ALCHERA-片翼の召喚士- 093 第七章:召喚士 アルケラの巫女

このお話も、100話目が近づいてきましたね。100話になる頃は8章に突入している頃だと思う(・ω・) 100話記念とかなんかやりたいね~(気持ち的に!w)

現在中途半端に1万年前の出来事やユリディスについて触れていますが、後々完全な形で話に盛り込んでいくので、現時点では「ふーん」程度に気に留めておいてもらえるといいです。

しかし、御大はシリアスの続かない御仁だなあ、と、書いててつくづく思う。絶対バカなこと言って、周囲につっこまれてる(´_ゝ`)





ALCHERA-片翼の召喚士-
第七章 召喚士 アルケラの巫女 093



 この世界にはスキル〈才能〉というものが存在する。それは、一つの突出した能力で、必ず一人一つ、授かって生まれてくる。

 スキル〈才能〉は遺伝しない。両親と同じスキル〈才能〉を授かって生まれてくれば、それは偶然のことだ。

 シ・アティウスは記憶スキル〈才能〉を授かって生まれてきた。幼い頃は記憶スキル〈才能〉というものが、どんな役に立つのか理解に苦しんだ。しかし、成長していくにつれて、記憶スキル〈才能〉が素晴らしい能力であることを実感する。

 人間は興味のあることや衝撃的なことはよく覚えているが、興味のないことや関心のないものは大概忘れてしまう。しかし記憶スキル〈才能〉はそんな些細なことでも鮮明に脳裏に焼き付け、絶対に忘れることがない。目にしたもの、耳にしたこと、体感したことなどなんでも覚えてしまう。

 知識を吸収していくことが面白くなり、シ・アティウスは色々な書物を読み込み、旅に出かけて世界を巡り、先々で人々から色々な話を聞いた。

 その中で唯一理解に苦しむものがあった。

 召喚スキル〈才能〉である。

 生まれてスキル〈才能〉が確認されると、すぐ生国が召し上げ一般人たちからは隔離されて国が大切に面倒を見る。そのため、召喚スキル〈才能〉を持つ者と知己を得るのは不可能に近く、話すら聞けない。

 召喚スキル〈才能〉に関しては、子供でも知っているレベルしか伝わっておらず、一体どんなスキル〈才能〉なのか判らなかった。

 そこで、ハワドウレ皇国のアルケラ研究機関ケレヴィルに興味を持ち、いち研究員として働くことになった。神々の住む世界アルケラに関する事柄や、超古代文明なども調査研究する大きな組織だ。召喚スキル〈才能〉を調べるにも適している。

「お前、召喚スキル〈才能〉に興味があるのか?」

 ケレヴィルの所長を兼任する副宰相ベルトルドに、そう声をかけられ、以来ベルトルドの仲間となった。

 公私ともにベルトルドと一緒にいると、召喚スキル〈才能〉について色々なことを知り得るようになった。アルケラの存在、召喚士の本来の役割、1万年前の出来事などを知っていく。そんな中で、キュッリッキとの出会いは衝撃的だった。アルケラを実際視ることができて、神々と語り合い、神をこちら側の世界へ招き寄せることのできる本物の召喚士。

「アルケラの巫女……」

 囁くように呟いて、シ・アティウスは頷いた。

 ずっと疑問だったことの一つが、召喚士は何故アルケラ限定でしか召喚することができないのか、ということだ。何かを招き寄せるのなら、この世界の何を呼んでもいいはずだ。それなのに、神々の世界を覗き視て、そこからこちらの世界へと招き寄せる。

 何故アルケラでなくてはならなかったのか。

 その正体が巫女だというのなら、納得できる。

 神々と唯一直接語り合える乙女。

「1万年前は召喚士とは呼ばれず、アルケラの巫女と呼ばれていた。あまり遡っては判らないが、ヴィプネン族の中に生まれてくることが多かったらしい。それもあってヴィプネン族の統一国家は、神王国ソレルなどと言っていたようだ。――今と違ってアルケラの巫女は、神の言葉を人間に伝え、人間を正しく導く役目を担っていた。その生は千年に及び、代替わりする数年前に、次代の巫女が神から選ばれる。巫女は初潮を迎える頃に外見の年齢が止まり、女になる前の姿のまま千年生き続けるんだ」

