060 第五章:エルアーラ遺跡 Encounter Gullveig System

うん、だめだ、これ以上書くと長くなりすぎるので切ります(・ω・) サブタイトルも変わるしちょうどいいかな。

てことで、若干短めです☆

さて、ついにキュッリッキさん、この時がやってまいりました。そしてやっとここのシーンが書けた(´∀`)て気分です。

2年近くもかかってやっとかよ(#゚Д゚)て感じです(てへ

ずっと書きたかったシーンの一つです。

この回の続きは、勢いでなるたけ早めにアップしたいです。します、じゃなく、したい、です………っ!w





ALCHERA-片翼の召喚士-
第五章 エルアーラ遺跡 Encounter Gullveig System 060


 嫌な思い出や恐怖は、できることなら永遠に封じるか滅ぼしてしまいたいものである。それができないから、人は色々なことで紛らわし、心の、記憶の奥底へ追いやる。そして脆くも危うい蓋で閉じて、一時忘れ去るのだ。

 つかの間の安寧を得たあと、ふいに閉じ込めたものが目の前に立ちふさがったとき、人はそれ以上の恐怖をもって直面する。

 他人から見たら滑稽にしか映らないものも、当人にしてみればあらゆる装飾を伴って怖れを呼び覚ます。

 ポスト・ベルトルド――女癖の悪さが――と目されるルーファスにとって、エテラマキ男爵夫人とのことは筆舌に尽くしがたいほどのトラウマになっている。暫くは吐き気に目眩、頭痛に悪寒が絶え間なく襲い掛かり、周りからは質の悪い風邪だと思われていたが、全てはエテマラキ男爵夫人との一夜が原因なのだ。立ち直るのにだいぶ時間を要した。

 そのエテラマキ男爵夫人にそっくりの巨大な物体が、とくになにをしてくるでもなく静かに追いかけてくるその様は、ルーファスの精神を激しく消耗し始めていた。

 目に見えて消耗の色を濃くし始めたルーファスの様子に、さすがに危険を感じたギャリーはフェンリルの背に乗るキュッリッキに促した。

「キューリ、もう遠慮はいらねえ、アレを消しちまってくれ」

「判った」

 様子の変わったルーファスをチラリと見てキュッリッキは頷くと、先ほど蜂の大群を消し去ったスルトの炎レーヴァテインを召喚し、エテマラキ男爵夫人モドキにむけて放った。

 エテマラキ男爵夫人モドキは炎に巻かれて足を止めると、声無き声をあげて苦しみもがき、やがて輪郭を徐々に縮めていった。

 そのさまをじっくり見つめながら、やはり「手応えがないかも……」とキュッリッキは首をかしげた。

「実体がナイってことですか?」

 コロコロと尻尾を揺らしながらシビルが振り向くと、キュッリッキはうん、と頷いた。

「さっきの蜂もそうなんだけど、物体を燃やした感じじゃないんだよね。焦げた臭いも漂ってこないし」

「実体のないものまで燃やしちゃえるんだ、召喚の力って?」

 キュッリッキの背中にへばりついていたハーマンが横から顔をのぞかせる。

「魔法じゃ実体のないものまで干渉できないからさ」

「アルケラから呼び寄せる力とかは、神様の一部だから、こちらの世界に在るものには全て干渉できるの。…………あ、あんま難しいことは判んないからねっ」

 なんでも難しい方向に話をもって行きがちなハーマンに先手を打って、キュッリッキはエテラマキ男爵夫人モドキが消えたことを確認してスルトの炎を還した。

「実体がないもの、我々めがけて襲いかかってくる……」

 腕を組んでカーティスは考え込んだ。

「さっきの巨大肥満レディはルーファスに縁のあるもので、その前の蜂は何でしょうね」

「おそらくだが」

 どこか気まずそうにガエルが口を開く。

「ガキの頃に蜂の巣をつついて、大群に追い掛け回され、全身を刺された経験がある」

 これにはタルコットがぷっと吹き出した。

「どんだけはちみつ大好きなんだお前……」

 ヴァルトは呆れたように呟いた。

「………それ以来虫の群れは苦手でな」

 ガエルの意外すぎる苦手なもの発覚に、ヴァルトは目を丸くした。

「幻術か何かでしょうかね」

 ひとつの回答をシビルが示すと、カーティスは同意した。

「そんな感じかもしれません。おそらく全員術にかかっているんでしょう。幸いキューリさんの召喚の力で消し去ることができるので大丈夫そうですが、逃げないわけにもいきませんし、幻術だけとも言い切れないのでみなさん気をつけてください」

