ALCHERA-片翼の召喚士- 特別小咄:コッコラ王国の悲劇《6》 完結

案の定長くなってしまいましたが、番外編としてのコッコラ王国の悲劇、これにて完結しますヽ(・∀・)ノ

もうちょっと細かく書きたい部分は沢山あったんですが、それやってるとたぶん10話くらいは長引きそうなので、余分なものはカットカットで。

これまでコッコラ王国の悲劇のエピソード内で書いてきた数々の設定が、この完結編で「そうなのかww」と明らかにw 続けて読んでくださっていた皆様には「ハイハイw」て思っていただけるとw

ある意味とっても悲劇だけど、実は「真犯人はお前か!www」て感じで気づいてもらえると幸いですw


番外編がずっと続きましたが、次からは本編に話を戻して、第5章スタートです。ブログのTOP絵の中身が明らかになりま~す。

明日のバレンタインには、イラストを1枚アップしたいんだけど、たぶん間に合わないかもぉ・・・しれない・・・けど、やれるだけ頑張ってみます。15日への日付変更までには描きたい、です><! ので、15日あたりにでも見に来てやってください。なかったらゴメンナサイ|д゚)w





ALCHERA-片翼の召喚士-
特別小咄:コッコラ王国の悲劇《6》-最終話



 サイ〈超能力〉使いたちのもたらす急報に、王宮内は騒然となった。

「王太子殿下が亡くなられただと!?」

 コッコラ王国宰相ベルケルは、伝令の兵士をまじまじと見つめた。

 伝令兵はうなだれながら、時折涙声になりながら王太子の最期を正確に伝える。そして伝え終えると、その場に突っ伏して号泣しだしてしまった。

「ベルトルドという男………なんと悪魔の如き所業かっ!!」

 宰相ベルケルはシワの深い顔を怒りに歪ませ、手にしていた杖を床に叩きつけた。

 しかし宰相とは対照的に、ゆったりと玉座に身をゆだねているメティン国王は、どこか遠い目で天井を見上げていた。

「余を想い、国を想い、妹を想いやれる、良き息子であった」

 過去形で語ることがこんなにも辛いと思ったのは初めてだ。そう、メティン国王は呟き、一筋の涙を流した。

 そして別の伝令兵はジーネット王女の住まう後宮へ、王太子の訃報を報せていた。

 侍女から報告を受けた乳母は、一瞬目の前が暗転したが、王女のことを想ってどうにか踏ん張った。

 侍女の一人から受け取った水を一気に飲み干すと、乳母は心を平静に保つよう必死に心がけながら、王女の部屋を訪った。

「姫様……」

 気分がすぐれないと寝台に横たわっていた王女は、どこか硬い響きを含む乳母の呼び声に顔を上げる。

「どうしたのです?」

 王女の返事に、乳母は目を強く閉じながら、必死に嗚咽を堪える。

「先ほど戦場から報せが届きましてございます」

 柔らかな紗のカーテンの向こうで、王女が身を起こした。

「…………王太子殿下が……、お亡くなりにっ」

 一瞬きょとんとした王女は、しかしみるみる顔を強ばらせると、寝台に突っ伏して激しく声をあげて泣き喚き始めた。

「ジーネット様!!」

 大切にお育て申し上げてきた王女を、このように泣かせることになるとは夢にも思わず。まして王女にとって大切な兄の死を、何故このわたくしに告げさせるのか――!!

 乳母は悔しさと怒りの矛先を、今はもうこの世にいない王太子に向けた。



 アイバク・イゼット・メティン王太子の訃報は、瞬く間に首都エルマスを中心に国内に広がっていった。

 王太子は国民から絶大な支持を受ける人物だった。それだけに訃報を聴いた国民は悲嘆に暮れて泣き出し、後追い自殺するものまで続出した。

 王太子の訃報に嘆く国民は、その死を悼み悲しんでなどいられない。すでにそこまでハワドウレ皇国軍が迫ってきているからだ。



 ブルーベル将軍は正規部隊の中でもとりわけ規律を重んじる部下たちを選りすぐり即席の大隊を作ると、自ら率いてベルトルドの後を追った。一部の正規部隊には戦場の後始末を命じ、残りは皇都に帰還させた。