 しみじみと語り、ベルトルドは切なげにため息をつく。

「男を知らずに千年も生きるとか、不憫でならないな」

「そういう不埒なことを考える人間がいるから、きっとフェンリルがそばで守っていたのでしょうね」

「………」

 ベルトルドは腕を組んだまま、口をへの字に曲げて眉をひくつかせた。

「フェンリルは巫女を守るために使わされた、ということですか」

「うん。歴代の巫女の傍らには、必ずフェンリルが付き添っている」

「なるほど」

 シ・アティウスは顎に手をあてる。

「ということは、キュッリッキ嬢は現代のアルケラの巫女というわけですか」

「そうだな」

「まさか、千年も生きるんでしょうか?」

「んー……、それは俺も判らん……」

 キュッリッキがいくつで初潮を迎えたかは知らないが、さすがに外見の成長は止まっていない。はずである。

「では、あの15名の召喚スキル〈才能〉を持っていた少女たちは、何なのです?」

 アルカネットが不思議そうに首をかしげる。

「フェイクだ」

 アルカネットとシ・アティウスは顔を見合わせる。

「1万年前のユリディスの悲劇が、そうさせたんだ。神は巫女を守るために、フェイクを用意することにした。万が一ヤルヴィレフト王家の者のような暴挙が巫女に及ばないよう、本物の巫女を守るためだけに用意されたフェイク、それがあの15名の召喚スキル〈才能〉を持たされた少女たちの存在理由だ」

 巫女であるキュッリッキを守るためだけに生まれてきた少女たち。同じ日に生を受け、そんな重い宿命を背負わされているとは知らずに、贅沢を謳歌してきた。召喚スキル〈才能〉を示す証はその特異な目だけ、召喚スキル〈才能〉が実際どんなものか、キュッリッキが現れるまで誰も知らなかった。だから本物か偽物かなど、判りようがない。

「ダエヴァたちに調べさせたが、アイオン族とトゥーリ族にも、やはり召喚スキル〈才能〉を持った者は数名存在していた。リッキーと同じように、7月7日に生まれた女児だ」

 フェイクは各種族に、均等にばら蒔かれていた。

「何故召喚スキル〈才能〉を持つ者を国が保護するか、どうしてそれが3種族で昔から決められていたのか。謎でしかなかったがな、神がそう仕組みを人間たちに仕込んだ。それなのにどういうわけか、リッキーはその仕組みの外に居た。それこそが、神の守護だったんだ。フェンリルを使わし、国の保護から外れさせた。リッキーからしてみたら、えらい迷惑な話だがな。不憫な境遇に落とし込んでも、それでも神は巫女の命を守りたかったのだろうな」

 片翼で生まれなくてはならなかったことも、それによって両親から捨てられたことも、全て神の仕組んだこと。そこまでして、巫女として生まれてきたキュッリッキを、神は守りたかったのだろうか。ベルトルドにはまるで理解できないことだ。他にいくらでも方法はあっただろうに、心を傷つけてまで何故そうしたのか。

「ユリディスの末路を考えれば、そうなりますね。良い方法とは思いませんが」

 本来尊ばれ、神と同等に扱われていた筈の地上の女神。しかしヤルヴィレフト王家は禁を破ってユリディスに手を出した。その結果、世界は半壊しかけ、多くの歴史を闇に葬り、9千年の時を経て、新たな歴史が紡がれ始めた。

 それが、今の世界。

「キュッリッキ嬢が生まれるまで、召喚士…アルケラの巫女が存在していた記録は残っていませんでした」

「おそらくユリディス以来の、初めてのアルケラの巫女誕生なのだろうな。もっとも、リッキーにはアルケラの巫女としての自覚もないし、神から巫女としての役目を言い渡されていない感じはする。どういうことなのかは不明だが」

 人間の未来を正しく導く、という意思は全く感じられないし、キュッリッキ自身ようやく安住の地を得たのだ。大勢の他人のことを考えられるようになるには、まだ時間がかかるだろう。自分のことで手一杯なのだから。

「さて、長話がすぎたな。俺とアルカネットは事後処理で皇都に戻る。こちらのことはお前に任せた」

「はい」

「戻るぞアルカネット」

「ええ」

 ベルトルドとアルカネットが空間転移でその場から瞬時に消えると、シ・アティウスはレディトゥス・システムへ目を向けた。

 フリングホルニの動力部中央へ設置されたレディトゥス・システム。これを運び込むなとヒューゴは言っていた。それによって何が引き起こされるか、シ・アティウスにはよく判っている。それを成す為だけに、ベルトルドは動いているのだから。しかしそれと同時に、あることもまた心を複雑にさせていた。

「あなたは恨むでしょうか、それとも、許すのでしょうか……」



 皇都イララクスは晴天、秋風も穏やかで気持ちのいい朝だった。

「おはよ~」

 キュッリッキが食堂に顔を出すと、眠そうな顔のまま紅茶を口に運ぶタルコットとランドンが手で挨拶を返してきた。

 この3人はいつも早起きで、朝食時間の30分前には身支度を整えて食堂にいる。

「おはようございます」

 その後メルヴィンとカーティスがきて、朝食時間ギリギリになりヴァルト以外が揃う。ヴァルトは朝食時間が終わる頃に、大きな牛乳缶を腕に抱えてあくびをしながら食堂に入ってくる。それでようやく全員が食堂に揃うのだった。

