ速度で飛びながら必死に攻撃を仕掛けてくる魔法使いとサイ〈超能力〉使いたちを、侮蔑を顕に一瞥すると、片膝をついて車両に両手をついた。

 すると先頭車両から順に、ガタンと激しく車体を揺らし地面から離れて浮いていく。

 6両編成の汽車は全車両が線路から浮いて、しかし速度はそのまま維持され宙を滑走していった。

 その汽車の様子に、逆臣軍の魔法使いやサイ〈超能力〉使いたちはぎょっと驚き狼狽した。今まで休むことなく続けていた攻撃の手が止まる。

 少佐は立ち上がると優雅に腕を組んだ。亜麻色の若干長めの髪の毛が強風にあおられ踊る。

「ベルトルド様ならこれに加速をつけて移動させてしまうのでしょうが……わたくしには無理なようです」

 誰にともなく呟いて、自嘲するような笑みを薄い唇に滲ませた。



第四章 モナルダ大陸戦争 奇襲 続く



042 モナルダ大陸戦争 恋せよ乙女

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Comments 6

リョウコ

せっかく張り切っているのに
薬で、眠らせられて……
と、思うけど
キュッリッキちゃんに、してみれば
戦闘よりも、メルヴィンと一緒のドキドキの方が
嬉しい反面、今はまだ
よっぽど疲れそうですね(*´∇`*)

2014-09-19 (Fri) 07:27 | EDIT | REPLY |   

ふぉるて

こんにちは~(*^ ^*)

子犬姿のフェンリルとフローズヴィトニルが
背伸びして(ぶら下がって)車窓の景色を眺めている姿を想像して思わず和んでしまいました~ ^ω^

メルヴィンの決意の強さも、片時も手を離さないとなると…キュッリッキちゃんにはドキドキですね~ >ω< ”
ルーファスの洞察力の鋭さも、さりげない中に光る物が沢山ありますね~さすがです♪
(フェンリルがお菓子とかを食べなかったのも、もしかして…?? とか考えてしまいました~)

ダエヴァの方々もさすがですね~…というか、この車両は ホストクラブ状態なのですね(笑) >ω<

睡眠薬…副作用とかは無いものなんでしょうけれど、
あまり多用されると、キュッリッキちゃんも「あれ、また記憶が飛んでた…」とかに
なってしまうかもですね~ ><; うむむ~

さてさて…この先、何が待っているのでしょうか~、楽しみです♪ ^ω^

ではでは~☆

2014-09-19 (Fri) 11:27 | EDIT | REPLY |   

ユズキ

Re: タイトルなし

リョウコさんこんばんわ~(^ω^)

初恋爆進中のキュッリッキさんには、お仕事もそうだけど、よりによってメルヴィンといっしょ><! という、嬉しいんだか逃げ出したいんだかの葛藤がすごい状態ですね(笑)

一緒にいることが、心地よく幸せに満たされまくるようになるには、まだまだ先が遠そうですw

2014-09-19 (Fri) 18:33 | EDIT | REPLY |   

ユズキ

Re: タイトルなし

ふぉるてさんこんばんわ~(^ω^)

ええ、こっそりアイドル二匹の仔犬・・・げほっ・・・狼さまたちのお茶目なシーンに何気に気づいてくれてありがとうございます(笑)
想像通り、二匹してびろーんと胴を伸ばしながらぶら下がっていますww

ルーさん案外色々ちゃんと見ています(笑)
フェンリルが食べなかったのは、単に食べ物に興味がナイだけだと思いますw 毒入りならすぐさまキュッリッキさんの手から弾いていたでしょう。

ダエヴァのみなさんが全て美形ってことはないですが、リュリュたんの趣味なのはマチガイナイです☆ ホストみたいな顔した人たちを想像してみてください。ホストクラブです(笑)
キュッリッキさんには、クマのトゥーリ族でかためたほうが目が輝いてしょうがないと思いますw(美形にほぼ興味がないので・(笑))

あまり引っ張りすぎずにエルアーラに到着させないとです(;・∀・)

2014-09-19 (Fri) 18:46 | EDIT | REPLY |   

八少女 夕

こんばんは

旅行中に仔犬モードが二匹に増えていて、ちょっと嬉しい。
イラスト版もお待ちしています(笑)

超過保護な御大たちですが、私だったら、ホストクラブのようなみなさまがカッコ良く働いて、しかもメルヴィンとルーファスにしっかりと守られているこの状況を眠ってみられないのは残念です。

それにしても、ますますリュリュ様には感服しちゃう。外見の好みだけでなく、実力も伴う人たちをこんなに揃えられるんですもの。敵軍団は、ちょっとお氣の毒ですね。

2014-09-20 (Sat) 04:24 | EDIT | REPLY |   

ユズキ

Re: こんばんは

八少女さんおはようございます(^ω^)

ご旅行満喫されたでしょうか。ヨーロッパは景色がイラストに描いてみたいところがもう山ほどあるので、死ぬまでに一回くらいは訪れることができれば・・・いいなあ・・・。

どこがいい? と聞かれると困るほどいっぱいですw

はい、キュッリッキさんの身辺に新しい護衛がやってきましたw
必ず登場させたかった、登場させることに深い意味が全くない子なんですけど(笑) そのぶん可愛らしさをたっぷりアピールできればと思ってますw

脳内イメージではもう2匹の窓にぶら下がる姿は萌まくってタイヘンなんですが、イラストにおこせるかなあ~w

>ますますリュリュ様には感服しちゃう

オカマだけどひじょ~に優秀です。
ダエヴァに所属している若い男の、顔の良いのは全て記憶しています能力から実力のほどまで(笑) 逆に、顔のよろしくない連中のことはまったく記憶にとどめていません(笑)
リュリュたんは好みがとてもうるさいのですw
もっとも、キュッリッキさんの好みまではまだ覚えていないので、あの汽車にはクマのトゥーリ族は一人も乗っていないのです☆

2014-09-20 (Sat) 06:08 | EDIT | REPLY |   

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