ALCHERA-片翼の召喚士- 124 第九章:戦い アウリスの末裔

ああ、寒くなってきたね~。と思ったら、今日はあっつぃ・・・。

9章の終わりも見えてきて、最終章がもうじきです。

この話を思いついてブログに載せ始めた頃、あらすじ、に猛烈に悩みました。ものすごい短い文章で、パっと見た人に興味を持ってもらえる内容に凝縮して書く。そういう作業が大の苦手です。

ずっと読んでくださっている方々には判っていただけると思いますが、主人公が関わっていく内容、御大の悪巧みの内容、主人公と敵対する真の敵。そういうのが後半戦に持ち込まれるので、あまり前半で書けないンデスヨ。そこをあえて、ぼかしながら、面白く書く才能に欠けているから、余計うまく書けないという><

ジャンルも、以前涼音さんに表現してもらった、ハードスペクタクル恋愛ファンタジー、とでも、改めて銘打とうかなー。順を追って話を進めているから、あまり早い段階で「どこが恋愛?」になってしまうので、どうしようか悩んでほったらかしに(´_ゝ`) でもこの話、ベタな恋愛ではないけど、テーマは間違いなく恋愛です(笑)

今年も2ヶ月ちょっと、年内完結イケルカナー><!





ALCHERA-片翼の召喚士-
第九章 戦い アウリスの末裔 124



「いやぁ~、ラクチン~、ラクチンっ」

 ふかふかな黒い毛並みに座り、マリオンは鼻歌を歌いながら上機嫌に笑う。それにつられるように、タルコットも深々と頷いた。

「始めっからこうしていたら、もっと早かったんだよ」

「うるさいぞーオマエタチ! キュッリッキの命令じゃなかったら、絶対乗せてなんてやらないんだからナー」

 フローズヴィトニルは大きな狼形態になって、その背にマリオン、タルコット、ヴァルト、ランドン、ブルニタルを乗せている。

「文句言わないの!」

 前を向いたままのキュッリッキに叱られて、フローズヴィトニルはブスッと眉間に皺を刻んだ。

 レディトゥス・システムからキュッリッキを救い出し、フェンリルも救い出したメルヴィンたちは、状況が把握できないアルカネットサイドのほうへ、急いで向かっていた。

 キュッリッキの命令で、フェンリルとフローズヴィトニルは大きな狼の姿に戻り、それぞれライオンのメンバーと、シ・アティウスを乗せて走っていた。

「ナビゲートは、その……いりませんか?」

 フローズヴィトニルに乗ってるブルニタルが、恐る恐る誰にともなく問いかける。

「問題ない。あの男の気配を辿っている」

「は、はい」

 フェンリルの低い声が応じて、ブルニタルは思わず背筋を伸ばした。いつもの仔犬姿のフェンリルに見慣れていて、しかも喋るものだから、ブルニタルは調子が狂う思いでひっそりとため息をついた。以前ナルバ山で狼形態に乗せてもらったことはあるが、さすがに怖い、と思ってしまうからだった。

 フェンリルの言うあの男とは、急に姿をくらませたベルトルドのことである。

 まさにメルヴィンの息の根を止めようとしていた矢先、突如空間転移で動力部から姿を消してしまったのだ。そのベルトルドはアルカネットのほうへ行っており、そちらは大パニックに陥っているらしい。

 マリオンがあちらのメンバーと連絡を取ろうと念話を試みていたが、ノイズが激しく、また、ルーファスも混乱していて送受信できないという。

 化け物級の二人が集えば、それは大パニックになるだろう。

 無駄に広すぎる艦内の通路を、風のように駆け抜け、目的地に到着する。

「着いたぞ」

 エグザイル・システムの部屋へ飛び込んだフェンリルとフローズヴィトニルは、思わず急ブレーキをかけて立ち止まった。その拍子に、シビルが前に投げ出されて、床をコロコロと転がる。

