ALCHERA-片翼の召喚士- 088 第七章:召喚士 呼び出し

イラスト付きのキャラクター紹介記事、2年前くらいに描いたものとかあるし、内容も進んで明かせるエピソードもあるので、そろそろまったり追加修正やイラストの差し替えとかしたいなあ、と思い始める。

メルヴィンの顔とか今と全然チガウし(笑) 時間経つと変わるなあ。まるで長期連載の漫画のようだ(´_ゝ`)





ALCHERA-片翼の召喚士-
第七章 召喚士 呼び出し 088



 室内の隅々に響き渡るほどの大声で喘ぎ、女はシ・アティウスの背中にキツく爪を立ててしがみついていた。大きく尻を激しく突き上げられイキそうなのだ。しかしもう少しこの快感を愉しみ貪りたい気持ちもあり、爪を立てることで必死に我慢していた。だがシ・アティウスの腰の動きがいっそう早まり、そろそろフィニッシュだと気づいて我慢することをやめた。この男は一度果てると、二度目がないことを知っているからだ。

「さっさと服を着て出て行け、そろそろ来客がある」

 ズボンのベルトを締め直しながら、シ・アティウスは感情の伺えない声で言った。

 女は下半身をむき出しにしたまま、デスクの上に仰向けに寝そべっていた。前を隠そうともせず、美しいラインを描く腰をゆったりと揺り動かす。そうするだけで、いまだ身体に残る甘美な快感が、ゆるゆると下肢を痺れさせていた。そうしてもう少し余韻を味わっていたかったのだが、あまり粘っていてもたたき出されかねない。仕方なく女は身を起こすと、床に散らかる自らの衣服をつまみ上げて下着に足を通した。

「まだ物足りないわ」

「そのうちにな」

「なるべく早いうちにお願いね? 新所長様」

 下着の上に白衣だけを羽織ると、女はウィンクを残して颯爽と部屋を出ていった。



 女が出て行って暫くすると、ノックもせずにベルトルドとアルカネットとリュリュの三人組が姿を現した。騒々しさこの上ない、先頭のベルトルドが床を踏み鳴らし、喚きながら入ってきたからだ。

「全く、あのクソジジイ、この俺にトイレ掃除を押し付けやがってどういう了見だ!!」

「あーたがブロムストランド共和国の首都を壊滅させたからデショ」

「トイレ掃除ですんでよかったじゃありませんか」

 リュリュに引っ張られてハーメンリンナに戻ったベルトルドは、すぐさま皇王の呼び出しを受けた。そしてグローイ宮殿の謁見の間に入ると早々に、

「ばっかもーーーーーーーん!!!」

 と、謁見の間に轟く大声で、皇王から怒鳴られた。

「全くお前は加減というものをしないからケシカラン! 我が国に敵対していない国の首都を吹っ飛ばしてどういうつもりじゃ!!」

 玉座から身を乗り出して、唾を飛ばしながら皇王は怒鳴った。

 ライオン傭兵団に舞い込んだ仕事の件、そして、キュッリッキが突然会議室に乗り込んできてベルトルドを連れ出した件。それによってもたらされた、ブロムストランド共和国の悲劇。全て、皇王に報告されていた。

「………んーっと、結果オーライ?」

 きょとーんとした表情を浮かべ、首を傾げながら両手を上げて降参する。

 まるで反省の色なし、少しも謝ろうという気のないベルトルドの態度。

 普段ベルトルドに、能無しボケジジイなどと面と向かって言われているが、気にもしていないので好きなように言わせていた。が、今回ばかりは本気で怒っていた。何故なら、外交問題どころではないからである。

 いきなり国を飛び出し、首相ごと首都を吹っ飛ばしたというではないか。首都にいたブロムストランド共和国の人々の証言から、たった一人のサイ〈超能力〉使いに攻撃されたことはすぐに判明した。

 短時間で首都を吹っ飛ばせるサイ〈超能力〉使いなどそういない。世界中の人々が真っ先に思い浮かべるのは、ハワドウレ皇国の副宰相なのだ。ベルトルドのサイ〈超能力〉の実力は周知の事実である。しかし、何故ハワドウレ皇国の副宰相が宣言もなく、単独で他国の首都を吹き飛ばすのか、激しい疑問をそこに投げかける。また戦争が始まるのだろうかと、世界中の人々が不安に陥るのだ。先月モナルダ大陸で戦争が起きたばかりで、今度はウエケラ大陸かと。

