ALCHERA-片翼の召喚士- 122 第九章:戦い ダブルスキル〈才能〉を持つ男

続きでっす。

それにしても、涼しくなったを通り越して寒いナ・・・。暑いより寒いほうが大好きだけど、春や秋の、中間気温期間がなさすぎて、軽い風邪っぽい。

バカは風邪ひかないていうけど、バカは健康管理出来ないから風邪ひくんだぜ(えっへん☆





ALCHERA-片翼の召喚士-
第九章 戦い ダブルスキル〈才能〉を持つ男 122



 血まみれで、仰向けに床に転がるガエルを見おろし、アルカネットは小さく鼻を鳴らした。正面に視線を向けると、床に這いつくばるように、息の荒いカーティスやギャリーたちがいる。

 ベルトルドとメルヴィンたちのパーティが戦闘を開始した頃、アルカネットをとどめていたガエルたちは、あまりの猛攻撃に満身創痍だった。

「先程までの、小生意気な威勢はどうしたのでしょう? そんな無様では、私が楽しめないではないですか」

 背にはやした漆黒の片翼を軽く羽ばたかせ、アルカネットはニヤリとほくそ笑んだ。羽ばたきとともに、抜けたいくつかの黒い羽が宙を舞う。

(化物プラス、悪魔だありゃ……。いや、魔王とか魔神の類かもしれん)

 魔剣シラーに寄りかかりながら、ギャリーは肩で荒い息をつく。とにかく普通の人間とは規格外、という点では、当たらずも遠からずな表現ばかりが浮かんでくる。それには「やれやれ…」といった雰囲気の仲間たちの同意が、念話で静かに流れていた。

 アルカネットの中の仮面(ペルソナ)が消え去ってから、アルカネットの繰り出す攻撃は、ますます苛烈を極めた。

 これまでの高位攻撃魔法の連続に加え、ルーファスが透視し指摘したように、サイ〈超能力〉も使い始めたのだ。生憎サイ〈超能力〉のほうは、ベルトルドに比べると威力は遥かに落ちるものの、空間転移で攻撃をことごとくかわされて厄介だった。

 転移によって意表を突いた場所から、強烈な魔法攻撃を叩きつけられるので、ルーファスの防御では手がまわらず、急遽カーティスも防御支援に回る。

 遠隔攻撃を得意とするザカリーの銃撃も、不意をつくペルラの攻撃も、空間転移でかわされ当てることができずにいた。

(どうも考えが足りなかったというか、当てが外れすぎたというか……。ベルトルド卿のほうへ、支援組みを回しすぎたようです)

 深々とため息をつきながら、カーティスは簾のような前髪の奥の目を細めた。せめてシビルでもこの場に残しておけば、防御と回復を任せられた。なまじベルトルドの強力なサイ〈超能力〉による攻撃を考えると、あれでも足りないくらい、と思っていたからだ。

(まっさかサイ〈超能力〉まで使うなんて、誰も知らなかったんだからしょーがないよ~~)

 乱れた髪を手櫛で整えながら、ルーファスもひっそりと息をつく。

 本来スキル〈才能〉というものは、一つだけを授かり生まれてくる。二つのスキル〈才能〉を、まして、レアスキル〈才能〉と呼ばれる魔法とサイ〈超能力〉を両方備えているなど、誰が想像できよう。過去を遡っても、そんな記録はどこにも残っていない。もしかしたら公にされていないだけかもしれなかったが、それでも魔法とサイ〈超能力〉のダブルスキル〈才能〉など発覚すれば、すぐさま世界中に広まるだろう。

 それなりに付き合いはあったが、よくも徹底して隠し通せたものだと、ルーファスは呆れてしまっていた。

 開幕戦で高位の攻撃魔法を連打し続けたハーマンは、魔力の消耗が激しく、疲労の局地にあるため下がらせている。ガエルも息が上がってきていたため、カーティスとギャリーのコンビが前に出た。すると、サイ〈超能力〉を絡めたアルカネットの猛攻撃が始まって、あっという間にのされる有様だ。

 なんとか場をしのぐためにガエルが無理をしたが、疲労で注意力が削げていたルーファスの防御が半端となってしまい、ガエルはかなりの深手をおってしまっていた。

(早くガエルの止血をしないと……)

