ALCHERA-片翼の召喚士-特別小咄:クリスマス準備

ALCHERA-片翼の召喚士-
特別小咄:クリスマス準備



「ちょっとやーだ、なんなのよもーこれ」

 足元を埋め尽くす勢いで床に散らかるカタログの数々を見て、リュリュは素っ頓狂な声を上げた。

 その中の一つを拾い上げ開いてみる。

「クリスマス限定ドレスぅ? アールクヴィストってこんなカタログ配ってんの」

 もう一つ拾って開いてみると、

「あら、バーリグレーンのクリスマス限定ダイアの指輪ですって、欲しいわあ」

 アールクヴィストもバーリグレーンも、惑星ヒイシでは超一流のファッションブランドである。世界中に支店を開き、本店はここハワドウレ皇国の皇都イララクスのハーメンリンナにある。王侯貴族や資産家たちの憧れのブランドでもあるのだ。

 それだけではなく、他にも色んな高級品のカタログが散乱している。

 陽の差す明るく暖かい場所に胡座をかいて、熱心にカタログを見ているベルトルドは、肩ごしに振り向いて「おう」と無愛想にリュリュに応えた。

「一人でお片づけも出来ないのに、こんなに散らかして。アタシ手伝わないからねっ」

「オカマがキャンキャン騒ぐな喧しい」

「ンまっ、失礼しちゃう!」

 両手を腰に当てて憤るが、あまりにも熱心にカタログに集中しているベルトルドに興味が沸いて、そっと後ろに立って覗き込んだ。

「宮廷のメス豚共にくれてやるクリスマスプレゼントでも選んでるわけ?」

「いや、リッキーへのプレゼントで悩んでる」

「小娘へ?」

「うん」

 今開いているのはブランドもののバッグなどが載っているページを開いていた。

「リッキーの好みが判らんからな、選ぶのが難しい」

「いつもは勝手に心覗き見してんでしょ。それで見えた欲しいものでもくれてやればいいじゃない」

「珍しく見えなかった」

「あらま」

「それほど物欲がないんだあの子は。それに今のリッキーは心が満たされている。――強いて言えば、欲しいものは一つだ」

 急に憮然とした声になったベルトルドに、リュリュは面白そうに口元を歪めた。

「物品じゃあないようね」

「声に出して言いたくない!」

 フンッと手にしていたカタログを閉じると、横に放り投げて、別の新しいカタログを手にして乱暴に開いた。



 その頃アルカネットもデスクにうず高く積まれたカタログを丹念に覗き込み、ため息とともにページを閉じて新しいカタログを開く作業に没頭していた。

「あ、あの、アルカネット長官……」

「なんですか」

「これらの書類にサインをいただきたいのですけれど……」

 副官のヘイディ少佐は、大事に抱きしめる書類を恐る恐るアルカネットに差し出す。しかし、

「そんなものは、あなたが適当にサインしておいてください」

「そういうわけにはいきませんっ」

 薄く化粧をはいた顔を悲壮感に包み込み、ヘイディ少佐は頭を下げた。

「他にも今日の業務が滞っています。お願いですから……」

「プレゼント選びで私は忙しいのです。察してあなた方が代行して片付けちゃって下さい。お礼はあとでまとめてします」

 そういう問題じゃないんですけどーっ! とヘイディ少佐は心の中で悲鳴を上げた。

「クリスマス当日に間に合わせるためには、今日中に申し込みをしておかないといけないとか巫山戯た話です」

 ページを忙しくめくりながら、アルカネットは「あっ」と顔を上げて副官を見る。

「年若い女性は、どんなものが欲しいのでしょう?」



 クリスマスを2週間後に控えたライオン傭兵団のアジトには、玄関ロビーと食堂に、そこそこ立派なもみの木に派手に飾りつけをしたクリスマスツリーが置かれていた。

 毎年アジトの管理をしているキリ夫妻が飾りつけをしているのだが、今年はキュッリッキが飾り付けをやりたがって大いに張り切り、彼女を手伝うためにメルヴィンとザカリーも手を貸した。キリ夫妻は喜んで若者たちに任せたので、いつもとは違う感じの飾りつけになり、仲間たちはしげしげとツリーを眺めた。