 これ以上不穏な噂を広めるわけにはいかない。

 皇王の勅命で、この一件のもみ消し処理に、いま大勢の外交官やら報道官たちが大わらわで走り回っていた。世界中に知れ渡る前に、水際で食い止めるのだ。

「お前みたいな大馬鹿者は、反省しながら宮殿の全トイレの掃除でもしちょれ!」

 かくしてベルトルドは一週間にわたり、仕事が終わってからグローイ宮殿の全トイレ掃除を命じられたのだった。

「あの宮殿にトイレがいくつあると思っているんだ!! 自慢だが俺は掃除なんかしたこともないしトイレなんて掃除したことないんだ! それが仕事終わって一人でできるわけなかろう? 過労死させる気かっ」

「死ねばいいんですよ」

「ガルル」

 殺伐とした声で言うアルカネットに噛み付きそうな顔で睨むと、ベルトルドはフンッと鼻息を吐き出した。

「俺は絶対トイレ掃除なんかしてやんないっ!」

「なーに子供みたいな拗ね方してンのよ。さて、時間も押してるし本題に移るわ。ライオンの連中の仕事に首突っ込んで、面白いモノを見つけてきたの。召喚スキル〈才能〉持ちの王女サマよ」

「ほほう」

 それまで黙って会話を聞いていたシ・アティウスは、表情を動かすことなくメガネを押し上げた。リュリュは手にしていた書類をシ・アティウスに渡す。

「アレコレ理屈をつけて、アルカネットがハーメンリンナに連れてきたわ。今はマーニ宮殿にご滞在中」

 マーニ宮殿は貴族たちが暮らす東区に在る。外国からの賓客などをもてなし、滞在してもらうための宮殿だ。

 シ・アティウスは書類に目を通しながら、デスクにしまっていたファイルを取り出しクリップに挟んだ。

「これでキュッリッキ嬢を除く召喚スキル〈才能〉を持つ召喚士が、全部で15名揃ったわけですね。トゥーリ族やアイオン族の召喚士を連れてくるのは難しいでしょうし、この15名を使いましょうか」

「そうだな」

 ベルトルドは腕を組んで、意味ありげな笑みを浮かべる。

「十分とは言えませんが、結果は出せると思います。明日にでも全員ここに揃えて、キュッリッキ嬢にも対面していただきましょう」

 ベルトルドとアルカネットは頷き、リュリュはフンッと顎を引いた。

「ところでシ・アティウス」

「なんでしょうか」

「新所長になって、早速女を連れ込んではげんでいたようだな。さっきそこで色っぽい女とすれ違ったぞ。ありゃ下着の上に服を着ないで白衣を着ていた」

 嫌味ったらしくベルトルドが言うと、シ・アティウスは無表情のまま小さく肩をすくめた。すれ違っただけの割には具体的である。

「あなたから譲っていただいたこの部屋は、密会するのにちょうどいいですね。わざわざ官舎や倉庫で急いでやる必要がない」

「能面エロづらのくせに、やることはしっかりやってるんだな。さすがエロイ顔だ」

 なぜか大真面目に納得している。

「デスクワークは結構溜まりやすいもので」

「誰かさんは年がら年中頭の中が桃色天国でしょ」

「五月蝿いオカマ!」

 やれやれ、とベルトルドとリュリュを見やり、シ・アティウスは小さく息をついた。

 1週間ほど前に、アルケラ研究機関ケレヴィルの所長職を、ベルトルドから譲渡され引き継いだ。表向きの理由は、軍総帥職も兼任する身でケレヴィルの所長職まで身体的に辛い、というものだった。初夏には激務が続いて過労で倒れたこともある。副宰相という肩書きではあるが、実際この国を動かしているのはベルトルドなのだ。健康を理由に持ち出されては、皇王も首を縦に振るしかない。

