024 第三章 求めるもの 記憶の残滓

御大書いてるとなんでこう路線が違う方へ脱線していくのか不思議です(・ω・) 早く軌道修正して中年の素敵な魅力を全開で振り撒いてください><


ちょっと章タイトルに首をかしげつつも、こういう内容になるよなあ…と思いながら、サブタイトルで誤魔化していこうかと(ぇ)


1章で紹介、2章で事件、3章で心の部分、て感じなので、きっとこれで間違っていないはず(・_・;)


ベルトルドさんのエロい野望からスタートですが、この次の回からキュッリッキさんの過去話に突入です。


「オマケに舌まで入れたとか……しかもリッキーのファーストキスだぞ! 先を越された俺の悔しさがお前たちに判るか!」


この時のシーンが絵になって浮かんで、御大が思いっきり可愛く思えました。





ALCHERA-片翼の召喚士-
第三章 求めるもの 記憶の残滓 024



 ベルトルドの姿が見えると、部屋の前で待機していた使用人たちが、恭しくドアを開いた。

 キュッリッキを抱きかかえたベルトルドを先頭に、ルーファスとメルヴィン、アルカネットが連れて行った医師二人が後ろに続く。

 そして、あらかじめ部屋で待機していた別の医師が椅子から立ち上がり、ベルトルドに深く一礼した。

 キングサイズもあるベッドにそっとキュッリッキを寝かせると、ベルトルドは両掌をパンッと合わせ叩いた。

 皆ちらりとベルトルドに視線を向けるが、とくに変化はなかった。

 しかしルーファスだけがその意味を視ていた。

 キュッリッキに張り巡らせていたサイ〈超能力〉で作った防御の繭を解いたのだ。

 強固に編まれていた光の糸が、空間に溶けるように消えていく。ベルトルドがずっと抱いたままの姿勢でも、キュッリッキが苦しがらなかったのは、防御の効力がずっと働いていたからだった。

「あとは任せるぞリトヴァ」

 ベッドの傍に控えていた初老の女性が、腰を落として一礼した。

「お任せ下さいませ」

「ルーとメルヴィンは俺の部屋にこい」

 ベルトルドは意識のないキュッリッキの両頬にキスをすると、名残惜しそうな視線を残し部屋を出て行った。


 南にある棟から東の棟に移動しながら、一緒についてきた初老の男に、脱いだマントを投げ渡しながら指示を飛ばす。

「こいつらも暫く滞在する。部屋をリッキーの近くに用意しておけ。それから今日はもう一切の仕事も用事もデートも受けん。全部遮断しろ。さすがに疲れた」

「承りました」

「アルカネットはたぶん明日には戻ってくるだろうが、アイツも今や長官だからな、お前が執事を代行しろセヴェリ」

「はっ」

「ブランデーを持ってきてくれ」

 セヴェリは恭しく礼をして、酒を用意しに別の方へ向かっていった。

 ベルトルドはサイ〈超能力〉ではなく手でドアを押し開く。

「適当なところに座っておけ」

 そう二人に言って、ベルトルドは両腕を広げベッドに仰向けに倒れ込んだ。

「大丈夫ですか?」

 メルヴィンが気遣うが、ベルトルドは手をひらひら振って「問題ない」と疲れた声を出した。

 すぐにドアがノックされ、セヴェリがブランデー入りの瓶とグラスをトレイに載せてテーブルに運んできた。

 カットガラスの酒杯(グラス)に琥珀色の液体を注ぎ、ベッドのそばのサイドテーブルに、そして二人にそれぞれ手渡し、セヴェリは部屋を辞した。

「さすがにサイ〈超能力〉を使いすぎたな。それも繊細な使い方でだ」

 のろのろと身体を起こし、サイドテーブルの上のグラスを手に取る。

「物を壊す方がずっとラクな使い方だ。加減にも気を使わなくてすむしな」

「全くですね」

 同意しながらルーファスは苦笑する。

 あれだけの強固な防御を張り続け、転送の際にも細心の注意をはらい、キュッリッキへの負担を可能な限り軽減するよう努めていたのは見ていて判る。

 皆を浮かせて飛んだり、鉄の船を移動させたりなどは、ベルトルドにとっては塵を払うようなもの。力を使ったうちにも入らない。しかし、移動中ずっとキュッリッキのために力を割いていたのだから、その苦労は計り知れないものがあった。