「うにゃ~~ん、キューに止まらないでくださいよー」

「いや、それどころじゃねーし」

「はえ?」

 軽く頭を振って見上げると、すぐそばにザカリーが立っていた。そのザカリーが向けている目線を辿るように前方に目を向け、シビルは尻尾を逆立てて仰天した。

「ンなっ! なななななななんですかアレ!?」



 タルコットもランドンも、思わず目を見張ってそれを凝視した。しかし、ヴァルトは目をキラキラさせながら、勢いよくフローズヴィトニルから飛び降りる。

「でっけートカゲ!!」

「しかもぉ、プラチナで出来てるじゃなあ~ぃ、あの鱗ぉ」

 マリオンも目をキラキラさせながら、胸の前で手を合わせた。売れば一枚いくらだろう、とその目が物語っていた。

「オメーらの発想は、どこのベクトルを向いてやがんだええ!?」

 大声でギャリーに怒鳴られて、ヴァルトとマリオンは口を尖らせる。急いで駆けつけてきたが、どうやら元気そうである。

「あら~ん、生きてたのぉ」

「ったりめーだ!」

「なーよ、アレまじでなんだ?」

 呑気そうにヴァルトが言うと、ギャリーは肩をすくめる。

「御大だ」

「へ?」

 ヴァルトとマリオンは揃って固まった。



 フェンリルの背に乗りながら、メルヴィンは呆気にとられて、目の前の状況を見つめていた。しかしキュッリッキは、床に倒れているアルカネットに気づいて顔を蒼白にすると、フェンリルから飛び降りて、転げるように駆け出した。

「リッキー?」

 それに気づいて、メルヴィンも慌ててフェンリルから飛び降りて追いかける。

 キュッリッキはアルカネットの傍らに座り込み、そして口を両手で塞いだ。

(アルカネットさん……)

 追いついたメルヴィンは、アルカネットの遺体を見下ろし絶句した。

 目を剥いたまま、血まみれで死んでいる。胸には大きな穴があいていて、見るも無残な有様だ。

 神を引っ張り出さないと、倒すことができないとまで言われた、世界最強の魔法使いの成れの果てである。穴の大きさと怪我の具合から、ガエルの拳に貫かれたということは判る。どれほどの死闘を繰り広げたのだろうと、メルヴィンは離れたところで腕を組んでいるガエルを垣間見た。

 戦いのことに思いを馳せるメルヴィンとは違い、キュッリッキの脳裏には、この数ヶ月の間、アルカネットと過ごした日々が思い起こされていた。

 美しく整った顔立ちに、柔らかな笑みを浮かべ、優しい声音で丁寧な話口調。初めて出会ったとき、とても好印象を持った。ベルトルド邸の執事ということだったので、執事イコールおじいさん、のイメージを払拭もしてくれた。

 ベルトルドやライオンの仲間たちを前に向ける表情には、厳しいものや嫌味のようなものも含まれていた。それでも、キュッリッキに向けてくる表情は、心底優しく、全てを受け入れ包み込んでくれている。常にそんな雰囲気をまとっていた。

 屋敷で暴行されかかった件以来、人が変わってしまったアルカネット。多重人格者であることは後で知る事になるが、しかし、それまでは本当に優しくて、どこまでも深く愛してくれた。常に体調を気遣い、度が過ぎるほどの過保護さで守ってくれていた。