「なんかこう……ハデだな」

 テーブルに片肘をついてギャリーがしみじみと感想を漏らした。

 キリ夫妻の飾りつけは、金銀のリボンや玉をぶら下げ、リンゴを模した飾りをちょうどいい配色で吊るすので、それにみんな見慣れていたので今年のツリーは異様に目を引いた。

「ゴテゴテの電飾がなくってもハデでいいわよねえ~」

「ツリーって個性が出るのね」

 マリオンとルーファスが、やはりしみじみとこぼした。

 金銀のリボンはもちろんのこと、リンゴに星に動物に菓子にカラフルな玉を吊るし、雪に見立てた綿もモコモコ飾っている。他にも横シマの靴下やら帽子などもぶら下がっているから何でもありである。

「アタシ、クリスマスツリーの飾り付けしたの初めてだから、楽しかった」

 ココアのカップを両手で挟み込み、にっこりと満足そうにキュッリッキは微笑んだ。

 キュッリッキはクリスマスをクリスマスらしく過ごしたことがない。毎年クリスマスは仕事をしていたからだ。

 クリスマスのある週は基本休日扱いになる。その為フリーの傭兵たちもクリスマスは休みたがる者が多く、とくに予定がない傭兵はそのぶん仕事を回してもらっていた。

 こうしてもみの木を飾り付けたり、クリスマスの特別な過ごし方など、キュッリッキにとっては初めての経験になるのだ。

「ねえねえ、クリスマスってなにをするの?」

 昼食後食堂でくつろいでいる仲間たちにキュッリッキは問いかけた。

「24日はアジトでキリ夫妻も一緒にみんなで飲めや歌えのパーティー、25日から27日までの3日間、このエルダー街で街中みんなでドンチャン騒ぎのパーティーになる」

「うわあ~」

 キュッリッキの目がキラキラと輝いた。

「《豪快屋》のおやっさんの得意料理がタダでいっぱい食べられるんだぜ」

 それを楽しみにしている傭兵たちがいっぱいいるから取り合いになるぞ、とギャリーが笑う。

「でも今年は取り合い参戦は27日のみになりそうですよ」

 カーティスが苦笑気味に話に入ってくる。

「25日はベルトルド卿のお屋敷のパーティーに全員招かれていますから、まあ26日は撃沈しているでしょうしねえ」

 え~~~~~~っと、イヤイヤそうな声が食堂にどよめいた。そんな中、キュッリッキだけは更に目をキラキラさせながら嬉しそうな表情を満面に浮かべていた。



 毎年クリスマス週間はとくにパーティーが開かれることもなく、使用人たちは3日ほど休暇をいただいてのんびりできるのだが、珍しく今年はパーティーを開くというので準備で大わらわになっていた。

 いまだ独身を貫く(?)主二人は、招くより招かれるほうが専門だったからだ。

 招待されている客たちが貴族や資産家などの上流階級の客ではなく、ライオン傭兵団のメンバーたちだと判っていても、使用人たちにとっては手の抜けないことにかわりはない。しかもキュッリッキがいるのだから、尚の事手を抜けるわけがないのだ。

 玄関ロビー、食堂、サロン、応接間の4箇所にクリスマスツリーは飾られるが、今年はさらにキュッリッキの部屋、パーティールーム、そしてもう一箇所にも追加で飾られることになった。

「ツリーの準備、食材の手配、滞りないですかな」

 セヴェリはリストを確かめながらリトヴァにたずねた。

「そこは問題ないのですが、お酒のほうをもう何ケースか追加しておかないと、たぶん足りなくなると思いますわ。ラッカとシマがこれだとすぐに尽きるかと」

 ラッカはホロムイイチゴのお酒、シマは蜂蜜酒である。

「皆様たくさんお飲みになりますからの……」

「いっそ樽で全酒用意したほうがいいのかもしれませんわね」

 セヴェリとリトヴァは顔を見合わせため息をついた。



 クリスマスのパーティーづくしを思い浮かべ、キュッリッキはひとりニコニコとテーブルに頬杖をついている。正面の席に座っているメルヴィンは、その様子を苦笑気味に見ていたが、あることを思い出して身を乗り出した。

