ALCHERA-片翼の召喚士- 079 第六章:勇気と決断 帰宅前夜

次回で6章もラストです。

2年もかかってようやく物語前半が終わりです。

先日序章からずっと読み返してみました。書いてる当時は必死だったからそこまで考えていなかったけど、今読んでみると、会話が硬い、ギコチナイ、自然なやりとりになってないて思う。

今書いているものは、そこそこ自己満足はできている。それは、彼らを2年も書いてきたから、単純にキャラクターが確立できてきた証拠とも言えるよね(・ω・)

7章からは、御大が中心となって動く話になっていきます。


前回大人げない態度でキュッリッキさんを泣かせてしまった二人。リュリュたんに叱られてマス。今回はちょっと一部7章以降の話に繋がる内容をちらつかせています。





ALCHERA-片翼の召喚士-
第六章 勇気と決断 帰宅前夜 079



 ベルトルドたちから解放されたキュッリッキは、リトヴァに付き添われて自室に戻った。

「夕食は一緒にとろう」

 応接室を出るときに、そうベルトルドから言われた。いつもの、優しい声で。

 明日エルダー街のライオン傭兵団のアジトへ帰ることを許してもらった。アルカネットはまだ何か言いたげな顔をしていたが、複雑な表情を浮かべたまま黙っていた。

「お夕食の際のドレスは、これにいたしましょうか」

 衣装部屋からリトヴァが選んできたドレスに着替える。そして鏡台の前に座って、髪を整えてもらった。

「ごめんね、リトヴァさん。アタシのせいで怒られちゃって…」

「まあまあ、何をおっしゃいますの。わたくし共はなにも気にしてはおりませんよ。お嬢様の恋路を邪魔するようなことを、旦那様方がなさっていただけです。馬に蹴られて当然ですわ。その馬の役はリュリュ様がなさいましたけれど」

 リトヴァの笑顔につられて、キュッリッキもクスッと笑った。

「これで、晴れてメルヴィン様と、恋人同士ですわね」

「恋人……同士」

 イフーメの森での、メルヴィンとキスしたことを思い出し、キュッリッキは真っ赤になった。

 そう、恋人になったのだ。

 再び喜びが奥底から湧き上がってきて、キュッリッキの顔に幸せで明るい笑顔が広がっていった。



「絶妙なタイミングで現れやがって、忌々しいやつ」

「あらん、本当に偶然だったのよ。あーたの女々しい八つ当たりの声と、傷ついた小娘の泣き声が聞こえてきて、思わずドアを蹴破るところだったんだからっ」

 すまし顔で紅茶をすすりながら、リュリュは鼻で笑う。

「ベルトルド様、本当にリッキーさんをエルダー街へ帰すおつもりですか」

 納得いかないと表情に書き込んで、アルカネットが身を乗り出す。

「仕方ないだろう、あんなに全力で泣かれて、大っ嫌いなんて言われたんだ」

 愛する少女に「大っ嫌い!!」と怒鳴られたことは、ベルトルドの心に大きな衝撃と傷を与えていた。

「自業自得よ。我慢なさい」

「ぬぅ…」

「式典の放送で世界中に顔が知れ渡りました。イルマタル帝国のカステヘルミ皇女が乗り込んでくるのは予想外ではありましたが、ああしてリッキーさん目当てで侵入してくる輩も多いでしょう。ハーメンリンナの外へ出すのは危険です」

「ダエヴァの特殊チームに、24時間の護衛任務を命じておく」

「しかし」

「無理強いして、今後口も聞いてくれなくなったら、困るのは俺だ」

「ですが……」

「どうせ麻疹のようなものだ。今は燃え上がって盲目的になっているが、落ち着いてくればすぐに気づくさ。俺に比べれば、メルヴィンなど取るに足らない男だと」

「あなたではなく、私に比べれば、ですよ」

「あーたたちの、その恥ずかしい自信は、どこから噴火してくンのよ……」

「ほっとけ」

「余計なお世話です」

 双方に睨まれて、リュリュは「おー怖い」とわざとらしくのけぞってみせた。

「俺だって断腸の思いだが、リッキーは一旦エルダー街へ帰す」

「………」

 アルカネットは、やはり納得がいかない表情で黙り込んだ。

「アルカネット」

 それきり返事もしないアルカネットに、ベルトルドはため息をついた。

「それよりリュー、ホントに何しに来たんだ?」

「さっきも言ったでしょ、あーたたち仕事をほっぽり出して帰ってきてるって。今日はシ・アティウスが旧ソレル王国から帰ってきてるから、報告がてら打ち合わせするってことになってたでしょ」