 出会って数ヶ月足らずの間だったのに、もう何年もそばで守ってくれていたような気がしてならない。

 震える手を伸ばし、頬にそっと触れる。顔も髪も血でドス黒く汚れていて、髪の毛と同じ色をした瞳は、なんの光も宿していなかった。

 アルカネットの瞼を閉じようと、キュッリッキは両手に力を込めた。

 どうにか瞼を閉じてやると、いくぶんか、優しかった頃のアルカネットの顔に見えてきた。

 ――リッキーさん。

 今もまだ鮮明に、耳に残る。愛称を呼ばれると、胸が温かくなるほど嬉しかった。

 自分に振り向けてくれた、優しいあの笑顔が忘れられない。

 常に優しく名を呼んでくれた、あの穏やかな声が忘れられない。

 キュッリッキの知っているアルカネットは、優しい優しい人だったのだ。

 その優しさが、かつてアルカネットが心の底から愛した少女リューディアに、自分の容姿が似ているから、重ねていただけだと。それだからだと、判っていても。

 リューディアを殺した神の、巫女である自分に、憎しみも抱いていたと知っても。

 ――こんなふうに、死んで欲しくなかった。

 あの優しかったアルカネットが戻ってきてくれたら、また仲良く出来たはずだ。父親のように甘えられたはずだから。だから、死んでほしくは、なかった。

 でも、それを口に出して言うことはできない。メルヴィンたちと同じように、ガエルたちもまた、自分のために命懸けで戦ってくれていたのだ。

 アルカネットも、自分自身のために戦った。その結果が、この死である。

 感傷を振り切るようにキュッリッキは手の甲で涙を拭って、毅然と顔を上げる。

「ベルトルドさん…」

 立ち上がるキュッリッキのそばに、フェンリルとフローズヴィトニルが寄り添う。

「キュッリッキ嬢、アレは、ベルトルドですか?」

 フェンリルの背から降りていたシ・アティウスは、パネルを小脇に抱えながら歩いてくる。いつも冷静なこの男にしては、僅かに声が上ずっていた。

「うん」

 振り向かずに短く肯定すると、キュッリッキは悲痛そうに眉を寄せた。

「悲しみで、我を忘れちゃったんだね…」

「我を忘れて、あんなモンになるのか? 普通」

 キュッリッキの言葉を受けて、ガエルが素っ頓狂な声を上げた。

「ユリディスの呪いの力に、取り込まれちゃったんだよ」

 きっぱりとキュッリッキが断言する。

「ほほう」

 興味がひかれたように、シ・アティウスはキュッリッキを見る。

「レディトゥス・システムに閉じ込められたユリディスの力が、システムが設置されたことで、このフリングホルニのすみずみまで行き届いてるの。アルケラの門を開かせないために、巫女を殺すための呪いの力」

 今のキュッリッキには、全て判っている。ユリディスが教えてくれたから。

「前にナルバ山の遺跡で、アタシ化物に襲われたでしょ。アレを作り出したのも、ユリディスの呪いなの」

「脂ギッシュで、キモイバケモンだったな!」

 両手を腰に当て、ヴァルトがうんうんと頷く。今も忘れない、破裂した身体から飛んできた内蔵を、思いっきりひっかぶったことを。

「テメーはなんもしてなかったろーが」

 すかさずギャリーがツッコんだ。

「あの化物は、元は1万年前の、神王国ソレル最後の王クレメッティが核になって生まれたの。ユリディスを酷いめにあわせて、世界を崩壊へと導いた愚王。――化物を生み出すためには核が必要になるから、ユリディスはクレメッティ王を捕らえて、1万年もの間、クレメッティ王に遺跡を守らせた。でもあの化物はみんなが倒しちゃったでしょ。だから、ユリディスの呪いの力は、今度はベルトルドさんを取り込んじゃったの」

 悲しみで我を忘れたベルトルドに、呪いの力が反応した。

 呪いの力は無作為に働くわけではない。アルケラに強く執着し、そして自我を失った者を捕らえる。

 クレメッティ王は狂気じみた神経をしていた。そして、誰よりもアルケラに対する執着心が強かった。ベルトルドも神への復讐心が強く、アルケラに執着していた。アルカネットを失ったことにより、自我をとどめていた箍が外れた。そこにつけこまれたのだ。

「アルケラの巫女ってね、授かった力がみんな違うものだったの。アタシにはナイけど、歴代の巫女には予知能力と、それぞれ違う力。ユリディスは核にアルケラから召喚した力をまとわせて、化物に変える力が与えられていた」

 そんな力を忌んで、呪いだとユリディスは言っていた。

「呪いを解く方法……、元に戻す方法は、ないんでしょうか?」

 シ・アティウスの問いかけに、キュッリッキは顔を俯かせる。

「自我を取り戻させれば、なんとかなる、……かも」

 アルカネットの遺体に目を向け、前歯で下唇を噛んだ。

 死なせたくない。

 あれほど酷い目にあわされたのに、裏切られたのにもかかわらず、キュッリッキはベルトルドを憎むことができなかった。

 それは、酷いことをされた以上に、深く深く愛されていたからだ。

 生まれて初めて、愛していると言ってくれたのは、ベルトルドだった。

 ファニーやハドリーとは、友愛を育んできたが、それ以上の愛をくれたのは、ベルトルドが初めてだったのだ。

 親や同族から捨てられ、忌み嫌われ、人間から愛などもらったこともない。

 ずっと、自分にだけ注いでくれる愛が欲しくて、愛に飢えていた。愛されることがどんなに幸せなことなのか、知りたいと願っていた。

 血のつながりもない、なんの関係もなかったのに、ベルトルドは優しさと愛を惜しみなく注いでくれて、世界中で一番愛されている女の子にしてくれた。普通の女の子のようになれた。