 あらかじめベルトルドからは「全て任せろ」と言われていたが、軍部の長であるブルーベル将軍は丸なげするわけにもいかず、大慌てでベルトルドを追いかけていた。いらぬ心配だが、一国の副宰相を共の者一人だけで敵国へ向かわせるわけにはいかないからだ。

 アルカネットのみを伴って、ベルトルドは逃げ惑う傭兵たちを徹底的に追い回しては、片っ端から殺処分していた。それでもさすがに3万人全てをとっ捕まえることは無理なため、諦め感を漂わせ途中で飽きて立ち止まった。

「逃げ足だけは一流だな。追い掛け回す身にもなれと」

「雑魚傭兵なんかを追い回したところでしょうがないでしょう」

「だって、いかにも『俺は一生懸命仕事してきました!』て、ボケジジイに言える程度はしとかんと」

 ベルトルドはむっすりと口をへの字に曲げてぼやく。

「だったら、即首都エルマスに行って、今回の首謀者であるメティン国王の首をはねてくればすむことでしょう」

「メンドくさいじゃないか」

「如何にも仕事してきました、と胸を張って言えるじゃないですか。労力はずっといりませんよ」

「うっ……」

 溜息混じりにアルカネットに言われ、ベルトルドは駄々っ子のように唇を尖らせた。



 泣くだけ泣いて、やがてジーネット王女は寝台の上に座り込むと、焦点の定まらない目を花咲き乱れる中庭へ向けた。

 赤やピンク色の綺麗なバラが咲き誇っている。

 ――いつか、自分で育てたこのバラの花を、ベルトルド様に差し上げたい。そう内に秘めた思いをバラの花に注いで、大切に育ててきたのだ。

 しかしもう、このバラの花をベルトルドに贈ることは出来ないだろう。

 今回の戦争を起こしたのは、ほかならぬ自分なのだから。

 自分が漏らした言葉のせいで、父王と兄君が憤慨してのことなのだ。

 祖国を、民を、家族を、世界中の傭兵たちを、ハワドウレ皇国の民をも巻き込んだ、この戦争責任は全て自分にある。

 ジーネット王女は数週間前の出来事に思いを馳せていた。



 コッコラ王国は独立国とはいえ、ハワドウレ皇国の属国である身分に変わりはない。けれど、一国の王女としてハワドウレ皇国の社交界へは大切に招かれていたジーネット王女は、かねてから密かに想いを寄せる殿方がいた。

 若くしてハワドウレ皇国の副宰相の地位に就いているベルトルド。

 実年齢よりも外見はずっと若く、どこかやんちゃな雰囲気を持ちながらも、切れ長の目と塑像のように整った美しい顔立ちがとにかく目を引いた。

 彼にしか着用を許されていないという白い軍服をまとった肢体はすらりとしなやかで、颯爽と歩く姿はまるで体重を感じさせない。

 パーティー会場やサロンで彼の姿を見るたびに、ジーネット王女は胸の高鳴りを抑えることが出来なかった。

 ベルトルドの周りには常に美しい貴婦人たちが取り囲み、それを遠目に嫉妬に狂うほどの熱い視線を送る貴婦人たちが大勢いた。誰もがベルトルドの話し相手になりたい、そして愛人になりたいと望んでいるのだ。

 ベルトルドはいまだ独身で、ハーメンリンナに広大な屋敷をかまえて、従順な執事のアルカネットとともに住んでいるという。そして、屋敷に出入りするような貴婦人はいないと聞いていた。

 まだ恋人も持っていない。

 定まった女性をそばに置いていない。それは、ジーネット王女に希望をわかせた。同じような想いに身を焦がしている貴婦人たちも多いだろう。

 内気なジーネット王女もベルトルドのことに関しては、いつもよりもずっと勇気を出すことができた。

 その日社交界でも権威のある名家のひとつ、ヒーデンサロ伯爵の屋敷で夜会が催され、ジーネット王女も招かれていた。当然社交界の華でもあるベルトルドも招待を受けていた。

 これまでは他の貴婦人たちと同じように装っていたが、それではベルトルドの興味を引くことはできないと思い、コッコラ王国の民族衣装で美しく装い夜会に出席した。

 目立つことはとにかく避けたい。そう思っていたからいつも地味に近いドレスをまとっていた。そのおかげかどうか、あまり紳士たちの好奇に触れることなくこれまできていたが、民族衣装をまとったジーネット王女は人目を引きまくった。