 表情に疲労の色が濃く滲んでおり、傲然とも言える空気は鳴りを潜めていた。

「言っておくが、歳のせいじゃないぞ」

 むすっとした表情で釘を刺す。誰もツッコんでないようなと、メルヴィンは心の中でため息をついた。

「お話があるのでは」

 ルーファスが促すと、ベルトルドはグラスを空にして、再びベッドに寝転がった。

「実際の看病や世話は使用人たちがやってくれるが、日中は出来るだけそばに付いていてやれ」

「夜はいいんですか?」

「夜は俺がずっと添い寝する」

 二人は「えっ!?」と声を揃えた。

「いくら俺でも怪我人に襲いかかるほど女に不自由はしてないぞ。ちゃんと自制出来るから問題ない」

 ビシッと親指を立てる。

 もろ問題大有りじゃね!? とルーファスは胸中で叫んだ。メルヴィンは物言いたげな視線をじわじわ送る。

「アルカネットさんが帰ってきたら、添い寝は難しいのでは…」

 その言葉にベルトルドの眉がひくついた。

「あいつはな……俺が気づいてないと思っているのか判ってて知らん顔しているのか、リッキーに口移しで薬を飲ませたという事実を、俺はちゃんと知っているぞ!」

 寝転がったままベルトルドは拳をグッと握る。

「オマケに舌まで入れたとか……しかもリッキーのファーストキスだぞ! 先を越された俺の悔しさがお前たちに判るか!」

 俯いて拳でベッドをドスドス叩く。奪われたキュッリッキが悔しがるなら理解出来るが、何故アンタが…と、ルーファスは口元を歪めた。

「……記憶、勝手に読みましたね」

「どんだけ悔しかったんですかっ」

 二人は呆れてヤレヤレと首を振った。

「俺はもうアルカネットに遅れを取る気はない!」

 顔を上げて、真剣な眼差しできりっと断言する。

「相手はまだ18歳の少女ですよっ! なに息巻いてるんっすか」

「年の差なんざ関係ない! 初めてのときはトラウマになりやすいからな、俺のように上手な大人が手とり足とり教えたほうがリッキーのためだ」

「なんて邪な家族計画立ててるんですかアンタ!」

 ベルトルドは大真面目である。

「話が脱線しまくっていますよベルトルド様…。もう酔われましたか」

 底冷えするような声でメルヴィンが口を挟む。

 ベルトルドもルーファスもビクッと息を飲んだ。あきらかに怒っている。

「で、我々になんのお話があるんでしょうか?」

 メルヴィンの気迫に圧され、ベルトルドは真顔に戻り、視線を明後日の方角に向けて唸った。

「何を話そうとしていたかな…」

「では俺から質問を一つ。何故我々を看病役に選んだんですか? 魔法スキル〈才能〉もないので回復魔法をかけてあげることもできませんし、二人共男なので不都合が色々あるんじゃないでしょうか」