「リッキーさん、プレゼントのことは聞いていますか?」

「うん? プレゼントって?」

 顔を上げて不思議そうに首をかしげる。

「毎年クリスマスには、このアジトを管理して我々を世話してくれるキリ夫妻に、各自プレゼントを用意してお渡しするんです」

「えっ、そうなんだ」

「日頃の感謝の気持ちを込めて。予算とか大丈夫ですか? そこまで高価なものを用意しなくてもいいんですが」

「お金は平気。でもアタシ、プレゼントなんて選んだことない」

 プレゼントをもらった経験は、19歳の誕生日を祝ってくれたベルトルドや傭兵団のみんなからもらったのが初めてのことで、贈った経験など当然ない。

 本気で困り果てた様子のキュッリッキに、メルヴィンは優しく微笑んだ。

「これから一緒に買いに行きませんか? オレもまだ用意してないから」

「行く!」

 パッと顔を明るくしたキュッリッキは嬉しそうに頷くと、財布とコートを取りに2階へ駆け出していった。

「そういうことで、ちょっと出かけてきますね。夕飯までには戻ります」

「おう、ゆっくりいってらー」

 食堂にだべる仲間たちに声をかけると、ルーファスがにこやかに手を振って送り出す。

 食堂を出て行くメルヴィンを目で追いながら「オレも行くかな」とザカリーが腰を浮かせたところで、後ろに座っていたガエルに頭を掴まれ椅子に押し戻された。

「あにすんだよっ」

「無粋なことをするな。二人っきりにしてやれ」

「オレだってキューリと二人っきりになりてーんだよ!」

「まあまあ、酒でも飲もうぜ」

 ザカリーの前にビール瓶を置くと、ギャリーはにんまり笑って手にしていたビール瓶を窓の向こうへかざした。

 食堂の窓の向こうには、コートを羽織ったキュッリッキとメルヴィンの二人が、並んで歩いていく姿が通り過ぎていった。

「だああああああっ!! くそがっ」

 ザカリーはワシャワシャと頭をかきむしって喚くと、目の前のビール瓶を乱暴に手に取って口に入れた。



 エルダー街に隣接するブローリン街は、ごく一般家庭向けのお店が並ぶ繁華街だった。この街の一角にある広場では、毎年クリスマスシーズンが来ると特別なマーケットが開かれる。

 このマーケットのための仮設店舗だが、色とりどりのペンキの塗りたくられたユニークで可愛い小屋が立ち並び、中には綺麗な布を張ったテントや、クリスマス装飾で飾り立てて賑やかな小屋もいっぱいある。長方形に区切られた広場には、雰囲気を盛り上げるためのクリスマス装飾もふんだんに飾られ、街路樹には僅かではあるが電飾も巻きつけられていた。夜には点灯され、人々の目を楽しませるだろう。

 みっちり並ぶ棚には、クリスマス用の飾りやおもちゃ、プレゼント向けの品々、お菓子や珍しい食材などが並び、美味しそうな匂いを漂わせる露天もいっぱい軒を並べていた。

「こんな場所があったんだね」

「ええ。結構楽しいですよ」

 メルヴィンに手を引かれながら、キュッリッキは一店舗一店舗ゆっくりと見て回った。

 手作りのぬいぐるみ、木彫りの置物、ガラス細工、クリスマスツリーのミニチュア、クリスマスカード、見ているだけでも心躍るものがいっぱいだった。

 昼間は静かなエルダー街と違い、たくさんの人々が買い物に訪れている。家族連れ、恋人同士、友達同士、一人、ごった返すマーケットには、明るい声が飛び交い賑やかだ。

 家族連れを見ると今でも心が寂しくなるが、でも今日はそれを上回るほど温かい気持ちになっている。

 はぐれないようにと言いながら、しっかりとメルヴィンが手を握ってくれているのだ。

 メルヴィンの手は大きく力強くて温かい。手袋なんていらないほどにキュッリッキの小さな手を包み込んでくれている。

 こうして一緒に手をつないで歩く姿は、周りにはどんな風に見えるんだろう? そんなことがふと気になってしまう。

 仲のいい兄妹? それとも、恋人同士? もし恋人同士に見えていたらいいな、などと思いながら、キュッリッキはここへ来た目的も頭から蒸発して忘れそうなほど、顔を真っ赤にして俯いた。