 赤いシルクのベールには、金の刺繍と薄く加工された金の飾りがあしらわれ、その身をおおう赤いシルクのドレスもまた同じように金刺繍と金細工に覆われ煌びやかだ。歩くたびにシャラシャラと涼やかな音が立ち、豊かな黒髪と象牙色の肌を持つ王女はエキゾチックな美に満ちていた。

 たちまち多くの紳士たちに取り囲まれてしまい、王女は激しく困惑しながらも、必死にベルトルドの姿を求めた。

 そして見つけたそこには、いつものようにたくさんの貴婦人に取り囲まれているベルトルドがいた。

 ベルトルドを見つけることができて安堵した王女は、どう紳士たちの包囲網を脱出しようかと思案を巡らせていると、突如激しいどよめきが会場を埋め尽くした。

「あたくしとベルトルド様は深い仲なのよ! おどきこのメス豚!!」

「ンまあ! なにを根拠に仰っているのかしら下品なかたね!」

「夫を持つ女がなにを言っているの!?」

 ベルトルドを取り囲む貴婦人たちが、突如けたたましい舌戦を繰り広げ始めてしまった。

「副宰相どのとの浮気を自ら暴露するとはなあ」

「女は怖い怖い」

 ジーネット王女を取り囲む紳士たちは、遠巻きにその様子をみながら嘲笑する。

 ベルトルドを独占するかのように立ち振る舞う女性は、確かハッキネン子爵夫人ではなかっただろうか?

 自らが当主で子爵夫人と呼ばれているわけではない、ハッキネン子爵の妻だからそう呼ばれている女性なのに、ベルトルドと浮気を――ジーネット王女は一瞬クラクラと頭がグラリと傾いだ気がして倒れそうになったが、どうにか踏ん張り堪えた。

 女房風を吹かせて凛気を放つハッキネン子爵夫人は、他の貴婦人たちにもみくちゃにされ、困惑した顔のベルトルドはどこかに向けて手招きすると、会場の外に控えていた男が颯爽と傍らに歩み寄った。

(あの方は確か、ベルトルド様のお屋敷で執事をなさっているという…)

 ベルトルドはその男に何事かを耳打ちすると、素早く中庭のほうへ歩きさってしまった。

 残された貴婦人たちはそのことに気づいたが、その場に残った男が貴婦人たちを押しとどめ必死にとりなしているようだった。

 これは、もしかしたらベルトルドと二人きりになれるチャンスではないか。

 ジーネット王女はいつも以上に気合を入れると、自分を取り囲む紳士たちを言いくるめ、その包囲網を突破することに成功した。

 中庭に出てくると、目の前には大きな噴水があり、そして噴水に腰掛け腕を組んで目を閉じているベルトルドがいた。

 満月の月明かりはとても明るく、ベルトルドを優しい光で柔らかく照らし出していた。

(なんて綺麗なのかしら……)

 王女はうっとりと、その姿に見とれてしまった。

 見つめるベルトルドのその目を閉じた顔には、僅かに疲労のようなものが見て取れる。

(きっと、ハッキネン子爵夫人が疲れさせたのだわ)

 そう思うとジーネット王女は怒りがこみ上げてきた。そして、そば近くでそっとお慰めして差し上げたい、と強く思った。

 得意な竪琴を奏で、少しでも御心を安らかにしてあげられたら。しかし今竪琴はない。ならば歌などどうだろう?