「ああ…そのことだ」

 ワシャワシャと自分の頭を掻いて、ベルトルドは寝転がったまま、肘枕をして身体を横に向けた。

「今のところリッキーが一番心を許しているのが、お前たち二人だからだ」

 メルヴィンとルーファスは顔を見合わせた。

「あの子はまだ入団して日も浅い。それに少し人見知り体質もあるようだな。だが自分の欠点を克服して、必死に馴染もうとしている。それはカーティスから聞いている」

 ベルトルドは空のグラスを掴んで揺らす。手近にあったブランデーの酒器を持って、ルーファスがベルトルドのグラスに注いだ。

「確かに男手だと不都合もあるだろうが、そこはリトヴァがフォローしてくれるだろう。お前たちの役目は、喋るぬいぐるみ程度にそばにいてやることだけだ」

 寝転がったままグラスの中身を軽くあおる。

「大怪我を負って精神的に不安定になっている。例の怪物のトラウマも抜けていないだろう。素直に甘えられる存在が近くに欲しいのさ、そいうときはとくにな」

 メルヴィンは小さく頷いた。

「性別やスキル〈才能〉はこの際どうでもいい」

「なるほど」

 ルーファスは照れくさそうに頬を掻いた。巨乳好きと公言しているので、てっきりドン引きされていると思っていたからだ。

「しかしどういう基準でお前らなのかは俺もよく判らん。次点でマリオンなんだが、まあ、馴染み易かったんだろう」

 だが、と言ってベルトルドは立ち上がる。

「お前らを心の中から徹底排除し、リッキーの中の一番はこの俺が取る! 俺だけを望み、俺だけを求め、俺に全てをさらけ出すくらいに教育してみせるぞ!」

 思いっきり真顔で、自信たっぷりに言い切った。

(このエロおやじ…)

(ロリコン…)

 二人の心の声をスルーして、ベルトルドはテーブルのベルを鳴らした。

 すぐにセヴェリが顔を出す。

「風呂は?」

「用意出来ております」

「なら、こいつらを部屋に案内してやれ。俺は風呂に入る。身体を磨いておかねば」

「承りました」

「今日からリッキーの部屋で寝る事にするから、朝は間違えるなよ」

「…お嬢様のお部屋に、でございますか」

 セヴェリが困った顔をする。そんなことはお構いなしに、ベルトルドは嬉しそうに笑顔を見せた。

「ああ、リトヴァにもそれ言っておいてくれ」

「……そのように」

 神妙に頭を下げ、セヴェリは部屋を出た。



「メルヴィン、付き合わないか」

 ルーファスはワインの瓶を軽く揺らす。

「是非」

 メルヴィンは笑みを浮かべ、ルーファスの部屋に入った。

 二人に用意された部屋は、キュッリッキの部屋のすぐ隣の二部屋だった。

 ハーメンリンナにある貴族や富豪たちの有する屋敷と大差なく、とにかく無駄に広い。そして二人の部屋も無駄に広かった。

 ベルトルドの好みだろうが、屋敷の調度品や色調は、青と白を中心にしたものが多い。下品になるほど派手ではなく、かといって質素になるほど簡素でもなく、ちょうどいい調和が取れている。

 寒々しい印象を与える青色も、絶妙なバランスで柔らかく配色されているので、落ち着いた良い部屋になっていた。

 ソファに向き合うように座って、ルーファスはメルヴィンのグラスにワインを注いだ。

「さっきカーティスに連絡とったら、あっちもみんなクタクタで部屋にすっこんだそうだ」

「なんだかんだ、雑魚寝状態でしたしね」

「だよな。じめじめ暑かったし」

 笑いながらグラスを傾ける。

「それにしてもさ、キューリちゃんに好かれてるとは思ってなかったから、なんかこそばゆいな」

「女の子に好かれるのは、悪い気はしませんよ」

「まあね。とにかく美少女だからなあキューリちゃん。あれで胸がおっきかったら完璧だったんだけど」

「太りにくい体質だと言ってたことがあるので、あまり言うと可哀想ですよ」

「ははっ、それならしょうがないな」

「しかし、頼りにされてる以上、守ってあげないと」

「ベルトルド様からだろ。淫乱オヤジの毒牙から守るのは、一国の軍隊から守るより至難の業だぞ…」

 どんよりと重たい空気を漂わせながら、二人は俯いた。

「これはもう、アルカネットさんに縋るしか」

「どっちもどっちな気がしますが」

「ベルトルド様は有言実行、アルカネットさんは無言実行、どっちもどっちか」

 敵が強すぎて、騎士(ナイト)役は難しすぎると、闘う前から諦めモードに陥っていった。



 キュッリッキは目を覚まし、ここはどこだろうとぼんやりと視線の先を見つめた。

 薄暗い中目も慣れてきて、見上げているそれがベッドの天蓋だと気づくのには時間がかかった。生まれて初めて目にするもので、何故天蓋がつくようなベッドに寝ているのだろうと疑問が頭をもたげた。

 そして左側に人の気配がして首を向けると、キュッリッキは悲鳴をあげそうになって慌ててそれを飲み込んだ。

 ベルトルドが寝ているのである。

(えっ? えっ?? なんでここに!?)