 ベルトルドが愛をくれたから、だからキュッリッキは愛を知った。そして、メルヴィンに恋をすることができた。

 誰も気づいてくれなかった、与えてくれなかった全てを、ベルトルドはくれた。

 労わるように、優しく見つめてくれるメルヴィンの手を、キュッリッキは両手でしっかりと握った。初めて恋をした人、異性を感じ、愛した人。この人と共に、ずっと生きていく。

 ベルトルドから向けられる恋愛を、キュッリッキは受け入れなかった。それは、すでに父親の愛だと、認識してしまっていたからだ。アルカネットからの愛も、ベルトルドからの愛も。

 神への復讐のために、キュッリッキの全てを傷つけた事実は許されない。でも、それ以上に与えられた愛が、キュッリッキの心から、憎む気持ちを拭っていた。

 室内に大きく轟く咆哮。聴いたこともないような声であり、重く響く、悲しげな音も含んだ声。

 呪いの力を受け、白銀の鱗を持つ、巨大なドラゴンとなったベルトルド。その背には翼が生えているが片方のみだけで、鳥の翼のようである。その翼は漆黒の色をしていた。

 それに気づいたシ・アティウスが、震えるような声で呻く。

「そうか……そうか、そうでしたか」

 そばに集まっていたライオン傭兵団は、怪訝そうにシ・アティウスを見る。

「なるほど、なるほど、ようやく合点がいきました。長いこと疑問だったことにも、納得できます」

「何に、合点がいったんで…?」

 首をかしげるギャリーに、シ・アティウスはニヤリと笑ってみせる。

「ベルトルドとアルカネットの正体ですよ」

 ライオン傭兵団の皆は、咆哮を上げ続ける白銀のドラゴンに目を向け、再度シ・アティウスを見た。

「正体って…まさか、人間じゃなかったんです~。とか言うんじゃ…」

 どっからどう見ても、あれじゃ人間じゃないし? とザカリーはぼやく。

「あのドラゴンの姿は、キュッリッキ嬢の説明であったように、ユリディスの力によるものでしょう。私が言いたいのは、彼らのルーツのことです」

 眼鏡のレンズをおし上げながら、シ・アティウスは教壇に立つ教師のような口調で説明を始めた。

「あの二人はスキル〈才能〉ランクがOverランクという、人類史上稀に見る強大な力を有していました。思いっきり人外のレベルです。これまでトリプルSランクまでは記録に残っていますが、それも稀な方です。それに、アルカネットは魔法スキル〈才能〉の持ち主なのに、サイ〈超能力〉まで使ったそうですね」

「うん。威力は多分Aクラス並だと思うけど、空間転移まで使いこなすんだからビックリしたよー」

 ルーファスが肩をすくめる。

「ベルトルドが使う”終わりなき無限の剣”も、ギミックがいまひとつ判りませんでした。彼自身もよく判らず使っていたのですが、あれは魔法スキル〈才能〉によるものです」

 はああああ!? とタルコットとヴァルトが揃って声を上げた。

 空間転移を応用して、剣を召喚してきているわけではなく、魔力で生み出されていた無数の剣。サイ〈超能力〉で新たな物質を生み出すことはできないが、魔力ではそれが可能だ。

「つまり、アレか? 二人共魔法とサイ〈超能力〉のダブルスキル〈才能〉保持者だった、てことか…?」

「そういうことですね」

 ギャリーに深く頷き、シ・アティウスはドラゴンに目を向け、アルカネットの遺体にも目を向ける。

「二人のあの翼、漆黒の色をしているでしょう。あれは紛れもなく、アウリスの血によるものです」

 アイオン族の始祖の名を、アウリス・ラッセ・フルメヴァーラという。

 イルマタル帝国を治めるフルメヴァーラ家は、アイオン族の始祖アウリス皇帝の直径の血筋らしい。現在ヴィプネン族の統一国家を治めるハワドウレ家と違い、フルメヴァーラ家は1万年以上の遥か昔から続くと言われている。