 そんな風に思案を巡らせていると、いつの間にかジーネット王女は物陰から出てベルトルドのそばへ歩いていた。

 そのことに気づいてジーネット王女はハッとしたが、ベルトルドとの距離は縮まっていて、3歩足を踏み出せばベルトルドの間近に。

(このまま告白してしまえれば――)

 高鳴る胸の鼓動を胸の前で組み合わせた両手で必死に抑え込み、一歩を踏み出そうとしたその時、

「ぶえックショイぃ!!!」

 いきなり品のないクシャミを盛大にしたベルトルドに驚いたジーネット王女は、「えっ!?」と驚いて足をもつれさせると、よろよろと前につんのめってダイナミックに噴水の中に顔からダイブしてしまった。

「ん??」

 バッシャーンという水音と水が大きく跳ねて、それは無意識に発動する空間転移能力でかわし、ずぶ濡れは免れたベルトルドが、水に頭を突っ込んでいる貴婦人を不思議そうにみながらも助けようとした。しかしその手はジーネット王女を掴むことなく空ぶった。

「いい加減自分の後始末は自分でしてください!!」

「いやーん」

 赤いオーラでも見えそうなほど激怒したアルカネットが、問答無用でベルトルドの襟首を掴んで屋敷のほうへ引きずっていってしまったのである。

 頭を水の中に沈めてしまっていたジーネット王女には、そのやり取りがまったく聞こえていなかったため、何故ベルトルドが助け起こしてくれなかったのかに激しいショックを受けた。

 自力でどうにか起き上がると、ジーネット王女はその場に泣き崩れた。そして翌日すぐに祖国へと帰った。

 突如舞い戻ってきた王女に、父王と王太子は首をかしげるばかりだ。

 定期的に送られてくる手紙には、ハーメンリンナで過ごす王女の様子と、副宰相ベルトルドへの恋心がつぶさに綴られていたのだ。

 それがこんなに辛そうに泣きはらして、今も延々と泣き続けている。

 父王と王太子は辛抱強く王女からの告白を待った。すると、ようやく話し出すと、その内容を聴いて父王と王太子は激怒した。

「このような……………惨めな……………思いを…………ベルトルド様から……受ける………………なんて………ひどすぎます」

 もしや王女は副宰相ベルトルドに辱めを受けたのでは!? それでこんなにも。

 ベルトルドの女癖の悪さは他国にも知れている。そのような男ならありえることだ。

 かりにもベルトルドはハワドウレ皇国の副宰相である。ひいてはジーネット王女は皇国自体に辱めを受けたといっていい。

 メティン国王と王太子は王女の名誉を守るため、辱めを受けた事実は徹底して伏せた。そして王家の受けた侮辱を晴らし、副宰相ベルトルドを処刑するために行動に出るのだった。

 そのことをあとで知らされたジーネット王女は飛び上がるほど仰天した。

 自分はベルトルドから何もされてなどおらず、まして辱めを受けたとはどういうことなのだろうかと。

 乳母から事の次第を聞かされ更に王女は動転した。

 父王と兄君は、完全に聞き間違いをしていたのである。

 ジーネット王女は泣きじゃくりながら喋っていたため、言葉がどうしても途切れがちになっていたので、周りには、

「このような……………惨めな……………思いを…………ベルトルド様から……受ける………………なんて………ひどすぎます」

 と聞こえていた。しかし本当は、

「このようなわたくしでも勇気を出して一歩を踏み出したのに、転んで惨めな姿を晒してしまうことになって、恋しいという思いをぶつけることもできず、ベルトルド様からの助けを受けることも出来なかったなんて、わたくしの人生ひどすぎます」

 こう訴えていたのだ。

 兄の王太子は迅速に動くことで有名だ。その兄が戦争を起こすためにとった行動は普段よりも迅速であり、もはや王女は真実を述べることが出来ないところまで事態は進んでしまっていたのだった。



 空はとても澄んでいて青く明るい。

 ジーネット王女は寝台のそばにあるサイドテーブルの上に置かれた宝石箱の蓋を開けた。そこには小さなガラス瓶が収められていて、王女はそっとガラス瓶を取り出すと、コルクの栓を抜いて、中身の液体をワイングラスの中に注いた。

