015 第二章 エグザイルシステム 遺跡 (一)

カウンターアタックのほうを幼馴染に読んでもらったら、台詞上手いねと褒めてくれた。そのヒトはどんなものか設定は知っているんだけど(前もって話してある)、褒められると素直に嬉しい(^ω^)


正直文章力はまだまだひよっこだけど、その分台詞をとくに気をつけて書くようにしているから余計。


作り物のシーンを書いてるんだから、せめて自然に会話をしている感じを目指して!w


ただ、一斉に人数増えるとどうしても書き分けが難しいンデスケドネ。


まあ、ちゃんと会話が成立しているように書いていきたいと思います。






ALCHERA-片翼の召喚士-
第二章 エグザイルシステム 遺跡(一) 015




 エグザイルシステムは誰が作ったのかも判らない、当たり前のように各惑星に根付いている転送装置の名称である。

 半径1メートルほどの黒い石造りの台座に、短い銀の支柱のようなものが3本立っている。

 台座の中心にはその惑星の地図が彫り込まれていて、エグザイルシステムが置かれている地にスイッチのような突起がある。

 そのスイッチを踏めば、台座に乗っているものは全てそこに飛ぶようになっていた。

 一瞬で離れた地へ人や物を飛ばせるこれを、『ゲート』と呼んでいる者もいる。

 同じものを初めから作り出せる技術はこの世界にはない。そんなものが存在することに、人々がなんの疑問を持つことなく、当然のように多く点在していた。

 惑星間を移動する場合は、銀の支柱に触れればよく、支柱はそれぞれ惑星ヒイシ、惑星ペッコ、惑星タピオをあらわしていた。

 惑星間移動では、それぞれの惑星で必ず玄関口となる地に飛ぶ。そこから同じ要領で飛びたい地を選択すればよかった。そして惑星間を移動できる手段は、このエグザイルシステムしかなく、宇宙を航行する技術もない。空を飛ぶ技術すらなかった。

 所有している国や都市が料金を徴収することはない。旅の情緒を楽しみたいものや、大荷物の運搬などは乗り物を利用していたが、誰でも手軽に使え移動が楽で人気もあった。

 しかしこれはどう見ても、皆がよく知るエグザイルシステムではない。そういう意味では確かに普通ではないと言える。

「シ・アティウスは何故これを、エグザイルシステムと言ったのでしょうか」

 ブルニタルは眉間にしわを寄せた。

 半円型の台座に、ガラスなのか水晶なのか、柩のようなケースが立てられている。ケースの中身はなにもなく、台座には地図もなにも掘られていないし、銀の支柱もない。

 シンプルな見た目といい、通常のエグザイルシステムとは似て非なるものだ。

 これ以上見ていても仕方がないと呟き、ブルニタルは軽く首を振った。

「取り敢えずベルトルド氏に連絡を入れましょうか」

 ブルニタルは肩にとまっている小鳥を自分の指に移らせると、小鳥に向かって呼びかけた。

 小鳥は瞬きもせず沈黙していたが、やがて嘴から尊大溢れる男の声が応じた。

「お忙しいところすみませんブルニタルです。今例のエグザイルシステムの前に居ます」

『早いな。こちらの予想では明日になると踏んでいたのだが』

 ベルトルドの声は、僅かに驚きを含んでいた。

「キューリさんのお陰で、色々手際よく進みましたから」

『なるほど。――そこにリッキーは居るか?』

「いえ、彼女は神殿の外で待機しています。なにやら神殿に入るのを怖がってしまっていて」

『ほう……?』

 ベルトルドは考え込んだように沈黙した。

『……まあ、そばに居ないのでは、褒めてやることもできんな』

 たっぷり間を空けたあと、ベルトルドは残念そうに呟いた。黙って聞いているブルニタルとメルヴィンの表情が露骨に歪む。

(何故そこで残念そうに言うんだこのひとは…)

(ガキの使いじゃあるまいし)

