044 モナルダ大陸戦争 奇襲

ちょっと今回はいつもより半分くらいの長さです。このままオーバリーに着いちゃうと、ぶった切れなくなるので(あまりにも中途半端が酷すぎるから)。

キュッリッキさんは寝ているので、メルヴィンの気持ちにちょっとスポットを向けていこうかと思っています。

何ヶ月も前から描きたいちょっとしたコママンガで、と考えているものを、わたしはいつ取り掛かるんだろうと思いつつ・・・。

年を越す前には描きたいです|д゚)w

ていうか眠いです・・・。




ALCHERA-片翼の召喚士-
第四章 モナルダ大陸戦争 奇襲 044



 車窓から頭を出して地面を見ると、十分な高さをもって線路の上に汽車は浮いていた。しかも線路を走っていた時と同じように宙を滑走している。

 頭を引っ込め、両手を腰についたポーズでルーファスはげっそりとため息をついた。

「実に面白いものが見れるよ……」

「なんとなく、想像はつきます」

 ルーファスの表情から察して、メルヴィンは苦笑した。

 レールの上を走る車輪の振動を全く感じず、穏やかに汽車は全速していた。車窓に映る風景もまた流れるように変わっていく。

「サイ〈超能力〉使いは凄いですね。こんなことは造作もないんでしょう」

「んー、人それぞれだと思うけどね~。――少佐は念動力特化のタイプとみた」

 ルーファスはそばに控えるように立っている中尉をちらりと見る。

 まだ20代前半に見える若い赤毛の中尉は、ルーファスの視線を受けて微笑みながら小さく頷いた。

「サイ〈超能力〉使いもな、魔法使いと一緒で、一応は一通りの力を使うことはできる。それでも個性があって、得意な能力と不得意な能力があるから、オレ達みたいに傭兵とか軍人やる場合は、得意な能力を徹底的に磨いたほうが役に立つってわけ。少佐は念動力――物体を浮かせたりする能力を徹底的に強化したようだね。色々ある能力の中でも空間転移だけはベルトルド様限定のようだけど」

「普段ルーファスさんはなんでも使いこなすので、得意不得意があるとは思いませんでした」

 感心したようにメルヴィンは言う。それに対しルーファスは苦笑した。

「オレは透視が得意なんだけど。あくまで女限定でっ」

 真顔で言うルーファスに、メルヴィンの冷ややかな視線が投げかけられる。

「リッキーさんに、そんなふしだらな透視は絶対にしないでくださいよ」

 声まで冷ややかなメルヴィンに、ルーファスは慌てて手を振る。

「ンなことしないって! キューリちゃんは確かに美少女だけど、透視したくなるほどの豊満さに欠けるから…」

「…………」

 起きていたらフェンリルかフローズヴィトニルの尻尾を掴んで殴られそうなことを言ってのけ、ルーファスは真剣に頷いた。

 メルヴィンは小さくため息をつくと、腕の中でスヤスヤと眠るキュッリッキの顔を覗き込んだ。

 年齢のわりには匂い立つ色気に欠ける部分もあるが、出会った当初に比べると、この頃は女性らしい柔らかな空気を感じることはある。あいにく女性についてそれほど詳しくもないが、時折見せるキュッリッキの仕草に、ドキリとすることはあった。

 ナルバ山の遺跡で怪我をしたキュッリッキのそばに長く居るようになってから、彼女に対する見方が変わったのだろうか。出会った当初は気にも留めていなかったのである。

 過保護にしすぎるベルトルドとアルカネットの、キュッリッキに対する過剰な愛情の接し方を目にすると、心中は穏やかではなかった。

 この小さく華奢な身体を、我が物のように抱き寄せ触れているのを見るのが辛い。滑らかで柔らかな肌にキスをしているのも嫌だった。おなじベッドで寝起きしていることも不愉快に感じる。さも当然のように独占しているのも腹立たしかった。

 いつからそんな風に思うようになったのか、メルヴィンははっきりと自分の心を掴めないでいた。それに、まさかキュッリッキが自分に恋心を向けてきているなど、気づいてもいないし想像もしていなかった。顔を赤くして恥ずかしそうにしているのは、男性と共に行動することに、女性として抵抗感があるのだろう。年頃なのだからしょうがないと、そう思っている。そして、そんな態度に出てしまうキュッリッキを、いじらしく愛らしいと思っていた。