 マーゴットが沈痛な声を念話にこぼすが、そんなことはカーティスも百も承知だ。

 アルカネット寄りにガエルは倒れている。今飛び出してガエルを回収しようとしても、アルカネットからの攻撃を浴びる羽目になる。

 みんなまだ息も整っていない。その状態で飛び出せば、ミイラ取りになるのだ。

 それがよく判っているのか、アルカネットはその場で不敵な笑みを浮かべ、カーティスたちを見ている。とくに攻撃姿勢をとるわけでもなく、襲って来いと言わんばかりだ。

(昔っから、あのドS野郎は、インケンで度し難いと思っていたがよ、今の”アルカネット”は、更にパワーアップしてんな……)

 ギャリーは正規部隊にいた頃、捕虜を捉えると、引渡しのために尋問・拷問部隊の本部へ行くことがよくあった。

 捕虜がただの三下の場合は、部隊の隊員が担当に当たる。よほどの大物クラスになると、より慎重に情報を執る為に、上官クラスが出向く。しかしアルカネットは、よほど忙しくないとき以外は、ほとんど自らが担当に出向いていた。

 尋問は部下に任せているが、拷問は自ら執り行う。

 引渡しが終わったあとも、書類上の手続き等で本部で待機していると、捕虜の悲痛な叫びが轟渡った。余りにもすごい声なので、わずかな興味で覗きに行って、心底後悔したものだ。

 尋問に当たっているアルカネットの部下たちは、すでに神経も感情も麻痺したのか、淡々とした表情で職務に精励していた。その横で、優美なまでの微笑みを浮かべた顔で、手の指の爪を剥がしたり、魔法で作り出した火や雷で、ジワジワと皮膚を焼いたりしているアルカネットは、吐き気をもよおすほど残酷だった。

 カーティスもザカリーも、あの残酷な光景には何度か出会っている。

(オレのときは、太ももの肉をナイフで削ぎ落としていたぞ…)

 ザカリーが青ざめた顔を、ガックリと俯かせる。

(私の時は、大きく切り裂かれた傷口に、指を突っ込んで、グリグリとイジリまわしていました)

 あの優美な微笑み顔で、とカーティスはゲンナリと肩をすくめた。

(今は精神的に堪える攻撃だよな…。やっぱ、ドSだぜ)

 思い出したくもない思い出が一気に蘇り、3人は渋面を作ってため息をついた。

 残酷なまでの光景を見たこともなかったマーゴット、ペルラは、ルーファスの念話で精神がつながっていることで、彼らの思い出が映像として流れ込んできて頭を振る。

(コラコラ、余計なこと思い出さないの!)

 二人の様子に気づいて、ルーファスが慌てて窘めた。

(ああ……悪りぃ)

 ギャリーは苦笑を浮かべて頭を掻いた。

(出し惜しみしてる場合じゃないかな、アレ使おう)

 ルーファスはジャケットのポケットをゴソゴソして、小さな包を取り出す。

(それ)

 包を見てハッとしたように、カーティスも上着のポケットから同じものを取り出した。

 白い包み紙を開くと、赤い小さな粒状の薬が3個入っていた。

(ヴィヒトリ特製速攻効く、疲労回復、体力回復、気力回復、精力増強、増血、痛み止め、精神安定、栄養その他諸々の効果満点ハイパーウルトラスペシャルドーピング薬。これをついに使う時が来たね!)

 カーティスとギャリーは、自分の掌に乗っかる赤い粒を、物凄く嫌そうに見つめた。

(これ使った後って、廃人になるって、言ってませんでしたっけ……)

(女見ても勃たなくなる、とも言ってたな)

(そこはっ! あとで作った本人に治してもらえばいいよ!!)

 勃たなくなるのは困るけど! とルーファスは首を横に振る。

(とにかく勝つしかないんだし、今のままじゃ、どのみち殺されるのがオチだよ)

(そうだね、どーせ向こうは反則のダブルスキル〈才能〉なんだから、こっちだってドーピングくらいアタリマエだよ!)