 全員頷いた。

「こんな近未来的な遺跡探検は初めてのことですが、遺跡には侵入者撃退トラップなどがつきものですから、そうした類の何かで合ってると思います」

「巨大な丸い岩が転がってきたり、大量の水が洪水のごとくとか火攻めとか、そういう永遠のワンパターンよりも質の悪い……」

 タルコットが肩をすくめ、苦笑があちこちから漏れる。

「キューリさんはまた幻めいたものが追いかけてきたら撃退してください」

「はい」

「それからルーファスはちょっと辛そうなのでマリオン、ベルトルド卿に連絡を」

「もおやってるんだけどぉ、なんか繋がらないの~」

「?」

「取り込み中なのかなぁ……ウンともすんとも言わなくてぇ」

「メリロット王などを討伐に行っているから遮断しているんですかねえ。まあ、タイミングを計らいながら続けてください」

「ふぁい」

「この場から離れましょうか」

 多少落ち着きを取り戻したルーファスは、ギャリーに手を借りながら歩き出した。



 カーティスはもう勘レベルで歩き進んだ。そのうち首謀者やベルトルドたちがいる場所へ出て合流できればと、シビルとランドンに索敵はさせている。そしていつ幻が襲ってきてもいいように、キュッリッキも意識を集中させていた。

 自分たちは傭兵だから、普段から鍛錬は怠っていないし体力も蓄えている。長丁場になることもあるし、数日は緊張しっぱなしでも耐えられるように精神面も鍛えていた。だが、先ほどのように明らかに悪意ある幻覚などに追い掛け回されては、体力的にも精神力的にも多大な負担を強いられた。サイ〈超能力〉を使うルーファスですらあの状態だ。

 延々白い通路が続くその先に、白く装飾のない巨大な扉が現れた。

「なぁにこれぇ~?」

 高さは3メートルほどもある。押して開くのか謎だが、マリオンはヴァルトとガエルに向き直ると、ニヤッと意味ありげに笑った。

「この如何にもってぇ扉、すんごぉ~っく重そうだけどぉ、ヴァルトとガエルのどっちが力持ちなんだろ~?」

 ヴァルトの眉とガエルの鼻が、ぴくっと反応した。

「こんなクマヤローに俺様が負けるわけがねえ!!」

 拳同士を叩き合わせてヴァルトが吠える。瞬時に闘気が立ち上った。

「口先だけのひょろいヴァルトには荷が重い」

 不敵な笑みを浮かべ、ガエルが挑発しながら腕を組んだ。

 ヴァルトとガエルは扉の前に仁王立ちすると、顔を見合わせ火花を散らした。

 たきつけ完了、と表情に書いてマリオンがみんなにブイサインをする。やれやれと疲れた笑いが静かに漂った。

「さすが女狐……」

 とてもか細い声でランドンが呟いた。

「まずは俺様からだ!!」

 ジャンケンで勝ったヴァルトが扉に両手をつき、両腕に盛りっと力をこめて力強く押した。

「うっわわっ」

 その瞬間扉はカーテンのような軽やかさでするっと開き、勢い余ったヴァルトは顔面から盛大にすっ転んだ。

「………」

 腕を組んだままガエルは内心、

(俺じゃなくてよかった………)

 と安堵し胸をなでおろした。

「いってぇ……」

「大丈夫ヴァルト」

 ランドンに助け起こされ、ヴァルトは鼻をさすりながら立ち上がった。

 そんな二人の横をみんな通りながら、中の様子に目を見開いた。

 とても奇妙な空間だった。

 辺は漆黒のように塗りつぶしたほど黒い。その黒い空間の中に、真っ白で柔らかい光を発光する真四角の床が浮いている。そして足元はその真四角な床へ続く真っ白な階段が続いていた。

 闇のような真っ暗な空間のはずなのに、全員の姿はくっきりと明るく見えている。

「ヘンな場所……」

 キュッリッキはフェンリルの背からするりと降りると、階段を駆け下りた。

「あ、リッキーさん危ないですよ!」

 メルヴィンが慌ててキュッリッキを追い掛け階段を下りた。皆もそれにつられるように次々と階段を下りていく。

 キュッリッキは床の端まで駆け寄ると、そっと下を覗き込んだ。

「底が全然見えない……落ちたらどうなっちゃうんだろう」

「危ないですよ」

 追いついたメルヴィンはキュッリッキの両腕を掴むと、そっと自分のほうへ引き寄せた。その突然の行為に、キュッリッキはドキンと心臓が跳ね上がって顔を赤らめる。

「う、うん、ごめん…」

 まともに顔を見上げることができないので、視線をあさっての方向へ泳がせながら謝った。鼓動はどんどん早まり、顔から蒸気でも噴出しそうだ。

「二人の世界に浸るならもうちょっと真ん中でしろ!」

 ギャリーが真顔で怒鳴ると、メルヴィンが困ったように頷いた。

 10組ほどが踊れるダンスフロアくらいの広さで、フェンスも壁もなく、通路のような材質の真っ平らな床だ。他には何もなく、奇妙な空間と白い床と階段、ということが確認できただけだった。