 そうした経緯(いきさつ)もあり、今ではキュッリッキを大事に守らなければという使命感が、強く心を支配している。

 身じろぎもせず眠るキュッリッキを、ほんのわずか胸に抱き寄せるようにして腕に力をこめた。



 破壊された線路の上を優雅に滑走すること数分、ようやく敵の攻撃が再開された。

 あまりにも凄い光景を目の当たりにして、逆臣軍は度肝を抜かれていたようだったが、さすがに立ち直り本来の目的を思い出し攻撃を再開したのだ。

「おーお、攻撃再開してきたよ。懲りない連中だねえ」

「全て防がれてるとはいえ、万が一のことがあったら、彼らはどうするんでしょう。目的はリッキーさんの誘拐ですよね?」

「タブンね。生きて連れてこい、なんだろうけど。誘拐の仕方がまるでなってないな」

 生死は問わずならこれでも問題はなさそうだが、死体になったキュッリッキを連れ戻ったところで、首をはねられるだけだろうに。

 現在の世界は平和、と呼べるほどあまり大きな争いはない。

 ヴィプネン族のお膝元である惑星ヒイシだけでなく、アイオン族の治めるペッコでも、トゥーリ族の治めるタピオでも、傭兵たちが諸手を挙げて張り切るほどの戦場は見当たらなかった。

 今回の大規模な戦争では、世界中でくすぶり続ける傭兵たちにとっては、千載一遇のチャンスであり稼ぎ時である。とくにハワドウレ皇国並みの戦力を保有していない逆臣軍サイドにとって、傭兵たちは貴重な戦力となっていた。

 資金援助を受けて多くを雇用しているが、それだけに正規の軍人たちと違って統率が取りづらく、命令内容も正確に伝達されていないことも多く発生していた。

 少佐が見抜いたように、奇襲をかけてきているこの兵士たちは、全て傭兵によって構成されているようだった。軍服をまとっていても軍人ではない。

 彼らも稼がなくてはならない、それは理解出来るし共感もできるとルーファスは思っていた。しかしだからといって、やられてやる必要は全くないのである。

「ハエは早めに落としてしまいましょう」

 天井からはっきりとした少佐の声が車内に伝わってきた。

「エーリス少尉、アンテロ少尉、ヘイッキ軍曹の3人で汽車にまとわりつくハエを全て落としてしまってください。彼らは臨時雇用の傭兵のようですから、遠慮はしなくて結構です」

 近くに控えていた赤毛の中尉が、不思議そうにするルーファスとメルヴィンに、「3人は魔法スキル〈才能〉持ちです」と教えてくれた。

 軍人ならば捕虜にして聞き出せることも色々ありそうだが、傭兵たちならそれは無駄な行為である。最低限の情報しか与えられていない、それが捨て駒にされる傭兵たちだ。

 汽車に向け放たれる火炎攻撃に、やがて稲妻が混じるようになってきた。

 ダエヴァの魔法使いたちによる攻撃が始まったのだ。

「オーバリーに着く前に、すぐ終わるでしょう」

 赤毛の中尉はさも当然といった口調で呟いた。

 哀れだが、そうだろうなとルーファスも思っていた。

 サイ〈超能力〉や魔法スキル〈才能〉を持つ者たちが見れば、外にいる逆臣軍の傭兵たちの実力は明らかだった。それを大きく上回るダエヴァの能力者達が負ける要素は何もない。