 乳母も侍女たちも下がらせていて、寝室には自分ひとりしかいない。

「このような方法でしか、責任を取る術を知らないのです」

 王女は切なげに呟くと、

「愛しております、ベルトルド様」

 そう恥ずかしそうに唇を僅かに震わせ言うと、ワイングラスの中身を一気に飲み干した。



 大急ぎで後を追ってきたブルーベル将軍と合流したベルトルドとアルカネットは、ブルーベル将軍率いる大隊と共に、首都エルマスに乗り込んだ。

 抵抗してくるコッコラ王国民を容赦なく排除し王宮へ乗り込むと、調査のため散った部下たちから次々と残念な報告を受けて、ブルーベル将軍はため息しかつけなかった。

 首謀者である国王は、玉座で自害し果てていたという。そして王太子は戦場にてベルトルドに倒され、王女もまた後宮で自害して亡くなり、後宮に仕える女性たちも全て自害していた。



 赤を基調とした室内の窓は全て開け放たれ、そよ風とともにバラのかぐわしい香りが漂ってきていた。

 豪奢な寝台の上に横たわるジーネット王女の亡骸を見おろしながら、ベルトルドは痛ましそうに呟いた。

「美人が死ぬと、なんか勿体無いな」

「かりにも一国の王女に対して無礼な発言ですよ」

 アルカネットから窘められて、ベルトルドは小さく頷いた。

 まさかこの王女が自分を想い焦がれるあまり、このような出来事に発展してしまったことなど思いもよらないベルトルドは、中庭に咲くバラの花々を一瞥して王女の寝室をあとにした。



 コッコラ王国の謀反から2週間ばかり経った頃、ハワドウレ皇国は正式にコッコラ王国の国名を削除し、領土を接収した。そして王家の者たちの自害により、この度の事件の真相が判らず、皇国への反逆という形でかたをつけた。

 惑星ヒイシから一つの国が消え、ハワドウレ皇国と17の小国、5つの自由都市のみとなった。

 その頃エルダー街の一角にあるライオン傭兵団のアジトでは、皆が談話室に正座させられ、オレンジ色のソファにふんぞり返って座るベルトルドと、その傍らに優雅に立つアルカネット、その反対側になよっと立つリュリュに見下ろされ、ガタガタと震えながら身を縮こませていた。

 2週間前の悪夢が自然と蘇り、気持ちよりも身体のほうがより正確に恐怖を覚えているのだ。

「可愛いお前たちが怪我をしていた間はそっとしておいてやろう、そう大いなる慈悲をもって我慢していた俺に、心の底から大感謝しろ」

 腕を組み顎を反らせ、ベルトルドは大儀そうに言う。

「本来なら戦争犯罪人として罰してしかるべきのところだが、首謀者であるコッコラ国王の死去により罪状が曖昧だ。雇われた傭兵たちは所詮金目当て、それが商売でもあるのだから、罪は不問とすることになった」

 ホッとため息がいくつかあったが、アルカネットの軽い咳払いでため息をついたものは肩をすくめた。

「だが、お前たちのほとんどは、元々は皇国軍出身だ。いまだ顔を覚えているものも多い。それが堂々と敵対して、あまつさえ元同僚たちを葬るとはなんたることか! と、大将たちが激怒していてな」

 やっぱりね、という空気が遠慮なく室内に漂う。

「そこは俺の可愛い身内だからと、涙ながらに大将たちを説き伏せて、お前たちへの厳罰は俺に一任される形で許しを得てきた」

 許しを得たのは事実だが、うるさく言い立てる大将たちにぷちっとキレたベルトルドが、笑顔で脅しをかけたのは公然の秘密である。

 キュラ平原で無慈悲と力を見せつけたベルトルドを、もはや侮るものなどいなかった。戦場の様子は軍部だけではなく、行政側にも伝えられ、小僧と蔑んで侮辱する年寄りどももいなくなった。