 食後の紅茶を飲みながら、キュッリッキは斜め向かいに座るカーティスを見る。

「カーティス、アタシこれからファニーと一緒に、ハーメンリンナへ行ってくるね」

「お買い物ですか?」

「うん。前から連れて行く約束してたの。ファニーが今日一日空いてるからって」

「そうですか、判りました。気をつけて行ってきてください」

「はーい。たぶん晩ご飯までには帰ってくるね」

 キュッリッキは嬉しそうに返事をすると、支度のために食堂を出て行った。

 皇王とベルトルドからの影の護衛を付けられていることは、カーティスから説明されていた。キュッリッキにとっては迷惑なことだったが、本来召喚スキル〈才能〉を持つキュッリッキは、ハーメンリンナの奥深く隠され市井に出歩くなどありえない身分なのだ。それを特大の特例で許されているぶん、こればかりはキュッリッキも飲むしかなかった。

 そして、ベルトルドを連れ出して、黙ってウエケラ大陸まで勝手に出かけて行ったことを叱られて、外出前には行き先と目的を言うことをカーティスに義務付けられていた。

 30分ほどかけて慣れない化粧を一生懸命して、あらかじめ選んでおいた服に着替えると、キュッリッキは元気に「いってきまーす」と言ってアジトを飛び出していった。

「オレらは誰か、ついていかなくていいのか?」

 爪楊枝で歯をいじりながらギャリーが言うと、カーティスはゆるゆると首をふった。

「ハーメンリンナへ行くのなら必要ありません。護衛たちに全て任せましょう」

「そっか」

「オレも一緒に行きたかったな~。ファニーちゃん胸おっきいし可愛いじゃん!」

 心底残念そうにルーファスが言うと、

「でもぉ、すんごぉ~~~っく鬱陶しがられてたわよぉ、ルー」

 とマリオンが笑う。

「マジでー……」

 情けない顔をしたあと、ルーファスはテーブルに突っ伏した。

「メルヴィンさん、久しぶりにチェスしませんか? 今日はキューリさんいないようだし」

「そうですね、お願いします」

 メルヴィンは紅茶のカップをテーブルに置くと、シビルに微笑んだ。



「ファニー」

 ハーメンリンナの城砦の前に佇んでいたファニーに、キュッリッキは手を振った。

「やほー、久しぶりね」

 ファニーと合流して、キュッリッキは門の衛兵に通行証を見せる。

「これはキュッリッキ様、お帰りなさいませ」

 若い衛兵はキュッリッキに恭しく一礼する。キュッリッキの存在は衛兵にも伝わっており、通行証を丁寧に返すと、ファニーに顔を向ける。

「こちらの女性は、お友達でしょうか?」

「うん。今日は一緒にお買い物するの、入れてもらってもいいでしょ?」

「もちろんでございます。ようこそ、ハーメンリンナへ」

 衛兵がにこやかにファニーに一礼する。

「お、お邪魔しますっ」

 しゃちほこばって挨拶すると、ファニーはキュッリッキの腕にしがみつく。

「ありがと。いこ、ファニー」

「う、うん」

「いってらっしゃいませ、ごゆっくり」

 衛兵に見送られ、キュッリッキとファニーはハーメンリンナに入っていった。



「なーんか、前もきたことあったけど、緊張するなあ」

「アタシも最初は緊張したけど、今はもう慣れちゃった」

 キュッリッキとファニーは並んで地下通路を歩く。

「しかし、ハーメンリンナってすごいトコだよね。地上を歩けないのは残念だけど」

「区画間移動はゴンドラか地下通路移動しかしちゃだめだって。ゴンドラのんびりすぎて、歩いたほうが早いんだもん」

「副宰相閣下に言って、法律変えてもらったら? そしたら上を歩けるじゃない」

「うーん、そんなにくるわけじゃないし、水曜日だけかなあ」

「なによ、水曜日だけって?」

「テレビ見に行くの、ベルトルドさんちに」

「………」

 テレビというものは、ハーメンリンナの外だと公共機関や資産家の家にくらいしかない。一般家庭には縁のないものである。ファニーは当然テレビなど見たこともないし、8月の国家中継を臨時設置モニターで見たことがある程度だ。