 最近慣れてきた筈なのに、と思いつつも、胸のドキドキは止まらない。

「何がいいですかね~、迷うなあ」

 キュッリッキの切ない乙女心にも気づかず、メルヴィンは色々眺めてはどれにしようかと決めあぐねているようだった。その呟く声に頭を上げると、ふと目に飛び込んできたものがある。

 手作りのアクセサリー店のようだったが、薄いガラスケースに特別に納められているそれは、綺麗な銀細工のペンダントだった。

 なにかの葉を模した銀細工に、ただ一つだけ小さな粒のような宝石がついている。

 青と白が柔らかく重なった、とろりとした半透明の石。

 吸いこまれるようにそのペンダントを見つめていると、店主の男が声をかけてきた。

「ねーちゃんそれ、気に入ったのかい?」

「綺麗な宝石がついてるのね。ちょっと変わってる」

「ああ。『エイルの涙』っていう珍しい石さ。これを首に下げてると怪我も治るご利益があるんだそうだぜ」

 ヴァルキュリアのひとりエイルの名を冠した宝石。それと関連付ければご利益もあながちと思えなくもないが、キュッリッキは無性にこのペンダントが気に入ってしまった。こういうのを一目惚れとでも言うのだろうか。

「買うかい?」

 無理にすすめるわけでもなく、ただ聞いてみたといった口調の店主に促され、キュッリッキはコートのポケットから取り出した財布を開いてみたが。

(うっ……予算オーバー)

 ペンダントを買ってしまうと、プレゼントが買えなくなってしまう恐れがある。たとえ両方買えたとしても、明らかにプレゼントの質を落とす事になるだろう。

「今日はちょっとお金……足らないから、出直してくる」

 心底ガッカリした様子のキュッリッキを見て、店主は気さくに笑った。

「クリスマス終わるまではここで店開いてっから、また来てくれ」

 後ろ髪を引かれる思いで、待っているメルヴィンのもとへ戻る。

「ごめんね、プレゼント選びに戻ろ」

「ええ」

 落ち込んでいるキュッリッキの手を取り、メルヴィンはちらりとアクセサリー店に目を向ける。

 ケースに納まったままのペンダントを見て、どうやら買えなかったのだと察し他の店へ促した。



 二人は全ての店を覗いて少し相談したあと品物を選ぶと、綺麗な包装紙とリボンで包んでもらって、キリ夫妻へのクリスマスプレゼントは準備完了になった。

 たくさん歩いて疲れた二人は、カレリアンピーラッカを売る露天の前にあるテーブル席に向かい合って座った。

 メルヴィンはすぐ露天でカレリアンピーラッカと温かいミルクティを買って持ってくると、キュッリッキの前に置いてやった。夕方に差し掛かった空気の冷たさの中で、湯気がほくほく立ち上る様は見た目にも温かかった。

「ありがとう」

「疲れたでしょう。人ごみの中は歩くだけで倍疲れますから」

「ホントだね~。でもプレゼント買えてよかったあ」

 キュッリッキが選んだのは、羊毛で編まれた色とりどりの靴下のセットとブランケットだった。

 冬場はとくに台所など足元が寒い。時々手伝ったりすると、キリ夫人が足元が寒い寒いと言っていたことを覚えていたからだ。言葉には出さないが、キリ氏も同様に寒いだろう。あまり派手な色は気に入らないかもと、地味になりすぎない暖かい色合いのものが見つかってそれに決めたのだった。

 メルヴィンはセーターを3着ずつ、色違いのお揃いのものを選んでそれぞれ包んでもらった。

 二人は30分ほど会話を楽しみ休憩をしたあと、談話室でみんながつまめる据え置きの菓子鉢用に、ジンジャーやチョコレートのクッキー、ロールケーキなどを買い込んで帰路に着いた。