「アイオン族の始祖アウリスは、神と人間の混血により誕生したと言われています。アイオン族は白い翼を基本としますが、アウリスに流れる神の血の影響により、アウリス自身は漆黒の翼だったそうです。そのため、暫くはフルメヴァーラ家でも稀に、漆黒の翼を授かる者も生まれてきました。アウリスの血が濃く継がれたと、尊ばれる象徴でもあったと」

「御大とアルカネットは、そのフルメヴァーラ家の血を引いてる、てことか?」

 リュリュから聞かされた話では、思いっきり庶民の家の出だった気が、とギャリーは首をひねる。

「アウリスは末永く、イルマタル帝国が自らの血を引く者で治められることを願い、フルメヴァーラ家に、ある儀式を義務付けました。今後、帝位に就く者は、必ず自分の裁定を受けなければならない、というものでした」

 新たに帝位に就くとき、必ずアウリスを死後の世界から呼び戻し、その者が正しくアウリスの血を継いでいるかを、アウリス自身が見定める。帝位交代の度に、その儀式は行われていく。

「しかしその儀式を疎ましく思う者が現れ、アウリスを蘇らせる儀式に邪魔が入りました。それでもどうにかクーデターをおさめ、正しき血を継ぐ者が帝位に就きましたが、その時をもって儀式はなくなり、蘇ったアウリスはイルマタル帝国から消え、惑星ヒイシに降り立ったといいます。そこでアイオン族の女との間に子を成し、その血がベルトルドとアルカネットに受け継がれたわけです」

「……よく、そんなに詳しいことを知っているんですね……」

 カーティスにぽつりと言われ、シ・アティウスは僅かに得意げに笑みを浮かべた。

「あの二人の化物じみた力のルーツを、ずっと探っていたんです。かなり遠いご先祖が、共通なのですよ、あの二人の母親は。隔世遺伝というやつですね。ベルトルドもアルカネットも、元はそれぞれサイ〈超能力〉と魔法スキル〈才能〉のみだったのでしょうが、リューディアの死をきっかけに、潜在的に眠っていたもう一つのスキル〈才能〉が覚醒したのかもしれません。本来スキル〈才能〉は遺伝しないものですがね」

 漆黒の翼を見て、確信を得ました、とシ・アティウスは締めくくった。

 シ・アティウスの話を聞いて、キュッリッキは小さなため息をついた。

 もしも、二人が人外の力を持って生まれてこなければ、そんな先祖を持たなければ、リューディアを目の前で失ったとしても、今のような状況には、ならなかったかもしれない。あれほど強力な力を持ってしまったばっかりに、神へ復讐するなどと、決意させてしまったのだ。

 そんなことを今更思っても、詮無いことだが。

 ドラゴンとなったベルトルドは、ずっと咆哮を続けていた。

 苦しみ悲しんでいる、とキュッリッキには伝わっている。アルカネットを失い、激しい悲しみの中、ああして咆えるしか術がないのだと言わんばかりに。

 神々と幻想の住人たちの住む世界アルケラには、ドラゴンは当たり前に存在している。しかしこちらの人間世界では、伝説上の化物だ。

 ユリディスの呪いを解いて、元の姿に戻さなければ。いつまでも、あんな姿のままにしておくわけにはいかない。

 悲しみの連鎖を終わらせる。

 キュッリッキは厳しい眼差しを、ベルトルドにひたと向けた。 


第九章 戦い アウリスの末裔 つづく



123 第九章 戦い ”おとうと”の死

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Comments 4

八少女 夕

そうか…

おはようございます。

御大、そんなことに。
でもクレメッティ王みたいな化け物にならないでくれてよかったとちょっと思いました。

それに、二人がやたらと強かったのもそんな事情があったのですね。
もしかしてリュリュたんや、リューディアもそうなのでしょうか。

リッキーの戸惑いもよくわかります。
アルカネットが生きていたら、ガエルたちだけでなくメルヴィンたちもチャンスはなくて、死んでしまったはずで、それは自分を助かるためだということもわかっているのですものね。