 ハーマンは手にしていた赤い粒を3個とも、勢いよく口に放り込み、ためらわず飲み込んだ。すると、数秒たらずで、ハーマンの目に生気が戻り、魔力の昂ぶりが感じられ始めた。

(そうですね、躊躇ってる場合じゃありません。でも、ザカリー、ペルラ、マーゴットの3人は使用しないでください)

 カーティスに言われて、3人は頷く。薬の世話になるほどの疲労は、まだ迎えていないからだ。

 ルーファス、ギャリー、カーティスは薬を飲み込むと、ゆっくりと立ち上がった。



(おや…)

 何やら口にしているようなと、彼らの様子を見ていたアルカネットは、半死状態のライオン傭兵団が、急に蘇ったのを感じて目を見開く。

(ドーピングでもしたのでしょうか。まあ、いいでしょう)

 アルカネットは近くに倒れるガエルを、思い切りカーティス目掛けて蹴り飛ばした。

 不意をつかれてカーティスは慌てたが、ギャリーがすぐさまガエルをキャッチする。

(ペルラ、ガエルにも薬飲ませろ)

(うん、判った)

 ギャリーからガエルを受け取り、ペルラは薬を3粒ガエルの口に含ませた。そして、すぐさまカーティスはガエルの止血をするために、回復魔法をかける。

「乱暴に扱ってくれるじゃねえか、え? オイ」

「何やらあなた方が回復してきたようなので、そこの野獣もついでに、回復してあげなさい。もっと闘いを楽しみましょう」

 嘲笑を含んだアルカネットの顔を睨みつけ、ギャリーはシラーを担ぎ直した。

「オレはな、御大もテメーも大嫌いだがよ、それでも多少は、御大のほうがマシだと思ってる。いい年こいて、愛嬌だけはあったからな、あの胸糞悪い尊大さの中にも」

「直接本人に言っておあげなさい。喜ぶと思いますよ、本当に」

「気色悪いっ! てぇ、一蹴されるだけだな」

「同感です」

(ガエルが復活するまで、オレが相手する。ルー、ハーマン、行くぜ!)

(おっけー!)

(ぶっ殺ーす!!)