 正規部隊の大将たちも、絶対に逆らってはいけない相手、と認識してしまっていた。

「つまらん売名行為でノコノコ出かけて行ったツケは、たっぷり払ってもらうから、覚悟しろよ馬鹿どもが!!」

 ヒイッと皆首をすくめた。その様子があまりにもおかしくて、リュリュはぷっと吹き出した。

「すんませーん、傭兵ギルドエルダー街支部のモンですが、責任者いますかねー?」

 突然玄関ホールのほうで大声がして、なんだろうと皆が揃って玄関のほうへ首を向ける。

「カーティス行ってこい」

 ベルトルドに促され、カーティスは頷いて立ち上がると部屋を出て行った。

 しばらくして戻ってくると、ニヤニヤが抑えきれない微妙な表情で戻ってきて、元の位置に正座した。

「なんだったんだ?」

 ギャリーが代表して言うと、カーティスは嬉しそうに若干はしゃいだような声を出した。

「ウチに仕事の依頼が5件も舞い込んできているそうで、あとでギルドに顔を出すようにと伝えに来てくれました」

 これにライオン傭兵団の皆は大声で喜び快哉を上げた。目の前にいる三人の存在は忘れたかのように。

 呆れたようにその様子を見ていると、ベルトルドはやれやれと苦笑して、アルカネットとリュリュと顔を見合わせた。


特別小咄:コッコラ王国の悲劇《6》 終わり


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Comments 6

八少女 夕

ええ〜っ

こんばんは。

そんな事情だったとは……。
完全な誤解で、意味不明のうちに一国が滅んでしまったのですね。
それも、御大ご自分がからんでいると、全くわかっていない所が(笑)

前回、コメしそびれたのですが、あんなに「あいつをおびき出してやる」とラスボスっぽく騒いでいた王太子が、あっさり片付けられたのにも「えっ」と思ったんですけれど、今回はさらに「嘘……」でした。

ライオン傭兵団、お灸を据えられたわりに、あまり懲りていない感じなのが、いかにもでらしいです。まあ、これからは御大の敵側にはつかないでしょうけれど。

ランドンが大変だったんだろうなあ……。

本編の再開、意味深なトップイラストの意味もわかるということで、楽しみにしていますね。

2015-02-13 (Fri) 05:18 | EDIT | REPLY |   

ユズキ

Re: ええ〜っ

八少女さんこんにちわヽ(・∀・)ノ

>完全な誤解で、意味不明のうちに一国が滅んでしまったのですね。

酷い話ですよね。
真犯人はまぎれもなく御大そのひとです(笑) 浮気してたのが全部悪いんです。アルカネットに御婦人方を押し付けて噴水なんかへ逃げてきて、品のないクシャミをしたせいで王女がすっころんで、助けようとしたけど怒り心頭のアルカネットにしょっぴかれてズルズルと・・・(笑)

レスリー・ニールセンの『裸の銃を持つ男』シリーズが大好きで、あの下世話ネタ満載の(笑) フランクが巻き起こす、当人至って普通に行動しているつもりで、実は周りを大騒動&大迷惑に巻き込んでいて自覚なし、というあれが大好きで(笑) あんなの書きたいな、と思っていて御大で試してみました。

>ラスボスっぽく騒いでいた王太子が

彼は場を盛り上げる演出キャラ、ですね><

ライオン傭兵団はあのくらいがちょうどいいですねw 御大もあの程度でしおらしく従順に振舞われても面白くもなんともないし、あんな連中だから好きなんです(^ω^)

>ランドンが大変だったんだろうなあ……。

寡黙ですがみんなの命綱ですし、一番戦場を走り回っていたと思います|д゚)w

「主人公だせー!」て頭の中でキュッリッキさん大騒ぎなので、またちまちま本編書いていきますのでよろしくお願いしますヽ(・∀・)ノ

2015-02-13 (Fri) 14:48 | EDIT | REPLY |   

こんばんは!携帯の限界で途中までしか表示できず
帰省してから前回と絵日記、今回、一緒に一気に読ませていただきました!
ベルトルドさんとアルカネットさんの強さを甘~く見積もって
しまったのがその後のトラウマの原因だったんですね~(´∀`*)
皆さんコテンコテンにやっつけられちゃって気の毒でしたが
でもやっぱり王女さまが1番悲劇Σ(・ω・;)!!
ベルトルドさんにはまったく伝わってないまま終わってしまうなんてヽ(´Д`;)ノ
お兄さんはバッサリされちゃって容赦なし!!
何したかったんだろ?くらいにしか思われてないところが気の毒です(;´∀`)
ライオン傭兵団の皆さんは、やっぱりまったく懲りていませんよね^^
そこがまた素敵なところですが(*^o^*)笑
楽しく読ませていただきました♪次の本編の更新も待ち遠しいです!
バレンタインのイラスト、ぎりぎり見ていけるかも!?と楽しみに待っています!