だからこそ、御大だけは救って、さらにこの無謀な計画も辞めさせるのは自分だと思っているのでしょうね。

そろそろ物語もクライマックス。
先はとても待ち遠しいですが、周りのことは氣になさらずご自分のペースで書いてくださいね。

2016-10-30 (Sun) 10:29 | EDIT | REPLY |   

ユズキ

Re: そうか…

八少女さんこんばんわヽ(・∀・)ノ

>でもクレメッティ王みたいな化け物にならないでくれて

見た目的にはドラゴンのほうが優美な姿ですね(笑)
とくに明記はしていないんですけど、核になった人間の本質みたいなものが反映されるので、御大はたまたまドラゴンの形態になったかんじです。あの方は怒るとドラゴンみたいなもんですしw

>二人がやたらと強かったのもそんな事情

アウリスのことは、別個に物語があって、それはこの話にはあまり関係ないので簡潔にしちゃってますが、御大とアルカネットさんを足したような人物です(・ω・)☆

>リッキーの戸惑いもよくわかります。

素直に割り切れないことだらけです。
絶望から這い上がってきたものの、嫌な思い出は生々しく突きつけられるし、でも、楽しかった日々もまだ新しく。
自分が死んじゃいたい、とは考えられても、御大とアルカネットさんが死んじゃえばいい、とは絶対考えない子なので、御大のことをちゃんとわかっているので、助けたいんですね。

>周りのことは氣になさらず

ありがとうございます(^ω^)
SNSに投稿すると、そういう反応がくるのもよくわかったかんじです(笑)
でも、ブログだけだと読んでいただける範囲が狭すぎるので、次にいい作品にできるよう助言をもらったくらいの気持ちで受けないとダメっすね><

2016-10-30 (Sun) 20:23 | EDIT | REPLY |   

涼音

今日は。
やっと来れた~(笑)

まだ、ちょっと公表できないんですが、今内々にツイッター仲間とやってることがありまして、週末も忙しくなりそうなので、時間が空いたのでやって来ました。(近いうちに公開できると思いますが)
御大、とアルカネットさんのご先祖様は、そんなに凄い方で、おまけに血縁関係にあったんですね。御大とアルカネットさんの出会いも偶然ではなく、必然だったのかもしれませんね。
二人がやたらと強かった事情も納得しました。

リッキー、こんな場面に遭遇したら、そりゃ戸惑いますよ。
アルカネットさんが、まさか亡くなっているとは思ってもいなかったでしょうし。
でも、アルカネットさんが生きていて、正気の御大と共同で来られてたら、もうこっちが全滅だったでしょうし、これも必然的状況だという事ですよね。
こんな御大を正気に戻せるのは勿論リッキーだけでしょうし。
普通の姿の御大との再会なら、色々と思い出して直ぐに御大の存在を受け入れられないでしょうが、この姿だったらまた近づきやすいでしょうね。

ほんと、リッキー性格良すぎだから。。。(笑)

本当に物語もクライマックスに向かって衝撃もいろいろありましたが楽しくなってますね。
私は完全に今年中には終われないかな~(笑)
でも、お互いマイペースで頑張りましょうね^^
ハードスペクタクル恋愛ファンタジーの続き、楽しみにしていますね^^

2016-11-03 (Thu) 16:13 | EDIT | REPLY |   

ユズキ

Re: タイトルなし

涼音さんおはようございますヽ(・∀・)ノ

>時間が空いたのでやって来ました。

いえいえ、お忙しいのにいつもありがとうございますヽ(*´∀`)ノ
なにやら楽しい企画があるんですね!

>二人がやたらと強かった事情も納得しました。

遠い遠い親戚なので、二人の母親も遠いご先祖が同じ、ということは知らないのです。
運命だったんでしょうね~。

>リッキー、こんな場面に遭遇したら、そりゃ戸惑いますよ。

本当にかわいそうな立場に追い込んじゃってます><
あまりにも短期間で色々なことがありすぎて、突き抜けちゃいそうな状況なんですが。
御大のあんな姿を見ちゃったら、引っ込んでる場合じゃない! てなってくれます!!

>ハードスペクタクル恋愛ファンタジーの続き、楽しみにしていますね^^

ありがとうございます(´∀`)
落ち着いたら色々整理して、ババーンと使わせていただきますw
頭の中ではしっかり完結しちゃってるのに、ちょっと書き出しに手間取ってます( ̄▽ ̄;)

2016-11-04 (Fri) 05:54 | EDIT | REPLY |   

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