「見て回るモンもないようだし、次いこーぜ次」

 キュッリッキとメルヴィンの行動が面白くないザカリーが、突っ慳貪に言い放つ。

「んだな。ほらキューリ、フェンリルの上に戻れ」

 ギャリーに促されて、まだ赤面のキュッリッキが頷いた時だった。

「きゃっ」

 突然鼻先を凄いスピードで掠めていったものがいて、キュッリッキは思わず尻餅をついてしまった。

「大丈夫ですか!?」

 メルヴィンに助け起こされながら、キュッリッキはハテ?と不可解そうに首をかしげた。

「うきゃっ」

「ひゃっ」

 今度はシビルとハーマンが小さな悲鳴をあげて、フェンリルの背から転がり落ちた。

「痛いっ! なんなんだよもー!!」

 ハーマンが両手を挙げて怒り出し、シビルも帽子をかぶり直しながら眉間を寄せる。

「何かスピードのあるものが身体を掠めていって落ちたんですが、今度は何の幻覚でしょうか」

「ツっ……」

 ザカリーが歯を食いしばって右手の甲をおさえた。ギュッと握り締めじんわりと痛みが引いていって手を離すと、右手の甲には擦り傷が出来ていた。

「ちっ、今度は幻覚なんかじゃねーぞ、実体がある」

 右手の甲を示すと、皆軽く目を見開き身構えた。

 ランドンはすぐさまザカリーに駆け寄ると、回復魔法をかける。

「毒の類はないみたいだね。摩擦による擦り傷みたいだ」

「実体はあるが、オレの目で追いきれない何かか」

 動体視力もずば抜けているザカリーだが、さっきから一向に姿を捉えられない。

「目で追うより気配を感じろってか?」

 うんざりしたようにギャリーは頭を掻いた。

「ザカリーさんが見つけられないなら、そうするしかないようですね」

 同意するようにメルヴィンは頷くと、胸のペンダントヘッドを握って目を閉じ意識を凝らした。

 アサシンの気配すら見抜ける爪竜剣の持つ力を借りて、見えない気配を探る。

 ――気配は……二つ、だけ。

 悪意や敵意といったものはない。けれど、明確な目的をもって自分たちを攻撃する、強い意思のようなものは感じられた。

「床の外に投げ出されると大変ですから、この部屋を出たほうがいいですね」

「けどよ、階段を登ってる最中に襲われたら、やっぱ危ねえぞ」

「全員で登ったら危険ですから、手間だけど一人一人行きましょう。オレが護衛します」

「そうしてもらったほうがよさそう。目で捉えられないほど早い物体なら、サイ〈超能力〉の防御も吹っ飛ばされそうなかんじに」

 ルーファスは情けなさそうに眉を寄せた。魔法の防御も同様かとカーティスも肩をすくめた。

「お願いしますメルヴィン」

「任せてください。まずはカーティスさんから」

 二人が階段へ向かおうとしたその瞬間、

「リッキーさん!」

「えっ」

 血相を変えたメルヴィンが、フェンリルに乗るキュッリッキの傍らに駆け寄った瞬間、メルヴィンの身体がくの字に曲がり勢いよく後方へ吹っ飛んだ。そして宙に浮いたまま身体が床を離れ外に投げ出された。

「メルヴィン!!」

 その時、ライオン傭兵団の皆は信じられないものを見た。

 メルヴィンを追いかけるようにフェンリルの背から飛び降り、そのまま宙に身体を踊らせたキュッリッキの、その背に大きく広がったものを。

「バカっ!!」

 舌打ちしながらヴァルトは翼を広げると、落下していく二人を追って床を蹴ってダイブした。


第五章 エルアーラ遺跡 Encounter Gullveig System つづく


059 エルアーラ遺跡 Encounter Gullveig System

目次へ戻る


関連記事
オリジナルファンタジー小説

Comments 0

Leave a reply