 しかし真の理由は、シ・アティウスにケレヴィルの全権を渡すことで、ベルトルドが密かに進める計画を実行しやすくするためだった。シ・アティウスはケレヴィルの全てを把握しており、ケレヴィルで抑えてある、あらゆる情報やシステムを自在に使いこなせた。また、知識量も豊富であり、ベルトルドの仲間でもある。ケレヴィルの所長職はうってつけだった。

「どうしました、アルカネット?」

 黙って難しい顔をしているアルカネットに声をかけると、アルカネットは小さく首を横に振った。

「なんでもありません。彼らのくだらない会話に呆れていただけですよ」

「失敬な!」

「ベルがおバカなのよっ!」

「………五十歩百歩ですね」

「お前がエラソーに言うなエロ助!!」

 これには、シ・アティウスもアルカネットも、呆れたため息をついただけだった。



 キュッリッキはご機嫌で服を選んでいた。昨日メルヴィンと一緒にアジトに帰ってきて、夜はメルヴィンの部屋で一緒に眠った。メルヴィンの逞しい腕に抱かれて、幸せで幸せでぐっすりとよく眠れたのだ。そして今日は、メルヴィンと一緒に外へランチを食べに行こうとなって、オシャレのための服選びが楽しくて仕方がない。

「なに着ていこうかな~。メルヴィンがドキドキしちゃうようなの選ばなきゃ」

 鼻歌混じりに、ハンガーにかかったままの服をとって、身体にあてて鏡を覗き込む。

 ベルトルドとアルカネットによってライオン傭兵団のアジトに持ち込まれたキュッリッキの衣服は、アジトの中には到底収めきれなかった。そのためベルトルドは隣の家を強引に買収し――住んでいた住人を即日追い出した――速攻改修させ、アジトの壁をぶち抜いて建物内から移動できるようにしてしまった。そして、そこに衣装やらなにやら運び込み、衣服類と家の管理人も別に雇っている。

 たかが服のためにそこまでやるのか、とカーティスは呆れ果てたが、アジトに入りきらないんだからしょうがない。そう、自らを気合で納得させた。メンバーたちも二人の親バカぶりに呆れかえり、なにも言わなかった。

 10分ほど悩み、アランチョ・マンダリーノ色のカシュクールタイプのワンピースを選んだ。これにセーフカラーのベルトとパンプスを合わせる。自身の髪の毛の色が金色なので、どうかなと思いつつも、今日のラッキカラーが黄色系だったのでこれに決める。

 衣装部屋の隣には、着替えやメイクをするための部屋も設置されている。そこで、この衣装などの管理を任されているメイドのヨンナに、髪の毛のセットや化粧を手伝ってもらった。