 右側を見ると、数人横に寝てもあまりあるくらいのスペースがある。もう一度左側を見ると、やはり大人二人分のスペースに、ベルトルドが寝ている。

 アルイールのエグザイルシステムのところで一度意識が戻ったきり、キュッリッキはずっと意識を失って眠っていた。なので、自分がどこでこうして寝ているのかが判らない。

 忙しく頭の中が回転するが、やがて考えるのが面倒になりため息が漏れた。

 今の気分は落ち着いていて、あれだけ苦しかった熱もひいている気がした。とくに苦しくはない。迫り来る無言の恐怖と命の危険に晒されながら、それは必死に手を尽くした皇国の医者たちの努力の賜物であることは知らない。

 改めて左側に眠るベルトルドに顔を向ける。

 身体をキュッリッキのほうへ向けたまま、ぐっすりと眠っていた。寝息も規則正しく、なんとも無防備な寝顔だった。

 動く左手を伸ばし、そっと前髪を指で揺らしてみる。

 サラサラとした感触がくすぐったくて、でもそれで起きるんじゃないかと慌てて手を引っ込めた。しかしベルトルドは目を開けなかった。

 スヤスヤと眠るベルトルドの顔を、まじまじと見つめる。

 聞いていた年齢よりずっと若く見える。アルカネットの柔和で優しげな面立ちとは正反対に、挑発的で強気が常に満面に押し出されたような面立ち。ライオン傭兵団の仲間たちに言わせると「歩く傲岸不遜」だそうだが、それに同意出来るほど、付き合いは深くない。

 まだ出会って日も浅い。知らないことのほうが多いのだ。

 とても偉くて忙しい人だということは判る。その彼が、怪我をした自分のために駆けつけてくれた。そしてとても大切にしてくれる。

 何故だろう。

 答えはすぐに出た。

 自分が珍しいレアスキル〈才能〉を持つ召喚士だからだ。

 これまでずっと知らなかったことだが、召喚士は国が保護するほど貴重なスキル〈才能〉なのだそうだ。同じように召喚スキル〈才能〉を持つ者は、大切に国に保護され貴族のような暮らしをしているという。

 それも、家族ごと。

 でも、とキュッリッキは思う。

(アタシは捨てられた。――家族から)

 脳裏に蘇ってくる、冷たい石の感触を。

 全身が渇くほど、欲した親の愛情を。

 キュッリッキの黄緑色の瞳は、幼いあの頃の、薄汚い惨めな自分の姿を視ていた。

 
第三章 求めるもの 記憶の残滓 続く



025 第三章 求めるもの 記憶の残滓

023 エグザイルシステム 遺跡(二)

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Comments 2

LandM

No title

確かに召喚は膨大なエネルギー係数ですからね。
他所の世界から引っ張り出すというのは才能でないとできないでしょうね。
貴重と言えば貴重なのでしょうね。

どうも初めまして?です。
場末でファンタジー小説をたまに書いているLandMです。
よろしくお願いします。

2014-04-07 (Mon) 19:47 | EDIT | REPLY |   

ユズキ

Re: No title

コメントありがとうございます(*´∀`*)初めまして~。

ゲームやアニメに見られる召喚士像は、ウチでは当てはまらない設定なので、ちょっと解釈が異なるのです~。
この世界ではスキル〈才能〉という、ひとつだけ生まれつき与えられている能力というものがあって、召喚スキル〈才能〉もまたそれに該当するのです。その召喚スキル〈才能〉を持って生まれてくる人数が極端に少ないので、貴重なのです(*´∀`*)
召喚士についての諸々は、今はまだネタバレ出来ませんので、判りにくい綴りになっていると思いますすみません><;

パターン通りの召喚士なら、魔力が魔法使いより高めで、消費魔力も凄い量で~とかなりますよね。見栄え的にそっちのほうが召喚シーンとかカッコいいのですが(/ω\*)

時々お伺いさせていただいております(*´∀`*)こちらこそよろしくお願いします。
コメントありがとうございました~。

2014-04-08 (Tue) 01:06 | EDIT | REPLY |   

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