「あー……」

 忘れてた、と口パクで言って、ベルトルドは頭を掻いた。

「全くどーしようもないわね、小娘のことになると」

 キュッリッキが皇王との対面を済ませた翌日から、皇王の指示で陰ながら護衛がすでにキュッリッキには付けられている。それを一括管理する責任はベルトルドが担当なので、護衛官たちからの報告を逐一受けていた。それでメルヴィンと一緒に出かけたのを知って、アルカネットと共に仕事を放り出して帰ってきたのである。

「今から戻るのもなんだし、シ・アティウスにはこっちへ来てもらうように言ってあるわ。もうそろそろくるんじゃない」

「お前らの晩飯までは用意してないだろうし、適当に何か食えるものを用意させるから、俺たちが食べ終わるまで待ってろ」

「そうさせてもらうわ」

 ベルを鳴らして使用人を呼ぶと、そのことを指示する。

「さて、俺たちも着替えてくるか」

「お着替え、手伝ってあげるわよん?」

 唇を舐めずりながら言われ、ベルトルドはゾゾッとそそけだった。

「お前は俺の部屋に、絶対くんなっ!!」

「あーら、あーたの処女をもらった身としては、ついつい世話を焼きたくなるものなのよ」

 あの時のことを思い出し、ベルトルドは顔を真っ青にした。

「このド変態!!」

 モナルダ大陸での代理知事への引き継ぎを全部リュリュに押し付け、速攻とんずらを決め込んだベルトルドにぶちキレたリュリュはすさまじい行動にでた。ハーメンリンナに戻ってくるやいなや、会議室へ乗り込み、目を丸くしているベルトルドのズボンと下着をずりおろして、全力で抵抗を抑え込みブチ込んだのである。

 その場に居合わせた政治家たちは、あまりの凄まじい光景に魂を抜かれる勢いだった。もはや会議どころではない。

 本来こうしたゴシップは、噂にして垂れ流すのが得意な政治家たちも、こればかりは触らぬ神になんたらで、墓まで持っていく覚悟で黙っていた。

「数日トイレが辛かったんだぞ!」

「毎日ヤってれば慣れるわよ」

「二度とヤらんわ!!」

「着替えにいきましょうか」

 アルカネットに首根っこを掴まれたベルトルドは、問答無用でずるずると引きずられて応接室を出て行った。

 それと入れ替わるように、シ・アティウスが応接室に入ってきた。

「あら、早かったわね」

「静かな怒りの剣幕でアルカネットにしょっ引かれてましたね。また何かやらかしたんですか? ベルトルド様は」

「また」の部分を強調して言う。

「小娘が明日エルダー街へ帰っちゃうから、面白くないのよ、アルカネットは」

「ほほう。では、無事立ち直ったんですね、キュッリッキ嬢は」

「ええ。メルヴィンとキスまでしたようよ」

「それは良かった」

 優しい笑顔でシ・アティウスが頷くと、リュリュはちょっと不思議そうにシ・アティウスを見た。普段能面のように表情を出すことが滅多にない男が、優しい笑顔になるなど殆ど見たことがないからだ。

「さてっと、書斎に行きましょうか。ここでは話しづらい内容ナンデショ、例の報告」

「ええ」

 無表情に戻ったシ・アティウスが頷く。

「ベルたちこれからご飯だから、くるまで一杯引っ掛けてましょ」

「そうですね」



 夕食は見事に通夜のような静けさの中で淡々と進み、「おやすみなさい」という短い挨拶だけがかわされ終わった。

 ベルトルドもアルカネットも、次はいつになるか判らないキュッリッキとの夕食の時間だったというのに。メルヴィンへの嫉妬が積もりすぎて、会話がサッパリ思いつかなかったのだ。