「おじさんとおばさん、気に入ってくれるといいね」

「気に入ってくれますよ、きっと」

「うん。クリスマス楽しみっ」

 エルダー街に戻る途中、人通りが少なくなった街灯の下で、メルヴィンが急に足を止めた。

「どうしたの?」

 キュッリッキが首をかしげていると、メルヴィンはコートのポケットから小さな包を取り出した。

 細長い白い包装紙に、金のリボンがかかっている。

「ちょっと早いですけど、オレからのクリスマスプレゼントです」

 照れくさそうに微笑みながら、その包をキュッリッキに差し出した。

 キュッリッキは何度かプレゼントとメルヴィンの顔を交互に見て、プレゼントやお菓子を入れた紙袋を地面に置いた。

 そっと両手で受け取った包はとても軽かった。

「あの、開けてもいい?」

「はい」

 キュッリッキは恐る恐るといった様子でリボンをほどいて包装紙を広げる。そして箱の蓋を開けて大きく目を見張った。

 箱の中にあったものは、さきほど予算オーバーで断念した銀のペンダントだった。

「メルヴィンこれ」

「ずっと見ていたでしょう。すごく気に入っていたようだったから」

 穏やかに微笑むメルヴィンに、キュッリッキは興奮した顔に喜びを浮かべて微笑み返した。

「ありがとうメルヴィン、すごく嬉しい!」

 それ以上は言葉にならないほど感無量になって、キュッリッキはペンダントを愛おしく見つめた。その様子にメルヴィンは嬉しそうに微笑んだ。

「つけてあげますね」

 メルヴィンは荷物を置くと、キュッリッキの手からペンダントを受け取り、その細い首にかけてやった。

「似合ってます」

 街灯の淡い光をうけて輝きを放つ銀に、とろりとした青と白の宝石が柔らかく光っていた。

 メルヴィンと二人っきりで初めてのクリスマスマーケットに出かけて、初めて誰かの為のプレゼントを選び、軽食をつまみながらおしゃべりをして、そしてサプライズのプレゼント。

 ほんの数時間のことだけど、大声でこの喜びを叫びたいほどキュッリッキは嬉しくて嬉しくてしょうがない。

 なによりメルヴィンが、こうして欲しかったものをプレゼントしてくれたこと、気づいてくれたことが最大の喜びだった。

 これ以上にないほどの幸せに包まれた表情(かお)で、キュッリッキは恥ずかしそうにメルヴィンへ微笑んだ。



 ベルトルドとアルカネットはどこか疲労困憊の表情で、屋敷へ戻る地下通路を並んで歩いていた。仕事を終えて帰宅中である。

「プレゼントは無事選び終えましたか?」

「ああ、オカマの意見が役に立った。一つだけだと決まらないから、取り敢えず候補全部を注文しておいた」

「私のほうも同じようなものです。こういうとき副官が女性だと助かりますね」

「あと使用人たちのプレゼントも、適当に選んでおいたぞ」

「当人たちを目の前に、適当、なんて言わないでくださいよ」

 じろっと横目で睨まれて、ベルトルドは首をすくめた。

「その程度の常識はちゃんとあるぞ」

「そうだといいのですけど」

 含みたっぷりに言われて、ベルトルドは渋面を作ってぶっすりと口を尖らせた。

「パーティーの準備は使用人任せですが、リッキーさんの喜ぶ顔が楽しみですね」

 クリスマスは仕事しかしたことなかったという可哀想なキュッリッキのために、ベルトルドとアルカネットはパーティーと特大の豪華なクリスマスツリーを準備していた。

 屋敷の中に飾られているものも十二分に豪華だったが、電気を自由に使用できるハーメンリンナならではの、電飾を使った飾りつけをした特大のもみの木を、広い中庭に立てて、周囲の植木などにも電飾を巻きつけ光の空間を作り上げていた。庭師のカープロも「お嬢様のため」と息巻いて頑張っている。

 そしてクリスマスパーティーのために特注でドレスも作らせているのだ。それを着たキュッリッキを想像すると、平常心を保てるか二人は心配になる。

 ご馳走のメニューもキュッリッキの好きなものを中心に用意させている。ケーキやお菓子も沢山用意するように申し付けていた。

 それらを目にしたキュッリッキの喜ぶ顔を想像して、二人はにんまりと笑顔を浮かべた。

「ああ、クリスマスが待ち遠しい」

 二人は思い思いの”キュッリッキとの”クリスマスプランを頭に浮かべながら、軽くなった足取りで屋敷に繋がる地上への階段を上った。


特別小咄:クリスマス準備 終わり



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クリスマスというもの自体が現実世界の世界的行事なので、この物語に『クリスマス』って入れるのどうよ?w と以前も思ったんですが、結局似通った設定をブチ込むなら、下手に解説が必要になる造語を練りこむよりも、なんのこっちゃって一発で判る単語を使ったほうがスムーズでいいや、と、クリスマスにしました。