 ギャリーは魔剣シラーを担いだまま、前に走り出した。

 転移でかわされるのを覚悟で、アルカネット目掛けて大きく振りかぶる。

 黄金で作られている刀身は、室内の明るさに煌きを放ちながら、アルカネットに襲いかかった。

 ブンッという唸りを上げたシラーは、アルカネットの繰り出す漆黒の翼で動きを止められた。

「チッ、なんて硬さだオイ」

 柄を両手で握り締め、体重を乗せて押し込むが、翼はピクリとも動かない。

「無駄ですよ。私の強化魔法がかけられていますから」

「うっせ」

 空間転移で攻撃をかわされなかっただけマシだと思い、ギャリーは更に腕に力を込める。

「シラー、形状変化!」

 ギャリーの命令を受け、シラーの黄金の刀身が、強い金色の光を放ちだした。

「!?」

「へへっ、こいつも魔剣の一つだってこと、忘れてんじゃねえってえの!」

 刀身を包んでいた光は膨れ上がり、弾けるようにして爆発した。

「なにっ!」

 金色の光の粒子が辺りを煌めかせ、突如そこから7匹の黄金の蛇が躍り出ると、アルカネットを包囲するように広がり食らいつき始めた。

 黄金の蛇は、それぞれが別の意思を持っているかのように、バラバラに襲い始めた。

 アルカネットは翼で払いながら、防御魔法で全身を包み込むように展開しつつ、雷属性の魔力を放って蛇を打ち消そうとするが、魔力は全て弾かれていく。

 ギャリーはアルカネットから3歩離れた位置で、グッとシラーの柄を握り締めていた。

 縦横無尽に荒れ狂うシラーは、手を離すともっと一大事になる。

 敵味方の識別がつかなくなるのだ。

「全く、リヴヤーターン・モードまで使わされる羽目になるたぁな…」

 魔剣シラーの、奥の手だった。

 黄金の蛇たちは、漆黒の翼が一番の障壁だと認識したのか、7匹全てが翼に食らいつき始めた。

 その身から放たれる黄金の光で、翼に張られた強化魔法を打ち消しながら、黒い羽根をむしり取る。

「忌々しいっ…!」

 アルカネットは舌打ちすると、片手を頭上に振り上げた。

「イラアルータ・トニトルス!!」

「げっ」

 室内が真っ白に発光するほどの巨大な雷が、アルカネットの全身に降り注いだ。

「なんちゅーことをっ!」

「無茶苦茶だあ~~~」

 ルーファスとハーマンが、慌ててギャリーを守る強力な防御結界を張り巡らせた。

 イラアルータ・トニトルスが落ちた衝撃で吹っ飛ばされたギャリーは、二重の防御結界で無傷だったが、仰向けに倒れて、些か背中を強く打ち付けた。

「いってぇ……」

 シラーの黄金の刀身は、元の一つの刀に戻っていた。イラアルータ・トニトルスの衝撃で、元に戻されてしまったようだ。

 やがて発光と白煙がおさまってくると、肩で荒い息をつくアルカネットが立っていた。

「リヴヤーターン・モードですか…。私の知らない隠し芸が、まだ残っていたとは。巫山戯た真似をしてくれたものです」

 眉間にシワを寄せ、アルカネットはギャリーを睨みつけた。

「自分にイラアルータ・トニトルスをぶちかますとは、さすがに思わなかったぜ」

 身体を起こしながら、ギャリーは薄く笑った。

「オレたちの力は屁の河童でも、自分の力じゃ大ダメージもらってんじゃね?」

 立ち上がってシラーを構え、ギャリーは嫌味を吐きつける。

 実際、自らのイラアルータ・トニトルスを浴びたアルカネットは、見た目でも消耗しているのが、ようやく判る状態になっていた。それほどの魔力を投入しないと、シラーのリヴヤーターン・モードを弾き飛ばせなかったのだ。

「やはり、接近戦は相性が悪いですね。調子に乗りすぎたようです……自重しなければ」

 忌々しげに口元を歪め、アルカネットは自らを嗜める。

「調子に乗ってくれた方が、やりやすかったんだがよ」

 残念そうにギャリーは息をついた。

 また空間転移を乱用され、死角から魔法攻撃されると分が悪い。

(おい、ギャリー)

(あん?)

(そろそろオレにも出番くれ。リュリュさんからもらった魔弾が、てんこ盛りで余りまくりなんだよ……)

(へへっ、そーだなあ……)

 魔剣シラーのリヴヤーターン・モードは、敵を自動追尾する。空間転移されても、自ら追いかけるのでいいが、射撃は的がフラフラしていると当てづらい。さすがに魔銃バーガットでも、撃った魔弾が自動追尾する機能までは有していないのだ。

 サイ〈超能力〉は精神力によってコントロールされる。集中力も規格外のアルカネットの精神を、大混乱に陥らせることができれば、空間転移の乱用だけは阻止できるかもしれない。

(だったらもう、ドンパチのオンパレードで、攪乱攻撃しかないよね!)

 ルーファスの提案に、皆神妙に唸った。

(おそらくそれでいいだろう…)

 ずしりとした声が割って入り、ようやくガエルが意識を取り戻した。

(ハーマンの魔法乱舞、ギャリーのリヴヤーターン・モード、ザカリーの魔弾連打で攪乱し、ペルラのアサシン能力で的確に位置を狙って短剣を放ち、ルーとカーティスが防御結界を張って皆を援護だ。そして、マーゴットも攻撃魔法を使え)

(えっ!?)

 常に蚊帳の外に置かれていたマーゴットは、いきなり役割を振られて激しく動揺した。

(とにかく攻撃魔法を使え。コントロールなんて繊細なことは考えなくていい、攪乱が目的だからな)

(でも私、そんな…いきなり)

(ここは戦場だ。ついてきたのなら、役に立て)

 突っぱねるように言われ、マーゴットはカーティスを見る。しかし、カーティスはいつものように、庇い立てはしてくれなかった。顔も振り向けず、背中が拒絶しているのが見て判る。

 マーゴットは拗ねたように顔をしかめると、ギュッと握った自分の手の甲を、鋭く睨みつけた。

 傭兵として、これまで戦闘では殆ど役に立ったことはない。得意な――だと思い込んでいる――回復魔法すら使わせてもらえない。せいぜいが、夜道を照らす明かり係か、野宿の時の焚き火に火をつけるくらいである。