 ガッカリ感を貼り付けた顔で、ベルトルドとアルカネットはトボトボと書斎へ向かった。

「ご飯終わったのん?」

 ウイスキーのグラスを傾けながら、リュリュが椅子にくつろいで座って出迎える。

「おう……」

「終わりました」

「世界でも終わりそうな顔してるわね」

 ベルトルドとアルカネットは揃ってため息をついた。

「では、眠くなる前に報告を済ませてしまいましょうか」

 ワイングラスをテーブルに置いて、シ・アティウスが椅子を立ち上がった。

「エルアーラ遺跡内の掃除と点検は無事完了です。ダエヴァを内外で警備につけさせ、侵入者は今のところありません」

 戦争の後始末の、もっとも陰に隠れているのはエルアーラ遺跡だった。さすがにベルトルドもそこまで手がまわらないため、シ・アティウスに権限を委ねて任せていた。

「動力部も問題ありません。装置の運び込みが完了できれば、すぐにでも起動できるでしょう」

「ふむ」

「そして、ナルバ山の遺跡ですが、厄介な結界の解除方法が判りました」

「ほほお」

「あら」

「それはどういった方法で?」

 話を黙って聞いていた三人から興味深そうな反応を得て、シ・アティウスは口の端をほんの少し歪めた。

「その結界を解除するために、是非用意して欲しいものがあります」

「それは?」

「召喚士です」



 自室に戻って風呂に入りながら、キュッリッキは明日が待ち遠しくて胸を高鳴らせていた。

 エルダー街のアジトへ帰れば、毎日メルヴィンとひとつ屋根の下なのだ。会いたいときにすぐの距離で会える。昼でも夜でも毎日会えるのだ。それが嬉しくて仕方がない。

 柔らかなスポンジで身体を洗っていると、ふと自分の胸に目が向く。

 アイオン族の女性は、総じて胸の膨らみが小さい。多少個人差はあるものの、色香に欠けるサイズだ。

「もうちょっと、おっぱい大きくならないかなあ……」

 今までもぺったんこな胸のサイズに凹んでいたが、メルヴィンと恋人同士になった今、余計大きな胸に憧れる。

 メルヴィンとデートをするとき、胸の大きさをいかした大胆な服を着てオシャレをしてみたい。メルヴィンにつりあうように、もっと大人で女性的な雰囲気がにじみ出るような色香をまとってみたい。