2015-02-14 (Sat) 01:07 | EDIT | REPLY |   

suzune

今晩は^^

何か、悲劇と言えば悲劇なんですが……、茶番と言ってしまえばそれまでみたいな、こんなの有りか? (笑)(←コラッコ王国の市民が事の発端聞いたらそんな事でって怒り狂いそうな気がするので)

御大ってある意味凄いですねぇ(爆)
御大絡むと何かしら小さな些細な事が、大きくなるようなイメージは何気に有ったんですが、ここまで来ると、いやあ、ある意味御大ってやっぱり凄い人だ。お見事!(苦笑)

しかしながら、知らないうちに自らの軽はずみな行いが、幼気な隣国の王女を傷つけ、その結果一国が滅んでしまうって……悲劇と呼ぶには何と言うかあまりにも……。
だって、おそらく聞き間違いの言葉を真に受けて、勝手な思い込みで戦争まで起こしちゃうって、その時点で軽はずみ過ぎだし^^;
まあ何と言うかこの軽はずみな行動に出た時点でコラッコは自業自得と言うか……。
気付いた時点で訂正すらしなかった(事が大きくなりすぎて言えない気持ちは分かりますが)王女様も、ここは一国の王女なんだから、もう少ししっかりしろよみたいな?
それにより一つの国が消える事になるのですから。
まあ、王女もここまで事が大きくなるとは思ってもいなかっのでしょうが^^;

でも、これ読んでると御大
「気付かぬうちに今までどれだけの女を不幸にしているのか分からないよなぁ」
と思ってしまうのは私だけでしょうか^^;?

そのしっぺ返しがやって来ているのか?本編でいじらしいほどに報われないのは(笑)
らしいといえばらしい結末に、思わず納得してしまいます。
自らの知らないうちに戦争になる原因こさえて(御大のせいじゃないけど、いや御大のせいか?(笑))、恋する乙女の心をズタズタに傷つけ、結果戦争起こして自らが一国滅ぼして……。
でも、まあきちんと人の話も聞かずに勝手な解釈で勘違いして兵を進めるような愚かな国は、どうせ御大が原因こさえなくても、何れほろんだ気もしないでも無いですが^^;

全てに御大が関わってたってのが私的にはツボでした。
楽しかったです♪


で、↓のアルスラーン戦記調べました♪
4月5日(日曜)午後5時よりMBS/TBS系28局ネットで開始らしいです。
漫画のアニメ化みたいですが、絵は昔の方が好きだったな……。声は違和感ないけど。
で、「タイタニア」は、私アニメ1話見逃して再放送で録画してDVDに焼いて録ってますが、アニメ始まったから続き書いてくれるかとすっごく期待してたのよ。本も読み直したりして。
でも、結果全然で^^;
銀英も結局外伝あれで終わってるけど当初6まで書くって噂もあったので、アニメでも始まったら何かしら書いてくれないかと密に期待してたりします。
私田中氏の長編どれも好きだけど、やはりスペースオペラ系が一番好きなのよね。
断トツは勿論銀英で、タイタニアもあまり売れなかったけど結構好きだった。次いでアルスラーンかな。
とにかく、アニメ開始で何らかのアクションを田中氏が起こしてくれる事を期待したいと思うのは私だけでしょうか?
銀英の声優陣は……う~ん、、、、。まあ、ヤマトも2199はそれなりにそれとして見れたので、また新しいものを見始めると気持ちも違うのかもしれませんが、新しい銀英のアニメで前作程の熱が入るのかイマイチ……。
こればかりは始まってみないと分かりませんが、原作に忠実に……。これだけは守って頂きたいです。
声はやはり、ラインハルトとヤンは拘りたいですね。
変なのにやらせたら怒り狂いそう(笑)