「あんたすっかり、お金持ちのお嬢様ねえ」

「なんか、アタシの実家はベルトルドさんちになってるんだって」

 キュッリッキの生い立ちについては、直接話を聞いている。ファニーはキュッリッキが自ら過去を打ち明けた友人の一人だ。そして、現在キュッリッキは国に認められた召喚士であることも聞いている。

「まあ、あんたは他の召喚スキル〈才能〉を持ってる人たちみたいに、本来贅沢三昧出来る身分なんだから、ハーメンリンナに住めばいいのに」

「そんなことしたら、メルヴィンと離れ離れになっちゃうじゃん」

「さっさと結婚して、一緒に住めばいいのよ」

「け、ケッコン!?」

 キュッリッキは思わずその場に飛び上がった。

「だって、いずれ結婚するでしょ? それが今か先かの話じゃない」

「そ、そうだけど…」

 耳まで真っ赤になりながら、キュッリッキはしどろもどろに両手の指先をつつきあう。

「あんたってば、その様子だと、まだセックスもしてないんじゃ」

「セックス?」

「そうよ、エッチしてないでしょ? メルヴィンさんと」

 キュッリッキはひどく不思議そうにファニーを見る。

「どんなことするの?」

 思わずファニーはズッコケそうになり、頭を抱えた。

「アタシの口から言わせるな……」

 ため息をこぼし、そしてキュッリッキの首を絞める。

「メルヴィンさんは大人の男でしょ! あんたがいつまでもそんなオコチャマじゃ、可哀想じゃないのっ!」

「ぐ……ぐるじぃ…」

「焦れったいから、裸でメルヴィンさんのベッドに飛び込んでみなさいよ! そしたら勢いでヤッてくれるわきっと!!」

「だ、ダメなんだもん!!」

「なんでよ」

「だってぇ……」

 キュッリッキは思わず自分の胸に目を向ける。

「ファニーのおっぱいみたく、おっきくないもん…」

「どーせこのままでもおっきくならないわよ。観念して抱かれちゃいなさい」

「ぶー」

 何をするかいまいち理解できていないが、裸を見せるのはまだ抵抗があった。

「ったく、よく我慢してもらえてるわね、メルヴィンさんに。いい加減オトナになんなさいよ」

「ファニーはエッチしたことあるの?」

「アタリマエデショ! あんたより3歳年上なのよ」

「おー」

 キュッリッキは思わずファニーを尊敬の眼差しで見つめる。しかし、実際何をしているかは全く理解していなかった。

「あ、ここの階段あがると、お店いっぱいのところに出る」

「おけー」

 二人は地上に出る階段をあがる。

 自然の光で一瞬目を細め、外に出ると、そこには上品な建物の数々が並ぶ場所に出た。ハーメンリンナの西区である。

「わお! 素敵なお店がいっぱいあるわね!」

 初めて見る西区の高級店に、ファニーの目が輝く。

「結構高いんだって。ファニーお金大丈夫なの?」

「ふふーん、6月に副宰相からた~んまり報酬もらってて懐あったかいのよ。今日はじゃんじゃんお買い物しちゃうぞ!」

 ナルバ山の遺跡調査のため、ケレヴィルに雇われていたファニーと、もう一人の友人ハドリーは、その後キュッリッキたちライオン傭兵団と行動を共にし、ベルトルドから莫大な報酬を支払われていた。この先10年は遊んで暮らせると、ハドリーから聞いている。

「まずは、あそこのブティックからよ!」

「ふぁーい」

 ファニーに手を引っ張られて入ったそこは、大人っぽいデザインの多い服が並ぶ店だった。

 可愛らしい顔立ちをしているが、年相応の大人の雰囲気を漂わせるファニーには、とても似合うデザインが多かった。

「やーん、迷っちゃうなあ」

「アタシには胸が余るのばっか……」

 服のサイズ表を見て、キュッリッキは眉を寄せた。

「そいえば、あの子たち胸おっきかったな」

「あの子たち?」

「うん。こないだ召喚スキル〈才能〉を持ってる子たちに会ったの」

「ほへ~、なに、いっぱいいたの?」

「十数人はいたかも。喧嘩しただけだったけど」

「なによそれ」

「ベルトルドさんやアルカネットさんが大好きみたいで、アタシに嫉妬してた」

「ふーん、まあ、見た目はカッコイイ感じだもんね、あの二人」

「おんなじスキル〈才能〉持ってる子に初めて会えたのに、仲良くできなくって残念だった」

「まあ、あんたもこうしてハーメンリンナにこれるわけだから、そのうちまた会えるわよ」

「そうだね」



第七章 召喚士 アルケラの巫女 つづく



092 第七章 ユリディスの記憶

目次へ戻る


関連記事
オリジナルファンタジー小説

Comments 0

Leave a reply