 しかしこればかりはどうにもならなかった。

「あと1、2年もしたら、もっともっと色っぽくなるかなあ、アタシ」

 そう呟いたとき、初めて自分の顔に興味を持った。

 シャワーで泡を洗い落とし、鏡の前に立って覗き込む。

「美人の基準ってどうなのかな、自分じゃ綺麗なのかブスなのか、ちっとも判んない」

 これまで顔に少しも関心を持たなかった。何故ならそんなことは生きていくことに、なにも関係なかったからだ。でも今は違う。

「毎日もっとお化粧もして、綺麗にしてなきゃだめだよね。服も子供っぽいのは止めようかな……ファニーやマリオンに相談しなくっちゃ」

 メルヴィンは11歳も年上で、隣に立つなら見合うように装わなくては。メルヴィンに恥をかかせるわけには行かない。

「そうよ、アタシ、恋人になったんだから!」

 鏡の前で握り拳を作って気合を入れるが、恋人、と口に出すと全身がカッと熱くなって腰が砕けそうになる。

「早く、メルヴィンに会いたいな」

 愛おしい人の名を呟いて、キュッリッキはさらに頬を染めた。



 風呂から上がって部屋に戻ると、そこにアルカネットが居てキュッリッキはびっくりした。

「ア、アルカネットさん」

「お風呂に入っていたんですね」

「もお、勝手に入っちゃダメって言ったでしょ!」

「すみません…」

 元気のない様子で、アルカネットは苦笑した。

「何か用なの?」

 バスローブの襟をかきあわせ、キュッリッキは訝しげに問う。

 数日前までは、素直にそばに駆け寄って甘えられたのに、今は警戒してしまう。

 アルカネットは自分からキュッリッキの前までくると、手にしていた箱を差し出した。

「これを持って行きなさい」

 素直に箱を受け取る。

「開けてもいい?」

「はい」

 箱を腕に抱えるようにして、蓋を開ける。中にはさらに白い箱が入っていた。

 首をかしげながらさらに蓋を開けると、キュッリッキは目を見張って「うわあ」と声を上げた。

「お化粧品がいっぱい!」

「これから必要になっていくでしょう。いつか渡そうと用意していました」

「ありがとう」

 目を輝かせるキュッリッキを見て、アルカネットは穏やかに微笑んだ。

「お化粧のやり方は、マリオンにでも習うといいでしょう。お化粧をしたら、寝る前には必ず落としてから寝るのですよ。肌があれてしまいますから。リッキーさんの肌はまだこんなに綺麗ですから、薄く化粧をするくらいで大丈夫です」

「うん」

 そしてたまらず、アルカネットはキュッリッキを抱きしめた。

「いつでも帰ってきていいのですよ。ここはあなたの家でもあるのですから。待っていますからね」

「はい」

「体調には気をつけるんですよ。あれだけの大怪我をしたのです、完治したといっても、何がきっかけで体調を崩すか判りませんから。あなたの身体に負担がかからないよう、カーティスにはよく言っておきます。絶対に、無理はしないでください」

「うん」

 まるで今生の別れのようだとキュッリッキは思った。

 さっきは二人の態度に思わずカッとなったが、こんなにも心配してくれる。いつだって過剰なくらい、アルカネットは体調を気遣ってくれているのだ。それはとても嬉しかった。

「また遊びに来るね」

 アルカネットはキュッリッキから離れると、にっこりと笑った。

「はい。楽しみに待っています」



第六章 勇気と決断 帰宅前夜 つづく



078 勇気と決断 父親たちの猛反発

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Comments 2

八少女 夕

おわっ?

こんばんは。

いつの間に、お話が二つも進んでいる! あれ?

ともかく、晴れて恋人同士になった二人に乾杯です。
メルヴィン、邪魔するおじ様たちと対峙する覚悟もできたみたいだし、頑張って!
リッキーは恋に関してはまだ半分子供みたいだから、彼、忍耐が必要かもしれませんね。

今回、リュリュたんが、いい味出していて、嬉しかったです。
暴走する二人を止めることができるのは、リュリュたんしかいませんものね。

嫉妬大爆発を表に出している御大はともかく、黙りこくっているアルカネットさんが、なんか怖い。お化粧品も、親切心からのプレゼントかもしれないけれど、なんか裏読みしてしまいます。
これまでがこれまでだけに……。

次回は、やっとライオンのみんなと再会かな。

楽しみにしていますね。

2015-10-13 (Tue) 04:29 | EDIT | REPLY |   

ユズキ

Re: おわっ?

八少女さんこんにちわヽ(・∀・)ノ

>いつの間に

ふふり(*´д`*)
やればできるのです!w(いつもやれと…
6章早く書き終えて、キリ絵のほうに取り掛かりませんと(;・∀・)

>忍耐が必要かもしれませんね。

そのへんは大丈夫でしょう。たぶん?w
焦らずゆっくりと、これからの関係を育てていく覚悟が出来ていますしね。
身体の関係を持つようになるには、キュッリッキさんの意識がもっとそだたないと絶対無理でしょう・・・。

>リュリュたんしかいませんものね。

男でありながら、女の心を持つリュリュたんですからね~(´∀`)
いつもは気にしてない風ですけど、ちゃんとキュッリッキさんのことを理解しているので、御大とアルカネットさんの八つ当たりは見過ごせなかったのです☆

>黙りこくっているアルカネットさんが

すっかり八少女さんの信頼を失ってますね(笑)
でも大丈夫です。今回は、単に化粧品を渡しにきて、お別れを言いに来ただけなのでw
もっとも、御大とアルカネットさんが、長々とキュッリッキさんと離れて暮らすとか耐えられるとは思えませんが・・・(にやり

>次回は、やっとライオンのみんなと再会かな。

そうなりますね(^ω^)
早めにアップしたいと思うので、よろしくお願いします☆

2015-10-13 (Tue) 16:17 | EDIT | REPLY |   

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