 各々胸中で本音を吐露する。

『これだけ早いとカーティスたちがまだ救出出来ていないだろう。そこを死守して奴らが合流するのを待っていろ』

「判りました」

『それと』

「はい」

『リッキーが嫌がるなら無理強いはするな』

「……はい」

 それでベルトルドとの通信は切れた。小鳥は沈黙し、自らブルニタルの肩に戻った。

「副宰相のナマ声初めて聴いたぜ俺…」

 どこか感極まったようにハドリーが呟く。

「胃が痛くなるので、あまり聴いていたくないんですけどね」

 苦笑しながらメルヴィンが応じた。ガエルも黙って頷く。

「神殿から出ましょう。外の様子も気になりますし、ここに居てもしょうがないでしょうから」

「そうしますか」

 4人は頷いた。





「みんなまだかな~」

 壁にもたれかかって、床で転がったり丸まったりしているフェンリルを構いながら、神殿の入口を見つめる。

 ファニーは目を覚まさず、話し相手がいなくなって、急速に退屈感に蝕まれつつあった。

 暇つぶしに何か襲ってこないか意識をこらしたが、哨戒に出していた綿毛たちからは何も連絡はなかった。

 神殿の入口から離れていると、先ほど感じたような足がすくむほどの怖さはなかった。しかし相変わらず嫌な気配のようなものは感じ続けていた。

 戦場での危険感知とは若干違う。敵意といったようなものでもない。

 ただ、怖いと感じるのだ。

 キュッリッキはそうした勘をこれまで外したことがない。キュッリッキだけが感じる何かが、この神殿にはあるのだろう。

 心の中で警鐘は鳴りっぱなしだったが、今はまだ小さい。神殿の中に入らなければ大丈夫。キュッリッキには確信があった。

「う……」

 何度か小さく呻いたあと、ファニーが身体を僅かに揺らし、薄らと目を開いた。

「ファニー起きた!」

 キュッリッキは壁から離れると、ファニーの顔の前に膝を揃えて座り直した。身を乗り出し顔を覗き込む。

「その元気な声は……リッキー?」

「うんっ!」

 嬉しそうにキュッリッキは縦に首を振った。

 ファニーはゆるゆると上体を起こすと、壁にもたれかかって頭を軽く振った。まるで悪夢をみて目が覚めたような、不快感を貼り付けたような表情で辺りを見回す。

「縄切ってくれたんだ、あんがと」

「どーいたしまして」

「ところでハドリーどこいったの?」

「神殿の中だよ」

 そう言って神殿を指す。

「ふうん…?」

「アタシも仕事でここにきたんだけど、仲間を案内するのに神殿入っていった」

「あれ~? アンタってば毎日が休日状態だったのに、仕事見つかったんだ?」

 大きな目をさらに大きくして驚くファニーを、キュッリッキは憮然と睨みつけた。

「もうとっくの2週間以上前に決まってるわよ」

「えーーー!! だったらさっさと連絡くれたらいいじゃないのもー!」

「年中無休のファニーがちっとも家に寄り付かないから連絡も取れないんだってば!」

 一息に言って、キュッリッキはぷっくりと両頬を膨らませて抗議する。それを見てファニーは誤魔化すように、手をヒラヒラさせながら笑った。

「だって、仕事あるうちが華なんだし、お金貯めまくって中年になったら人生謳歌するって設計があるんだもーん」

「ったくぅ、ギルドの支部いっぱーい掛け持ちしてるでしょ。一回も連絡取れたためしがないんだから」

「ごめーーん」

 両手を合わせて謝罪のポーズを作り、ウインクして詫びる。キュッリッキは膨らませた頬のぶんの息を吐き出して、やれやれと天井を仰いだ。

「で、またどっかの傭兵団とかに入ったの?」

「うん。ライオン傭兵団」

 ファニーは目をぱちくりさせると、

「なんですってえええええええ!?」

 と絶叫した。そしてキュッリッキの細い首を両手でガッシリ掴むと、激しく前後にブンブン振り回す。そんな二人のそばで、フェンリルは丸くなって転がっていた。ファニーの絶叫に驚いたようだ。