ノリ的には、宗教色の一切ナイ日本のクリスマス風景です(笑) 信仰一切ないけど、ご馳走を食べ、ケーキを囲み、プレゼントをねだり、恋人がいないからと悲観する、典型的ジャパニーズクリスマスですね。世界的に超絶アホと見られてるとしか思えませんが(笑) その上っ面部分だけをすくい取った行事を【ALCHERA-片翼の召喚士-】でも入れてあります。なのでこういう話になってます(・ω・)


ネタ的に普通はクリスマスイブとかクリスマス当日のお話を書くヒトが多いと思いますが、思いついたのは「もうじきクリスマスだね」だったので、クリスマス前の準備するみんなの様子が浮かんでこうなりました。

当日の様子は・・・飲め・食え・騒げ・踊れ・歌え・吐け(笑) しか思い浮かばない連中です。

物語の時系列的には、ちょっと季節がアリエナイんですよ(笑)本編には。なので、こんな時間もあるんだな~という感じで、本編とは切り離して読んでいただけると。キュッリッキさんとメルヴィンの恋はまだ成就できていません。いい雰囲気にはなっているけど。

これだけ積極性を発揮してくれたら、キュッリッキさんも随分と助かると思うんですがねー(笑)

そして冒頭部分で御大がキュッリッキさんの心の中に見えた、強いて言えば、というのは、察しがいい人はすぐに気づいたと思います(^ω^)


本編の中には書ききれない、ちょっとしたアジトの生活風景とか細かいことを盛り込んであるので、想像のお役に立てると幸いです。


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Comments 6

山西 サキ

こんばんは。

多分、ユズキさんの作品をきちんと読むのは初めてだと思うんです。サキが偉そうに言うことではないとは思うのですが、しっかりと構成された読みやすい文章で、読んでいてとても心地良いです。
そしてキャラへの愛情やこだわりも感じられるとても暖かい文章で、クリスマスへ向かうキャラクターの皆の気持ちの高揚が伝わってきます。
仮想世界の物語を作り出すのは自分の思うように作り込めるという楽しみもありますが、矛盾を生じさせないようにとても苦労します。
まだまだこの作品を読んだだけでは、「片翼の召還士」の広大な世界観のほんのさわりぐらいしか感じられていないのだろうと思いますが、充分に幸せな気分になりました。
キュッリッキの幸せそうな様子がとてもよかったですし、メルヴィンとのくだりはちょっとドキドキしながら読ませていただきました。
キュッリッキは皆に愛されているんですね。

2014-12-10 (Wed) 22:35 | EDIT | REPLY |   

ユズキ

Re: こんばんは。

サキさんこんばんわ(^ω^)

読んでくださってありがとうございますw

キャラたちの本編の関係的に、この番外編では3章冒頭あたりの感じでしょうか。本編の時系列スルーな番外編用オリジナル展開になってしまっているんですが(/ω\*)

きっとみなさん「ケシカラン」と思うような、本当にダダダーッと勢いだけで書いているので、構成とか全く考えずに書いてます。勿体無い評価をいただいて、恐縮しちゃっています(;´∀`) 繊細な表現とかぬかりまくっていますし・・・ありがとうございます><

イラストを描く時と同じで、頭の中でキャラたちが動き出すからそれを文字にして打ち出すだけなので、流れもキャラたち任せ状態で・・・。こんなもの投稿したら数行読んで捨てられてそうです(;´д`)

>矛盾を生じさせないようにとても苦労します。

いくら自由がきく仮想世界だから、とはいっても、無理が過ぎると読んでくださる方が混乱しちゃいますし(わたしのは混乱ひどそうだけど・・・)、ウソっぽいことも物語の中ではアリにしちゃう描写とか色々難しいですよねほんとに。
なので造語+解説だらけの描写が多くなりすぎるとかえって、想像する楽しみ半減とか情報量が増えすぎて、肝心の物語部分を楽しんでもらえないかも・・・という思いもあって、ピンポイントにそのまんま現実世界で使っている単語を当てはめたりして、ある程度この程度の文明レベル、とか、そういうノリなのね、が判ってもらえたらおkかしらと、わたしの場合はかなりいい加減です(;・∀・)