 ルーファスは椅子に座りなおすと、蛇のように蠢く稲妻のムチで叩き落とされる傭兵たちに、同情的な視線を向け肩をすくめた。



 大した時間もかからず、20人ほどの奇襲部隊は呆気なく始末されてしまい、汽車には穏やかな静けさが戻った。

「そろそろオーバリーのステーションに到着します」

 赤毛の中尉が業務連絡的に告げる。

「案外ラクに着いたな」

「そうですね。ダエヴァの皆さんに守られていましたし」

 ルーファスとメルヴィンが胸をなでおろしていると、

「ステーションに着く前に、お二人共戦闘準備をしていてください。オーバリーにかなりの数の逆臣軍が入り込んでいるそうです」

 車外の天井にいる少佐から声がかかる。

「乗り継ぎの汽車を出す前に、少々戦いが発生しそうです」

「……やっぱ、さっきの奇襲だけじゃなかったか」

「ルーファスさん、リッキーさんをお願いします」

「おっけぃ」

 メルヴィンはそっとキュッリッキをルーファスに預け、軍服の中にしまいこんでいたペンダントを取り出した。

 何かの鋭い牙のようなペンダントヘッドを首紐から外すと、それを軽く宙に放り投げる。

「形状変化」

 そっと一言呟くと、ペンダントヘッドは宙でぐにゃりと歪み、一瞬にして細い刀へと形と大きさを変えた。

 片刃で鍔から切っ先まで同じ幅をしている。刃は厚みもありうっすらと柔らかな光を帯びていた。柄にはあまり装飾はなく地味だった。

 宙に留まる直刀の剣の柄を握り、刃を下に向けた。

「爪竜剣ってそんな形にもなるんだ?」

「ええ。色々と形を変えられます。両手剣はちょっと大きすぎるので、このサイズのほうが振りやすいんです」

 剣術の師から受け継いだ魔剣に類する爪竜剣。ひとふりで岩山をも斬り裂くなどと伝説がついているのだが、メルヴィンは成功したためしがない。大袈裟な伝承付きではあるが、剣自体に凄まじい威力が込められているのは確かで、誰もが扱えるわけではなかった。ギャリーの持つ魔剣シラーと同系のものだ。

「皇国軍で五指に数えられていたほどの剣技、拝見できるのを楽しみにしています」

 心底感動したような面持ちの赤毛の中尉が言うと、メルヴィンは苦笑で応じた。

「サイ〈超能力〉使いや魔法使いたちの戦いのあとでは、地味でつまらないと思いますが」

「そんなことありません。スキル〈才能〉の種が違いますから、わたしは憧れますよ」

「ありがとうございます」

 照れくさそうに言うと、メルヴィンは他にも持ち歩いていたいくつかの武器を丹念に点検する。

「最後までラクな旅が出来るかと思ったけど、そうもいかないな」

 キュッリッキを腕に抱いたまま、ルーファスは身をかがめて車窓の外を見る。

 緩やかにカーブしながら滑走する汽車の先頭の向こうには、街の姿がはっきりと現れ見えていた。
 


第四章 モナルダ大陸戦争 奇襲 続く



043 モナルダ大陸戦争 奇襲

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Comments 4

ふぉるて

こんばんは~(*^^*)
私も最近何故か眠くて堪らないです… ><

相手方の傭兵の皆様がまるっきり歯が立たなくて少し不憫でしたが
これから本格的に戦闘が始まるのですね ><
続きが気になります~

コマ漫画を計画中なのですね~ ^ω^
こっそり楽しみです♪

ではでは~☆

2014-09-30 (Tue) 18:31 | EDIT | REPLY |   

八少女 夕

おお、メルヴィンの回

こんばんは。

メルヴィンは、自覚もないのですね。こりゃリッキーさん、前途多難。
でも、誠実でいい人ですよね。
御大二人は、好き勝手やっているけれど、(特に誰かさんは薬のませてとんでもないことを……)
真面目で優しいメルヴィンはそれは知らない方がいいかもしれませんね。

そして、次回は、なんとメルヴィンの勇姿が読めるのですね。
リッキーさん、これは寝ていないで、よく見た方がいいと思うけれど。
好きな人が自分のために戦ってくれるなんて、羨ましいです。

そして、ルーファスの得意技、しょーもない……。でも、私は安全だから(豊満じゃないので)、笑って許しちゃおう。

2014-10-01 (Wed) 03:23 | EDIT | REPLY |   

ユズキ

Re: タイトルなし

ふぉるてさんおはようございます(^ω^)

昨日は向こうの世界の必殺金策の直後に作業していたので、朝になってしまって眠かったのです・・w
あと800万ほどで完成が見えてきたですよ~! このくらいなら今週中にちょろいぜ!w

>これから本格的に戦闘が始まるのですね ><

戦闘シーンはあまり得意じゃないんですけどね~(笑)
最後まで守られて終わりましたw だとカッコがつかないので、ちょっと働いてもらいますw

コママンガは、内容的に「いまだ!」な内容なので、早く描きたいなとは思うんですが・・・
金策作業が・・・(笑) これどうにかしないともう何もできないわたしwww

2014-10-01 (Wed) 05:20 | EDIT | REPLY |   

ユズキ

Re: おお、メルヴィンの回

八少女さんおはようございます(^ω^)

>でも、誠実でいい人ですよね

はい、メルヴィンは本当にいい人なんです。いい人なんです。いい人なんですが超・絶・鈍・感が玉に瑕なかたです(笑)
おっさん二人はもう・・・w

>そして、次回は、なんとメルヴィンの勇姿が読めるのですね。

頑張ってカッコイイシーンを書きたいと思います。なにせヒロインが惚れた男ですもの!w

ルーさんは豊満な胸が大好きですから、キュッリッキさんのぺったんこな胸には興味がわかないので安全なのです。誠実ではないけど、ルーファスもいい人ですw

2014-10-01 (Wed) 05:26 | EDIT | REPLY |   

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