 何もしなくても、みんなと同じ報酬をもらっていた。仲間だから、当然だと思っていた。

 キュッリッキを助けるために同行したが、本音では嫌だった。

 カーティスの恋人であり、ライオン傭兵団のマスコット的存在だったのに、キュッリッキがきてからすっかりその座を追われてしまった。挙句、後ろ盾のベルトルドやアルカネットに溺愛され、みんなもチヤホヤしてやまない。

 攻撃魔法は得意ではない。それなのに、使って役に立てと言われてしまった。

(マーゴット、今後、傭兵を続けていきたいのなら、ガエルの指示に従ってください。それができなければ、もうウチには必要ありません)

「そんなっ」

 思わず口をついて、マーゴットは腰を浮かせた。カーティスからそんな言葉を聞く日がくるとは、思いもよらなかった。

「ちんたら昼ドラしてる暇はねえよ、行くぞ!」

 ギャリーの号令に、ハーマンとザカリーは攻撃を開始した。ギャリーは再びシラーに命じると、リヴヤーターン・モードを発動させてアルカネットに向けた。

 案の定アルカネットは、空間転移を使って攻撃をかわしはじめた。しかし、アルカネットが移動してきた場所へ、すかさずペルラが短剣を放つ。防御魔法でアルカネットの身を貫くことはできなかったが、それでも逃げた場所へ短剣が確実に飛んでくることで、アルカネットは僅かに動揺していた。

 魔法やサイ〈超能力〉に対抗するために、編み出されたアサシン技術。ペルラはアサシンのエキスパートでもあるのだ。

 無秩序に飛び交うライオン傭兵団の攻撃に、アルカネットは徐々に押され始めた。

「猪口才な……ぬっ」

 その攻撃に、新たな攻撃魔法が加わって、アルカネットは少し目を見張る。

 普段何もせず後ろに隠れているマーゴットが、お粗末な攻撃魔法を仕掛けてきているのだ。

 あの程度は攻撃の数にもならないが、それでも目障りなこと、この上なかった。

「やればできるじゃねーかよ」

 ニヤリと口元を歪ませギャリーが言うと、マーゴットはツンッとそっぽを向いた。



 使い慣れない空間転移を乱用しすぎて、アルカネットはガエルたちが考える以上に、激しく気力と体力を消耗していた。

 戦闘での消耗もあったが、31年も存在し続けた仮面(ペルソナ)人格を駆逐する為に、精神力を大量に使っていたからだ。

 サイ〈超能力〉を攻撃の形で使うのは、これが初めてだった。普段はほぼテレパスにサイ〈超能力〉は働いており、それも受信オンリーである。サイ〈超能力〉のコントロール訓練等受けてもいないし、隠れて練習も何もしたことがない。いきなり実戦で使っているから、精神力の配分がまだ掴めていなかった。そこへ、この室内の結界維持と、本来の魔法コントロールが重なり、精神と身体への負担は甚大だった。

 疲労しているところなど、絶対彼らに気づかれるわけにはいかない――。

 そう思った瞬間、アルカネットは自らに激怒した。

(この私が疲労していると!? これから神を倒しに行くというのに、あんなゴミごときに、押されているなどありえない事です)

 宣言時間はとっくに過ぎており、そればかりか大幅に時間をとっている。しかも、まだ目の前の彼らには、死人が出ていない。負傷はしているが、ドーピングでピンピンしているのだ。

 リューディアの復讐を遂げるまで、こんなところで足踏みしている場合ではない。

 もう、神へ手の届くところまできている。

 フリングホルニはすでに大気圏を抜けている。月までは船の空間跳躍システムを使えば、すぐ到達できるのだ。

 レディトゥス・システムに向かったメルヴィンたちの存在も気になる。ベルトルドが死守しているが、果たしてあちらの状況はどうなっているのか。

 ここまできて、煩わされることが多すぎる。

 アルカネットは大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。端整な顔には落ち着きが戻り、優美な笑みが、ゆっくりと広がっていく。