キュッリッキさんは本編のほうでも、手をつないでドキドキが止まらない、といった青い恋をほのぼのやってる感じです。ぶっちゃけますと、メルヴィンは本編ではここまで鋭くないです(笑) 「気づけいい加減(#゚Д゚)」という超マイペースさんなのです(笑)

次も短編になるので(気持ち長めの)、お時間あるときにまた読んでいただけると嬉しいです(^ω^)

2014-12-11 (Thu) 02:48 | EDIT | REPLY |   

ふぉるて

こんにちは~(*^ ^*)

うわぁ…なんだか幸せな気分になりました。(*^ ^*)

相手の事を考えながらプレゼントを考えている間って、大変だけど楽しいですね。
カタログと必死で睨めっこしている御大とアルカネットさんが微笑ましいです >ω<

そしてさりげなくキュッリッキちゃんが欲しかったものをプレゼントしたメルヴィン……思わず やるじゃん! と思いながら読んでしまいました >ω< 

「強いて言えば」……これはなかなか厳しいですね~… >< ”

ではでは~…☆

2014-12-11 (Thu) 11:26 | EDIT | REPLY |   

ユズキ

Re: タイトルなし

ふぉるてさんこんばんわ(^ω^)

仕事しないでカタログでプレゼント選びとか、堂々とやるなオッサン(;゚Д゚)
です(笑)
めさめさ仕事溜まっているはずです☆

本編の方でもこれだけ鋭くキュッリッキさんの心に気づいてくれるといいんですけどねメルヴィン><

こういうほのぼのちっくな雰囲気は結構好きですw

2014-12-11 (Thu) 20:02 | EDIT | REPLY |   

八少女 夕

こんばんは

番外編だけれど、リッキー良かったね〜。
御大の透視した「一番欲しいもの」ほぼ貰えたみたいだし。
本編でも、あそこまで行っているんですから、もう中年二人なんか無視して頑張っちゃえ!
と、応援しています。でも、大変そう……。

素敵なペンダントですよね。
ブルーとグレーの混じりあった落ち着いた綺麗な石。
新しい戦闘服にも似合いそうですよ。
これがあったら、どんな闘いでも怖いもの無しですよね。

御大とアルカネットさんの仕事をほっぽり出して選んだプレゼントの山。
きっとみんな高価で素敵なんだろうけれど、リッキーにとって何が一番嬉しかったのナンバーワンの座は絶対に確保できなさそうなので、ちょっと氣の毒です。(本編でせっかくのいい所を邪魔したりするから……)

登場人物のみんなに、メリー・クリスマス!

2014-12-12 (Fri) 01:21 | EDIT | REPLY |   

ユズキ

Re: こんばんは

八少女さんこんばんわ(^ω^)

実はキュッリッキさん、まーったく気づいていませんが、初でぇとなんですよね(笑) メルヴィンは親切心全開で買い物に誘っただけ、て意識ですが、ちょっとしたデートシーンになっているんですあれでもw

一番欲しいものがこの先ちゃんともらえるかどうか。けど、この番外編で片鱗だけはもらえていますw

中年二人の敷く障害物は、ヌルリスルリとかわして乗り越えないと、中々ハードルが高いですから|д゚) 立ちはだかる試練はエベレストのごとしです☆

キュッリッキさんが青色が好きで焦がれるのは、自ら飛んで行くことができない空の色だからです。だからそういう意味でもメルヴィンが青い宝石のついたペンダントに気づいて買ってくれたことっていうのは、彼女にとってはとても意味深いものも隠れてますw
いつか生い立ちもなにもかも話せて、それを受け入れてもらえたとき、本当の意味でもっと幸せに笑ってくれると思います(^ω^)

仕事もほっぽり出して疲労困憊するほど熱心に選んだプレゼントに、天使の微笑みがおりてくるといいですねww(*´∀`*)

2014-12-12 (Fri) 03:17 | EDIT | REPLY |   

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