「よくお似合いですよ、お嬢様」

「えへへ、ありがと」

 こうしていると、ベルトルド邸にいた頃と変わらないかも、とキュッリッキは思った。

「キューリちゃーん、アルカネットさんがきたわよぉ~」

「え?」

 マリオンが顔を出し、アルカネットが会いに来たと報せてくれた。

「なんでアルカネットさんがきたの?」

「さぁ…? まぁ、とにかくキューリちゃん呼んできてってぇ言われたわあ」

「ふーん…」

 急いで髪をまとめてもらうと、マリオンと共にアジトの建物に戻った。



「アルカネットさーん」

 玄関ホールに佇むアルカネットを、階段を駆け下りながら呼ぶ。すぐに優しい笑顔が出迎えてくれた。

「リッキーさん」

 眩しげに目を細め、アルカネットは駆け下りてきた少女を優しく抱きとめた。

「綺麗にオシャレしていますね。どこかへ行く予定だったのですか?」

「メルヴィンとランチを食べにくの」

 嬉しそうに言うキュッリッキに、アルカネットはどことなく寂しげな笑みを向けた。

「そうでしたか。申し訳ありませんが、ランチはまた後日にしていただけませんか?」

「え? どうして?」

 キュッリッキは目を丸くする。

「今から一緒に来ていただきたい場所があるのです」

「えー……」

「ベルトルド様からのご命令なのです。本当に申し訳ありません」

 キュッリッキは不満を満面に浮かべると、両方の頬をこれでもかと膨らませた。

「アルカネットさん」

 奥からメルヴィンとギャリーが出てきた。

「ああ、ちょうどよかった。これからリッキーさんをハーメンリンナにお連れします。デートのお約束があったようですが、後日に延ばしてください」

「え」

 メルヴィンは目を丸くし、キュッリッキを見る。頬をいっぱいに膨らませ、キュッリッキは不満を全身で表していた。

「ベルトルド様からのご命令なのです」

 それでは嫌とは言えないだろう。アルカネット自らがこうして迎えに来ている。

「……そうですか」

 ガッカリしたようにメルヴィンは言うと、キュッリッキの傍らに膝をついて、ほっそりした手をとる。気持ちは同じだよ、と目で訴えた。

「明日行こう」

 キュッリッキは膨れっ面を鎮めると、メルヴィンを見つめしょんぼりした顔で小さく頷いた。

「では行きましょうか、リッキーさん」

 キュッリッキの細い肩に優しく手を回し、アルカネットは外へいざなった。アジトの前には上等な馬車が待機していた。

 二人が乗り込むと、馬車はゆっくりと発車した。それを、メルヴィン、ギャリー、マリオンが見送る。

「おっさんの命令かぁ~。何のかしらねぇ、アルカネットさんが自ら迎えに来るなんてぇ」

「さーなあ……」

 ガシガシと頭を掻きながら、ギャリーはアジトの中へ戻る。

「アタシたちも入りましょ~よ」

「ええ…」

 メルヴィンは何度か馬車の消えた方を見ながら、マリオンと共にアジトに戻った。



 馬車はハーメンリンナの前で一旦止まると、御者が身分証を提示する。そして再び走り出し、馬車のままハーメンリンナの門をくぐった。

「あれ?」

 それまで膨れっ面で自分の膝を睨んでいたキュッリッキは、降りずにそのまま馬車が走り出して顔を上げた。

「馬車のまま中に入っちゃうの?」

「はい」

 アルカネットがにっこりと微笑みながら答えた。

「地上を滑るゴンドラと、徒歩で移動する地下通路、そして馬車など乗り物で移動するための、専用地下通路もあるのですよ。要人の移動や業者などは、よく活用したりします」

「へえ~、まだほかにも通路があったんだあ。アタシ初めて通るよ」

 馬車の窓から外を見ると、よく通る地下通路とまるきり同じだった。明るくて白い壁や天井、赤い絨毯の敷かれた通路。数字や場所の書かれたプレートが壁にはあり、地上に出るための階段もある。

「広いんだね、ハーメンリンナの地下って」

「ええ。地上があのようにゴンドラシステムになってしまいましたから、こうして地下を作って、利便性を上げるしかなかったのですよ」

「そっかあ~」

 明るくて清潔とは言え、こうして馬車も人間も、地上を歩いたり走ったりできればいいのに、とキュッリッキは思っていた。区画内は歩くことが出来るが、区画間移動はゴンドラを使わなくてはいけない。一見優雅なシステムだが、実際は面倒なのだ。汚れたら掃除をすればいいだけだし、これだけ広ければ臭だってこもらないだろう。温度調節ができるくらいだから、換気くらい楽勝なんじゃ、とキュッリッキは首をかしげていた。地下通路は換気が十分に行われているので臭いがこもったりしていないのだ。

 窓の外を見ながら百面相を作るキュッリッキを、アルカネットは愛おしげに見つめ、握っている手にそっと力を込めた。

「ねえ、これから何処へ行くの?」

「アルケラ研究機関ケレヴィルの本部です」

 ようやく行き先に興味をおぼえたキュッリッキがアルカネットを見ると、寸分も変わらぬ優しい笑顔があった。

「ケレヴィル……」

 僅かに聞き覚えのある名称。以前、ソレル王国のナルバ山の遺跡で、その名称を聞いたことがあったことを思い出した。

「あの、メガネの男の人のいるところ?」

 シ・アティウスのことだろうとアルカネットは頷く。

「アルケラのことを研究してるって言ってたよ。なんの用事があるんだろう」

「リッキーさんに会っていただきたい人達がいるのです」

「アタシに?」

「はい。是非」

 アルカネットは頷きつつ、更に笑みを深めた。


第七章 召喚士 呼び出し つづく



087 第七章 召喚士 アン=マリー女学院からの依頼・7

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