「まだまだ、甚振り度が足りないようですね」



第九章 戦い ダブルスキル〈才能〉を持つ男 つづく



121 第九章 戦い フェンリル救出

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Comments 4

涼音

今日は。
こちらも険しい戦いをしていますね^^;

アルカネットさん凄い!
そしてみんなも頑張ってる♪

しかし……、マーゴット、甘やかされて来たからねぇ(笑)
それにマーゴットからしてみればリッキーで邪魔者なんだろうし^^;
でも、ライオン傭兵団の一員なんだし、いつも余裕のある戦いが出来る訳もなく、一緒にいる以上はやらなきゃならない時もくるよね。
ホント、カーティスも余裕ないし、この状況で見てるだけじゃ済まされないよね。
いざと言う時に使い物にならないんならホント今後ライオン傭兵団に要らないだろうし。その内カーティスからも見放されちゃうぞ。
まぁマーゴットをこんなにしてしまったのはカーティスであり傭兵団の仲間たちなんだろうけどさぁ(笑)
やればできるんだから、頑張ろう♪

アルカネットさんは色々と想像を絶する精神的&肉体的消耗に悩まされているようですが、目的達成目の前にして、敵にそれを悟られるわけにはいかないだろうし、諦められる筈もなく……。
で、御大の戦況も分からず……。
これで御大側の状況分かって、リッキー救出された話聞いたら、怒りにブチ切れて壊れそうでちょっと怖い^^;

とにかく皆頑張れ~♪

2016-10-16 (Sun) 15:06 | EDIT | REPLY |   

ユズキ

Re: タイトルなし

涼音さんこんばんわヽ(・∀・)ノ

>アルカネットさん凄い!

この世界の常識をぶっ壊す猛攻撃です(笑)
でも相手にしているのはライオン傭兵団なので、予想外に苦戦を強いられ中です。

>それにマーゴットからしてみればリッキーで邪魔者なんだろうし^^;

自分の座を脅かす、というより追い出した張本人ですし、どちらかというと、キュッリッキさんだからキライ、てわけじゃなく、自分の邪魔になるなら誰でもキライ、てかんじですね~。
カーティスが自分のオンナだから、で散々甘やかして融通きかせてきたものだから、殴られる以上に、自分の立場を痛感したでしょう。
いわゆる姫キャラってやつですw

>怒りにブチ切れて壊れそうでちょっと怖い^^;

ギャリーたちをスルーして、すっ飛んで行っちゃいますね(笑)
でも次回いよいよっ! です><!

2016-10-17 (Mon) 01:30 | EDIT | REPLY |   

八少女 夕

あわわ

おはようございます。

ガエルが〜!
なんとか回復したようでよかったですけれど。

アルカネット、さすがに強いですが、ライオンのみんなも負けていない!

他のことはともかく、マーゴットにとっては、こうなったのはいいことじゃないかなぁ。
リーダーの恋人だから実力はなくてもいられただけから、少しでも実戦で戦うことができるのって大事ですよね。

それにアルカネットもすごい正攻法は予測できても、本人にもコントロールできない下手な魔法って面倒じゃないかしら。

あとは、向こうチームが合流するまで持ちこたえてほしい。それもみんな生き残って!

続き、楽しみにしていますね。

2016-10-17 (Mon) 08:25 | EDIT | REPLY |   

ユズキ

Re: あわわ

八少女さんおはようございますヽ(・∀・)ノ

更新作業中にコメントいただいたみたいですw
日本に戻られているようで、おかえりなさーい!
今日は生憎雨で寒いですね~>< 九州の方は暑そうなんですががg

>ガエルが〜!

大丈夫です、今回エグイ大活躍をしています|д゚)☆

>マーゴットにとっては、こうなったのはいいことじゃないかなぁ。

存在を覚えてもらっているだけまだマシですね(笑)
彼女はかなりの頑固なので、今回は選択肢がなさすぎて、渋々攻撃参加はしましたが、なかなか変われないでしょうw

そろそろ終章です。
今月はリク絵を意地でも! て目標があるので、11月頑張らないと今年終わらせる宣言が危なくなってきた(゚д゚)!
続きもよろしくでっす!

2016-10-17 (Mon) 09:01 | EDIT | REPLY |   

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