では、では。

2015-02-14 (Sat) 03:17 | EDIT | REPLY |   

ユズキ

Re: タイトルなし

明さんこんばんわヽ(・∀・)ノ

ちょっとこ今回は連続して文字数が多くなっちゃってますからねー>< すみませんw
無理やり詰め込んだ感がハンパないんですが|д゚)w

>皆さんコテンコテンにやっつけられちゃって気の毒でしたが

御大がただ強い、攻撃力が強いだけなら怖くはないですが、自分たちの攻撃が当たらない、というのは最高に嫌だし怖いと思うのです。で、身内のはずなのに容赦なしなものだから(笑) 余計に怖いんですよねw

王女はある意味悲劇です。噴水のところでは、正直笑劇状態なんですけど(笑) 御大とは違う次元を生きている王女には、あのノリで通ったらもう悲劇のラストしかないですね><;

ライオン傭兵団はこりてないところが図太い神経なので(笑) これをバネにのし上がっていきますw

イラストのほうはちょっと今日中には間に合わないのですが>< ゴメンナサイ! でも日を改めて載せるので、そのとき見てやってくださいねw 今日は絵日記マンガをw

5章もがんばりまっす!w

2015-02-14 (Sat) 19:02 | EDIT | REPLY |   

ユズキ

Re: タイトルなし

suzuneさんこんばんわヽ(・∀・)ノ

>悲劇と言えば悲劇なんですが……、茶番と言ってしまえばそれまでみたいな

ふふふふふw ホント茶番です(笑)
ノリが童話世界な感じですね~w 「え? そんなんで怒る?w」みたいな(笑) 確かにコッコラ国民は真実を知ったらあいた口がふさがらない状態です(/ω\*)

御大はいつも通り女と遊んでいただけ、なんです。その相手が結婚していてもしていなくても、目の前でドレスを脱いだらオールオッケィ!w なもんだからw
そんな御大に恋をしてしまった王女は、そこが失敗でした><

御大はキュッリッキさんと出会う3年後まで、こんなチョーシで浮気もバッチコィ!w で女癖悪く遊んでいますw その度にアルカネット、リュリュたんに怒られてますけど懲りてませんw

アルスラーン情報ありがとうございます!w

マンガになってたんだ・・・w 絵柄があえて違うから「あれ?」とは思っていたのですけどw 神村さんの絵柄でアルスラーンは定着しているので、まず絵柄から慣れろ、てかんじになりそうです。
声優は、ナルサスやってた塩沢さんは亡くなられているし、絵柄が変わったことで声優変わっても違和感はなくみられるのかなあw

>声はやはり、ラインハルトとヤンは拘りたいですね。

同感ですねー!
ヤンは致し方ないですが、ヤンもラインハルトも、あの性格を声の演技で上手に使い分けてくれないと、ホント印象大きく変わってしまいますし。
以前フレデリカがヤンからプロポーズを受けるシーン、あそこで、「はい」と答えるフレデリカの「はい」を、見事に演じ分けてくれた云々のエピソードを見たことがあるんですが、そういう微妙な演じ分けのできる声優さんにお願いしたいですね><!

アッテンボローもポプランもキャゼルヌもシェーンコップも・・みんなみんな、役を上手に演じられる声優さん望みますわ~!

>アニメ開始で何らかのアクションを田中氏が起こしてくれる事を期待したいと思うのは私だけでしょうか?

すでにわたし諦めてます(笑) 銀英の続きも、どんだけ外伝待ったことかっ!! 道原氏のマンガもハンパなところで終わったしなー。散々引っ張って引っ張って、そこでおわりかよwwww とw

タイタニアはどうしても銀英伝と比較されちゃいますよね。わたしは別物語で楽しく読んでいたんですけど、続編が出ねえ出ねえで離れちゃったし・・・。

近いところでアニメのアルスラーン、どんなのか楽しみにしていよう!w

2015-02-14 (Sat) 19:17 | EDIT | REPLY |   

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