「召喚スキル〈才能〉ばっかずるうーーーーい!! あたしなんてあたしなんて、誰でも持ってる戦闘スキル〈才能〉でレベルも中程度だしい、そんな有名どころから見向きもされないってえのに、召喚スキル〈才能〉持ちばっかり依怙贔屓しすぎよー!!!」

「ンがぐ…っ」

 キュッリッキは目を回しながらも、窒息気味になり両手でもがいた。そんなキュッリッキの様子はお構いなしに、そのまま勢いよく放り出す。そしてファニーは握り拳を作り明後日のほうを向いて、高らかに訴えた。

「チート能力ばっかり優遇されてオイシイ人生約束されてっ! 並み程度のスキル〈才能〉しかないその他大勢の一般庶民は地べたを這いずりながら今日も生きているのよ!!」

「喧しいと思ったら、やっぱり起きてたか」

 盛大に顔をしかめたハドリーが、神殿から出てきた。

「あらハドリー」

 声に気づいて、ファニーは顔だけハドリーに向ける。

「リッキーとフェンリルが伸びてるじゃないか。狭い空間で大声出すと響いて五月蝿いだろう。まったく」

 仰向けに伸びているキュッリッキの頬を軽く叩いて、その近くで丸まったまま伸びてるフェンリルを抱き上げた。

「なんて大声なんでしょうか……鼓膜が破れます」

 忌々しげに文句を言いながら、ブルニタルが神殿から出てきた。そして、メルヴィンとガエルも目を瞬かせながら後に続いた。

「誰よこいつら?」

「リッキーの仲間。ライオン傭兵団だ。リッキーから話聞いてなかったのか?」

「さっき聞いたところよ」

 ファニーは立ち上がると、まだ寝転がっているキュッリッキを、ブーツのつま先で突っついた。軽く突っつきながら、次第に蹴飛ばしていく。

「ちょーっと起きなさいよーほらあ!」

 その様子を遠巻きに見て、メルヴィンは胃の辺りをそっと押さえた。

(あの光景をベルトルドさんが見た日には………天から雷が降ってくるな)


 *  *  *


 シ・アティウスはうんざりしていた。

 目の前の詰問官は同じ質問をしつこく繰り返し、唾を飛ばしながらわめきたてる。気に入らない回答を得ると、途端に机を叩き椅子を蹴った。

 そして急に猫なで声を発し、甘い一面を覗かせ、すぐ元に戻る。

 感情の一切が削ぎ落とされたような無表情を動かすことなく、シ・アティウスは詰問官を見つめていた。

 頭にあるのはただ、ナルバ山の遺跡のことだけだ。

 遺跡の状態は極めて良く、不可解なエグザイルシステムも発見し、本腰を入れて調査をしていたまさにその時、ソレル王国の軍隊がやってきて拘束された。

 雇ったフリーの傭兵は二人、しかし数が多すぎて勝ち目はなく、あのあとどうなったかについて、関心は一切ない。願わくば遺跡を死守してくれていれば嬉しいとは思っている。そしてそれはありえないだろうことも判っていた。

 シ・アティウスにとってソレル王国が介入してくるのは想定外のことだった。無駄な時間を省くため、自らの身分を明らかにしたが、釈放される気配はない。

 ハワドウレ皇国副宰相直轄の研究機関所属である。皇国の属国にしか過ぎないソレル王国が、副宰相の部下に手を出したのだ。

 要人ではないが、副宰相の部下という立場がすでに外交問題レベルだった。それでもソレル王国はシ・アティウスを拘束し続けた。

 ナルバ山の遺跡が大きく関係しているのは誰でも判るが、シ・アティウスもまだ気づいていないあの遺跡の謎を、この国は掴んでいる。容易に推察できた。そのことで、シ・アティウスがどこまで掴んでいるのかを調べるために、不当な拘束を続けているのだ。

 自分が拘束されたことはすぐベルトルドに伝わっただろう。それならそのうち、なんらかのリアクションがあるのも予想できる。

 記憶スキル〈才能〉を持つシ・アティウスは、戦闘などの野蛮的行為は範疇外なので、自ら行動を起こすことは考えていない。

 今すぐにでも遺跡に駆けつけたいが、事態が急変することを待ち望み、詰問官の取り調べに耐えることにした。


 *  *  *


 警戒は続けていたが、とくにすることもないので、ガエルとブルニタルはそれぞれ離れたところで座っていたが、残りの4人は小さな輪を囲んで談笑を楽しんでいた。

「神殿の中は、一直線の通路と例のエグザイルシステムのようなものしかありませんでした」

「のようなもの?」

 メルヴィンの説明にキュッリッキは首を傾げた。

「我々が知ってるエグザイルシステムとは全然似てなかったんですよ。台座に透明なケースが一つ立てられてるだけ」

「うーん…なんだろうね」

 自分の目で見てみたい気もするが、神殿に入るのだけは嫌だった。意識をこらせば、神殿からの怖い気配はジワジワ感じられる。

「そうそう」

「うん?」

「さっき俺、副宰相のナマ声聴いちゃったよ。リッキーのこと褒められなくて残念そうだったぞ」

「えー、そーなの~? じゃあ、この任務終わったら、いっぱい褒めてもらいにいこっと」

「なによアンタ、ハーメンリンナに出入りできるわけ?」

「えっへへん! 通行証作ってもらったんだよー」

 キュッリッキは得意気にファニーを見る。

「いいなーいいなー、ハーメンリンナに可愛い洋服屋さんがあるっていうじゃん。一回行ってみたいんだよね~。高そうだけど」

「じゃあ任務終わったら一緒に行こうよ」

「行く行く!」

 盛り上がる女性二人をよそに、メルヴィンがそっとハドリーに耳打ちする。

「貴族・高官専用の特別通行証なんです…」

「………随分気に入られたみたいっすね」

「もしかしてキュッリッキさんって、Mっけありませんか」

「副宰相がドSって噂、ホントだったんだ」

 ハドリーの笑みが引きつった。実しやかにイララクスっ子の間では噂になっている。

「まあ、嫌われるよりは良い」

 今のところは、キュッリッキも仲間の一員として溶け込んでいるようで、ハドリーは少し安心していた。

「そういえばさあ、いっぱいいたソレル兵をどうやっつけたの? 中隊規模だったんじゃない?」

「ガエルとメルヴィンが、サクサクーって倒しちゃったよ」

「いっくら最上級スキル〈才能〉っていっても、200人近くを二人でとか無理くない?」

「そこはキュッリッキさんの召喚サポートがあったので、出来たんですよ」

 メルヴィンが戦闘の時のことなどを説明すると、ファニーとハドリーは意外そうな表情を浮かべてキュッリッキを見た。

「へ~、アンタいつの間にそんな風に召喚を使えるようになったのよー」

「サポートに徹するとか珍しいな」

「だって、二人がどんだけ強いか見たかったし」

 それに、今までのような自らの力を誇示するような使い方は、この傭兵たちの中ではしないほうがいいように感じていた。

 ガエルとメルヴィンを見ただけで、ほかの仲間もどれほど強いか容易に想像できる。腕自慢しかいない。そして各々腕に見合うだけの自信とプライドもある。

 これまでは、殆どキュッリッキの召喚をあてにして、戦闘全てを押し付けられる場面も多かった。かつてソープワートの大隊を始末したように、一瞬で終わらせる戦闘を強いられてきた。

 面白くもなんともない。

 しかしこのライオン傭兵団では、もっと違う働き方が出来る。

 自分にしか出来ない力の使い方、仲間を援護・強化する方法、それを試していこうと考えていた。

「まあ、アタシがいれば、誰でも本領発揮出来るってことっ!」

 キュッリッキは胸を張って言い切った。
 

 
第二章 エグザイルシステム 遺跡(一) 続く


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